企業ブランディングのために書籍出版を検討する際、選択肢になるのが自費出版です。
では自費出版の費用相場はどれくらいなのでしょうか。
企業の出版の選択肢として自費出版と企業出版の違いにも触れながら、具体的な出版社の選び方のポイントを解説します。
目次【本記事の内容】

自費出版の費用
企業や個人が自費出版を検討した時に、まず気になるのは費用面でしょう。
具体的に自費出版ではどのような費用がかかるのかを見ていきます。
自費出版にはどのような費用がかかるのか
出版の方法は様々ですが、一定の知名度のある有名人などでない限りは商業出版は難しく、ほとんどの場合で出版では費用を負担する必要があります。
書籍の形式としては、単行本から新書や文庫、絵本、ビジュアルブック、写真集、雑誌やムックなど、様々な形式(判型)が考えられます。
書籍のサイズがなんであれ、自費出版をするには次のようなコストがかかると知っておきましょう。
- ・企画費用
- ・執筆費用(ライターに依頼する場合)
- ・編集費用
- ・撮影費用(カメラマンに依頼する場合)
- ・DTPやデザイン費用
- ・校正・校閲費用
- ・印刷費用
- ・書籍完成後のプロモーション費用(書店営業、取次配本、有料プロモーションなど)
自費出版をサービスとして提供する出版社は多く存在しますが、これらをきちんと実行して書籍という形にしようとすると、数百万〜1000万円程度はかかるということです。
ただ書籍の形にできれば良いのか、プロの編集者やライターの力も借りてクオリティの高い書籍にしたいのか、情報発信や広告宣伝のためにしっかりとプロモーションを行いたいのか、などの目的意識をしっかりと定めましょう。
ちなみに、簡易的に本の形に整えたいだけであれば、オンデマンド印刷などで格安で対応できる業者も存在します。
自費出版の費用対効果とは
自費出版の費用対効果は、まずはどのような目的で出版するのか次第で変わってきます。
たとえば、編集者の手を加えて「クオリティの高い読み物として仕上げたい」という目的であれば、100万〜200万円ほどで対応してくれる出版社が選択肢になってくるでしょう。
あとは、具体的に費用対効果という面を重視する場合は、企業としてのブランディングやプロモーションの一環として取り組むという目的になるといえます。
その場合、自費出版および企業出版という手段がありますが、相談先の出版社や編集者にどのような実績があるかが選定のポイントになります。
とくに書籍出版という特性上、出版社の持つ書店への営業力やプロモーションの選択肢の幅広さはもちろん大切ですが、編集者自身の実績の多さこそが重要になってきます。
なぜならば、売れる書籍や読者からの反響のある書籍を担当してきた編集者こそ、出版を検討する上での一番の差別化ポイントとなるからです。
担当編集者および出版社が、自社の業種や目的、ターゲットと近しい担当事例を持っているかは、費用対効果を図る重要な要素となるでしょう。具体的な出版事例は後述します。
なお、個人での自費出版を検討する際に、「印税で稼ぎたい」という思いを持って取り組む人は注意してください。
もちろん自費出版をきっかけに、自身の小説がドラマ化されるくらい売れて印税で儲かったような事例はありますが、それはごく一部。宝くじに当たるような確率の話なので、自費出版の営業マンの夢物語は鵜呑みしないようにしましょう。
自費出版と企業出版の違い
自費出版と企業出版の違いについて紹介します。いずれも費用を負担してする出版ということに変わりはありませんが、その目的や出版後の展開などが大きく異なります。
①自費出版について
自費出版は、主に個人が執筆した原稿を、費用を自己負担して書籍化する方法です。
もちろん企業が原稿を用意して、同様に自費出版するケースはありますが、いわゆる自費出版は書店流通が大前提ではなく、書籍化することが目的になります。
そのため、出版社の存在意義としては、編集者のタイトル提案や編集、校正など書籍の体裁を整えることにあります。
著者が自己負担する費用としては、100万〜500万円程度と金額の幅が広く、流通やプロモーションの具合や出版社のネームバリューや役務内容によって変わってきます。安価に出版できる自費出版では、オンデマンド印刷や電子書籍化のみを手伝うという会社が存在します。
②企業出版について
企業出版は、主に企業や経営者がブランディングや広告宣伝の目的で、手段として出版を行う方法です。
企業経営者は多忙な人が多いので、企業出版は原稿をライターがインタビューして執筆することが大半です。
また、目的がブランディングやプロモーションであることが多いため、書店への流通やプロモーションも戦略的に行うことになります。
企業出版は、自費出版と同様に企業および個人が費用を自己負担して出版する手法ではありますが、企画提案から執筆、校正、カバー(表紙)等のデザイン、書店への流通がフルパッケージになっているサービスです。
著者が自己負担する費用としては、400万〜1000万円超と自費出版よりは高額になります。ただし、前述した通り、書籍を作ることが目的ではなく、出版による広告宣伝が目的となるので書店やAmazonなどのネット書店にきちんと流通されるメリットが考えられます。
▼企業が自費出版を検討する場合、「企業の自費出版を考えるーー効果的な戦略の組み立て方と出版社の選び方」でも解説しているので、合わせてご覧ください。
企業出版の選択肢について
自費出版を検討している人は、自身で書きたいテーマが明確にある人だと思われます。
一方、漠然とした書きたいテーマや読者ターゲットはあれど、自己ブランディングやPRを目的とする人の場合は、企業出版という選択肢もあるでしょう。
個人とはいえ、経営コンサルティング業やファイナンシャルプランナー、開業医、税理士などの場合は、出版によるビジネスメリットも大きいため、きちんと書店などで露出される企業出版も検討することをおすすめします。
企業出版のメリットとデメリット
では、次に企業出版のメリットとデメリットを解説しましょう。
まず、企業出版のメリットとして考えられるのは下記です。
- ①書籍の読者からの確度の高い問い合わせ獲得
- ②市場に流通する書籍を出版したという実績と信頼性の獲得
- ③書籍という形に残ることで長期的に活用が可能なツールとなる
- ④書籍がきっかけとなる採用ブランディング効果の発揮
①については、企業および経営者が書籍を通して発信した内容を、ターゲット読者が目を通すことで、著者の考えに共感した状態で問い合わせをしてくれるケースがあります。
その場合、相見積もりを取ることは少なく、基本的にはその著者の会社に仕事を依頼すること前提で問い合わせをしてくれるのです。
②については、自分で手配りするパンフレットやチラシと異なり、第三者である出版社や取次の審査を経て市場である書店に流通しているため、信頼感を得ることができます。
ただ、集客や商品販促のためだけで広告施策をやるのであれば、WEBの広告など気軽に取り組めるものがあります。そのため、単なる集客以上の効果、ブランディングを求めるのであれば、企業出版はもってこいの手段でしょう。
③については、書籍自体が出版社に編集・校正してもらったクオリティの高いコンテンツになるので、それを長期的に活用できるのは大きなメリットでしょう。
出版社との契約によるので確認は必要ですが、基本的には著作権が著者(企業)側に帰属するため、たとえば書籍の中のコンテンツをホームページのコラムとして二次利用できるなど、幅広い使い道があるのです。SEO対策にもなりうるため、活用できるコンテンツが手元にあることは大きな武器となり得ます。
④については、書籍は採用面で大きな力を発揮するということです。書籍を読んで、「著者の考えに共感した」とか「この著者のもとで働きたい」という意欲を高めることができます。
なかでも、採用応募者の増加といった効果以上に、著者の考えを知った上で入社してくるため、離職率低下や内定辞退率の低下にも効果的です。このように企業と就活生との採用マッチングの機能を果たしてくれるのはメリットでしょう。
次に、企業出版のデメリットとして考えられるのは下記の通りです。
- ①広告宣伝費としては高額な負担が必要になる
- ②制作期間が6ヶ月〜1年と時間がかかりがち
- ③情報の更新/アップデートが困難
- ④出版社選びが難しい
①については、400万〜1000万円の費用がかかるため、その他の広告施策と比較すると高額になります。出版社によりますが、企業出版は書店流通が前提のため書店には一定数並ぶ一方で、プロモーションは別費用となるケースが多いです。
大々的なプロモーションを打ちたい場合は、前述の費用からさらに上乗せする予算が必要になるかもしれないということは知っておきましょう。
②については、企画から執筆、流通まで全て出版社がサポートしてくれるため、どうしても時間がかかります。企業の事業戦略上、急ぐ必要がある場合は制作期間について出版社に相談してみると良いでしょう。
③については、一度紙に印刷する以上、企業出版は情報のアップデートが難しくなります。ホームページなど、ウェブ上の情報であればすぐに更新は可能ですが、印刷物である以上書籍は同じようにはいきません。
ただし、再度新刊としてプロモーションが可能になる「改訂版」という選択肢があります。一度出版した書籍の内容を一部改訂して出版し直す方法で、元原稿があるため、最初よりも安価にプロモーションを組むことができます。
④については、企業出版の出版社選びの難しさにあります。企業出版はターゲットにとって魅力的な企画になっているかどうか、書店などできちんと流通、プロモーションされるかどうかなど、様々な成功要因が重なって著者にメリットをもたらします。
そのため、コストの高い大手出版社だからといって必ずしも結果が出るとは限らないのです。後述しますが、この出版社選びこそが企業出版で成功するための最大のポイントとなります。
自費出版と企業出版の比較
自費出版と企業出版の違いについては前述しましたが、企業がプロモーションを目的とするならば企業出版一択となるでしょう。
それぞれを比較してみると、自費出版は基本的に書店には並ばないと言って差し支えないでしょう。既存の顧客や自身で配布する余力のある著者ならば、自費出版で安価に出版する方法は良いかもしれませんが、認知度を上げるなどのプロモーションに期待するならば自費出版はおすすめできません。
企業出版は、主に大手出版社を中心に流通力や書店営業力を兼ね備えている出版社がサービスを提供しています。そのため、よほどでない限りは書店の店頭に並べられます。
ただし、新刊が1ヶ月に約6000タイトル以上発売されている業界のため、「必ず書籍が並びます」とはいくら実績のある大手出版社でも断言はできません。
そのため、事前にどのように流通やプロモーションを仕掛けるのかを、出版社に確認することをおすすめします。
自費出版と企業出版を比較検討する際のポイント
自費出版を検討するほど、充実したコンテンツをお持ちであれば、出版の選択肢は広がるでしょう。
そこで、次に自費出版と企業出版それぞれを比較検討する際のポイントについて解説をしていきます。
自費出版と企業出版の目的とニーズの整理
自費出版の目的は、著者がこれまで培った経験や物語を形にすることにあります。小説などの表現物はもちろんですが、自叙伝や回顧録といった自身を振り返る手法としては自費出版は向いていると言えます。
一方、企業出版は事業戦略における転換点などで、自社ブランディングのため、宣伝・PRのために出版という手法を活用するにすぎません。
あらゆる広告・宣伝手段がある中で、企業出版が向いている企業や経営者は次のような人たちです。
- ・いくつかの広告手段を試したが効果が感じられない
- ・情報発信の手段に悩みがある
- ・ニッチなサービス(もしくはターゲット)のためマス広告が適さない
- ・商圏を拡大したい、もしくはエリアに特化したビジネスに徹している
- ・過去に自費出版で満足いく書籍が作れなかった
- ・税理士や経営コンサルティングなど、お客様との信頼関係構築がカギとなる事業
- ・不動産投資やサプリメントなど、高額商材を販促したい事業者
- ・一言で説明が難しい商材・サービスを扱っていて展示会などに積極出展している企業
上記に該当する企業や経営者は企業出版も選択肢の一つとしておすすめです。
自費出版と企業出版の費用の違い
自費出版と企業出版の費用の違いについて解説します。
自費出版はトータルで100万〜500万円ほどではありますが、主に編集制作費、デザイン費、紙の印刷にかかる費用、執筆を依頼する場合はライター費がかかります。
自費出版は書籍として形にすることが目的なので、書籍の判型や紙の材質など細かいハードの部分で予算が変わってきます。
一方、企業出版はあくまで目的はブランディングや広告宣伝のためなので、書籍の判型や紙の材質はそこまで細かく著者側で指定することはないでしょう。
どちらかというと、ターゲットに届けるためにはどのような企画にするべきか、出版後はどのようにプロモーションするべきかということを詰めていくイメージです。
企業出版はトータルで400万〜1000万円超と説明しましたが、自費出版にかかる各種コストのほか、書店営業費やプロモーションおよび広告宣伝費など、ハード面とソフト面どちらにも一定の人件費がかかってきます。
そのため、企業出版を検討する際には、書籍を作るのにいくらかかるかというハード面のほか、どのようなプロモーションを仕掛けるかまで考えて予算提案してくれる出版社と組むのが良いでしょう。

自費出版と企業出版の効果の違い
自費出版と企業出版にはどのような効果の違いがもたらされるのでしょうか。
まず、自費出版については、基本的にプロモーションを実施しないことが前提になるため、新規集客などの効果はほとんどないと言えます。
あくまで自分で知り合いや既存顧客に配布することで、「良い本を作りましたね」などの定性的な評価をもらうことが精一杯でしょう。
一方、企業出版は、目的やターゲットを定めて、プロモーションを仕掛けていく手法のため、様々な外的要因による効果がもたらされます。当社が手がけた企業出版の具体的な事例を紹介しましょう。
企業出版事例①:読者からの反響により出版から2ヶ月で6億円の売上を達成
【出版前顧客状況】
- ・新規顧客の集客はほとんどが紹介のみで、ウェブによる広告施策も効果なし。
- ・紹介をいただいても関係性構築のために受注までかなりの時間を要していた。
【出版後の効果】
不動産投資の販売会社で、医師をターゲットにした書籍を全国発売。主に一都三県や大阪府、福岡県の都市圏を中心に、類書の販売実績の好調な書店へ営業活動して流通・配本を行いました。
出版後、複数の読者からの問い合わせや紹介を獲得し、発売1ヶ月で問い合わせた読者が投資用区分10個購入し1億円の売上に。大手病院の勤務医からの反響もあり、発売2ヶ月で合計6億円以上の売上に繋がりました。
これまで実施していたウェブの広告を全て書籍の広告費用に転換し、以降も定期的に書籍読者からの新規の反響を得る仕組みを構築。
売上の向上はもちろん、すでに不動産投資を検討している読者からの反響が中心ということもあり、成約までの営業効率の向上にも書籍出版が大きく寄与しています。
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企業出版事例②:出版記念のイベントを開催し企業の認知度が向上
【出版前顧客状況】
- ・自社の製造・販売する商材の持つ魅力の啓蒙方法について課題があった。
- ・同業他社との差別化の方法も既存の手段では頭打ち状態。
【出版後の効果】
わさびの製造・販売をする会社で、料理関心層の30代〜40代の女性を中心のターゲットに据え、わさびの効能や歴史、レシピを収録した書籍を出版。
著者の在籍企業の本社がある名古屋の書店にて、出版記念のトークイベントを実施しました。書籍の企画にもあったレシピを提供してくれた料理研究家とのコラボレーションを実現し、当日はイベント会場の座席が満員御礼。イベント当日だけで書籍が50冊以上売り上げるなどの盛り上がりを見せました。
くわえて、その後書籍の出版をきっかけに、平均聴取人数20万人を誇る全国放送のラジオ番組から著者へ2週連続の出演オファーが舞い込みました。
書籍の内容について好評なレビューも相次ぎ、書籍のダイジェスト版となる小冊子を制作。海外向けの英語翻訳版も制作し、海外でのイベントでも書籍をフル活用していただいています。
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自費出版と企業出版の出版社選びのポイント
最後に、肝心な自費出版と企業出版の出版社選びのポイントについて解説しましょう。
自費出版の出版社の選び方
自費出版の版元を選ぶ際には、まずホームページをしっかりチェックすることです。
出版社としての実績や歴史を確認し、まず信頼できる会社なのかどうかを判断しましょう。
また、自費出版の場合は企業出版と異なり、部数や紙の選び方一つで見積書の金額が変わってきます。
とくに信頼できる出版社なのかどうか以上に、営業の担当者が信頼できるかどうかは重要なポイントです。必要以上に契約を急かしてきたり、見積書の内容を詳細に説明しなかったりする場合は要注意です。
自費出版の場合は、最初に提示された見積書のほかに追加費用が発生する可能性をきちんと確認することをおすすめします。
企業出版の出版社の選び方
企業出版の出版社の選び方としては、目的やターゲットに届くようなプロモーションをしてくれるかどうかが重要になります。
企業出版は名の知れた大手出版社であることが中心のため、信頼という意味では安心感がある一方で、注意したいのは担当してくれる編集者が千差万別な点です。
会社としての実績が豊富なことは大切ですが、どんな編集者が責任を持って制作してくれるのかは確認した方が良いでしょう。大手であれば、社員の入れ替わりなども激しい分、新人編集者が担当になることもあります。
企業出版は企画、プロモーションの両方が企業側のニーズを満たしていることが重要です。そのため、編集担当者の実績や得意分野、出版後の書店営業のやり方やプロモーション施策の方法について、しっかりと確認をしてから契約するのが良いでしょう。
さらに、企業出版の実績豊富な出版社や編集者であれば、腕のあるライターやデザイナーとの繋がりが深いです。書籍の出来栄えに直接関わる部分なので、気になる人はどんなライターやデザイナーがプロジェクトに加わってくれるかを確認するのも一案です。
まとめ
以上、自費出版の費用や特徴、さらには出版社の選び方まで詳しく解説しました。
自費出版でも企業出版でも、自分のニーズを満たしてくれる出版社なのかどうかはとても重要です。
費用が安いに越したことはありませんが、「安かろう悪かろう」に当たらないためには契約前に出版社の営業担当者と綿密にやり取りをし、懸念を払拭しておくことです。
自費出版や企業出版を検討する個人や企業の人たちにとって、有益な情報提供となっていましたら幸いです。
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参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイ取締役マーケティング統括)

福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経営法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を歴任し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。2023年9月取締役就任。グループの出版社、株式会社パノラボの流通管理も担う。
10周年、50周年、100周年……企業が存続するうえで一つの節目となる周年記念。
このような周年記念にはどのようなイベントや施策を実行すべきでしょうか。
本記事では、周年の意味や方法、さらに出版を活用した周年記念の手法、成功事例などを解説します。
目次【本記事の内容】

