採用ブランディングの重要性とは? 目的やメリット、具体的な方法まで解説

「採用ブランディング」という言葉が企業の戦略の中で広がりつつあります。

ただし、なぜ採用ブランディングが必要なのか、明確な目的やメリットを理解できていない経営者、人事担当者も少なくありません。

今回の記事では採用ブランディングを実現するにあたり、目的の組み立て方や具体的な方法を解説します。

採用ブランディングとは

採用ブランディングとは、自社をブランド化し、採用活動において求職者に魅力的に感じてもらうために取り組む採用戦略のことです。

自社の魅力や強みを発信して認知度を上げたり、自社のイメージ向上を行ない求職者の共感や信頼を得たりする戦略です。

数多ある企業の中でも「自社を選んでもらう」努力を行ない、求職者からは「この企業で働きたい」と思ってもらわなければなりません。

さらに、採用ブランディングで強く意識されるのは、採用した人材の定着です。

企業の戦略として、新規採用で数を取ることも重要ですが、せっかく入社してもらっても採用後のミスマッチにより早期退職されてしまってはもったいないからです。

企業側の価値観と応募者の価値観が合致し、エンゲージメントの高まる人材を獲得することが将来的な企業の成長にもつながるといえるでしょう。

採用ブランディングがなぜ求められるのか

今、この採用ブランディングが求められている背景としては、少子高齢化と労働環境の変化が考えられます。

労働人口の減少だけでなく、とくに新卒一括採用や終身雇用といった日本特有の雇用形態が崩れ始めたこともあって、各企業の採用競争が激化しているのです。

SNSを活用したダイレクトリクルーティングの普及も手伝い、企業が求職者に直接アプローチできる手段も増えています。だからこそ、企業のイメージをポジティブに伝えるためにも「採用ブランディング」が必要になってきているのです。

採用ブランディングがもたらすメリット

企業が採用ブランディングを実行することで、次のようなメリットを享受できます。

①企業の認知向上につながる

採用ブランディングに取り組むことで、まずは企業の認知度が向上することが考えられます。求職者にとっては、その会社を知っているかどうかが応募のきっかけにもなり得るからです。

誰もが知る大手企業はともかく、中小企業やベンチャー企業などは、採用ブランディングに取り組んで認知度を上げないことには、採用に苦労するでしょう。

②応募者の増加につながる

採用ブランディングにより自社の認知度が上がれば、おのずと応募者も増加するでしょう。

そのためには「この会社で働きたい」と思ってもらう魅力的な求人情報を発信したり、就職先候補の一つと検討してもらえるように有益な情報を発信したりすることが必要です。

③採用後のミスマッチを避けることにつながる

どんなに優秀な人材を採用できたとしても、自社の理念を明確に伝えられていなければ、「思っていた会社とイメージが違う」と早期退職する可能性を高めてしまいます。

自社のブランドイメージや理念などの考え方を発信することで、それらに共感するマッチ度の高い人材を採用することができるでしょう。内定辞退を避けることや入社後の定着率向上に大きく寄与します。

④競合他社との差別化につながる

採用ブランディングに戦略的に取り組んでいる企業はまだまだ少ないです。

とくに中小企業やベンチャー企業は予算がなく、積極的な採用ブランディングに取り組めていないケースが多いです。

しかし逆に小さな会社こそ、競合他社が取り組めていない採用ブランディングを実施することで、他社との違いや特徴、強みを明確に打ち出せるようになります。

求職者からは「この会社で働きたい」という動機付けになりますし、企業イメージを向上させることで仕事の取引先拡大など信頼感の向上にもつながっていきます。

⑤採用コストの削減につながる

基本的に中小企業が新規採用を実行する際に考えるのは、リクナビやマイナビなどの採用媒体への広告掲載です。ただし、広告予算がかけられる企業ほど掲載上位になる優位性があるため、潤沢に予算をかけることができない中小企業には不利な施策です。

