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2024.08.16
Branding
建設業にブランディングは必要なのか? その効果と適した手法を解説
日本の経済成長を常に支えてきた、建設業界。
しかし近年、深刻な人材不足が業界全体の課題となり、ほとんどの会社は先行きが見えずに悩んでいるのが実態です。
そんななか、建設業界でも戦略的な活動による自社ブランディングに成功し、経営課題を解決する事例が増えてきています。
建設会社のブランディングについて、その必要性と適した手法を解説します。
目次【本記事の内容】
- 1.建設業界に広がるブランド構築の意識
- 1-1.背景にある深刻な若者不足
- 1-2.若者から魅力を感じてもらえない!
- 2.建設業のブランディングとは?
- 2-1.従業員10人、おじさんだらけの設備工事会社
- 2-2.ベンチャー企業のようなWEBサイトを制作
- 2-3.女性が活躍する設備工事会社に
- 2-4.効果は採用強化だけではなかった
- 2-5.インナーブランディングの威力
- 3.まとめ
執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター) 慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。 |
建設業界に広がるブランド構築の意識
従来、建築会社であれ土木会社であれ、日本の建設業界に自社の「ブランド」という意識はあまり浸透していませんでした。
しかし、そういった業界の体質が、近年になって変わってきているのです。
背景にある深刻な若者不足
建設会社の意識が変わった背景にあるのは、業界を襲う恒常的な若者不足です。
建設業界に新しく入ってくる新規学卒者はバブル期のピークから激減しており、2000年に約4万7000人いたのが2009年には2万9000人にまで減少しました。
東日本大震災の復興需要やオリンピック関連工事の需要によって近年やや回復してきてはいますが、それでも横ばいを続ける程度にとどまっているのが現状です。
参考:建設業ハンドブック2020
https://www.nikkenren.com/publication/pdf/handbook_2020.pdf
若者から魅力を感じてもらえない!
そんな状況から、建設業界におけるほとんどの企業は、社員が高齢者ばかり。
何年も若者を採用できておらず、そもそも募集広告を出したところで応募がほとんどない、という悩みを多くの会社が抱えています。
そんな状況を打破するため、特に後継者が事業を継いだ直後の会社や、新しく立ち上げられた会社を中心に、ブランディング戦略によって人材を集めようとする機運が高まっているのです。
建設業のブランディングとは?
では、近年注目される建設業のブランディングとは、具体的にどのような手法なのでしょう。
従業員10人、おじさんだらけの設備工事会社
ここからは、実際の成功事例を通してブランディングの手法を紹介します。
M社は東京近郊に所在する設備工事会社。主に電気関係の設備工事を請け負う会社です。
創業家の3代目であるA社長が経営者を引き継いだ際、社員は10人で男性ばかり、平均年齢は50歳をゆうに超えていました。
このままではあと10年もすれば社員と一緒に会社も老衰状態になり、ものづくりの技術がついえてしまう……そう危惧したA社長は、自社ブランディングの施策によって会社を若返らせることを決意したのです。
ベンチャー企業のようなWEBサイトを制作
A社長が踏み切ったのは、WEBサイトの全面改修です。
それまでのWEBサイトは、1ページで簡単に会社の概要を紹介する公式ホームページがあったのみ。公開してから一度も更新されておらず、WEBサイト経由の問い合わせは皆無でした。そもそも、想定する閲覧対象すら決めずになんとなく制作したページだったのです。
A社長はベンチャー企業を中心とした実績を持つデザイン会社とタッグを組み、旧サイトをスタイリッシュなデザインで豊富なコンテンツを保有したコーポレートサイトに刷新しました。
具体的な企画は、代表自身の言葉による事業理念紹介、採用案内ムービー、業務内容が伝わる自社コラム、社員とプロジェクトの紹介など……とにかく情報を豊富にして、あらゆるテーマで自社と事業について広報する役割を自社サイトに持たせました。
女性が活躍する設備工事会社に
サイト改修の効果は、てきめんでした。
まず、採用募集の広告に対する反響率が劇的に上がり、若手人材や女性が次々に面接に訪れたのです。
以前ではあり得なかった、広告経由でないWEBサイト閲覧からの応募者も現れました。
さらに特筆すべきは、応募者が面接に訪れた時点でM社を魅力的に感じている状態であった点です。
「事業理念を読んで、工事会社の仕事に大きな社会的価値を感じた」「映像を見て、品質へのこだわりに共感した」「仕事に取り組む社員さんの姿勢に憧れた」など、応募者の語る志望動機は軒並み具体的で、ほぼすべての人がWEBサイトを見て志望度が高まった状態で面接にやってきました。
このようにM社のイメージや方向性に共感してくれている人材は入社後のミスマッチも少なく、育成もスムーズに。M社はどんどん拡大し、サイト改修から5年で「おじさんばかりの10人」から「女性と若手が活躍する40人」へと大躍進を遂げたのです。
効果は採用強化だけではなかった
WEBサイト改修というM社のブランディング施策の効果は、採用のみにとどまりませんでした。
まず、WEBサイトからの問い合わせを起点にした仕事の受注が、毎月一定数入ってくるようになったのです。
建設業界は、創業者のウデの良さが口コミによって広まり、地域の顧客を獲得できるようになることが重要。経営が安定してからは既存顧客からの相談や顧客紹介で売上を保つのが当たり前の世界です。
そんな常識なので大半の建設会社はWEBによるマーケティングに力を入れておらず、サイトの充実したM社はWEB問い合わせの需要を総取りできました。
インナーブランディングの威力
くわえて、サイトによるコンテンツ発信の価値は、お客様だけでなく社内にも波及しました。
A社長いわく、「サイト改修以降は会社としての考え方を社員みんなが理解してくれるようになり、明らかに仕事の動きが変わった」のだといいます。
実際、社員のモチベーションアップによって工事現場の利益率は以前よりも改善しているそうです。
M社は、ブランディング戦略によって会社の構造を丸ごと変えるほどのインパクトを達成したといえるでしょう。
▶企業のブランディングについてより詳しく知りたい方は、関連記事【企業ブランディングとは?企業の成長における重要性や手法を徹底解説】もあわせて参考にしてください。
まとめ
多くの建設会社が挑戦しているブランディングについて、一つの例を通じて解説しました。
今回の事例はWEBサイトを使った採用ブランディング施策でしたが、会社によって課題はさまざまですし、施策もパンフレットや出版といった紙媒体による発信から、セミナーやイベントといったリアルコミュニケーションまで数多く存在します。
建設業には将来性がないと諦めず、未来に向かって行動を起こしてみましょう。
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