周年とは
周年とは、企業が創業や設立のタイミングを記念して、10周年や50周年といった節目でお祝いやイベントを実施することです。
企業の創業50周年記念といった事業立ち上げからの節目を祝うこともあれば、ブランドの立ち上げ10周年などを祝うケースもあります。
会社のほか、店舗や病院施設、福祉施設、学校など、業種・業態に関わらず、節目を祝うイベントとして催されます。
このような節目のタイミングで、周年を祝う社内外の関係者を招くイベントや記念品の制作などを行うのが通例です。
周年の意味とは
周年記念を祝う意味は、お世話になっている従業員や取引先などに感謝の気持ちを表すことや、自社のプロモーションの役割もあります。
社員の家族をイベントに招いて労うこともあれば、会社を定年退職した元役員や社員を招待することもあるでしょう。
ただ、周年記念は単なる社内向けの祝い事ではなく、取引先との関係性を保つうえで重要な事業戦略の一つでもあります。
周年という節目をきっかけとして、社内外に向けて自社への愛着を高めてもらったり、プロモーションを行ったりするのが目的として考えられます。
企業における周年の意義
企業における周年の意義は、前述したように従業員や取引先との関係性を深めることがあります。
自社の企業理念やこれまで歩んできた歴史を振り返ることで、今後の目標や会社としての方向性を、周りと認識合わせしていくことが重要です。
周年記念のイベントを実施することで、社員同士の交流が深まり、一体感やモチベーション向上につながることが期待できるでしょう。
取引先に対しては、自社をより深く知ってもらい、今後も良好な付き合いを継続していくために、限定商品やキャンペーンの実施など周年ならではの催しを実施するのが効果的です。
周年記念の方法
次に、周年記念の方法をご紹介しましょう。ひと言「周年」といっても様々なやり方があるのです。
周年記念のイベント開催
周年記念の方法として代表的なものはイベントの開催でしょう。
従業員やその家族、取引先など、感謝の意を表明した自社に関係する多くの人たちを招くパーティーが節目で開催されます。
このような周年記念の式典やパーティーは、普段過ごしている会社とは異なる空間で実施することが多いです。
たとえば、ホテルなどの豪華な空間を貸し切って開催するなどが考えられます。
自社の周年記念式典およびパーティーの模様を動画に撮影して、後日DVDとして配布したり、広報の一環でプレスリリースを配信したりする方法も良いでしょう。
周年割引や特典の提供
周年をきっかけにした、ユーザーに向けた割引や特典の提供も一つの手段です。
周年記念限定の割引クーポンを発行して、ユーザーにはSNSなどで拡散してもらえる効果が期待できます。「周年」というキーワードを皮切りに話題性を醸成することで、多くのユーザーと新規でつながるきっかけとなり得ます。
周年記念で、来店記念特典としてノベルティを配布する方法も考えられます。ノベルティは、Tシャツやマグカップ、ボールペンなど実用的なアイテムにするのがおすすめです。
周年限定商品の販売
周年記念で限定商品を制作して販売するのもよくある方法の一つです。
商品販売を主たる事業とする会社であれば、限定商品をWEBサイトや広告などで打ち出し、消費者にインパクトを与えることができるでしょう。抱き合わせて購入者プレゼントなどを用意するのもおすすめです。
また、レストランといった飲食事業であれば、周年記念の限定メニューを提供するのも一案です。普段は提供されない特別メニューだからこそ、特にリピーターには希少性から来店のきっかけとしてもらえるでしょう。
感謝を込めたメッセージの発信
周年記念は、様々な人たちに感謝の気持ちを表明する貴重な機会です。
そこで、日頃の感謝をメッセージカードなどに込めて、社員や取引先の人たちに贈ってみましょう。
周年ならではの貴重なギフトや記念品を用意するのもおすすめです。
オリジナルコンテンツの企画と制作
周年にちなんだオリジナルコンテンツの企画と制作はアイデア力が試されます。
たとえば、会社の商品と人気キャラクターのコラボレーションとして、周年記念の企画でオリジナル商品を制作して限定販売する手も考えられます。
会社の100周年といった大きな節目を記念したWEBサイトを制作したり、周年記念出版をしたり、周年記念のオリジナルソングを制作したりと、アイデアは無限大です。
5年や10年単位でしか訪れない貴重な機会ですので、対外的なプロモーションにつながるようなコンテンツを作ってみると良いでしょう。

周年記念の出版とは
周年記念の一環としてよく取り組まれるのが周年記念の出版ならびに社史制作です。
10周年、50周年、100周年など、節目の年を機に周年史の制作を決断する企業は少なくありません。
出版を活用した周年記念のメリット
周年記念出版のメリットとしては主に次の4つが考えられます。
- ・社員に対するモチベーションアップ、ロイヤリティ向上
- ・取引先、パートナー企業への自社理解の促進
- ・求職者に対して自社の理念やメッセージの訴求
- ・潜在顧客に対して競合他社との違いを訴求し差別化を実現
このように社内外に向けたプロモーションやブランディングのために周年出版をすることは、あらゆるメリットをもたらしてくれるのです。
出版物を通じたPR効果
周年記念の出版を通じたPR効果について解説しましょう。
周年史は、社内向けに配布するインナーツールと、社内外どちらにも訴求が可能になる流通書籍のタイプがあります。
この流通書籍として周年史を制作すると、一般の書店へ流通・配本されるため、一般読者への認知促進の効果が期待できます。
なかでもリクルーティングの効果は絶大です。一般市場に流通した書籍を出版している企業という箔がつくことで、求職者にとっては親御さんへの説得材料になります。
たとえば、競合他社に大手がひしめく業界で、書籍を手に取ったことをきっかけに親御さんから子どもに対して、「この企業を受けなさい」と中堅の企業を推薦した事例もあるほどです。
もちろん商品PRとしても効果的です。詳細は後ほどの事例紹介で解説しますが、会社の歴史を紐解く周年史を作ろうとして、結果的に自社製品にスポットを当てた出版をしたことで、全国各地の企業から「商品を仕入れたい」という声が殺到しました。
それだけでなく、出版をきっかけにテレビのディレクターの目にとまり、全国放送のバラエティ番組に著者の出演が決定。全国の視聴者に向けて自社製品のPRをすることができました。
このように周年をきっかけに、市場に流通する書籍を制作することで、商品販促やリクルーティングと様々なPR効果が期待できるのが周年記念出版です。
周年記念出版の具体的な手法
周年記念出版の具体的な手法としては、「企業出版」が挙げられます。
企業出版とは、企業が自社の情報や専門知識を書籍の形式で出版することです。出版社によってカスタム出版とも呼ばれます。
この企業出版の方法としては、いくつかの大手出版社がサービスとして提供しています。主な出版社としては次のとおりです。
- ・幻冬舎メディアコンサルティング
- ・ダイヤモンド社
- ・日経BP社
- ・東洋経済新報社
- ・クロスメディア・マーケティング
いずれも企業のブランディングのための出版を支援する会社として実績は十分です。ただし、大手出版社となればかかるコストは安くはありません。
ちなみに、当社のグループ出版社であるパノラボも企業出版サービスを提供しているので、企業出版や周年史出版に関心のある人は一度お問い合わせください(パノラボサービスサイトはこちら)。
▼企業出版については、「企業出版の教科書|メリットから費用、成功のポイントまでまとめて解説」でも解説しているので、こちらも合わせてお読みください。
出版を通じたブランドイメージの向上
出版を行うと、企業のブランドイメージが向上する効果も期待できます。
では、なぜ出版がブランドイメージの向上に寄与するのでしょうか。
まず、ブランディングとは、顧客に一貫したイメージを持ってもらうことにあります。書籍を出版すると、ある分野での第一人者として認識され、信頼性を獲得することが可能になるのです。
昨今は、SNSやホームページなどで、誰でも簡単に情報発信ができるようになりました。このように情報が氾濫しているからこそ、ユーザーはどの情報を信じて良いのか迷ってしまうのです。
「ブランド力が高まる」「企業ブランディングの実現」とはこのように特定分野や業界での第一人者としてのポジショニングを行い、圧倒的な信頼感を勝ち得ることと言えるでしょう。
周年記念の効果とは
ここまでに紹介した通り、周年記念の出版では期待を超える効果がもたらされます。次に周年記念の効果に着目して、それぞれ見ていきましょう。
顧客ロイヤルティ向上への影響
周年記念の施策で重要な要素として考えられるのは、これまでの愛顧の気持ちをイベントやキャンペーンで表すことでしょう。
日頃の感謝を示すイベントやキャンペーンを実施することで、顧客のロイヤリティ向上が期待できます。
たとえば、宝酒造の人気いも焼酎ブランド「一刻者」の20周年キャンペーンとして実施されたのが、「マストバイキャンペーン」です。
「頑固にこだわって20年」というキャッチフレーズを打ち出し、商品の購入者のうち抽選で500名に「一刻者」オリジナル陶器をプレゼントしました。
信頼の強固なロングセラー商品のファンに対して、オリジナル陶器をプレゼントすることでブランドのより一層のファン化が進んだ事例といえます。
競合他社との差別化手法
周年事業は、その貴重な機会をきっかけに競合他社との差別化を図る手段としても効果的です。
周年を記念した特別な企業ロゴを作れば、他社とは異なる印象をユーザーに印象付けることができます。
前述したキャンペーンやイベントなども差別化にはもってこいの方法ですが、ほか自社ならではの趣向を凝らしたノベルティを作成して配布するなどもおすすめの方法です。
このように競合他社では真似できない特別な手段を用いることで、現代ではSNSでユーザーが拡散してくれるPR効果も期待できるのです。
社内のモチベーション向上に与える影響
周年をきっかけとしたイベントでは、社内の従業員らのモチベーション向上にも寄与します。
考えられる方法としては、普段はなかなか行くことのできないパーティー会場やレストランで周年記念のイベントを実施したり、社員旅行をしたりすることです。
なかには珍しい方法として、会社の特別なプロジェクトとして書籍企画のプロジェクトチームを立ち上げて、毎年恒例のイベントになったような例もあります。
これは某大手IT企業が、ITをテーマにした小説を社員参加型で企画したところ、「あのプロジェクトに自分も参加したい」という声が社内から上がり、モチベーションアップやロイヤリティの向上に寄与しました。
自分が企画に携わった書籍が書店に並んでいるともなれば、モチベーションが上がるに違いありません。このプロジェクトチームがテレビからの取材を受けるなどして、対外的なPRにも繋がったといいます。

周年記念の計画立案の方法
では、次に周年記念をどのような計画で進めていけば良いのでしょうか。具体的に進め方を解説していきましょう。
周年のゴール設定と目標の明確化
周年記念のイベントをするにせよ、出版をするにせよ、ゴールの設定は最重要と言えます。
周年事業を実施することで、「何を目指すのか」「どう見せたいのか」「どんなことを伝えたいのか」「何を作り出したいのか」といった目的をまず設定しましょう。
さらに、ターゲットの設定も重要です。社員やその家族がメインのターゲットなのか、もしくは社外の取引先や潜在顧客、採用応募者がターゲットとなりうるのかーー会社の予算を使って施策を実施する以上は、一つの経営戦略として施策実施後にどのようになっているのかの理想を思い描くと良いでしょう。
予算とリソースの確保
周年事業は予算や多くの人の手が必要です。
ここまでに紹介したように周年事業の手法には様々あります。どの施策にいくらの予算が必要なのか、そもそも周年事業全体でどのくらいの予算が確保できるのかを整理しなければなりません。
さらに、周年事業は大掛かりになることがあり、なかなか片手間で社員にやらせるのは至難の業です。
そのため、周年事業に取り組むと決めたら、周年事業のプロジェクトチームを立ち上げ、プロジェクトの成功に向けてのリソース確保することが重要です。
たとえば、周年出版のプロジェクトの場合は、企業出版の実績豊富な会社に依頼すれば、窓口に立つ担当者を1人でも配置すれば十分に回すことができるでしょう。
タイムラインの設定とスケジュール管理
周年事業は、創立記念日や設立記念日といった周年の節目となる日に設定してプロジェクトをスタートするケースがほとんどです。
そのため、まずは周年事業のゴールから逆算してスケジュール設定することが必要です。同時並行で様々なプロジェクトを進行する場合は、2〜3年といった余裕あるスケジューリングをすることがおすすめです。
周年出版の場合は1年半〜2年ほどかけて、企画から執筆、出版、プロモーション施策の実行までの工程を組むことが多いです。
広報・宣伝戦略の策定
周年イベントを実施するには、広報や宣伝活動の戦略立案をしなければなりません。
周年事業をやる以上は知ってもらって、メディアにも取り上げられるまたとない機会だからです。
周年記念式典といったイベント実施の時期を確定させ、その期日に向けてプレスリリースや広告宣伝の準備を行いましょう。
イベントの規模にもよりますが、具体的な企画やアイデアを具現化するまでに半年程度は要すると考えられます。そのため、広報や宣伝のスケジュールは全体で共有しながら丁寧に進めることをおすすめします。
周年記念の成功事例
次に、周年記念の出版で成功した事例をいくつか紹介しましょう。
企業の周年記念の出版事例①/100周年記念出版をきっかけに商品が爆売れ
企業の100周年をきっかけに書籍出版した事例としては『よみがえる飛騨の匠』があります。会社は岐阜県高山市に所在する老舗家具メーカーの飛騨産業株式会社。
著者は2000年に代表取締役社長に就任した岡田贊三氏でしたが、出版によって廃業寸前の赤字企業をV字回復させた改革の手法について解説をしました。
この書籍がテレビ東京『カンブリア宮殿』のスタッフの目にとまり、岡田氏は同番組への出演オファーが舞い込みます。
番組の出演をきっかけに、会社のホームページへのアクセスが殺到してサーバーがダウンするほどに。結果的に、番組出演後の1ヶ月だけで前年の売上を超えたといいます。
この書籍については、100周年の前年に出版したこともあり、同社の周年事業は大きな盛り上がりを見せました。
企業の周年記念の出版事例②/70周年記念の出版が販路拡大に大きく貢献
企業の70周年をきっかけに書籍出版した事例としては『その「サラダ油」をやめれば健康寿命はのびる』があります。会社は愛知県一宮市に本社を構える食品製造会社のオリザ油化株式会社。
当初は企業の70周年を振り返る、いわゆる社史の制作を検討していましたが、自社製品の「こめ油(米油)」の有用性を訴求するテーマに方針転換しました。
市場に一般的に流通しているサラダ油の過剰摂取に警鐘を鳴らし、書籍の中でその解決策として「こめ油」をとることの有用性を説きました。
このテーマが反響を呼び、サラダ油などの食品販売を行う全国各地の企業から「商品を仕入れたい」と新規取引の開始のきっかけに。一般書店に流通した甲斐もあり、北海道から鹿児島県まで幅広いエリアからの問い合わせを獲得するに至りました。
テレビ東京『主治医が見つかる診療所』へも出演が決定するなど、メディアでのPRにも一役買ったのがこの周年史施策だったのです。
企業の周年記念の出版事例③/30周年記念出版が中途採用に大きな効果を発揮
企業の30周年の総括として書籍出版した事例として『35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画』があります。会社はソニー生命株式会社。
ソニー株式会社とザ・プルデンシャル・インシュアランス・ カンパニー・オブ・アメリカとの合弁出資による「ソニー・プルーデンシャル生命保険株式会社」として日本進出した同社でしたが、ライフプランニングの重要性をもっと知ってもらう必要がありました。
そこで、東京都における義務教育初の民間人校長として杉並区立和田中学校の校長を務め、当時大阪府教育委員会特別顧問を担っていた藤原和博氏に白羽の矢を立て、書籍を執筆する企画がスタート。
東京都、大阪府、愛知県といった大都市圏の大型書店を中心に書店プロモーションを実施し、書籍は7万部超えのベストセラーになりました。
同社の若手社員やマネージャーに、自社の理念やビジョンを浸透させたことのほか、中途採用の新入社員のほとんどが書籍を読んでおり、ライフプランナーを憧れの職業の一つへと昇華させることに成功しました。
ただの会社案内では伝えることが難しかった自社のメッセージを、書籍という媒体を通して伝えることができ、とても効果的な周年プロジェクトとなったといいます。
まとめ
このように周年事業といっても、様々な手段があり、時間も予算も人員もたくさん確保しなければなりません。
しかし、企業としては社内外に向けて自社をアピールするまたとない機会。目的とターゲットを決定したうえで、綿密な準備をして告知を実践することが重要です。
本記事で紹介した成功事例などを参考に、自社であればどのような施策が合致しているかを考えてみましょう。
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執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイ取締役マーケティング統括)

福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経営法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を歴任し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。2023年9月取締役就任。グループの出版社、株式会社パノラボの流通管理も担う。
出版したいと考えた時に選択肢になるのが自費出版。
ただし、自費出版にはトラブルがつきものです。
本記事では、自費出版を実施する際に注意すべきポイントや企業や個人が心配するトラブル、リスクについて解説しています。
PRやブランディング、自己表現などを目的とした出版社選びの参考になる記事コンテンツです。
目次【本記事の内容】
自費出版におけるトラブルとは