採用ブランディングを効果的に実行することで、口コミや自社の発信で情報拡散することが見込めるため、結果的に求人広告費の抑制につながるのです。

⑥社員のモチベーションアップにつながる

自社の採用ブランディングにより、企業イメージが向上したり認知度が高まったりすることで、社員の帰属意識が高まります。自社のメッセージ発信だけでなく、採用ブランディングの施策の中で社員にも協力してもらう場面を設定することでモチベーションアップにもつながるでしょう。

自分がなぜその会社で働いているのか、再認識にもなり得ます。

採用ブランディングがもたらすデメリット

企業が採用ブランディングを実行することで、考えられるデメリットは次のようなものです。

①効果を発揮するまでに時間がかかる

採用ブランディングは企業のブランドイメージ浸透、認知度の向上、応募者の増加や質の向上など、さまざまな効果を発揮させるためには時間を要します。

手段にもよりますが、基本的には2〜3年はかかると考えておきましょう。

②全社で取り組む意思統一が必要になる

採用ブランディングは人事担当者だけでなく、会社の全社員を巻き込んで取り組む必要があります。経営者や人事担当者だけでメッセージを発信したところで、現場との意思統一が進んでいないと、結局採用後のミスマッチにもつながります。

企業が発信するメッセージは嘘になってはいけません。企業理念を浸透させ、労働環境も整備しながら、社員が働きがいのある場として魅力を高めていく必要があるでしょう。

③情報発信を継続させるため忍耐力が必要

採用ブランディングは会社の将来を左右する取り組みになります。5年後や10年後といった先々を見据えたメッセージ発信を継続させ、ブランドイメージを定着させなければなりません。

さらに、短いスパンで次々に情報を更新しないことには、情報の鮮度も落ちてしまうことから、現実と乖離した内容を発信してしまうとマイナスイメージにもなり得ます。

とにかく忍耐強く、企業イメージを向上させ、求職者に真実を伝えるための情報発信をコンスタントに行なうことを心がけましょう。

採用ブランディングの戦略の組み立て方

採用ブランディングに取り組む上で、計画的に戦略を組み立てなければなりません。

具体的な戦略の組み立て方は次の手順です。

1、企業が欲しい人物像を確定させる
2、採用ブランディングの核となるキャッチコピーを決める
3、発信する方法を決め、メッセージを届ける

採用ブランディングを実施するにあたり、採用条件と合わない人材からの応募を減らす必要があります。

具体的に採用したい人物像を確定させ、決定したターゲットが魅力に感じるメッセージを発信しましょう。

具体的な手段は次に紹介します。

採用ブランディングの具体的な方法

採用ブランディングの手段は様々です。

まず、形式としては、文章、動画、画像、音声、会話などが挙げられます。

情報発信のチャネルとしては、求人媒体やWEBサイト、SNS、ダイレクトメールなどです。

これらを確定させ、どのようなタイミングで発信していくかを確定させなければなりません。

採用ブランディングの手法として有効な独自戦略を紹介します。

【手段1】企業のメッセージを余すことなく発信できる「企業出版」

採用ブランディングで重要なのは、企業の意識統一です。

経営者の理念や目標など、社員と意識統一ができていなければ、社員はなぜ自社で働いているのか迷子になり、離職につながってしまいます。

そこで、理念を全社に浸透させつつ、対外的にも情報発信ができる「企業出版(カスタム出版)」は有効な手段となりうるでしょう。

企業出版は他の広告媒体と比較すると圧倒的な情報量を誇っています。さらに編集者が書籍企画という形で発信したい内容、発信すべき内容をまとめてくれるため、自社の考えの棚卸しにも寄与するのです。