自費出版は、個人でいえば自己を表現するための手段であり、企業にとってはブランディングやPRの手段の意味合いがあります。
しかし、そんな自費出版にはトラブルがつきものです。具体的なトラブルの事例を解説しましょう。
制作中のトラブル
自費出版で注意したいのは制作中に発生するトラブルです。
編集者との相性が合う合わないといった部分はもちろんありますが、校正や校閲でのトラブルも考えられます。
たとえば、事実無根な内容を記載したまま出版してしまったり、人名やプロフィールなどの重大なミスがあったりなどです。
書籍は200ページ前後で、文字数に直すと7万字前後の量があります。全て著者や編集者、校正士ら人の目でしか確認できないため、ミスは出る時には出てしまいます。取り返しのつかないミスに繋がらないように、重要なポイントは何度も確認するようにしましょう。
また、執筆をライターに代行してもらうケースも珍しくありません。企業出版という手段であれば、ライターがインタビューして執筆することは一般的ですが、自費出版の場合は初回の取材からいきなり初対面のライターがやってくるというケースもあるようです。
結果的に自分の意思や意向に反する原稿が上がってくることがあるので、執筆を代行してもらう場合は企画段階からきちんと編集者がサポートしてくれるのかは事前に確認をした方が良いでしょう。
印刷や製本の品質トラブル
自費出版は、執筆した本を印刷して製本するまでがゴールです。
ただし、この印刷工程でトラブルが発生しやすいので気をつけましょう。
たとえば、印刷時のかすれや色むら、落丁などです。インターネットが普及している昨今なので、ウェブコラムなどは修正があればすぐに対応できますが、紙媒体は一度印刷してしまえば取り返しがつきません。
もちろん、失敗した場合に刷り直しをしようとすると、追加の費用が発生します。そのため、ゲラ(誤字脱字チェック用の校正刷り)を試し刷りする段階で、しっかりとチェックすることをおすすめします。
流通や販売のトラブル
自費出版では、流通や販売で著者と出版社の「言った言わない」のトラブルが発生しがちです。
その主な要因が、出版業界ならではの仕組みや慣習の存在。一般的には書籍が完成したら、当然のように書店に並ぶものだと考えている人もいます。
しかし、本を書店に流通して陳列させるのはそう簡単なことではありません。
書籍の流通の仕組みはかなり特殊で、出版社と書店の間には取次という問屋が存在します。その取次が出版社の実績などを踏まえて、配本を組み立てているのが通例です。
一般的に自費出版と呼ばれる手段の場合は、部数が限られていることや版元の営業力がそれほど強くないことが要因で、結果的に書店に全然並んでいないことは珍しくありません。
そのため、書籍を出版することになった出版社には流通システムについて、きちんと確認を行いましょう。具体的には次の項目を確認すると良いでしょう。
配本可能な書店数(目安)
配本可能な書店の規模感
書店でどのように配本されるか
どのように書店営業を実行するのか
書店プロモーションの実施可否
ちなみに、SNSやメディア露出などで影響力のある著者でない限りは、初めての出版できちんと書店に並ぶのは至難の業です。書店で販売していきたい意欲をお持ちであれば、どの程度のプロモーションを実施するのかは、出版社に事前確認すると良いでしょう。
販促活動の不備や効果不足
自費出版でよく聞かれる不満として、「思ったほど販促活動をしてもらえなかった」という声があります。
出版社にもよりますが、書店に並ぶというメリットをバリューにして提案するところが大半です。しかし、注意してほしいのは最終的に書籍を並べるかどうかの判断をするのは書店員である点です。これはネームバリューのある大手出版社であっても同様です。
出版の流通におけるトラブルの多くは認識の相違から生まれます。
書店への販促活動や広告施策、プロモーション活動などを、契約内でどれほど実施してもらえるのかは必ず確認しましょう。
著作権や権利のトラブル
自費出版において重要なのは権利関係の確認です。
大きく3つの権利があり、それぞれ著作権、出版権、所有権です。
書籍を執筆したのが著者である以上、著作権が著者に帰属するのは当然でしょう。一方で、一般的に聞き馴染みがないのが出版権です。
出版権とは、著者側が出版社に対して著作物を販売して良いという許可を与えること。著作権が著者にある以上、著作物の二次利用については著者である程度自由に活用できるのですが、書籍の「文庫化」や「映画化」の話が来たら著者だけで判断することができません。
なぜならば、文庫化や映画化することは書籍の売り上げに直結することだからです。出版社は出版権を保有している以上、そのような話が舞い込んできた時にどのように対処するかを話し合って決める必要があります。
細かい取り決めは出版社との契約内容で変わってくるので、事前に確認をしておきましょう。
所有権については、著作物の実物がどちらの手元にあるかで変わってきますが、著者に納品された書籍は著者に、流通・販売する書籍は出版社に所有権があります。
自費出版を検討する際に注意すべきポイント
次に、具体的に自費出版を検討する際に、どのような点に注意したらよいかを解説します。
出版社の信頼性と実績
書籍を出版する場合、いかに出版社が信頼できるか、実績があるかを確認することは重要です。
現在、出版社は全部で2907社ある(日販による「出版物販売額の実態」最新版(2021年版)より)と言われており、正確な数字は不明ですが自費出版のサービスを提供している出版社も少なくありません。
その中で、営業力および流通力がある出版社はごく一部です。そのため、一般的に誰もが知るような出版社で本を出すことが一番安心できるでしょう。
ただし、大手の出版社は多くの人員を抱えており、制作体制や流通力を担保できる一方で、多額の出版費用がかかってしまいがちです。
そのほか、自費出版サービスの提供会社には、過去の出版物や編集者の制作実績を確認することをおすすめします。自費出版を検討するうえで、費用は重要なポイントになるでしょうから、いかに信頼と実績でバランスの良い会社を選択するかが大切です。
契約内容や条件の確認
自費出版をいざ実行しようとすると、出版契約書を締結することになります。
出版契約書で確認する事項として重要なのは下記のポイントです。
書籍の仕様(判型、本文カラーもしくはモノクロ、ページ数、写真やイラストの有無)
書籍の納期(出版時期)
書籍の制作部数(流通部数と著者への納品部数の内訳)
自費出版の著者負担費用および支払い回数と時期
どこまで予算内で制作してくれるか(どこから追加予算がかかるか)
権利の帰属(著作権、出版権、所有権の記載があるか)
印税の有無
増刷する場合の費用負担はどちらか
追加で著者が買取をしたい場合の割引や費用負担について
確認すべき項目は多いですが、最低限でも上記は確認しましょう。
なかでも書籍を出版する著者として、印税は気になるところだと考えられます。自費出版の印税はさまざまな形態があります。初版から印税が発生するケースは稀ですが、重版をしたら印税が支払われるケースがあります。
自費出版と似て非なる手法として企業出版がありますが、企業出版は広告の手段として実施するケースがほとんどですので、印税を目的に出版を検討するものではありません。
費用や予算の明確化
自費出版は著者が費用を負担します。
そのため、書籍を制作するのにいくらかかるのか、著者自身の予算はいくらまでなのかをある程度明確にする必要があるでしょう。
出版のトラブルの一つでもよくありますが、後になって想定していた予算以上に追加費用がかかってくるケースは悩みの種となります。書店に流通するプロモーションや広告宣伝のための予算も含めていくらでやってくれるのかは、事前に出版社に確認をしておきましょう。
販売・宣伝活動の充実度
書籍を出版した以上は「本を売りたい」と思うのは自然なことです。
そのためには、出版社がいかに書店営業活動や販売活動に懸命になってくれるかが重要でしょう。
書籍は発売したら簡単に売れるというものではありません。読者がその本を知るきっかけを作る必要があるからです。
事前の書店営業活動にどれだけ熱心に動いてくれるか、広報および広告宣伝をどれだけやってくれるか、書籍を売るためのプラン計画は必要不可欠です。
本を売るためのプロモーションの方法など、さまざまなアイデアを提案してくれる出版社と組むことがポイントです。
自費出版成功のための具体的な対策

自費出版をどこから成功と呼べるのかの基準は、著者自身の中にしかありません。
書籍を出版することがゴールなのか、それとも届けたいターゲットに届けることがゴールなのか、より多くの人々に届けてベストセラーを目指すのかなどです。
著者の期待値と理想を、出版社ができる役務内容といかに近づけられるかを確認しましょう。
プロの編集者への依頼
自費出版の成功には、腕のある編集者に担当してもらうのが一番の近道です。
書籍の制作には編集者やライター、校正者、デザイナーなど多くの人員が関わります。この人員をまとめ上げ、ディレクションするのが編集者の仕事です。
著者の最大の理解者になる必要があるため、お互いに知り合う場を作ることが大切でしょう。
また、編集者にはジャンルによって得意や不得意があります。これまでの編集・制作実績でどのようなものがあるかを事前に確認するのをおすすめします。
実績のある編集者であれば、ライターやデザイナーといったクリエイターも多くの繋がりがあります。著者の出版したい内容に応じて、最適な制作布陣を作り上げられるかも成功の鍵となるでしょう。
マーケティングプランの検討
執筆した書籍を届けたいターゲットが明確であるほど、具体的なマーケティングプランが必要です。
どのように販売するかという流通・販売戦略も重要ですが、一番大切なのは企画段階からのペルソナの設計。作り上げた企画が世の中にどれだけ求められているのか、どのようなターゲットにニーズがあるのか、そもそもどのようなターゲットに届けたいのかなどです。
だからこそ、前述したとおり、腕と実績のある編集者に担当して提案をもらうことがとても重要といえます。
費用対効果の高い販促活動
書籍の販売促進のためのプロモーションはさまざまです。
自費出版をする目的に立ち返って、その目的を達成するにはどのようなプロモーションが効果的かを検討しましょう。
書籍の販促活動で効果的なのは、新聞広告です。新聞の購読者数や広告費は年々減少をしていますが、ビジネス書やシニア向けの書籍の場合はいまだに新聞広告で売り伸ばしが図りやすいです(新聞広告データアーカイブ「新聞広告月間動向」より)。
ほか、店頭で目立たせて手に取ってもらうためには、書店でのプロモーションも検討の余地はあるでしょう。
▼書籍出版の効果的なプロモーションについては「出版マーケティングの効果的なプロモーションとは? 広告手段も解説」でも紹介していますので、合わせてお読みください。
自費出版と他の出版方法の比較

書籍出版の方法は、自費出版のほかにもさまざまです。企業出版や商業出版、近年では電子書籍のみやオンデマンド出版という方法もあります。
自費出版のメリットとデメリット
自費出版は、著者自身が費用負担することで書きたいテーマで本を作ることができます。
では、自費出版のメリットとデメリットを紹介しましょう。
<メリット>
企画には著者の意思が自由に反映できる
著者の希望や予算に応じて、発行部数が調整しやすい
名刺や営業ツールとして活用できる
「本を出版した」というステータスになる
<デメリット>
制作費から印刷費、倉庫保管費など出版にかかるコストは全て著者負担
市場にほとんど流通しないため、名刺代わりのツール以外のブランディング効果は薄い
印税をはじめとした金銭的なメリットは期待しづらい
このように、自費出版は自由度が高い一方で、自己満足で終わる可能性が高く、あくまで「本を作った」という実績が欲しい人のための手法といえます。
企業出版のメリットとデメリット
企業出版は、企業や法人、または個人が自身のブランディングやPRのために本を作ります。では、企業出版のメリットとデメリットを紹介しましょう。
<メリット>
自社ブランディング効果にくわえ、集客や採用など、さまざまな経営課題の解決につながる
出版社の流通網を活用し、全国の書店やAmazonなどのインターネット書店で販売される
自社のアピールしたいサービスや商品を意識した企画を作ることができる
<デメリット>
自費出版と比較すると、負担する費用が高額
出版社によっては編集経験の乏しい新人が担当になることがある
大部数で流通した場合に多くが返品になり無駄なコストがかかることがある
このように、企業出版は一定の広告コストを負担する必要がありますが、ブランディング効果が期待できます。明確な目的やテーマがある法人は、企業出版は一つの選択肢となりえるでしょう。
▼企業出版については、「企業出版のメリットとは? 企業が考えるべき出版による効果」でも詳しく解説しているので、合わせてお読みください。
商業出版のメリットとデメリット
商業出版は、出版社が企画を作り、制作費も出版社が負担します。
では、商業出版のメリットとデメリットを紹介しましょう。
<メリット>
著者の費用負担がない
販売部数を伸ばすことが目的のため、プロモーションも全て出版社負担
「商業出版をした」実績はブランディング効果絶大
売れれば印税が支払われるため、副収入が期待できる
<デメリット>
企画は出版社主導のため、著者がやりたいテーマで出版できるとは限らない
売れなかった場合に再び商業出版の声がかかることはほぼない
このように、商業出版はブランディング効果やメリットが大きい出版方法です。ただし、声がかかるかは著者の認知度や専門性といった要因が必要なので、声がかかるハードルはかなり高いでしょう。
電子書籍のメリットとデメリット
電子書籍は紙で印刷せずに、電子データとしてオンラインストアのみで販売する出版方法です。電子書籍のメリットとデメリットを紹介しましょう。
<メリット>
印刷不要のため、その分安く出版できる
在庫リスクがないため、その後のコストの心配もない
取り寄せの必要がないので、読者は購入後すぐに読むことができる
<デメリット>
書店には並ばないため、新規の読者に見つけてもらいづらい
人に配布するなど二次的な活用ができない
実物が手元に残らないため、「本を出した」というブランディング効果も薄い
このように電子書籍は、圧倒的にコストを抑えて出版することができます。ただし、実物がない分、人に渡しづらいのは難点です。紙の書籍出版にくわえて、電子書籍の購読者にも広く読んでもらうためのオプションのような立ち位置と考えた方が良いでしょう。
オンデマンド出版のメリットとデメリット
オンデマンド出版は、オンデマンド印刷という技法を活用して、読者から注文が入ってから印刷して販売する出版方法です。オンデマンド出版のメリットとデメリットを紹介しましょう。
<メリット>
1部単位から少部数で印刷ができるため、費用負担も少ない
在庫リスクがないため、その後のコストの心配もない
版を作らずに印刷するため、都度の修正にも対応しやすい
品切絶版になりづらい
<デメリット>
大量印刷には向かない
オフセット印刷と比較して品質は低い
このように、オンデマンド出版は安価に少部数から作れるのが魅力です。ただし、たくさん売りたい、大量に配布したいといったニーズがある場合は余分にコストがかかるうえ、印刷の品質が低いため、出版社で流通する書籍と比べると箔もつきづらいでしょう。
企業出版という選択肢
ここまで企業出版という出版手法が何度か登場しました。この企業出版という選択肢について見ていきましょう。
自費出版と企業出版は何が違う?
自費出版と企業出版は、著者が費用を負担する出版という意味では同義です。
最も大きな違いは、出版する「目的」です。
自費出版は、自己表現のための出版で、書籍を流通して販売することは二の次です。
一方、企業出版は、経営者もしくは法人がブランディングやPRなどの目的を持っていることが多いです。広告を打つときに「商品の販売促進のため」などの目的を持つことと同じです。
とくに企業出版は、高額商材を販売している業種・業態の会社や一言で説明が難しいようなサービス・商材を販売しているような会社には向いています。
書籍はほかの広告宣伝手段と比較して、圧倒的にボリュームが多いからです。書籍が営業マンの代わりとなって、自社の説明ツールの役割を果たし、商談が進めやすくなると喜びの声も少なくありません。
▼経営者や企業が検討する出版については、「本を出版したい! 経営者が取り組むべき書籍出版とは」でも解説しているので、合わせてお読みください。
企業出版に向く業種・業態
企業出版に向く業種や業態は、次のような方々です。
税理士
弁護士
司法書士
開業医(医療クリニックの院長、医師)
整体師
経営コンサルティング
不動産投資会社
注文住宅の建築会社
健康食品の製造・販売会社
予備校(医学部受験予備校など)
また、上記にくわえて、一般の広告で効果が感じられなかったり、情報発信の手段に悩んでいたりする人にはおすすめの手段です。
企業出版は目的以外にも、ターゲットが明確であればあるほど効果が期待しやすいため、前述の業種・業態のほか、地域に特化したエリアマーケティングに取り組む事業者とも相性は良いでしょう。
▼エリアマーケティングについては、「出版によるエリアマーケティングのススメーー地域で勝つための営業戦略」でも解説しているので、合わせてお読みください。
まとめ
以上、自費出版のトラブル事例や各種出版の方法ごとの特徴を解説しました。
トラブルについては「自費出版商法」や「自費出版詐欺」のように、著者に夢を与えて騙すような出版社や出版コンサルタントも存在します。
今回の記事で解説したようなポイントを踏まえて、まずは自分のニーズを満たしてくれる出版方法なのか、きちんと納得した上で出版に踏み切ることをおすすめします。
少しでも疑念があるようであれば、出版社の担当者と細かく確認を取り合って、お互いに信頼できる関係性を築いたうえで契約をしましょう。
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https://forway.co.jp/panolabo/lp/
参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。
動画制作は現代のマーケティングにおいてとても重要な役割を果たしています。
目に映る情報を通じて商品やサービスの魅力を伝え、視聴者との強い結びつきを生み出すことができるからです。
しかし、効果的な動画制作には適切なスケジュールと計画が必要です。
本記事では、動画制作のスケジュールを組み立てる上で必要なタスクと管理の方法について解説します。
目次【本記事の内容】
ステップ1:動画制作の準備

動画制作を始めるにあたり、最初に取り組むべき準備を解説します。
準備①:制作目的と想定ターゲットの設定
動画制作を始める前に、明確な目的とターゲットオーディエンスを設定することが重要です。
動画を公開する目的を達成するためには、ターゲットオーディエンスのニーズや興味を理解し、それに合ったコンテンツを制作する必要があります。
準備②:アイデアのブレストとコンセプトの決定
次に、プロジェクトメンバーでアイデアのブレストを行い、コンセプトを決定します。
面白くて記憶に残る動画を制作するためには、独創的で魅力的なコンセプトが欠かせません。
たとえば、映画のようにシネマスコープサイズで制作してみたり、数本の動画を同じシリーズだとわかるように雰囲気を似せてみたりと様々な工夫を凝らしてみると良いでしょう。
準備③:予算の確定とスケジュールの立案
動画制作には予算とスケジュールの確定が欠かせません。
最初に決めた予算に応じて、必要なリソースを適切に割り当てることが第一です。とくに外部に依頼する場合は撮影内容によっては追加予算がかかることもあります。事前に大まかな予算を決めておくか、作りたい動画のイメージに応じた見積書を作ってもらいましょう。
また、スケジュールについては納期を決めておくことが重要です。撮影のやり直しや再編集の可能性も珍しくないので、「いつまでに終わらせる」という時期を確定させて、余裕を持ったスケジュールで進行することをおすすめします。
ステップ2:動画制作のプロセス
続いて、実際に動画制作をスタートするうえで必要なプロセスを解説します。
動画制作プロセス①:プロキャストの選定もしくは社内人材の活用
動画制作にはプロのキャストをアサインすることがあります。くわえて、撮影クルーの選定も重要となります。
キャストについては演技力の優れた人材を選ぶことで、クオリティの高い動画を制作することができます。当然ながらセリフまわしや立ち振る舞いに慣れているため、撮影時間を短縮することができるでしょう。キャストによっては契約条件次第で、動画の公開範囲や時期が限られているパターンもあるので、事前にきちんと確認することをおすすめします。
一方、企業ブランディングのための動画制作においては、企画によっては社内の従業員が出演することもあります。その場合は、事前に会社としてのルールを設定し、出演候補となる従業員に了承を得ましょう。ただし、社内人材だけで撮影すると、慣れていない分、余計な時間がかかってしまう可能性は否めないので注意が必要です。
動画制作プロセス②:ロケーションの確保と撮影
動画撮影に適したロケーションの確保と撮影計画の立案も重要です。
ロケ地の選定や撮影日程の調整を行い、効率的な撮影を行いましょう。
撮影地としては、商業施設や広場なども考えられますが、事前に許可が必要な場合が多いです。外での撮影にこだわらない場合は、レンタルスペースを借りるのも一案です。
このように外部スタジオを活用する利点は、会社の狭いスペースや自宅よりも広いことや照明が明るかったり、内装がきれいだったりする点です。
また、初めての撮影ともなれば、想定外の出来事が起こるのは当然と考えましょう。そこで撮影スケジュールは前倒しを意識し、予期せぬトラブルを避けられるように注意してください。
動画制作プロセス③:必要な機材や技術の準備
動画制作には適切な機材と技術が必要です。
撮影や編集に使用するカメラ、照明機材、音響機器などを準備し、スムーズな制作環境を整えてください。
また、必要な技術の習得や扱うソフトウェアやアプリの使い方を熟知しておくことも大切です。
ただし、これだけの機材知識や技術を一朝一夕で身につけることは困難なので、頼れるところはプロに任せるのも一つです。
ステップ3:ポストプロダクション(編集)

動画制作で重要ともいえる作業が編集です。具体的に編集で押さえておくポイントを解説します。
編集ポイント①:収録素材の編集と編集スケジュール
収録した素材を編集する際には、編集スケジュールを立てて効率的に作業を進めてください。
編集は思った以上に時間がかかる作業なので、慣れていない場合はとくに、スケジュールは長めに取っておきましょう。もし上司のチェックなどを受ける場合は、作り込む前にいったん雰囲気を見てもらうなどして後からひっくり返るのを防ぐことも大切です。
また、編集段階でストーリーテリングや映像効果の工夫を行い、より魅力的な動画を完成させましょう。
編集ポイント②:グラフィックスやエフェクトの追加
より視聴者に動画の魅力を伝えるために、グラフィックスやエフェクトの追加も検討してください。
タイトルデザインや遷移エフェクトなどを工夫することで、動画の印象を高めることができます。
編集ポイント③:音楽やナレーションの挿入
音楽やナレーションは動画の雰囲気を大きく左右します。
適切な音楽や声の演技を選び、映像と調和するように編集してください。
視聴者の心を動かす動画を制作するために、音響面にもこだわりましょう。
ナレーションは社内の従業員で対応するのも一つの手段ですが、プロのナレーターやフリーアナウンサーなどに依頼することも一考の余地があります。
動画の作り方や機材、編集ソフトについては、YouTubeを一例に下記のコラムで詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
参考:YouTube動画の作り方をカンタン解説!初心者でも再生回数を稼ぐテクニック
ステップ4:公開と告知戦略
動画が完成したら、次にどのように公開するかを確定し、認知を高めるための施策を検討していかなければなりません。
その1:動画の公開プラットフォームの選定
動画が完成したら、次は適切な公開プラットフォームを選定することが重要です。
YouTubeやVimeoなどの動画共有サイトや、企業のウェブサイト、SNSなどで公開することが一般的です。
ターゲットオーディエンスの嗜好や利用状況に合わせてプラットフォームを選びましょう。
その2:タイミングと告知戦略
動画の公開タイミングと告知の配信戦略も成否に大きく影響します。
公開時期や時間帯、重要なイベントやキャンペーンとの連動などを考慮して、動画の最大限のリーチを狙いましょう。
また、SNSやメールマーケティングなどを活用して動画の告知を行い、多くの視聴者にアクセスしてもらうことが重要です。
その3:成果を測定するための分析と改善
公開後は、動画の成果を測定するための分析を行いましょう。
視聴回数や再生時間、反応数などのデータを収集し、動画の効果を把握します。
また、視聴者のフィードバックやコメントも重要な情報源です。
収集したデータを元に、次回の動画制作やプロモーション戦略の改善に活かしましょう。
ステップ5:動画制作のスケジュール管理とツール

ここまでに紹介してきた動画制作のプロセスをうまく実行するには管理ツールを活用することをおすすめします。たとえば次のような方法があります。
①スケジュール管理ツールの紹介
動画制作プロジェクトでは、スケジュール管理ツールの活用が重要です。
タスクの進捗状況や担当者の割り当て、期限の管理などを一元的に管理できるツールを導入しましょう。代表的なツールとしては、TrelloやAsana、Microsoft Projectなどがあります。
②チームコラボレーションツールの重要性
動画制作は多くの人たちが関わるクリエイティブなプロジェクトです。
そのため、チームコラボレーションツールを導入すると管理がやりやすくなります。
リアルタイムでのコミュニケーションやファイル共有、タスク管理などが円滑に行われるようなツールを選定し、チームのコラボレーションを強化しましょう。
まとめ
以上のステップに従って、効果的な動画制作の計画設計からスケジュール管理をしっかり行うことです。
とはいえ、動画制作はクリエイティブな施策でもあるので、不慣れだとかなり苦戦するでしょう。
ブランドの認知拡大や顧客の獲得に向けた成功を収めるためには、まずはプロに依頼するのも一つの手段です。将来的な内製化なども想定し、動画制作の実績がある会社に相談してみてもよいかもしれません。
参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。
パンフレットは、企業にとって顧客に行動を起こしてもらう上で重要なツールです。
用途としては、企業のサービスや商品のメリットを訴求した営業ツール、新卒や中途採用のための会社案内などさまざまです。
本コラムでは、ビジネスやイベントのプロモーションにおいて効果的なパンフレットの作り方を紹介します。
そもそものパンフレット作成の重要性だけでなく、構成の準備、コンテンツの制作、デザインのポイント、印刷と配布の手順、業者選定の仕方まで、包括的なガイドになることを目指しました。
目次【本記事の内容】
パンフレット作成の目的とは?
パンフレットは、ビジネスやイベントのプロモーションにおいて重要な役割を果たします。
たとえば、営業ツールとして活用したパンフレットを見込み顧客に配布することで、自社サービスを導入するきっかけになるなどです。
企業および法人がパンフレットを制作する目的は、配布したツールを通じて、自社のサービスや商品についてより多くの人に知ってもらうこと。
さらに、パンフレットを配布することで、自社の理念を訴求できるため、ブランディングイメージを構築することにもつながります。
一般的な営業資料と異なるのは、一度配布すれば捨てられづらい点です。A4用紙で出力してホッチキスで綴じた営業資料の場合は、必要ないと認識されればすぐに捨てられてしまいます。
その点、パンフレットはすぐに必要ない場合でも、長期的に手元に保管をしておいて、いざ必要になった時に見込み顧客から自社のことを思い出してもらって問い合わせにつながるようなケースもあるのです。
パンフレット作成の準備の仕方

パンフレット作成に取りかかる前には、いくつかの準備が必要です。
準備が必要なのは、「目的の設定」「ターゲットの設定」「構成・掲載コンテンツの確定」「デザイン・サイズの決定」です。
一つひとつ詳細を解説します。
準備その1:目的の設定
パンフレットの作り方において、まず決めなければならないのは「目的の設定」です。
目的といってもさまざまあります。「自社商品やサービスの紹介をしたい」「新規出店の店舗の告知をしたい」「開催イベントの告知をしたい」「会社の理念や概要を理解してもらいたい」などです。
パンフレットを配布した見込み顧客に、その後どのような行動変容を促すかが重要なのです。
目的さえ明確になれば、軸がぶれずに伝えたいターゲットに、伝えるべき要素を発信することができるでしょう。
準備その2:ターゲットの設定
パンフレットの目的が決まったら、次は伝えたい「ターゲットの設定」を考えましょう。
たとえば、大学受験の予備校が集客目的で配布用のパンフレットを制作する場合、誰に受け取ってもらうべきかを想定することが大切です。
大学受験予備校の場合は、入塾するのはもちろん高校2〜3年生の学生本人ですが、入塾の意思決定をするのはその保護者です。実際に入塾してもらった後のイメージを学生に向けて伝えることはとても大事ですが、保護者にとって魅力的な予備校だと思ってもらえなければ入塾にはつなげることができません。
その他の事例でも、ターゲットの深掘りは重要な要素となります。
女性向けの化粧品を扱っているような会社であれば、女性受けのするデザインにするなどの工夫が必要ですが、さらに狙うべき年齢層によってもデザインのテイストは大きく変わります。
あくまで自社が集客したいターゲット、もしくは今後集客していきたい新規顧客層をイメージすることが重要でしょう。
準備その3:構成・掲載コンテンツの確定
パンフレットの目的とターゲットが明確になったら、次に決めるのは掲載コンテンツです。
目的が集客であれば、ターゲット顧客が商品を購入したい、サービスを導入したいという魅力が伝わる構成になっているかを想定しながらコンテンツを作りましょう。
企業の会社案内を制作する場合は、たとえば次のような構成が考えられます。
・代表のあいさつやメッセージ
・企業理念
・業務やサービスのご紹介
・役員や社員の紹介
・自社の代表事例の紹介
・社員インタビュー
・沿革
・会社概要
会社案内の場合は、配布先が多岐に渡ります。取引先や新規の営業先、新卒や中途の応募者、投資家などのステークホルダーなどです。
このようなコンテンツは、通常業務で扱う文章のボリュームとは大きく異なります。会社案内のコンテンツを考えるリソースが割ける場合は別ですが、そうでなければ制作会社などに外注することも視野に入れることをおすすめします。
準備その4:デザイン・サイズの決定
パンフレットの掲載コンテンツが固まったら、実際に印刷工程の仕上がりを想定します。
会社案内をはじめとしたパンフレットを制作するにあたり、デザインにはこだわりたいところ。一方で、多くの企業が陥りやすい落とし穴は、最初にデザインの方向性を考えることです。
デザインにばかりこだわっていると、大事な中身が伴わないパンフレットができてしまいます。
そのため、先に構成やコンテンツを考えてから、その後にデザインに着手をすることが大切だといえます。
デザインは、会社案内の場合は企業カラーやコンセプトに合わせて、取引先や顧客に渡すことを想定して信頼感や安心感が演出できるようにすると良いでしょう。
サイズについては、パンフレットの場合はA4サイズが一般的です。携帯しやすいハンドブックサイズのものなど、目的に合わせたサイズを設定することもあります。
ちなみに、ページ数は4の倍数で設定することをおすすめします。パンフレットの場合は、ボリュームにもよりますが、手渡し用では12ページや16ページで構成されることが多いです。
4の倍数でない場合は、印刷代が高くなってしまう可能性があるので注意しましょう。
書籍のように厚みのあるタイプと異なり、パンフレットの場合は中綴じと呼ばれるホッチキス綴じ製本がおすすめです。一方、書籍で主に使われる綴じ方は無線綴じといいます。
パンフレットの依頼先の選び方

ここまでに紹介したように、パンフレット制作には様々な工程とコンテンツを作るリソースが必要になります。
そこで、自社で制作がリソース的に厳しいようであれば、プロの制作会社に依頼を検討しましょう。
依頼先の選定基準は次のとおりです。参考にしてみてください。
選定ポイント①:制作実績が豊富
パンフレット制作の依頼先として、とくにポイントとなるのは制作実績でしょう。
同業界の制作事例があるか、同じような目的で制作したパンフレットがあるか、などが選定基準となります。
ただし、ただパンフレットの制作実績が豊富であるかだけでなく、企業のパンフレット制作において重要なのは企業のコンテンツ制作にどれだけ多く携わってきたかです。
パンフレット制作を請け負う業者としては、デザイン制作会社、印刷会社、編集プロダクション、広告代理店などが考えられます。
デザイン制作会社の場合は、デザイン性を重視する場合に選択肢となりますが、費用が高額になるケースが考えられます。
印刷会社は、入稿されたデータを印刷することが本分です。なかにはデザイン制作から印刷・納品までを一括で対応してくれるところもあります。自社で印刷が対応できる分、ほかの業者よりは安いですが、デザイン性やコンテンツの制作力に長けているわけではありません。
編集プロダクションは、出版社からの依頼で編集や企画を請け負っているケースが多いです。パンフレットを専門に扱っていたり、実績が豊富だったりする会社はあるでしょう。出版社とのつながりがある分、腕のあるデザイナーやカメラマンがアサインできる可能性も高いです。
広告代理店は、企業の広告企画を行っているため、マーケティング的な視点も持ち合わせながらパンフレット制作の対応ができるでしょう。一方で、デザインから文章コンテンツの執筆、印刷など、すべて外注することになるので費用は高額になります。
選定ポイント②:自社のニーズと得意領域がマッチしている
パンフレット制作は印刷して出来上がってしまったら、もうやり直しがききません。
紙媒体の制作物を外部に発注する際によくある失敗が、「思っていたものと違った」という嘆きの声です。
一般的な紙媒体の制作会社は、一定のクオリティでパンフレットを仕上げることはできるでしょう。
しかし、パンフレットの作り方において重要な要素は、依頼先のビジネスモデルを理解しているかどうかです。
そのため、「税理士との仕事が多い」「不動産業との仕事が多い」「医療関係の仕事が多い」など、専門領域に応じた業務依頼実績が豊富にあるかどうかは選定のポイントとなります。
きちんと自社のビジネスモデルの理解があり、伝えたいことを読み手に伝わるコンテンツに昇華させられるかが、パンフレット制作成功のカギとなるでしょう。
選定ポイント③:営業担当者と見積もりの内容
どんなにパンフレットの作り方において、質にこだわったとしても定性的なもので、正直なところ完成するまで満足できるものができるかわかりません。
そこで、選定するうえで重要視してほしいのは、依頼候補先の営業担当者の対応と見積もり内容。費用は安いに越したことはありませんが、費用と品質のバランスはとらなければなりません。
まずは、営業担当者と面談をしてみて、自社が作りたいパンフレットの要件をしっかりと伝えましょう。
顧客優先で動く担当者であれば、きちんと要望を汲み取ってそれを見積書に反映してくれるはずです。とくに要求しなくても、数パターンの見積もりを提示してくれる業者は優秀と言えるでしょう。
パンフレットに限らず、紙の制作物は何度か作り直すこともあり得ます。依頼先の担当者が信頼できるかどうかは今後も長期的に付き合っていくうえで重要な要素となるでしょう。
パンフレットの配布方法
パンフレットの作り方の次は、完成した現物をどのように配布するかが重要です。具体的には下記の方法が考えられます。
選定ポイント③:営業先への手渡し
自社の営業マンが営業訪問をする際に、取引先や見込み顧客に直接手渡しする方法があります。
サービスや商品の訴求のほか、自社理解を促進させられる効果が見込め、パンフレットの配布をきっかけに話を膨らませるなど、お互いの信頼関係構築にも大きく寄与します。
配布方法②:ダイレクトメール(DM)
既存の取引先や自社の保有するリストにある見込み顧客に向けて、パンフレットをダイレクトメールで送付する方法があります。
ダイレクトメールの送付数から反応率を計算することで、効果測定もしやすいのはメリットの一つ。
郵送するにはコストがかかるため、送付先に追客施策としてテレアポをしたり、営業マンが訪問したりすることで効果も高められるでしょう。
配布方法③:ポスティング
ポスティングは、一定のエリア内の家庭や企業などのポストに直接投函する方法です。
地域密着で運営している店舗型ビジネスであれば、ポスティングは大きな効果を発揮するでしょう。パンフレットに限らず、チラシもポスティングで配布することがありますが、すぐに捨てられる可能性があります。
視認率が高い施策ではあるので、捨てられづらいパンフレットを配布するのは一定の効果が期待できます。
配布方法④:街頭や施設内配布
街頭配布や施設内配布は、チラシの配布方法としてはよく使われます。
特定のエリアでの集客を目的とするのであれば、パンフレット配布も一定の効果は発揮されるでしょう。
施設内配布は、学校やショッピングモールなどで、ターゲットに合わせて配布することができるので、集客には寄与しやすい方法といえます。
ただし、パンフレットとチラシどちらでも、手荷物になってしまう分、受け取ってもらいづらいデメリットも考えられます。
配布方法⑤:イベント開催先での配布
自社でイベントを開催したり、展示会などの出展イベントにブースを出したりする企業の場合は、開催先でのパンフレット配布が効果的です。
イベント開催自体にコストがかかるのがデメリットではありますが、イベントや展示会は目的やテーマに則ったお客さんが足を運ぶため、相性の良い見込み客を集客できる可能性が高いです。
そのような人たちに、自社のサービスや商品の強みを訴求するにはパンフレットの配布がおすすめです。
自社の周年イベントや学生向けの採用説明会などで、パンフレット配布する手段も考えられるでしょう。
そのほか、オフラインのマーケティングについて、下記のコラムで解説しています。合わせてご覧ください。
参考:広告手法を徹底比較! デジタルからDMまでマーケティングのメリデメを解説
まとめ
自社が満足いくパンフレットを制作するにあたり、パンフレットを渡す相手である顧客目線は欠かせません。
それは制作を外注する場合も同様です。依頼先が自社の要望をきちんと汲み取ってくれているのか、自社のビジネスモデルを理解しているのかは、担当者との面談でしっかりと見極めましょう。
本コラムがパンフレット制作の参考になれば、これ以上に嬉しいことはありません。
参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、ディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。
YouTubeを始めてみたい、でも動画の作り方がわからない!
このような悩みを抱える人は近年、とても増えているようです。
「動画制作」というと、かなり専門的な印象を受けがちです。
「高い機材を買わないといけないの?」
「専門のソフトの使い方を覚えるの?」
そんな疑問の声は、YouTubeを始めようとする人から多く聞かれます。
そこで今回は、YouTubeチャンネルの開設方法から動画の作り方、再生回数を伸ばすコツまで、わかりやすく解説します。
個人でYouTuberを目指す人も、会社の取り組みとしてYouTubeチャンネルの担当になった人も、ぜひ参考にしてみてください。
目次【本記事の内容】
YouTubeを運用する意味は?
さて、そもそも、YouTubeチャンネルを運用する意味とはなんなのでしょうか。
YouTubeの意味には、下記のようなものがあります。
・個人やビジネスをブランディングできる
YouTubeは、世界的な規模で視聴者を集めるプラットフォームです。
日本だけで見ても月間のアクティブユーザーは7000万人を超えます。
このように大変多くの視聴者をもつメディアであるYouTubeで独自の動画コンテンツを発信することで、個人やビジネスにおいてとても強いブランディング効果を発揮できる可能性があります。
チャンネル登録者はいわばチャンネル運営者の「ファン」であり、多くのファンを抱えるメリットは個人にも企業にも大きいです。
※数値は「【2023年3月更新】YouTube利用状況データ | Videoクラウド」参照
・アイデアやノウハウを発信できる
動画は、個人や法人がもつ専門知識やスキル、アイデアを紹介する媒体として非常に優れています。
例えば個人であれば、料理のレシピやメイクのテクニック、プログラミングのノウハウなど。会社ならばビジネスのコツや就職活動の情報、マネーテクニックなど、自分の得意な分野で価値のあるコンテンツを提供することができます。
それにより、ブランディングを実現したりビジネスに繋げたりといった効果の期待ができるのです。
・視聴者とのコミュニケーションツールにできる
YouTubeチャンネルにおいては、動画に対するコメントやいいね、シェアなどの機能を通じて視聴者との対話が可能です。
視聴者からの意見やフィードバックを受け取って動画を改善したり、オンラインサロンやLINE登録などのマネタイズに向けた導線を作ったりが非常にやりやすいのが、YouTube運用の強みです。
ただ動画を観てもらうだけでなく、運営者のほうからコミュニケーションによって視聴者のファン化を促進する努力がしやすいのは、YouTubeを運用する大きなインセンティブだといえるでしょう。
・ビジネスとしてマネタイズできる
YouTubeの運営者はYouTubeパートナープログラムに参加することで、広告収入を得ることができます。自身のチャンネルを収益化することで、副業や本業としての収入を得ることも可能です。
数多くの登録者を抱えるYouTuberになれば、YouTubeだけで億万長者になるのも夢ではありません。
一方で、広告による収益化だけでなく、商品販売や自身のビジネスへの誘導など、YouTubeチャンネルをマーケティングツールとして活かすのも有効な戦略です。
特に法人でYouTubeを運用する場合、広告収入よりは本業でメリットを得ることを目指す動画の作り方が重要になってきます。
YouTubeチャンネル開設から動画投稿まで
続いて、YouTubeのチャンネルを開設し、動画を投稿する手順を解説します。
チャンネル開設は、下記の流れです。
①Googleアカウントの作成
YouTubeのチャンネルを作成するためには、まずGoogleアカウントを作成する必要があります。
既にGoogleアカウントをお持ちの場合は、次のステップに進んでください。
②YouTubeにログイン
YouTube(https://www.youtube.com/)にアクセスし、作成したGoogleアカウントでログインしてください。
③チャンネルの作成
YouTubeを開き、ブラウザ上に表示されている右上のアイコンをクリックしてドロップダウンメニューを表示し、「YouTube Studio」を選択します。
YouTube Studio画面の左側にあるメニューで「チャンネル」セクションを選択し、[+チャンネルを作成]ボタンをクリックします。
④チャンネル名とアイコンの設定
[+チャンネルを作成]ボタンをクリックすると、チャンネル作成ウィザードが表示されます。そこでチャンネル名を入力し、アイコンを設定してください。
アイコンは、プロフィール写真として表示されます。
⑤チャンネルアートのアップロード
続いて、チャンネルアートを設定します。チャンネルアートとは、チャンネルのヘッダーに表示される大きな画像です。
⑥チャンネル設定の編集
左側のメニューから「設定」を選択し、チャンネルの詳細設定を編集します。ここで、チャンネルの説明、タグ、プライバシー設定などをカスタマイズできます。
好みに合わせて設定してみてください。
⑦動画のアップロード
チャンネルが準備できたら、動画をアップロードする準備が整います。YouTube Studioの左上にある[動画]ボタンをクリックし、[+動画をアップロード]を選択します。アップロードしたい動画ファイルを選択し、必要な情報(タイトル、説明、サムネイルなど)を入力します。
⑧公開と設定
動画情報を入力した後、公開設定を選択します。公開、非公開、限定公開などのオプションがあります。必要な設定を行ったら、[公開]ボタンをクリックして動画を公開します。
以上が、YouTubeチャンネルの作成と動画投稿のステップです。
YouTubeチャンネルの立ち上げ方は、下記のコラムで詳しく解説しています。
合わせてご覧ください。
参考:YouTubeチャンネル開設のやり方を解説!ビジネスに繋げやすくするコツも紹介
YouTube動画撮影の機材選び