完成した書籍は出版社や取次会社など多くのチェック機関を通じて、書店に流通し陳列されるため、情報としての信頼性も担保される稀有な手段といえるでしょう。

▶企業出版については、関連記事【企業出版のメリットとは? 企業が考えるべき出版による効果】もあわせてご参考にしてください。

▶くわえて前田建設工業の採用ブランディング成功事例を紹介している、関連記事【「ブランディング」の意味とブランディングの手法】もお読みください。

【手段2】定期的な情報発信で企業イメージを浸透させる「コンテンツマーケティング」

採用ブランディングでは、短期的なスパンでの情報発信が効果的です。

鮮度の高い情報を発信し続け、さらに情報量が豊富であれば、積極的な企業姿勢を対外的に伝えることが可能です。

なかでもWEBのコンテンツマーケティングはおすすめの手段の一つです。

コンテンツマーケティングは、ペルソナの設計から開始します。自社に合致するターゲットを設定するため、ここで自社の理想の人物像を社内で確定させておくことです。

さらにコンセプトを決め、視覚的にも統一感のある情報発信を図ることです。

たとえば、採用ブランディング事業を展開しているトゥモローゲート株式会社の場合、新卒獲得のために「視覚」「体感」の2つのステップを経て、採用成功に向けた採用ブランディングを実行しました。

「ようこそブラックな企業へ」というコンセプトを定め、それに合わせて真っ黒なオフィスを借り、家具を真っ黒に塗りつぶすという統一感を出しました。

同コンセプトをリクナビやマイナビといった採用媒体にも掲載し、自社の採用特設サイトも黒を基調としたデザインで情報発信を積極的に実行。学生から口コミが相次ぎ、応募が殺到しました。

動画やパンフレットもコンセプトを統一したデザインで用意し、ゲーム形式の選考を実施するなど、応募者が体感できる面白い施策も実施したのは特徴的といえるでしょう。

このようにコンセプト設計からWEBデザイン、そして情報発信までのコンテンツマーケティングをフルサポートできる会社はそう多くありません。

WEBによる採用ブランディング成功のためには業者選びもかなり重要です。

採用ブランディング成功のためには長期的な計画と効果的な方法の選択を

採用ブランディングは一朝一夕で実現できる簡単なものではありません。

重要なのは、企業側の発信する内容と求職者が求める内容のマッチングです。

今回紹介したような手順を踏まえ、採用のための長期的な計画を立て、それを実現するための手段を目的に合わせて実行していきましょう。実行する手段についても、企業のカラーに合うかどうかは非常に大切です。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから

執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイゼネラルマネージャー)

福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経営法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を歴任し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。

 

 

企業がマーケティングやブランディングのために行なう、企業出版(ブックマーケティング)。出版不況と呼ばれる時代において、企業出版をメインでサポートしている出版社は売上や刊行点数を伸ばし続けています。

つまり、企業が企業出版を決断する機運は高まっているといえるでしょう。

今回の記事では、企業出版(ブックマーケティング)のメリットを紹介しつつ、数字では表せない、企業出版だからこそ実現できる書籍の使い道を解説します。

目次【本記事の内容】

企業出版とはベストセラーを狙う出版ではない

出版を実施するにあたり、どうしても気になるのは書籍が売れるかどうか。ただし、企業出版については、売れる本を作ることを目的としていません。

誤解を避けるために詳しく解説すると、企業出版はベストセラーになる本を目指してはいませんが、「狙ったターゲット」に売れる本を作ります。

出版に際しては企業のマーケティング戦略同様、自社の商品やサービスを知ってほしい顧客層をターゲットとして設定します。そのうえで、設定したターゲットが手に取りたくなるような企画づくりや、書籍のカバーデザインを仕上げるのです。

不特定多数へ知らしめる広告手法としてではなく、明確なターゲットがある企業であればあるほど、企業出版は適しているといっても良いでしょう。

改めて正確にお伝えすると、企業出版とは、企業が自社の情報や専門知識を書籍の形式で出版することです。出版社によってカスタム出版とも呼ばれます。

企業出版はブランディングや販促活動の一環として活用され、読者に対して企業の知見や価値を提供し、著者のビジネスにつなげることを目的としています。

近年、経営課題を解決する方法として出版を選ぶ企業は増え続けており、多くの企画が実際に出版に至っています。

そうした需要を背景に、既存の出版社が企業出版サービスを提供するケースも増えており、企業出版を専門とする出版社も出始めているようです。

企業出版の発行部数は、プランによって幅がありますが1000〜1万部くらいです。部数が多く、流通範囲が広くなるほど出版費用が上がります。

流通については通常の商業出版と同様の規模で書店にまくケースや、特約書店のみに配本するケース、オンライン書店のみで流通するケースなどさまざまです。

ただ共通するのは、実際に本を店頭に並べるかどうかは書店側の判断になるため、出版前の想定どおりに書店に並ぶかどうかは出してみるまでわからない、という点です。

本の企画をはじめ内容については、出版社からの提案を著者が承認して決める形になります。自費出版のように自分ですべて作るのではなく、自分の表現したい内容をプロの編集者のスキルを借りて形にできるのは大きなメリットです。

出版社がプロのライターをつけてくれる方式が一般的なため、インタビューに答えて上がってきた原稿に赤入れすることが著者の負担になります。

なお、以下にフォーウェイが行った、企業出版経験者への効果実感アンケートの結果リンクも掲載します。

上記のメリットが想像以上に発揮されている事実がよくわかるので、興味があればぜひご覧ください(以下の画像をクリック)。

▶企業出版については、関連記事【「出版の広告効果とは? 企業出版と自費出版の違い」】もあわせてご参考にしてください。

企業出版と他の出版の違い

続いて、企業出版と他の出版形態の違いを説明しましょう。

出版の方式には大きく分けて「商業出版」「自費出版」「企業出版」の3種類があります。

商業出版

商業出版は、出版社が費用を負担して企画し、著者に執筆を依頼する出版方式です。

著者には出版社から、発行部数に応じた印税が支払われます。出版した本が重版すればするほど印税が増える、著者にとっては夢のある出版です。

予算のかけ方は企画によってさまざまで、原稿の書けない著者にはゴーストライターを用意したり、イラストレーターやデザイナーを用意して全ページカラーにしたりと、出版社が「売れる」と判断した企画内容に沿って体制が作られます。

注意点として、商業出版では企画から原稿の内容に至るまで、基本的には出版社に決定権があります。書籍を売ることを目的に出版社が投資し、売れなかった場合のリスクも引き受けるためです。

したがって、自分の本であっても著者の希望は通らない場合が多くなります。

具体的には、「著者にとってはマイナスイメージになりそうな企画でないと出さないと言われた」、「著者の事業の宣伝を入れようとしたら「流通に支障が出る」「作品性が損なわれる」と断られた」、「全然気に入っていないカバーデザインに決められた」などが実際あったケースです。

そのため、商業出版の経験者のなかには、「自社のビジネスメリットにもなるかと思って依頼を受けたけど、全然思いどおりにならなかった」といった不満が残っている方もいるようです。

自費出版

自費出版は、個人が自身の著作物を自己負担で出版する形式です。小説や詩集など趣味で書き溜めていた原稿を出版したい、自分の生きた証を残すために自叙伝を出版したい、といったニーズが多いです。

特徴としては、流通規模の小ささです。自費出版は概ね100〜500部程度の発行部数で、書店流通はまったくなしか、ごく一部の書店への配本に限られます。書店へ配本されるケースでも、「自費出版棚」などの棚にまとめられたり、配本だけされて書棚に並ばなかったりといったケースが多いようです。

内容については、自費出版は100%、著者の思いどおりです。カバーに自作のイラストを入れたりといったアレンジも好きなようにできます。自費出版での出版社の仕事は、持ち込まれた原稿を校正し、デザインレイアウトして印刷することです。

一方で、「内容に自信がないからもっと売れるように改善提案してほしい」といった希望は叶わないと思ったほうが良いでしょう。

企業出版を実施するメリット

企業の商品やサービスをPRするうえで、世の中にはさまざまな広告手法が溢れています。

そんななかで企業出版という形式だからこそ得られる、大きなメリットを紹介します。

自社商品やサービスを知ってほしいターゲットに認知拡大できる

世間一般的に認知度を上げるのに手っ取り早いのは、テレビCMや全国紙の新聞広告掲載です。それぞれかなりの視聴者や購読者がいる媒体なので、認知度を上げるには最適でしょう。