動画を投稿できる状態になったところで、いよいよ撮影です。
YouTube動画の撮影には、適切な機材の選択が重要です。
撮影用のカメラには、次のような選択肢があります。
スマートフォンのカメラ
現代のスマートフォンのカメラは、非常に高性能です。
画質が求められるような動画の作り方を追求するのでない限り、スマホのカメラで動画を撮影すれば十分でしょう。
ちょうど良い感じに素人感のある画が、逆に親近感を演出して好感を持たれる場合もあります。
スマホのカメラを使うのであれば、自分のスマホを使えばいいので投資額はゼロです。
注意点として、「通常動画は横向き、ショート動画は縦向き」で撮影することです。
向きが違う素材はうまく画面に当てはまりません。
一眼レフカメラ
主に写真を撮る用途に用いる一眼レフカメラですが、動画も撮影できる機能がついた機種もあります。
一眼レフカメラは性能がとても高いので、プロ並みにきれいな画質で撮影することができます。
デメリットとしては、価格の高さと容量の小ささです。
まともな一眼レフだと10万円は下らないので、はじめてのYouTubeでいきなり投資するのはハードルが高いかもしれません。
また動画用のメモリは1時間以内くらい分しかない機種が多く、長時間の素材をおさえるのにはメモリの増設などが必要になります。
Vlog用カメラ
Vlog用カメラと呼ばれる、SNS等にアップする動画を撮影するのに適したカメラを使うのも選択肢です。
Vlog用カメラは10万円を切るくらいで探せるので、一眼レフを使うのに比べると投資額は少なくて済みます。画質も十分に良く、多くのYouTuberがVlog用カメラを愛用しています。
YouTube動画の撮影に適したさまざまなサポート機能もついているので、長期的な相棒としておすすめです。
付属設備
撮影の際には、スタビライザーや三脚、マイクなどのアクセサリーも活用することで、より安定した映像やクリアな音声を実現できます。
また、YouTube撮影用の照明はできれば買っておいたほうが良いでしょう。
照明をきちんと当てるだけで、画面が一気にプロっぽい仕上がりになるからです。映像の仕上がりへの影響は、カメラの性能よりも照明のほうが大きいといっても過言ではありません。
どのように照明を当てればきれいな画面ができるのかは、書籍やWEBコラムなどで解説されています。基礎だけでも勉強してみてください。
YouTube動画をツールで編集する
撮影が完了したら、アップする前に動画を編集しましょう。
編集は、魅力的なYouTubeコンテンツを作り上げるための重要なステップです。
動画編集というと専門技術が必要なように思えますが、無料のツールでできる範囲でも十分に価値のある動画を編集することができます。
テロップをつけたりシーンをカットして切り貼りしたり、音楽をつけたりといった程度の編集であれば意外に簡単です。
下記にいくつか、おすすめの動画編集ソフトウェアやアプリの選択肢を紹介しましょう。
iMovie
iPhoneユーザーであれば、iMovieという動画編集ソフトをデフォルトで使用可能。もちろん無料です。
Appleユーザーであれば慣れっこのインターフェースが持ち味で、スマホだけで感覚的に動画を編集できます。
機能としては、「4K とマルチトラックの編集」「動画の配列」「無料の音楽を挿入」などが可能で、初心者でもある程度の動画は作れてしまいます。
VN
VN(https://apps.apple.com/jp/app/id1343581380)も、スマホで使える動画編集アプリです。
強みとしてはとにかく直感的にタップなどで操作ができることで、色味の調整や速度の調節などが簡単にできます。おしゃれな動画を作りたい!という場合にも適しているでしょう。
また、うれしいのがウォーターマーク(アプリロゴの透かし)が動画に入らない点で、YouTuberからも支持者が多い動画編集アプリです。
DaVinci Resolve
スマホでなくパソコンでしっかり腰を据えて編集したい場合、DaVinci Resolve(https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/davinciresolve)が使用可能です。
無料版と有料版がありますが、無料版でも基本的な機能は一通り使えます。カットやテロップ入れ、エフェクトの反映などが使えるので、一般的な動画を作成する分には十分でしょう。
ただ、無料の場合は書き出しサイズに制限が生じてしまうのが注意点です。長尺の動画をYouTubeで投稿したい場合には向きません。
Premire Pro
本格的な動画編集を行いたいのであれば、プロも使っているAdobe社のPremire Pro(https://www.adobe.com/jp/products/premiere.html)が定番。簡易版のPremire Rushもおすすめです。
Premire Proは、他のAdobe製品で作ったクリエイティブを動画に活用したり、Adobeのストック素材を活用したりと、ほぼ制限のない動画編集が可能です。本気で勉強してプロ並みのスキルを身につけたいのであれば、使用を検討しても良いでしょう。
一方で、Premire Proは初心者のうちはインターフェースがややわかりづらいのが難点です。解説書籍を買って調べながら編集したり、専門の講座に通ったりといった追加の努力が必要になるかもしれません。
YouTubeを収益化するには?

ここまでで、YouTube動画を撮影・編集し、アップロードするためのヒントを紹介しました。
実際にチャンネルを運用して登録者数が増え始めたら、いよいよ収益化です。
広告収入
前述したYouTubeパートナープログラムへ参加することで、広告収入を得ることができます。広告が自動的に動画に表示され、視聴者が広告をクリックすると収益が発生します。
ただ、チャンネルを収益化するには、下記の2つの条件を満たさなければいけません。
・チャンネル登録者数:1,000人以上
・動画の総再生時間:4,000時間以上(直近12カ月間)
上記を満たしたチャンネルであれば、YouTube Studioから収益化を申請することができます。
企業案件
YouTube上の広告収益のほかに、いわゆる「案件」でもチャンネルを収益化できます。
商品のプロモーションニーズがある会社から、お金を払って商品を動画で紹介するオファーを受けることで案件が成立します。
当然ながらチャンネル登録者が多いほど案件が舞い込む可能性は高くなりますが、自分のチャンネルに関連する企業やブランドからであれば、100万人以上などの登録者数がなくても案件が来る可能性はあります。
とはいえ案件獲得はYouTuber事務所に入ったり紹介サービスを使用したりしないと難しく、特に企業の運用などではあまり現実的なマネタイズ方法ではないかもしれません。
個人のYouTuberと小さな会社が直接案件のやり取りをするとお金のトラブルになるケースも多いため、注意してください。
自分の商品を売る
YouTubeは、自分の商品の販売にも活用できます。自分が作成した商品や関連商品を紹介することで、収益を得られるのです。
ただし、動画の内容と関係のない商品を販売するリンクを大量に貼り付けたり、有料のセミナーに直接誘導したりすると、「商用利用」の規約に違反してYouTubeからペナルティを受ける危険があります。
一度ペナルティを受けるとアカウント自体の評価がずっと低いままになってしまうとも言われており、くれぐれも気をつけてください。
YouTubeの視聴者をビジネスの顧客にする一番のコツは、やはり魅力的なコンテンツを提供し続けること。視聴者の関心を引きつけるテーマや独自のスタイルを持つことが成功のカギで、宣伝ばかりのチャンネルにはファンがつきません。
コストをかけずに再生回数を上げるポイント
では、YouTube運用で視聴者を惹きつけ、動画を再生してもらうにはどうすれば良いのでしょうか。
以下にいくつかのコツを紹介します。
トレンド性のあるテーマをタイトルに入れる
YouTube動画を観てもらうために、タイトルはとても大事です。
そして、タイミングに合わせてトレンドになっているワードを盛り込んだタイトルを設定することで、ユーザーに動画を観てもらえる可能性が高まります。
トレンドワードを調査するためには、拡張ツールであるvidIQ(https://vidiq.com/)を使いましょう。
vudIQを使うと、指定のワードが含まれた動画が平均でどれくらい再生されているのかのデータを見ることができるので、動画企画とタイトル選定にとても役立ちます。
トレンドのワードを使うことで、バズっている動画を観たあとのおすすめ動画としてあなたの動画が紹介されたり、YouTubeのトップページで動画をリコメンドしてもらえたりする可能性を高められます。
ただし、タイトルにだけトレンドのワードを使って動画の中身が全然違う、というのはNGです。そういった不一致はYouTubeのアルゴリズムで厳しく評価されます。
サムネイルを魅力的に
動画のサムネイルを作り込むのも、タイトル設定と同じくらい重要です。
慣れていないと動画の一部をキャプチャするだけのサムネを設定してしまったりしますが、極力そうしたサムネは避けたほうが良いでしょう。必ず画像を作ってください。
サムネイル作成のコツは、「少ない文字数でキャッチーに」です。
画像に「◯◯する方法3選」など文字を挿入し、シンプルにユーザーの心を掴みます。
文字数が少ないほうが良い理由は、人はYouTube動画を見るかどうか、サムネを0.3秒見ただけで決めると言われているからです。文言が長いとそれだけで脱落を招きます。
サムネイル作成にあたっては、Canva(https://www.canva.com/)がおすすめです。
きれいなフォントやアイコンなどが無料で使用できるだけでなく、多数のテンプレートからアレンジして初心者でも簡単にサムネイルを作れます。
撮影環境に気を配る
動画をコンテンツとして成立させてユーザーを惹きつけるには、撮影環境はとても大事です。
散らかった自室がバックで照明も薄暗く、演者の声は環境音でよく聞こえない……こういった動画では、もしユーザーがクリックしてくれてもあっという間に離脱してしまいます。
背景はきれいに、照明は自然光を利用するか、手持ちの照明器具を使って明るく均一な照明を実現しましょう。
また、動画の背景はあなたのチャンネルの世界観そのものです。たとえば書籍紹介のチャンネルであれば背景に本棚を映り込ませる、法律系のチャンネルであれば六法全書を机の上に置いておくなど、ちょっとした演出でブランディング効果は大きく高まります。
無料素材をフル活用する
動画を編集する際、無料の素材やリソースを徹底活用するのも再生回数を上げるポイントです。
BGMや効果音、ビデオクリップなどの素材は、オンラインで無料で入手することができます。
こうした素材をうまく組み合わせると、動画の仕上がりが格段にプロっぽくなります。
慣れないうちは、有名YouTuberが使っている素材で真似して無料で使えるものがないか、研究してみると良いでしょう。
YouTube動画をより高度に編集するテクニック
YouTube運営に慣れてきたから、もっと高度な編集ができるようになりたい……そんな方のために、下記にいくつか応用編の編集テクニックを紹介します。
・トランジション効果の活用
トランジション効果は、シーンの切り替えや移行を滑らかにするためのエフェクトです。クロスフェードやズーム、スライドなどのトランジションを適切に使うことで、より魅力的な編集が可能です。
・オーディオ編集のテクニック
音声のクリアさとバランスを調整するために、イコライザーやコンプレッサーなどのオーディオエフェクトを使用します。重要な内容をよりクリアに聞き取りやすく引き立てたり、音の加工で演出を入れたりすることで動画の魅力がアップします。
・色調補正やフィルターの使用
明るさ、コントラスト、彩度などの色調を調整し、映像に一貫性や特別な雰囲気を与えることができます。あなたのチャンネルならではの世界観を演出することで、ユーザーの心を掴める可能性が高まります。
また、フィルターやエフェクトを使って独自のスタイルを作り出すこともできます。チャンネルの定番演出がユーザーの心に残るようになれば、YouTubeチャンネルとしてワンランクアップです。
YouTube動画の作成でよくある失敗例

最後に、YouTubeの運用でよくある失敗例を紹介します。
下記の例に当てはまらないようにチャンネルを運用しましょう。
動画が長すぎるor短すぎる
動画の尺が長すぎたり短すぎたりするのは、よくある失敗パターンです。
まず長すぎる場合で、立ち上げ当初のチャンネルで長尺の動画を見てもらうのはかなり難しいです。せっかくサムネイルをクリックしてもらえても、途中で離脱するユーザーがあまりに多いとチャンネル評価がマイナスになってしまいます。
一方で、短すぎる動画もいけません。
なぜなら、YouTubeがチャンネルを評価するアルゴリズムでは総再生時間が重要な指標になると言われており、短い動画ばかりだとそれだけで不利になってしまうからです。
また、短すぎる動画には広告もつけられません。
ベストな動画の長さはチャンネルのジャンルにもよりますが、15〜20分くらいで試してみながら、自分のチャンネルで一番再生される尺を探っていくと良いでしょう。
投稿が止まってしまう
良い動画を作ろうと考えすぎた結果、投稿が止まってしまう……これもよくあるパターンです。
特に企業チャンネルなどでは、社内の確認プロセスに時間がかかったりして投稿が止まってしまうケースが多いです。
当然のことですが、投稿が止まってしまえばチャンネルの評価はどんどん下がっていきます。
最低でも週に1回くらいは動画を投稿したいところです。
YouTube運用はやってみないとわからない部分が大きい施策なので、作り込みすぎずに実験のつもりでたくさん動画を投稿するのがおすすめです。
自分が表現したいことにこだわりすぎる
ユーザーの評価を無視して運営者が「表現したい」ことばかり動画にしてしまうのも、良くないケースです。
YouTubeは継続によって初めて効果が出る面も大きいですが、まったく当たっていない方向性にずっとこだわり続けても、何かを変えなければ成功する確率は低いでしょう。
現在では有名YouTuberとなった人でも、開設当初の方向性を途中からまったく変えたことでヒットしたケースは少なくありません。
運用目的にもよりますが、譲れない部分は大切にしながら、ユーザーに評価してもらえるように柔軟にいろんな表現を試してみましょう。
まとめ
以上、YouTube動画の作り方について解説しました。
現在では初心者でも簡単に扱える動画編集ソフトなども増えており、個人でYouTubeチェンネルを運営することは可能です。
ただ、「本業が忙しくて動画制作する暇がない」など、YouTubeをやりたくても一歩前に進めない人もいるかもしれません。
そんな場合は、立ち上げの時期だけでもプロのサポートを受けても良いかもしれません。
フォーウェイでは、チャンネル方向性の設定から動画の企画、実際の制作などさまざまなフェーズでYouTube運営をサポートしています。
相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、ディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。
企業出版という発信施策をご存じでしょうか?
企業出版とは、ビジネスの課題を解決するために「出版」という手段を用いることです。
世の中に書籍は数多くありますが、実はそのうちには、企業がビジネスのために出版したケースが含まれているのです。
本記事では、企業出版のことを全く知らない方にも、すでに企業出版を検討している方にもわかりやすく、出版のメリットや費用相場、成功のポイントまで解説します。
目次【本記事の内容】
企業出版とは?
企業出版とは、企業が自社の情報や専門知識を書籍の形式で出版することです。出版社によってカスタム出版とも呼ばれます。
企業出版はブランディングや販促活動の一環として活用され、読者に対して企業の知見や価値を提供し、著者のビジネスにつなげることを目的としています。
近年、経営課題を解決する方法として出版を選ぶ企業は増え続けており、多くの企画が実際に出版に至っています。
そうした需要を背景に、既存の出版社が企業出版サービスを提供するケースも増えており、企業出版を専門とする出版社も出始めているようです。
企業出版の発行部数は、プランによって幅がありますが1000〜1万部くらいです。部数が多く、流通範囲が広くなるほど出版費用が上がります。
流通については通常の商業出版と同様の規模で書店にまくケースや、特約書店のみに配本するケース、オンライン書店のみで流通するケースなどさまざまです。
ただ共通するのは、実際に本を店頭に並べるかどうかは書店側の判断になるため、出版前の想定どおりに書店に並ぶかどうかは出してみるまでわからない、という点です。
本の企画をはじめ内容については、出版社からの提案を著者が承認して決める形になります。自費出版のように自分ですべて作るのではなく、自分の表現したい内容をプロの編集者のスキルを借りて形にできるのは大きなメリットです。
出版社がプロのライターをつけてくれる方式が一般的なため、インタビューに答えて上がってきた原稿に赤入れするだけが著者の負担になります。
なお、以下にフォーウェイが行った、企業出版経験者への効果実感アンケートの結果リンクも掲載します。
上記のメリットが想像以上に発揮されている事実がよくわかるので、興味があればぜひご覧ください(以下の画像をクリック)。

企業出版と他の出版の違い
続いて、企業出版と他の出版形態の違いを説明しましょう。
出版の方式には大きく分けて「商業出版」「自費出版」「企業出版」の3種類があります。
商業出版
商業出版は、出版社が費用を負担して企画し、著者に執筆を依頼する出版方式です。
著者には出版社から、発行部数に応じた印税が支払われます。出版した本が重版すればするほど印税が増える、著者にとっては夢のある出版です。
予算のかけ方は企画によってさまざまで、原稿の書けない著者にはゴーストライターを用意したり、イラストレーターやデザイナーを用意して全ページカラーにしたりと、出版社が「売れる」と判断した企画内容に沿って体制が作られます。
注意点として、商業出版では企画から原稿の内容に至るまで、基本的には出版社に決定権があります。書籍を売ることを目的に出版社が投資し、売れなかった場合のリスクも引き受けるためです。
したがって、自分の本であっても著者の希望は通らない場合が多くなります。
具体的には、「著者にとってはマイナスイメージになりそうな企画でないと出さないと言われた」、「著者の事業の宣伝を入れようとしたら「流通に支障が出る」「作品性が損なわれる」と断られた」、「全然気に入っていないカバーデザインに決められた」などが実際あったケースです。
そのため、商業出版の経験者のなかには、「自社のビジネスメリットにもなるかと思って依頼を受けたけど、全然思いどおりにならなかった」といった不満が残っている方もいるようです。
自費出版
自費出版は、個人が自身の著作物を自己負担で出版する形式です。小説や詩集など趣味で書き溜めていた原稿を出版したい、自分の生きた証を残すために自叙伝を出版したい、といったニーズが多いです。
特徴としては、流通規模の小ささです。自費出版は概ね100〜500部程度の発行部数で、書店流通はまったくなしか、ごく一部の書店への配本に限られます。書店へ配本されるケースでも、「自費出版棚」などの棚にまとめられたり、配本だけされて書棚に並ばなかったりといったケースが多いようです。
内容については、自費出版は100%、著者の思いどおりです。カバーに自作のイラストを入れたりといったアレンジも好きなようにできます。自費出版での出版社の仕事は、持ち込まれた原稿を校正し、デザインレイアウトして印刷することです。
一方で、「内容に自信がないからもっと売れるように改善提案してほしい」といった希望は叶わないと思ったほうが良いでしょう。
企業出版で得られるメリット
企業出版には多くのメリットがあります。
まず、企業出版を通じて自社の専門知識や実績を一冊にまとめることで、業界内での知名度や信頼性を高められます。
出版をきっかけにテレビやラジオなどに著者が出演するケースも多く、そうしたパブリシティが実現すればブランディング効果はさらに高まります。
また、出版物は長期間にわたって流通するため、広告やSNSなどの一時的な宣伝手法と比較して持続的な集客効果が期待できます。
さらに、出版記念のイベントを行ったりオンラインで出版を告知したりすることで、より多くの読者にアクセスすることが可能です。出版をきっかけにしたさまざまな発信施策によって、新たな顧客を集める効果をより高められます。
さらに、採用や人材教育に効果を発揮するのも企業出版の特徴。企業出版の書籍には創業の理念や会社のストーリー、製品の開発秘話などを詳細に盛り込めるからです。
創業して今に至るまでの苦労話、社長のライフストーリー、顧客とのエピソードなどを書籍に盛り込めば、多くの読者の共感を呼べます。
「本を読んで感動したために御社を志望しました!」という求職者が現れるのはよくあるケースです。
さらに、会社が拡大して理念が浸透しづらくなった組織に改めて理念浸透を図るのにも、企業出版は適しています。

企業出版と他の発信施策の比較
続いて、企業出版と他の発信施策の特徴を比べてみましょう。
「紙媒体広告」「WEB広告」「WEB媒体施策」との比較は以下のとおりです。
紙媒体広告との比較
まず、新聞や雑誌といった紙媒体への広告出稿を見てみましょう。
紙媒体の広告はその発行部数の多さを活かし、数万〜数百万の人々にリーチできる点が大きな強みです。
一方で、紙媒体は基本的に広告出稿される号が世に出た瞬間にのみ、効果を発揮する施策となります。効果の長期的継続はありません。
さらに、出稿によってもらえる枠は非常に限られており、盛り込むメッセージはかなり取捨選択しなければいけません。
書籍の場合は、書店流通によって広告効果が持続的に発揮されるのが紙媒体広告と比較した際の強みです。
さらに、詳細な情報や専門知識を一冊分盛り込めるため、読者に対してより深い理解や感動を与えることができます。説明が難しかったりセールスに長期間かかったりする製品・サービスには非常に適した発信手段です。
WEB広告との比較
WEB広告はご存じのとおり、費用を投じている間のみ広告が回ります。メリットとして、少額でも始められること、詳細にデータが出ることで細かな改善アクションを繰り返しやすいことが挙げられます。
一方、実物がある紙媒体以上に「残らない」広告施策であるところが難点。「先につながらないのはわかっているけど、広告止めると売上落ちるから止められない…」と悩む経営者は多いです。
一方、企業出版では紙媒体との比較同様、長期間にわたって読者に提供されて持続的な効果が期待できる点がポイントになります。
また、本によって読者の関心を引きつけるコンテンツを提供することができるため、たとえば「WEB広告で集客した見込み客に書籍をプレゼント」といった合わせ技で受注確度を高める戦略は非常に効果的です。
WEB媒体施策との比較
WEB媒体施策はWEBメディアに対する記事広告出稿や、自社サイトでコンテンツを発信するオウンドメディア施策を指します。
WEBメディアの記事広告はずっと掲載してもらえる場合があり、自社サイトコンテンツも半永久的に残る点は大きなメリットです。
一方でWEBコンテンツはどうしてもユーザーが軽い気持ちで閲覧する傾向にあり、問い合わせなどの反響につなげるには相当クオリティの高いコンテンツを自社で作る必要がある点がハードルになります。
また、WEBコンテンツの閲覧者と書籍の読者はかなり層が違うため、こちらもターゲットや目的によってうまく併用することが成果を出すコツです。
企業出版の成功事例
以上、企業出版の強みについて見てきました。
さらに理解を深めていただくために、ここからは弊社の編集部がお手伝いしてきた実際の出版による成功事例を紹介します。
事例は非常に数多くあるため、代表的な例を簡単に以下にまとめました。
●個人事業の経営コンサルタントがクライアント業界の経営改善ノウハウを説く書籍を企業出版。出版直後から問い合わせが殺到し、最終的に顧問先が30社増加。売上が出版前の3倍に。
●投資用不動産を販売する会社が企業出版。確度の高い問い合わせもさることながら、営業ツールやセミナーのお土産として配ったところ成約率が飛躍的に上昇。本の効果が非常に大きく、プッシュ営業体制の廃止にも成功。
●注文住宅の工務店が家づくりの考え方を出版。近隣の図書館が取り寄せてくれたこともあり、問い合わせがその後5年にもわたって続いた。書籍反響だけで毎年の売上目標を達成できる体制に。
●WEBマーケティング会社が企業出版したところ、コンペ案件にとても強くなった。「書籍を読んで御社に決めました」という声が複数。不調に終わったプレゼンの後に書籍を読んだクライアントから連絡が来て、案件復活したケースも。
●FC型の会員組織が会員集めのため出版。書籍を「紙芝居」がわりにして既存会員が新規会員を募るスタイルで、1000人だった会員が出版後半年で2000人までに。
●自身の健康論を出版した医師。キー局の番組や都内で流れる大手ラジオ局からの出演依頼が複数あり、専門ジャンルにおける第一人者としての位置を確立。現在でもメディアで特集があれば真っ先に取り上げられる先生になり、医院の集客(集患)にも貢献。
他にも効果事例はたくさんありますが、今回は以上です。
企業出版にはこのような、ビジネスモデル自体を変革するような大きな効果が出た事例がたくさんあります。
企業出版の費用相場
では、企業出版の気になる費用相場はいくらくらいなのでしょうか。
まず、企業出版の価格に影響する要素は、以下のとおりです。
・書籍の仕様
通常の企業出版は、四六判と呼ばれる130mm×188mmサイズで中面が白黒、200ページ程度の書籍が多いです。
効率よく文字情報を詰め込めるサイズで、もっともメジャーな判型のため書店も取り扱いやすいからです。
企画内容により、判型を大きくしたい、ページ数を大幅に増やしたい、中面をカラーにしたい、写真やイラストを作って入れたい……といった仕様変更には追加費用がかかってきます。
・部数
部数については当然、多くなればなるほど価格が高くなります。
注意したいのは、部数によって費用が変わる要因は物理的な印刷費用だけではない点。流通拡大に伴う書店営業の経費も加算されますし、書店から本が返品された際に出版社が被る損失のヘッジ分も、部数に応じて増額することになります。
あまり返品が多いといくら出版費用をもらっても損が出てしまう危険があるので、ある程度以上の部数増は受け付けてもらえない出版社もあります。
・制作費用
制作費用は基本的に人件費になります。
まず、ライターをつけて原稿を書いてもらうのか持ち込み原稿なのかで、大きく金額が変わります。
ほか、編集者の地方出張を要望したり、取材先が非常に多岐にわたったりする場合は追加費用になるケースが多いです。
・プロモーション費用
企業出版のプロモーションについて、書店やメディアへのリリースと人力による書店営業は基本的に出版の費用内でやってもらえます。
それ以外に別途費用を払って、WEB広告を回したり新聞広告を出稿したり、イベントを打って出版社に手伝ってもらうことができる会社もあります。
プロモーション費を戦略的に使うことはとても重要で、大部数でただ書店にまくよりも部数を絞った流通でプロモーションのほうに予算を使ったほうが効果的なケースも多いです。出版社に相談してみましょう。
それらを踏まえた一般的な相場としては、450万〜1000万円くらいが企業出版の費用になります。
基本的に値段が上がるほど出版社の規模が大きくなり、流通部数も多くなると考えてください。どの価格帯で出版するのが望ましいかは、出版目的や自社ビジネスの規模によります。
ちょっとしたテクニックとして、原稿を自社で書くと費用は少し相談に乗ってもらえる場合が多いでしょう。

企業出版の流れ
実際に企業出版を行う場合、流れは以下のようになります。
ライターに原稿を書いてもらうパターンです。
ステップ①企画立案
出版の目的やターゲット読者を明確にし、内容やテーマを決定します。企画段階では、書籍の仮タイトルや章立てを作成します。
ステップ②取材・執筆
著者本人や著者の会社の社員へのインタビュー取材を行い、必要な情報を収集します。取材データをもとにライターが執筆作業を進め、章ごとに文章をまとめていきます。
インタビューは一冊分で合計10時間程度になることが多いです。
ステップ③編集・校正
執筆された原稿を、著者と編集者で協力して校正(チェック)します。文章のクオリティや表現を整え、誤字脱字や文法の修正なども行います。
ステップ④デザイン・レイアウト
書籍のデザインやレイアウトを決定します。カバーデザインについては、いくつかの候補から最終的に著者が選ぶパターンが多いです。
使用してほしい色や求めるテイストがあれば、事前に担当編集者に伝えておきましょう。
ステップ⑤印刷・製本
カバーと本文が完成したら、印刷所に原稿を送り、書籍の印刷と製本を行います。ここまで来たら、著者は刷り上がりを待つだけです。印刷が完了したら、いよいよ書店に書籍が並びます。
企業出版の失敗事例と成功のポイント
生涯に一度かもしれない企業出版、絶対に成功させたいのは著者として当然でしょう。
成功のポイントをつかむために、企業出版にありがちな失敗事例を以下に挙げます。
失敗事例①出版目的が絞られていない
企業出版では、「何のために誰に向けて出版するのか」がしっかり定義されていてこそ、クオリティの高い企画ができます。
「集客にも採用にも個人ブランディングにも効かせたい」「若者にもシニア層にも届けたい」など欲張りすぎると、読者から見て役立つ本であると伝わりづらくなってしまいます。
出版目的とターゲットについては、企画書の段階で編集者としっかり議論しましょう。前提条件によって書籍タイトルや原稿の書き方がまったく変わるので、企画書段階の議論は企業出版のプロセスでもっとも大切です。
失敗事例②ターゲット読者の選定ミス
企業出版では、ターゲット読者のニーズや興味に合わせた出版物を提供することが重要です。
たとえば、マーケティングの初心者向けに書籍を出版したいのに、コトラーのマーケティング理論などを完璧に理解していないとわからないような高度な内容で本を書いても、ミスマッチになってしまいます。
ほか、そもそも本を読まない層をターゲットにしてしまうミスもあります。一例として10代女性などは、ファッション系やタレントものなどでない限り、出版してもほとんど本を買ってもらえないので注意しましょう。
失敗事例③広告的な内容にしすぎる
読者のニーズや要求を意識せず、自社の情報や宣伝ばかりを強調した内容にしてしまうのも、よくある失敗ケースです。
せっかく費用を投じての出版ですから、著者として自社を存分に宣伝したいのは当然です。ただし、書籍は読者にお金を出して買ってもらうもの。「広告だ」という認識で読者は本を手に取っていないので、著者の宣伝色が強すぎるとかなり違和感をもたれます。
「伝えたいこと」を「価値あるコンテンツ」に変更するためには、編集者を使い倒すのがコツです。
失敗事例④ターゲットに合わないデザイン
カバーをはじめとするデザインを選ぶうえでは、「ターゲットの好み」に合わせるのがとても重要です。
よくやってしまうのが、著者が「自分の好み」でデザインを指定してしまうパターン。著者の好みがターゲットの求めるデザインに合致するとは限らず、あまり自身の意向を強く押しすぎると多くの場合、違和感のあるデザインになってしまいます。
それを避けるため、どうしても譲れない部分は伝えつつも優秀な編集者の提案に任せたほうが出版効果は見込みやすいでしょう。
まとめ
以上、企業出版についてまとめました。
企業出版は、しっかりしたパートナー出版社と戦略的に取り組めば、投資対効果としてほかの施策ではあり得ないほどの効果が見込めます。
上記のコラムを参考に、企業出版という選択肢をぜひ検討してみてください。
なお、フォーウェイグループの出版社パノラボのWEBサイトにて、よくある質問のQ&Aなど、さらなるお得情報をまとめています。
よろしければ合わせてご覧ください(以下、画像をクリック!)。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、ディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。
企業SNSを運用したいが、やり方がわからないーーこのように考えるマーケティングや広報の担当者は多いことでしょう。
以前は「個人の遊び」という印象が強かったSNSですが、時代はすっかり変わりました。SNSはビジネスにおけるコミュニケーションの重要な一部分である、という認識が多くの企業に浸透してきたのです。
しかし、企業SNSのアカウントが乱立するなかで、ビジネスにおけるメリットをきちんと獲得できているケースはごく一部と言わざるを得ません。
そこで本記事では、企業SNSの運用を考える方向けに、SNSによってビジネスメリットを実現する「運用のやり方」を解説します。
目次【本記事の内容】
企業のSNS運用とは?
企業にとってSNS運用は、ビジネスの成長に欠かせないものとなっています。
企業のSNS運用は、一言でいえば「ビジネス目的」である点が最大のポイント。個人のアカウントに比べてよりプロフェッショナルで戦略的な運用のやり方が求められます。
個人のSNS運用との違い
個人のSNS運用は、主に自己表現や交流が目的です。もちろんSNSを通じたマネタイズに成功しているインフルエンサーなどの個人はいますが、そうした人たちはビジネス目的の運用という意味で、個人の趣味的なアカウントとは違う種類の運用だと言えるでしょう。
企業のSNS運用は、商品やサービスのプロモーションやブランドイメージの向上など、ビジネス上の目的があります。そのため、やり方としても投稿内容や投稿頻度、ターゲット層など戦略的な視点が求められます。
また、ユーザーに悪印象を与えないようにする気配りも、個人アカウントに比べてより重要になるのです。
SNSマーケティングとの違い
SNSマーケティングは、SNSを活用してマーケティング活動を行うことです。
具体的には、下記のようなやり方があります。
・インフルエンサーマーケティング
・SNS広告運用
・ソーシャルリスニング
・SNSキャンペーン施策の実施
総じて言えることとして、費用を投じたタイミングにだけ効果を発揮し、商品購入や問い合わせなど直接的なリターンを目指すのがSNS運用以外のSNSマーケティングです。広告施策としての色が強い取り組み、とも言い換えられます。
一方でSNS運用はSNSマーケティングのくくりにはありますが、下記のような特徴があります。
・オーガニック投稿として自由度の高い発信が可能
・ユーザーとのコミュニケーションによりファン化を促進できる
・運用をやめたり頻度を鈍らせたりしてもアカウントや過去の投稿は残る
・一度フォローしてもらったユーザーをアカウントの資産として持ち続けられる
・長期にわたる施策の継続がやりやすい
これらの特徴により、長期的なブランディングを目指したりマーケティングの基盤を作ったりといった目的を達成するために適しているのが、SNS運用です。

SNS運用が重要になっている理由
SNS運用がビジネスにおいて重要になっているトレンドは、データからもわかります。
「ソーシャルメディアマーケティング市場、2023年ついに1兆円を突破の予測【サイバー・バズ/デジタルインファクト調べ】」(https://webtan.impress.co.jp/n/2022/11/11/43642)によると、ソーシャルメディアマーケティングの市場規模は2020年の5,971億円から2022年には9,317億円へと大幅増加。
2027年には1兆8,868億円にまで市場が拡大すると推計されています。
SNS運用はやり方を工夫すれば大きなリターンを得られる一方で、フォロワーを伸ばすためにはどうしても一定の時間が必要です。SNSの市場が伸びていくなかで、早く始めた企業ほど成功に近づくのは間違いありません。
SNS運用によって得られるメリット
ここで、企業のSNS運用によって得られるメリットを改めて整理しましょう。
大きくいうと、以下のとおりです。
・商品やサービスのプロモーションができる
・自社ターゲット層に直接訴求できる
・顧客とのコミュニケーションを深めることができる
・企業のブランドイメージを向上させることができる
・リアルタイムな情報の発信が可能になる
いずれにも共通するのが、SNS運用によるメリットの発揮とは運用のやり方にかかっている、ということです。
SNSアカウントがあるだけで売上につながるような理想的状況を作るには、狙ったターゲット層のフォロワーをたくさん抱えた「強い」アカウントを作る労力を惜しまないのが、成功事例に共通した特徴です。
各SNSの特徴と運用のコツ
一言にSNSといっても、種類は様々です。母体となる会社もそれぞれ違います。
SNSの種類によって、やり方や発信すべき内容は異なります。
主要なSNSの特徴について、運用のコツも含めて紹介しましょう。
Instagram
Instagramは、写真や動画を投稿するSNSです。ビジネスにおいては、商品の宣伝やイメージアップに活用されることが多く、特に若い世代に人気があります。
ただ、40代以上の層も利用率は低いものの、実数でいうと若年層に匹敵しており、実は全年齢に向けたアプローチにも使えるSNSがInstagramです。
Instagramの運用のポイントは簡単に以下の通りです。
・ハッシュタグや発見タブによって投稿を検索されやすくする。
・投稿のビジュアルについて方向性を定め、ユーザーに価値を感じてもらえる投稿を一定頻度で続ける。
・ストーリーズ機能を使い、日常的な情報を発信することでフォロワーとのコミュニケーションを深める。
・インスタライブを使い、フォロワーとの関係性をより強化する。
勘違いされがちですが、「発信者のビジュアルが優れていて顔出しできる」「商品の綺麗な宣伝写真がたくさんある」などの要素はInstagram運用で必須ではありません。
「商品のターゲット層が興味を持つノウハウを発信する」「日常風景の投稿でユーザーと距離感を縮める」など企画の方向性によって、あらゆるビジネスでInstagramの強みを発揮できます。
Twitter
Twitterは、140文字以内(Twitter Blue加入者はそれ以上も可能)の短い文章を投稿することができるSNSです。
主にリアルタイム情報の収集や発信に使われ、特にニュースやトレンドに関する情報が多く取り扱われています。
Twitterの運用のポイントは以下の通りです。
・アカウントのテーマに沿った自分なりの「情報提供」と「持論」を発信してフォロワーを増やす。
・他のアカウントとコミュニケーションを増やし、タイムライン上の表示優先度を高める。
・他のアカウントをフォローし、フォロー返しを獲得することでフォロワーを増やす。
Twitterは実名顔出しで運用するアカウントが多く、アカウント同士のコミュニケーションが非常に重視されるカルチャーのSNSです。
企業アカウントとして活用する場合でも、事務的な発信だけでなく「中の人」の人柄が感じられるアカウントが好まれます。
リツイート機能でツイートが大きく拡散される仕様により、投稿が大きくバズる可能性のあるSNSでもあります。
Facebook
Facebookは、世界で最も利用者数の多いSNSの一つです。友達や家族とのコミュニケーションが中心ですが、ビジネスにも活用されることが多く、商品の販売やブランドの発信などに使われます。
Facebookの運用のポイントは以下の通りです。
・定期的にコンテンツを投稿することで、フォロワーの獲得やエンゲージメントの向上を目指す。
・Facebookページを作成し、“いいね”を獲得することで拡散力を高める。
・Facebookグループを作成し、ファンコミュニティを形成することで、ファンとの交流を深める。
Facebookは一定年齢以上の人のビジネス活用においては根強い人気のあるSNSです。
ただ、友達に追加する人数に5000人という制限があるため、つながりをたくさん増やして大きく拡散しようとする運用方針には向きません。
関係性のある相手から自社への認知を維持したり、仕事の相談をもらいやすくしたりする運用がFacebook活用のコツです。
LinkedIn
LinkedInは、ビジネス関係者が集まるSNSです。求人情報やビジネスマッチングなどに使われることが多く、ビジネスユースに特化したSNSであると言えます。
LinkedInの運用のコツは以下のとおりです。
・原則実名登録なので、反感を招くような投稿は避ける。
・他のアカウントと交流し、コミュニティなどにも積極的に参加する。
・ターゲットに対して積極的にDMを送る。
いわゆる営業のためのDMや採用DMは他のSNSだと嫌がられる場合がありますが、LinkedInはビジネスSNSである側面から、他アカウントへの直接アプローチは比較的、受け入れられているのが特徴です。
ただし、大量のスパム送信はLinkedIn側から制限をかけられる危険があります。
丁寧に絞り込んだターゲットアカウントに対し、一通一通、心を込めてDMを送ることが成果の秘訣です。