ただし、こうしたマス媒体への広告は1回あたりの負担額が数百万〜数千万円と高額で、しかも広告を打ち続けないと効果は持続しません。

一方、企業出版の広告宣伝の場は書店にある各書棚になります。先述した通り、狙ったターゲットに知ってもらえる理由の一つです。

たとえば不動産投資会社が潜在顧客に自社を知ってほしければ、書店の「不動産投資」や「資産形成」の棚に並べることで、自ずと手にとってもらえます。

耳鼻科のお医者さんが耳の病気に関する書籍を出版すれば、耳の病気に悩む人が立ち寄る「家庭の医学」の棚に展開されます。

このように、知ってほしいターゲット層に認知してもらうには企業出版が適しているのです。

競合に対する優位性を高め信頼度も向上

書籍は出版社から取次会社を介して書店に流通し、値段をつけて販売されます。

「書籍を出版している企業」という事実により、競合企業に比べた優位性を高められ、信頼度が向上するのです。

書籍を活用した情報発信でその道のプロフェッショナルとして認知してもらえ、社会的な信用が上がり企業ブランディングに大きく貢献します。

他媒体に比べて圧倒的な情報量を誇る

さまざまな広告手段のなかでも、書籍の持つ情報量は圧倒的といえます。

テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、看板……広告のどれと比較しても、書籍ほどの情報量を盛り込める媒体はないでしょう。

書籍一冊でおよそ200ページの量があり、文字の組み方によって変わりますが、文字数にすると7万〜10万字もの情報を発信できるのです。

企業の商品やサービスの魅力だけでなく、企業理念や代表者の考え方などを余すことなく伝えることができる稀有な媒体といえるでしょう。

質の高い顧客からの問い合わせが獲得できる

書籍制作をするにあたって最初に考えるのが、「出版の目的」です。集客を目的にする場合、自社商品やサービスが見込み客にとってどうメリットになるのかを整理していきます。

マーケティング戦略の基本であるペルソナの設計を、書籍企画づくりの中で同時に行なうことができるのです。

先に解説した通り、書籍は信頼度の高い媒体ということもあり、自らが欲する情報が掲載された書籍を読むことで、読者ならびに見込み客から著者の会社に問い合わせする、という導線を作ることができます。

著者のファンになった読者は自社ビジネスの内容を理解しているため質の高い顧客となり、商談も簡略化することができます。

このように企業出版は、一冊出版するだけで、他の広告媒体にはなし得ない認知度拡大や啓蒙、集客力向上、そしてブランディングを同時に達成できます。

企業出版による副次的効果とは

ここまでは、企業出版をすることで実現できるわかりやすいメリットを紹介してきました。

次に、出版という手段だからこそ発揮される副次的な効果を解説します。

著作権が企業側に帰属するため二次活用が可能

企業のマーケティング戦略の一環として出版を実施する以上、無視できないのが著作権です。著作権とは、書籍出版においては本の原稿など、著作物を保護するための権利です。

知的財産権の一つで、著作物を著作権者以外に無断で使用させない権利でもあります。

企業出版においては、ライターが取材して原稿執筆するケースが一般的ですが、ライターは著作権を放棄し、出版契約した企業側に著作権が帰属するのが基本です。

なかにはイラストや写真など、各コンテンツに応じて著作権が制作者側に帰属しているケースがあるため、使用の際は確認が必要ですが、基本的に原稿については自社の判断で二次利用ができます。

昨今はCookieの規制が強化されるという話題もあり、オンライン上のGoogle広告やSNS広告が利用できなくなる可能性も考えられます。

WEB広告でアクセスを集められなった場合、SEO対策として自社サイトのコンテンツを強化する重要性はますます増すでしょう。そこで書籍があれば、コンテンツをホームページや自社オウンドメディアに転載することで、SEO対策としても活用できるのです。