SNS運用を始める前に決めること5
続いてはSNS運用の実践編です。
SNS運用は、やり方を決めずにとりあえず始めてみても成功率は低いです。
ビジネスにつなげるためには、事前準備がカギを握ります。
事前準備として考えるべき項目は、以下のとおりです。
決めること①運用の目的
SNSを始める前に、まずは運用の目的を明確にすることが必要です。
例えば、ブランド認知度の向上、製品やサービスの販売促進、情報発信や顧客対応など、目的は様々です。
目的に応じて、運用するSNSの種類やコンテンツ、投稿頻度、投稿内容、ターゲット層などが異なるため、運用の目的をはっきりと決めてから取り組むことが重要です。
気をつけたいのが、「運用目的は売上に決まっているでしょ」と単純に決めてしまうこと。SNS運用は短期的な売上効果だけでなく、ブランディング効果やファンユーザーの獲得など様々な尺度での効果を視野に入れる必要があります。
長期的にアカウントを育てる施策だけに、短期の集客では広告施策より数値が劣る場合が多く、運用目的を売上だけと定めてしまうとスムーズな運用が進まない危険性が高いのです。
短期で何を目的にするのか、中期〜長期で何を目指すのか……など、細かく設計するのが成功するコツです。
▼SNS運用の目的設定については、過去コラム『SNS運用で大切な「目的設定」とは?運用効果を最大化する秘訣を徹底解説』で解説しているので、こちらもご参照ください。
決めること②運用体制
SNS運用では、運用担当者やチームの体制を整えることも大切です。
運用にあたっては、誰が投稿するのか、どのようなスケジュールで投稿するのか、コメントやメッセージの返信は誰が担当するのか、といったことを明確にしておく必要があります。
また、社内で運用する場合は、社員の研修やマニュアル作成なども必要かもしれません。
会社としてSNS運用に取り組むときの体制で重要なのは、組織として担当者をフォローアップして運用を管理する仕組みをつくることです。
社内の担当者はほとんどの場合、SNSのプロではありません。「いい感じにやっておいてくれ」と丸投げして放置していると、運用の目的が達成できないどころか投稿やアクション自体が止まってしまうケースも珍しくありません。
自社の貴重なリソースを使って、徒労に終わらないように気をつけましょう。
決めること③アカウントの方向性
SNSアカウントの方向性についても、事前に決めておくことが重要です。
たとえば、ファッションブランドのアカウントであれば、コーディネートの紹介や新作アイテムの情報を発信することが求められます。
一方で、医療機関のアカウントであれば、健康情報や病気の予防・治療についての情報提供がいいかもしれません。アカウントの方向性を明確にしておくことで、フォロワーの期待に応えることができ、効果的な運用が可能になります。
例えばSNS運用の代行を請け負うプロであれば、クライアントへのヒアリングをもとにペルソナシートやアカウント構成シートといった資料を作成します。
ターゲット層や運用目的に合わせてデザインのトンマナから投稿文体まで細かく設定し、ブレない運用を実現するのです。
決めること④ターゲット層
SNSを利用するユーザーは、それぞれ年齢層や性別、興味関心、ライフスタイルなどが異なります。運用するアカウントのターゲット層を明確にし、その層に合った投稿やコンテンツを提供することが必要です。
また、ターゲット層に応じて、運用するSNSや投稿する時間帯、投稿内容、コンテンツの種類なども変わってきます。
このターゲット設定は、「30代以上の女性」など大まかすぎるくくりではあまり意味がありません。
よくマーケティングで使われる「ペルソナ(代表的なターゲット像の架空のプロフィール)」を設定するのも効果的でしょう。
誰か一人に深く刺さるコンテンツは他の人にも刺さる、というのがSNS運用の原則です。
決めること⑤具体的なタスクとスケジュール
SNSの運用においては、具体的なタスクとスケジュールを決めておくことが大切です。どのようなコンテンツを、どのようなタイミングで発信するのかを明確にすることで、運用がスムーズに行われます。
また、週次や月次での運用の報告や評価を行い、必要に応じて改善を行うことも大切です。
コツとしては、とにかく曖昧さを残さないこと。「ネタがあるときに投稿する」「なるべく他のアカウントに“いいね”する」といったルール設定でなく明確に行動目標を決めましょう。
実際ちゃんとやってみると担当者にかなりの負担がかかりますが、強いアカウントを育てるにはそれなりの努力が必要です。
SNS運用の効果測定と運用改善
続いて、運用開始後のやり方についてです。
「SNS運用の効果はどのように測定して改善したらいいの?」と思われる方も多いかもしれません。
たとえば、計測指標には下記が考えられます。
・フォロワー数
・リーチ数
・エンゲージメント数(「いいね!」やコメント数など)
・コンバージョン数(集客数、商品の売上数など)
計測すべき指標は、運用目的やどのSNSを用いるかによって変わってきます。
たとえば対面アポイントの獲得を目標にする運用なら、DMのうちのアポイント率が指標になるでしょう。改善項目としては普段の投稿の質よりも、アカウントの信頼性を高めるためのフォロワー増やDM文面の改善などの優先順位が高くなります。
おすすめとして、ある程度フォロワーが増えるまではフォロワー数だけをKPIにするのが良いでしょう。
SNS運用による効果の多くは、ある程度フォロワーがいないと発揮されにくいためです。管理をシンプルにすることで運用もスムーズになります。
SNS運用のよくある失敗例3パターン
続いてSNS運用において、よくある失敗例を3パターン、紹介します。
どれも本当に多いので、失敗の典型例に当てはまらないよう注意して運用しましょう。
失敗例①フォロワー数が増えない
思うようにフォロワーが伸びないのは、SNS運用で最もよくある失敗ケースです。
理由として、たとえば下記が考えられます。
・投稿頻度が低い
多くのSNSは、自アカウントの投稿が他のユーザーのタイムラインに表示されることでフォローが発生します。
したがって、投稿が少なければどんなにアカウントを作り込んでいてもフォロワーが増えるチャンスはほとんどありません。
最低でもInstagramなら週3回、Twitterなら1日1回は投稿が必要です。
・他アカウントとのコミュニケーション不足
「いいね」や「コメント」など他のアカウントに対して自分からアクションするのも、フォロワーを増やすためには重要です。ここを怠るとフォロワーはほとんど増えません。
ただし、アクションする先のアカウントの選定にもコツがあります。リアクションを返してくれそうなアカウントや信頼度の高いアカウントの共通点を見出し、適切な相手に対してコミュニケーションを取る必要があります。
失敗例②運用が止まってしまう
前述したように、SNS運用がストップしてしまう失敗事例はとても多いです。
その理由のほとんどは、はっきり方針を決めずに担当者に丸投げしたきり管理しない運用体制にあります。
投稿スケジュールの明確な設定と投稿物の確認、定例の確認ミーティングなどは組織内で必ず行いましょう。
また、「売上につながっていないからものすごくクオリティの高い投稿をしなきゃ」など、成果を焦って答えのない課題を設定してしまうのも投稿ストップの原因になります。
SNSは定期的にコンテンツを発信して自アカウントにあった運用のやり方を探っていくプロセスがとても重要です。むやみにクオリティにこだわるよりも継続的な運用を重視しましょう。
失敗例③運用の方向性が迷走する
SNSの運用は、アカウントの方向性を守ることがとても重要です。
失敗例②に近いですが、成果を焦って方向性の切り替えを連発し、コンセプトのよくわからないアカウントになってしまうのもよくある失敗パターンです。
どんな方向性を試してみても、運用初期に一つの投稿でわかりやすい効果が発揮されることはなかなかありません。
まずは運用開始前のコンセプト設計を細かく行い、決めた方向性に則って腰を据えて取り組みましょう。そうすれば長期的な成果に高い確率でつながります。
SNSの炎上を防ぐ対応策4選
SNS運用において、炎上を気にする方は多いかもしれません。
企業のSNS活用が普及するにあたって、炎上してしまった事例も多く聞かれるようになりました。
そこで以下に、SNSの炎上を防ぐための対応策を紹介します。
炎上防止策①投稿ガイドラインの策定
SNS運用を始める前に、社内でSNSマニュアルを策定しましょう。
このマニュアルには、発信内容のチェックや、危険な発言を行わないようにするためのガイドラインなどが含まれています。
ガイドラインを設定する際には、ぜひSNS慣れした若いスタッフの力を借りてください。普段からSNSに慣れ親しんだ人間であれば、それぞれのSNSにおけるマナーを感覚で理解しています。
若いスタッフにたたき台をつくってもらったうえで、広報やリスク管理担当などプロの目で見てブラッシュアップする進め方がおすすめです。
炎上防止策②対応ガイドラインの共有
もしも炎上騒ぎが起こってしまった場合には、迅速かつ的確な対応が必要です。SNS上でのトラブルの拡散を防ぐために、炎上した場合には速やかに謝罪し、原因究明を行いましょう。
ただし、SNS運用に慣れていない企業が担当者任せにする体制は危険です。機転をきかせたつもりが火に油を注いでしまう可能性もあります。
投稿物だけでなく、炎上懸念がある場合の対応についても社内でガイドラインを設定し、フローを明確にするのがおすすめです。
弁護士やPR会社などの外部専門家にリアルタイムで相談できる体制を構築しておくのも効果的でしょう。
炎上防止策③投稿監視体制の整備
SNS上でのトラブルを未然に防ぐためには、定期的にSNSのコンテンツを監視し、問題のあるコメントや投稿に対して迅速に対応することが必要です。
また、不適切なコメントや投稿があった場合には、速やかに削除し、投稿者に対して注意喚起を行う必要があります。
投稿の監視には、「上司が毎日11時にチェック」「広報が朝礼でチェック」など、担当者ではなく第三者的な目線でチェックを入れる決まりごとを作っておきましょう。
社内リソース的に難しければアルバイト数人でチェックする体制でも、一般的な目線による第三者チェックは入れられます。
炎上防止策④炎上事例の社内共有
SNSの炎上を防ぐのにもっとも大事なのは、抽象的ながら社内のリテラシーです。
関係者の知識を増やし教育をしていくのが、時間はかかりますが炎上を防ぐために最も有効な施策です。
そこで、日々SNS上の炎上情報をウォッチし、社内で定期的に共有、ポイントを話し合う機会を設けましょう。
特に自社と業種や運用目的の近いアカウントが炎上してしまった事例は、貴重な学習材料になります。

SNS運用で一番大切なポイントとは?
ここまで、SNS運用のノウハウについて述べてきました。
では、SNS運用において最も大事なポイントとは、なんなのでしょうか?
それは、「投稿コンテンツ」です。
他アカウントとのコミュニケーションや、広告・キャンペーンとの併用もビジネスで成果を出すためには有効ですが、これらは要領がわかれば競合他社でも実行可能です。
しかし、自アカウントならではの良質な投稿は、決して差別化のできないコンテンツになります。良質なコンテンツでフォロワーを獲得すれば、ファン顧客という得がたい財産になるでしょう。
濃いファンを直接自社の側から取りにいけるのは、企業のSNS運用がもつ最大の魅力だといえます。
いわば雑誌などのメディア編集者になったつもりで、ユーザーにとって価値のあるコンテンツを定期的に発信するのが、SNS運用の極意です。
外注の運用パートナーは入れるべきか
SNS運用を外注化するかどうかは、企業の状況や目的によって異なります。
外注するメリットとしては、運用に必要な人材をスピーディに確保できることや、専門的なノウハウを持った運用パートナーを活用できることが挙げられます。
一つの考え方として、「人手が足りない」「アカウントを育てるのにそこまで長い期間をかけられない」という課題がある場合、外注を検討することがおすすめです。
ここまで述べたように、SNS運用をきちんとやると担当者にも組織にも意外に手間がかかります。
社員一人がほとんど張り付きになっている会社も多いです。
そうなると、人件費的にSNS運用会社に頼んだほうが安くつく場合も考えられます。
また、外注先は当然ノウハウを持っているため、プロの運用によって最短経路でアカウントを育ててくれるのは大きなポイントでしょう。特に投稿コンテンツの企画は、一般企業のリソースではなかなか難しい場合も多いです。
ゼロの状態から探り探りでSNS運用をスタートすると、継続できても成果が出るのは数年後といったケースが少なくありません。その時間を短縮して成果を確実にする選択肢として、外注を活用するのはおすすめです。
SNS運用に関するおすすめ書籍4選
最後に、企業のSNS運用者にとって役に立つおすすめ書籍を4冊、紹介しましょう。
『平均4.2カ月で1万フォロワーを実現する プロ目線のインスタ運用法』石川侑輝 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4295407127/
アカウントの設定方法からフォロワーが増えやすいプロフィールの書き方、投稿内容の考え方などわかりやすくまとまった一冊。2022年7月出版と比較的、新しいのもポイントです。
SNS界隈は非常に変化の激しい業界なので、なるべく新しくて売れている本から情報収集するのがコツです。
『世界一やさしい Twitter集客・運用の教科書 1年生』岳野めぐみ (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4800720990/
Twitterのビジネス活用についての書籍です。
Twitterは日本で浸透した歴史が古く、多くのユーザーを獲得しています。基本的に短文を投稿するのみのシンプルな仕様ですが、ビジネスに繋げるのにはちょっとしたノウハウが必要です。
本書なら、Twitterで集客したい方の入門書としておすすめです。
『LinkedIn(リンクトイン)活用大全 情報発信、起業、転職、人脈…ビジネスで一番使えるSNS』松本 淳 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4534059205/
まだ日本にはほとんどない、LinkedInのビジネス活用についての書籍です。
実際にLinkedInを数多くのビジネスに繋げたLinkedInインフルエンサーによる執筆で、LinkedInの基本知識からアカウント設定の方法まで具体的に述べられています。
これからLinkedInを始める方にはぜひ読んでほしい一冊です。
『【超完全版】YouTube大全 6ヶ月でチャンネル登録者数を10万人にする方法』小山 竜央 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/404605557X/
今回のコラムで個別には扱いませんでしたが、YouTubeもコンテンツによって視聴回数やチャンネル登録を増やすという意味では、運用の性質がSNSにとても近いツールです。
こちらの書籍では、実際に10万登録を超えるチャンネルを多数作り出してきたマーケターがYouTube運用を徹底的に解説しています。
特にユーザー受けするコンテンツの考え方は本質的で、YouTubeだけでなく他のSNSやコラム記事などあらゆる媒体にノウハウを転用できます。
まとめ
以上、ビジネスに繋がるSNS運用について述べました。
ビジネスコミュニケーションにおけるSNSの重要性が高まっている昨今、とにかくやらなきゃ!と考える企業は多いです。
ただし、SNS活用はやり方次第な部分がとても多いです。
それぞれのSNSの特徴を理解し、運用の方針をしっかりと定め、戦略的なSNS運用をスタートさせましょう。
参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、ディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。
YouTubeの視聴者数は年々増加しており、そのプラットフォームを活用するために企業公式チャンネルを立ち上げる企業が急増しています。
しかし、チャンネル運用を始めても1年後にはやめてしまう企業が大半です。
今回の記事では、企業がYouTubeチャンネルを開設するメリットや開設方法、そして運用方法のコツを解説します。
目次【本記事の内容】
YouTubeと企業のチャンネル開設
YouTubeは、世界最大の動画共有プラットフォームで、日本国内の月間利用者数は7500万人以上にものぼります(Think with Googleより)。
テレビでYouTubeを視聴する層は月間2000万人以上と言われており、テレビ同然かそれ以上の生活に根差したコンテンツです。
このような流れを受けて、YouTubeチャンネルを開設し運用する企業が増えています。
企業がYouTubeチャンネルを運用する意義とは
YouTubeはほかのSNSとは異なり、動画主体の配信サービスのため、視覚的に企業の商品やサービスの魅力を伝えやすい特徴があります。
InstagramやFacebook、Twitter、TikTokでも動画の投稿は可能ですが、数分以上にわたる長尺の動画配信となると離脱しやすいデメリットがあります。
長尺コンテンツの視聴が当たり前のYouTubeであれば、商品やサービスの使い方、メリットなど短時間では伝えきれない情報を、効果的に伝えることができるのです。
動画の特性上、視聴者の時間を長く拘束することができるのも魅力です。企画の工夫次第では、ながら見需要にも応えられるため、チャンネル再生をし続けてもらうことも期待できます。
ほかの情報発信施策と比較して、ユーザーとの接点が長く取れるので、チャンネルおよび企業へのファン化が見込めるのです。
▼各種SNSについては「SNS運用で大切な「目的設定」とは?運用効果を最大化する秘訣を徹底解説」でも詳細に紹介しているので参照ください。
◆YouTubeはSEOでも優位に立てる
SEOとは「Search Engine Optimization」の頭文字をとった略語で、検索エンジン最適化のことです。
動画コンテンツは検索ユーザーにとって有益な情報だと、Googleのクローラーに判断される傾向が高く、Google検索では検索結果の上位になりやすくなっています。
記事型のコラムコンテンツのほか、動画も戦略的にコンテンツを充実させることで、競合他社よりもSEOの検索性で優位に立てる可能性が高まるのです。
▼SEO対策については「SEO対策とは? 効果的な戦略の組み立て方と対策方法」でも解説しているので、こちらも合わせてお読みください。
企業がYouTubeチャンネルを開設する前の準備
企業が公式チャンネルとしてYouTubeを利用する場合、商品販促や集客、会社のブランディングなどの目的があるはずです。
マーケティングの手段としてYouTubeチャンネルを利用するならば、事前にYouTubeチャンネル運用のための準備をしておきましょう。
準備その1:アイコン画像とバナー画像を用意する
YouTubeチャンネルの顔となる画像を用意しましょう。
アイコン画像は配信動画やコメントの横に表示されます。画像サイズは98×98ピクセルの正方形もしくは4MB以下の円形の画像で、800×800ピクセルを推奨されています(YouTubeヘルプを参照)。
バナー画像はYouTubeチャンネルの上部に表示される横長の画像です。
アスペクト比は16:9、2048×1152ピクセル以上の6MB以上の画像を推奨されています。
画像は社員の集合写真などを安易に選択すると、ユーザーに訴えかける力が弱くなってしまいます。企業の公式チャンネルとしてはブランドイメージに繋がる部分なので、チャンネルのコンセプトを魅力的に伝える広告バナーのようなデザインを作成することをおすすめします。
準備その2:チャンネル名の決定
企業公式チャンネルの名前は、企業のブランドイメージを確立するうえで重要です。
企業名やブランド名が入るなど、ユーザーがわかりやすいことが前提です。
YouTubeチャンネルの登録者数が増えると、チャンネル名で認識されることも多いため、キャッチーで呼びやすく覚えやすいものが良いでしょう。
ただし、カテゴリを狭めすぎたチャンネル名にしてしまうと、企画で様々な方向性を試しづらくなり自分たちの首を絞めることになりえます。そのため、ジャンルのイメージはわかるように設定し、大まかにくくるぐらいが良いでしょう。
準備その3:チャンネルの説明欄の入力
YouTubeチャンネルの説明をまとめましょう。
チャンネルの[概要]セクションや検索結果に表示されるため、チャンネルの詳細がわかりやすい文章にすることです。企業の商品やサービス、発信するコンテンツの内容など、企業としてユーザーに知ってほしい内容は過不足なく記載しましょう。
ほか、企業のホームページや特設ページ、ECサイトといった商品購入ページのURLを導線として貼り付けることが可能です。YouTubeチャンネルの視聴をきっかけに関心を持ったユーザーが問い合わせしやすいように、問い合わせ先としてメールアドレスを記載するのも一つの手段です。
YouTubeチャンネル開設から動画投稿までのステップ
さて、YouTubeチャンネルを開設するにはいくつかのステップを踏まなければなりません。その手順を紹介しましょう。
ステップ1:Googleアカウントを作成する
まず、YouTubeにログインするためにGoogleアカウントを用意しましょう。
Googleアカウントを作成し、YouTubeにログインできるようになれば、動画にコメントや高評価・低評価をつけることができるようになります。
ステップ2:YouTubeアカウントの種類を選択する
用意したGoogleアカウントでYouTubeにログインしたら、次はYouTubeチャンネルの種類を選びましょう。
YouTubeチャンネルの種類には、個人用の「デフォルトアカウント」とチャンネル専用の「ブランドアカウント」の2種類があります。
デフォルトアカウントは最初にGoogleアカウントを作成した時に作成されるアカウントで、YouTubeチャンネル用にはブランドアカウントを選択しましょう。
デフォルトアカウントでYouTubeチャンネルを開設してしまうと、個人名およびGoogleアカウントの名前がチャンネル名となってしまいます。
チャンネル作成の際に注意したいのは、ブランドアカウントを作成するにはパソコンやスマートフォンのブラウザを利用することです。スマホのYouTubeアプリからはブランドアカウントは作成できないので注意しましょう。
ステップ3:YouTubeチャンネルを作成する
ブランドアカウントを選択したら、YouTubeチャンネルの作成ができます。
「チャンネルを作成」をクリックして、「名前」と「画像」の入力画面が立ち上がるので、ここに準備しておいた「チャンネル名」と「アイコン画像」を設定して、「チャンネルを作成」をクリックします。
チャンネル作成が完了したら、「チャンネルのカスタマイズ」>「ブランディング」「基本情報」から事前準備した情報を入力しましょう。
ステップ4:動画をアップロードする
メニューリストの「コンテンツ」をクリックし、右上の「アップロード」を選択して動画をアップロードします。
必須項目の「タイトル」と「視聴者情報」のチェックのほか、任意項目の動画の説明やサムネイルの設定も視聴されるには重要な項目です。
アップロード時には「視聴者」情報の設定として、子ども向けか子ども向けではないかを選択する必要があります。子ども向けコンテンツを選択した場合、広告や通知の機能が利用できませんが、ほかの子ども向けコンテンツと一緒におすすめされる可能性が高くなります。
最後に、「公開」「限定公開」「非公開」の公開設定をします。
企業の公式チャンネルとして運営する場合、基本的には「公開」設定になると思いますが、「イベント参加者限定!」といったコンテンツの場合は、運用目的やコンテンツの内容に合わせて限定公開などの設定をしましょう。
YouTubeチャンネルの運用方法について
いざ、YouTubeチャンネルを開設しても、継続的に動画コンテンツを更新しなければ意味がありません。
YouTubeチャンネルの運用を成功させるには、いくつかの条件を満たす必要があります。
条件1:専属の担当者をつける
企業のYouTubeチャンネル運用において、とくに重要なのは専属の担当者を置くことです。
登録者数10万人以上のYouTubeチャンネル数は7700以上あり、年々増え続けています(Think with Googleより)。ユーザーのYouTube視聴者数や視聴率は増加傾向にあるなかで、チャンネル数も増加しているため、片手間でなんとなく運用していてもうまくいくはずがありません。
YouTubeチャンネルを運用すると決めたならば、プロの運用代行業者に依頼することも選択肢に入れつつ、本気で取り組むことです。
▼YouTube運用代行支援のサービスはこちら。
条件2:毎月数本を継続的に投稿する
YouTubeチャンネルを立ち上げた時の主なKPIは「再生回数」と「チャンネル登録者数」です。
なかでも最初に重視すべきは「再生回数」です。YouTubeのアルゴリズム上、多くの人に視聴されたという事実を作り上げないことには認知されることはありません。
そのため、再生回数を増やすべく毎月のように継続的に、動画を更新し続ける必要があるのです。とくに誰もが視聴できるYouTubeという特性上、たまたまバズって視聴回数が数千〜数万回となることもありますが、基本的には再生回数1000回未満でもコツコツとやり続ける継続性が大事です。
もう一つのKPIであるチャンネル登録者数を増やすためにも、まずは再生回数を伸ばしながら継続的な動画コンテンツの更新を心がけましょう。
条件3:視聴者が望むテーマを分析して投稿する
YouTubeに限らず、広告含め情報が量産されている現代において、ひとりよがりなコンテンツを投稿し続けても効果はありません。
流行りの音楽に乗せて踊っていたり、自社の商品の良い部分だけをアピールしたりすることなどです。
YouTube視聴者は自分の趣味や目的に合わせて、有益な情報を求めています。
たとえば、悩みを解決する情報提供型のコンテンツなど、視聴者のためになる情報を提供しなければ興味を持ったチャンネル登録者は増えないでしょう。
さらに、運営側はそんな中から再生回数が伸びた動画があれば、その要因を分析して同じテーマの動画を量産するなどの工夫が必要です。
有益な情報を提供し続けるYouTubeチャンネルというブランディングが確立できれば、信頼感も上がり、会社への関心も高まってくるはずです。
YouTubeは集中と継続が大事
以上、企業のYouTubeチャンネル運用のメリットや開設方法、運用方法について紹介しました。
企業ブランディングの一環として、YouTubeチャンネルは視覚的に残りやすく、チャンネル登録者数が増えれば認知も向上するなどメリットも多いでしょう。
長期的な目線で運用を設計し、専任の担当者が集中して動画制作と運用を続けられる環境を作ることが重要といえます。
世界的に利用者数の多いYouTubeだからこそ、チャンネル運用には本気で取り組みましょう。
参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、ディレクター)
慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。
SNS運用では、フォロワーが多い有名な企業公式アカウントなど、成功事例が目を惹きます。
しかし実態は、「フォロワーが増えない」「ビジネス的な効果が出ない」「リソースが足りない」などの理由で、大半の企業で運用がうまくいっていません。
今回の記事では、企業がSNS運用を行うにあたっての目的やメリットなどを整理し、効果的な運用方法について解説します。
企業のSNS運用の目的とは
SNS運用とは、企業が情報発信や商品・サービスの宣伝のために各種SNSアカウントを運用することです。
ここでいうSNSとは、Twitter、Instagram、Facebook、LINEなどのソーシャルネットワーキングサービスを指し、YouTubeやTikTokといった動画系ソーシャルメディアも含みます。
さて、SNS運用を考えたとき、企業は一般的にどのような目的で実施を検討するのでしょうか。
主に次のような理由が多いです。
・企業ブランディング
・自社商品やサービスの告知
・イベントの告知・周知
・口コミ効果によるファン獲得および集客や販売促進
・競合他社との差別化
目的に沿った運用を継続的に続けることで、ファンからの継続的な商品購入やサービスの利用が期待でき、シェアやリツイートによる拡散効果で、大きな宣伝広告費を使うことなく情報拡散が可能になります。
SNSの種類とそれぞれの特徴
次に企業が運用するSNSの種類を、それぞれの特徴と合わせて紹介します。
◆Twitterは情報拡散力に優れる
Twitterは国内の利用者が約4500万人。20代〜30代の利用者が多いですが、近年は40代以上の利用者も増加しており、幅広い年齢層が利用しているSNSです(Twitter公式アカウントのツイートより)。
企業とユーザー同士が「いいね」や「リツイート(RT)」、「リプライ(リプ)」を行うことで、フォロー外のユーザーにも見てもらえる情報拡散性の高さが魅力です。
Twitterは基本的には140文字以内のテキストを投稿する(ツイートする)機能が主な使い方になります。
企業の告知としては、フォロー&リツイートキャンペーンがよく使われており、かなりの拡散力が見込めるうえ、自社の宣伝や商品販促にも効果を発揮する手段です。
<Twitterの特徴>
・情報拡散力が高い
・リアルタイムでのコミュニケーションがとりやすい
・短文での情報発信やコミュニケーションに向く
◆Instagramはビジュアルでの訴求に向く
Instagramは国内の利用者が約3300万人。10代〜20代のユーザーが半数近くを占めています。コロナ禍に30代や40代のユーザーが増えていることもあり、幅広い年代への訴求に向いているSNSといえます(Meta社Newsroomより)。
Instagramは写真や動画などのビジュアルを重視した発信が特徴。ビジュアルメインの視覚的コンテンツの発信になるため、投稿内容には見せ方の工夫が必要です。
健康商品の販売や飲食店などビジュアルで訴求できるアイテムを持つ事業はInstagram運用に向いています。日々の投稿の世界観を統一することで、自社ブランディングに繋がりやすいのもメリットです。
機能としては、24時間限定で配信するストーリーやショップ機能などがあります。
拡散力はTwitterに劣りますが、ハッシュタグ(#)や発見タブの活用により、フォロー外のユーザーにも認知してもらうことは可能です。
<Instagramの特徴>
・フィードとストーリーの使い分けで情報発信ができる
・ハッシュタグや発見タブから共通の趣味のユーザーの流入が見込める
・ビジュアルでの訴求がメイン
◆Facebookは顧客との関係性構築向き
Facebookは国内の利用者が約2,600万人。30代以上の利用者が多く、ビジネスシーンでの利用が多いのが特徴です。全世界で最もユーザーが多いのがこのFacebookです(CNET Japanによるフェイスブック ジャパン代表社独占インタビューより)。
登録上の特徴としては、実名登録制をとっているため、ほかのSNSと比較してプロフィールが精緻に確認できます。
ただし、Facebook広告の活用以外では情報拡散性は低く、すでに繋がりのあるユーザーとの関係性構築で活用するのがおすすめです。
<Facebookの特徴>
・世界的にユーザー数の多いSNS
・実名性が高く、ターゲティングに向いている
・ビジネスシーンでの利用が多い
◆LINEは日本でインフラ化したSNS
LINEは国内の利用者が9400万人を突破しており、日本で最も普及しているSNSです。家族や友人との連絡手段として一般化しており、スマートフォンを持っている人はほとんどが利用していると言ってよいでしょう(LINE For Business公式サイトより)。
LINEの友達機能を利用した企業公式アカウントからの有益な情報発信などで、ユーザーと双方向のコミュニケーションがとりやすいのも特徴です。
一日あたりでのLINEアプリの使用時間が長く、友だちとして繋がっているユーザーに告知が最も届きやすいSNSともいえます。飲食店やヘアサロンなど、地域密着型でサービス展開している企業に向いています。
<LINEの特徴>
・日本で最も利用者数が多く、ほぼインフラ化している
・プッシュ通知機能を使った情報発信ができる
・基本的にはクローズドなメッセージのやり取りのため、友だちとして繋がる必要がある
◆YouTubeはテレビ同然に利用される
YouTubeは日本国内の月間利用者数が7000万人以上といわれており、テレビ代わりの動画視聴SNSとして世界的に普及しています。Google調査情報によると、テレビ画面でYouTubeを視聴する人は1500万人以上といわれています(Think with Googleより)。
企業や商品、サービスの魅力を視覚的に伝えやすく、BtoB企業、BtoC企業どちらでも活用しやすいのが特徴です。
YouTube公式チャンネルを運用する企業も増えており、業界知識を発信したり、製品の使い方の手順を解説したり、導入事例を紹介したりするなど、映像としてユーザーに情報が伝えやすいのはメリットでしょう。
ただし、動画という性質上、企画や撮影など必要な準備も多く、継続的に発信するには専用のスタッフを揃えるか、外部に依頼するなどしないと運営が難しいです。
<YouTubeの特徴>
・テレビ代わりに視聴する動画メディアとして世界的に普及
・チャンネル登録してもらうことでファン化が期待できる
・若年層からシルバー層まで全年齢をカバーできる
◆TikTokは若年層への視覚的アプローチにおすすめ
TikTokは国内のユーザー数が1700万人以上で、若年層を中心として年々利用者数が増加しています。ユーザーは10代〜20代が中心です(App Annieより)。
YouTubeがテレビ代わりの動画メディアである一方で、TikTokは気軽に空き時間で視聴できる動画系SNSとして短尺の動画が配信されるのが特徴。
フォロワー数が少ない状態でも一定の再生数が確保されるため、拡散性はとても高いといえます。
これまでは10代の学生が趣味で動画をアップするのが一般的でしたが、若年層への訴求のためにTikTokを活用する企業も増えています。
<TikTokの特徴>
・TwitterやInstagramと同じように気軽にチェックする利用者が多い
・利用ユーザーは10代〜20代が中心
・視聴回数が一定数担保される
SNS運用のメリットとは
続いて、企業がSNS運用をすることのメリットを確認していきましょう。
メリットその1:認知拡大とユーザーへの刷り込みが同時に実現可能
SNSごとの特徴は前述の通りですが、シェアやリツイート機能など情報拡散が期待できます。
企業がSNS運用を継続的に行うことで、広告と比較して安価に情報発信ができ、フォロワーとコミュニケーションを取り合うことで情報が無限に拡散する効果も期待できるのです。
そもそも自社が知られていないという場合、SNSごとの特徴を踏まえた発信をすることで情報拡散され、潜在層へのアプローチが可能になります。
メリットその2:企業ブランディングに繋がる
SNS運用を継続的に行うことで、企業や商品、サービスに対するブランディング効果が期待できます。
まだ顧客化していない潜在層に対しては、まだ商品やサービスを利用したことがなくても、統一感のある投稿を継続して見せることで¥ブランドイメージを演出可能です。
それによって企業のブランド価値が上がり、メジャーな企業だと認識してもらうことが期待できます。
メリットその3:フォロワーのロイヤリティ向上に寄与
企業が継続的に有益な情報コンテンツを発信し続けることで、ユーザーには信頼感や親近感を抱いてもらうことができます。
このようにロイヤリティが向上すると、自社ブランドや商品に対するファン化が促進でき、他社との競合優位性が圧倒的に上がります。
ファンとなったフォロワーは口コミとして自身のSNSでも情報拡散をしてくれるので、信頼できるユーザーを通した情報発信と集客効果が期待できるのです。
ファン化が促進できれば、リピーターにもなり得るうえ、ユーザーが必要とした時に一番に思い出してもらうことができ、価格競争に陥り図らくなるメリットが大きいです。
SNSでの発信を続けることで、採用面でも効果を発揮します。近年は、就活生が事前に企業のSNSをチェックするようにもなっており、リクルーティングのためにSNSを運用するのもおすすめです。
このようにロイヤリティ向上を狙ったユーザー獲得では、アクティブフォロワーをいかに増やしていくかが重要。
アクティブフォロワーとは、“いいね”や“リプライ”などで継続的な交流があったり、それによりファン化していたりするユーザーのことです。広告などで増やしたロイヤリティの低いフォロワーではなく、日々の投稿やコミュニケーションで繋がりを深く持つことが大切です。
効果的なSNS運用を行うには?注意点を解説
次に、SNSを運用するうえでの注意点を解説していきます。
注意点その1:炎上リスク対策を講じる
SNS運用を検討する際に、よくある心配事が「炎上」です。
情報拡散性が高く、多くのユーザーが見ることができる分、ユーザーに問題視されると最悪の場合は炎上してしまう恐れがあります。
炎上しないためには事前にSNS運用のガイドラインを作っておくことです。炎上を100%回避することは難しいため、いかにリスクを回避できるか、問題が発生した時にどのように対処するかを定めておくことは重要です。
投稿する際には画像や文章をダブルチェックするルールも備えておくとより良いでしょう。
注意点その2:ユーザーが共感するコンテンツを発信し続ける
企業がSNS運用をする目的は、自社の認知向上や集客、商品販促などが挙げられます。
ただ、注意が必要なのは企業都合のひとりよがりな投稿にならないことです。
いかにユーザーにとって魅力のあるコンテンツを作成するかがポイント。もちろん企業の宣伝投稿をしてはいけないわけではありませんが、ユーザーに有益な情報提供を定期的に行わないと敬遠されるアカウントになってしまいます。
たとえば、美容に関心あるユーザーに自社商品のドリンクを販売したい場合、商品のPRだけではユーザーが離れてしまいます。そこで、「お肌に良い食べ物」のような情報コンテンツを用意することで、美肌に憧れるユーザーが有益な情報を提供してくれる信頼あるアカウントとして認識してくれるのです。
コンテンツの質を高める努力は必要ですが、何事もバランスが大事。ユーザーとの“いいね”や“コメント”などの双方向のコミュニケーションも継続的に進めましょう。
注意点その3:運用の目的に合わせた最適なSNS選択する
SNSにはそれぞれに特有の特徴があるため、企業の運用目的に合わせて最適なSNSを選択する必要があります。
目的が曖昧なまま、「とりあえずSNSを始めよう」と企業アカウントだけ作ったところで、運用コストがかかるだけ、もしくは運用が長続きせず放置されてしまうという例が散見されます。
集客などのコンバージョンを得るためには、複数のSNSを活用して、それぞれの特徴に合った運用を心がけましょう。
SNS運用代行のすすめ
いまや企業のSNS運用は必要不可欠です。
しかし、とくに中小企業の場合は運用に専念できる人員を確保できるほどリソースに余裕があるところばかりではありません。
そこで、一つ選択肢としておすすめするのがSNS運用代行の利用です。
「インフルエンサーを活用してフォロワーを増やしましょう!」や「SNS広告の運用を支援します!」という会社はたくさんありますが、日常の運用できちんとフォロワーまで伸ばしてくれる会社は限られています。
運用代行のノウハウがある会社に依頼すれば、日々の投稿物の作成から定期的な更新を実施することで、自社で発信する以上にクオリティの高いコンテンツを発信してくれる可能性があります。
とくに、日常業務を行いながら、自社で質の高い投稿やフォロワーへのアクションを継続的に行うことは至難の業です。
自社従業員のリソースを使って片手間で手探りの運用をするより、ノウハウがあるプロの代行会社に依頼することで結果的に時間的にも人員的にもコスト削減が期待できます。
もちろん代行を専門に行う会社であれば、運用のノウハウがしっかりとあるので、炎上対策もしっかりと講じてくれるでしょう。毎月の運用ノウハウをチェックしていくことで、自社でも運用のノウハウを蓄積することもできます。
<<SNS運用代行のサービスはこちらから!>>
SNSごとの特徴を把握してアクティブフォロワーの獲得を目指そう
以上のように、SNS運用は継続的な情報発信と、ユーザーとの密なコミュニケーションが大事になってきます。
ここまでに解説したSNSごとの特徴や運用のメリットを把握したうえで、企業ブランディングのためのSNS運用を心がけましょう。
自社リソースで運用を継続することが難しい時には、SNS運用の代行会社に相談するのも一つの手段です。
参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、ディレクター)
慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。