ただ、出版権や所有権については契約での取り決めがあるので、各出版社に問い合わせてみましょう。

営業ツールとしての活用で囲い込みやクロージングに寄与

書籍が完成すれば、手元に営業ツールとして活用できる書籍が届きます。

活用の仕方は幅広くさまざまですが、来店した見込み客にプレゼントとしてお渡しすることで、信頼性を向上させ、サービスや会社に対する理解度を促進させることができます。

セミナーを開催して販売や配布するという手段も考えられるでしょう。

競合他社との相見積もりになった際に、書籍を送ることでクロージングツールとして効果を発揮したという例も珍しくありません。

ほか、見込み客のリストや過去名刺交換をしたような掘り起こし顧客にDM(ダイレクトメール)として送付するという活用方法も考えられます。

社員教育や採用強化に活用できる

企業出版でできる書籍には代表者の考え方やサービスのメリットが網羅されていることもあり、採用や人材育成に効果を発揮します。

企画内容によりますが、企業が成長するまでにぶつかった壁やそれを乗り越えた方法など、事業拡大するまでの紆余曲折を、これから入社する新人にも知ってもらうことができるのです。

会社がどのような考えをもって経営しているのかを新人が理解できれば、採用時のミスマッチを防ぐことが期待でき、採用後の定着率アップにも大きく寄与します。

企業出版と他の発信施策の比較

続いて、企業出版と他の発信施策の特徴を比べてみましょう。

「紙媒体広告」「WEB広告」「WEB媒体施策」との比較は以下のとおりです。

紙媒体広告との比較

まず、新聞や雑誌といった紙媒体への広告出稿を見てみましょう。

紙媒体の広告はその発行部数の多さを活かし、数万〜数百万の人々にリーチできる点が大きな強みです。

一方で、紙媒体は基本的に広告出稿される号が世に出た瞬間にのみ、効果を発揮する施策となります。効果の長期的継続はありません。

さらに、出稿によってもらえる枠は非常に限られており、盛り込むメッセージはかなり取捨選択しなければいけません。

書籍の場合は、書店流通によって広告効果が持続的に発揮されるのが紙媒体広告と比較した際の強みです。

さらに、詳細な情報や専門知識を一冊分盛り込めるため、読者に対してより深い理解や感動を与えることができます。説明が難しかったりセールスに長期間かかったりする製品・サービスには非常に適した発信手段です。

WEB広告との比較

WEB広告はご存じのとおり、費用を投じている間のみ広告が回ります。メリットとして、少額でも始められること、詳細にデータが出ることで細かな改善アクションを繰り返しやすいことが挙げられます。

一方、実物がある紙媒体以上に「残らない」広告施策であるところが難点。「先につながらないのはわかっているけど、広告止めると売上落ちるから止められない…」と悩む経営者は多いです。

一方、企業出版では紙媒体との比較同様、長期間にわたって読者に提供されて持続的な効果が期待できる点がポイントになります。

また、本によって読者の関心を引きつけるコンテンツを提供することができるため、たとえば「WEB広告で集客した見込み客に書籍をプレゼント」といった合わせ技で受注確度を高める戦略は非常に効果的です。

WEB媒体施策との比較

WEB媒体施策はWEBメディアに対する記事広告出稿や、自社サイトでコンテンツを発信するオウンドメディア施策を指します。

WEBメディアの記事広告はずっと掲載してもらえる場合があり、自社サイトコンテンツも半永久的に残る点は大きなメリットです。

一方でWEBコンテンツはどうしてもユーザーが軽い気持ちで閲覧する傾向にあり、問い合わせなどの反響につなげるには相当クオリティの高いコンテンツを自社で作る必要がある点がハードルになります。

また、WEBコンテンツの閲覧者と書籍の読者はかなり層が違うため、こちらもターゲットや目的によってうまく併用することが成果を出すコツです。

企業出版の成功事例

以上、企業出版の強みについて見てきました。

さらに理解を深めていただくために、ここからは弊社の編集部がお手伝いしてきた実際の出版による成功事例を紹介します。

事例は非常に数多くあるため、代表的な例を簡単に以下にまとめました。

●個人事業の経営コンサルタントがクライアント業界の経営改善ノウハウを説く書籍を企業出版。出版直後から問い合わせが殺到し、最終的に顧問先が30社増加。売上が出版前の3倍に。

●投資用不動産を販売する会社が企業出版。確度の高い問い合わせもさることながら、営業ツールやセミナーのお土産として配ったところ成約率が飛躍的に上昇。本の効果が非常に大きく、プッシュ営業体制の廃止にも成功。

●注文住宅の工務店が家づくりの考え方を出版。近隣の図書館が取り寄せてくれたこともあり、問い合わせがその後5年にもわたって続いた。書籍反響だけで毎年の売上目標を達成できる体制に。

●WEBマーケティング会社が企業出版したところ、コンペ案件にとても強くなった。「書籍を読んで御社に決めました」という声が複数。不調に終わったプレゼンの後に書籍を読んだクライアントから連絡が来て、案件復活したケースも。

●FC型の会員組織が会員集めのため出版。書籍を「紙芝居」がわりにして既存会員が新規会員を募るスタイルで、1000人だった会員が出版後半年で2000人までに。

●自身の健康論を出版した医師。キー局の番組や都内で流れる大手ラジオ局からの出演依頼が複数あり、専門ジャンルにおける第一人者としての位置を確立。現在でもメディアで特集があれば真っ先に取り上げられる先生になり、医院の集客(集患)にも貢献。

他にも効果事例はたくさんありますが、今回は以上です。

企業出版にはこのような、ビジネスモデル自体を変革するような大きな効果が出た事例がたくさんあります。

企業出版の費用相場

では、企業出版の気になる費用相場はいくらくらいなのでしょうか。

まず、企業出版の価格に影響する要素は、以下のとおりです。

・書籍の仕様

通常の企業出版は、四六判と呼ばれる130mm×188mmサイズで中面が白黒、200ページ程度の書籍が多いです。

効率よく文字情報を詰め込めるサイズで、もっともメジャーな判型のため書店も取り扱いやすいからです。

企画内容により、判型を大きくしたい、ページ数を大幅に増やしたい、中面をカラーにしたい、写真やイラストを作って入れたい……といった仕様変更には追加費用がかかってきます。

・部数

部数については当然、多くなればなるほど価格が高くなります。

注意したいのは、部数によって費用が変わる要因は物理的な印刷費用だけではない点。流通拡大に伴う書店営業の経費も加算されますし、書店から本が返品された際に出版社が被る損失のヘッジ分も、部数に応じて増額することになります。

あまり返品が多いといくら出版費用をもらっても損が出てしまう危険があるので、ある程度以上の部数増は受け付けてもらえない出版社もあります。

・制作費用

制作費用は基本的に人件費になります。

まず、ライターをつけて原稿を書いてもらうのか持ち込み原稿なのかで、大きく金額が変わります。

ほか、編集者の地方出張を要望したり、取材先が非常に多岐にわたったりする場合は追加費用になるケースが多いです。

・プロモーション費用

企業出版のプロモーションについて、書店やメディアへのリリースと人力による書店営業は基本的に出版の費用内でやってもらえます。

それ以外に別途費用を払って、WEB広告を回したり新聞広告を出稿したり、イベントを打って出版社に手伝ってもらうことができる会社もあります。

プロモーション費を戦略的に使うことはとても重要で、大部数でただ書店にまくよりも部数を絞った流通でプロモーションのほうに予算を使ったほうが効果的なケースも多いです。出版社に相談してみましょう。

それらを踏まえた一般的な相場としては、450万〜1000万円くらいが企業出版の費用になります。

基本的に値段が上がるほど出版社の規模が大きくなり、流通部数も多くなると考えてください。どの価格帯で出版するのが望ましいかは、出版目的や自社ビジネスの規模によります。

ちょっとしたテクニックとして、原稿を自社で書くと費用は少し相談に乗ってもらえる場合が多いでしょう。

企業出版の流れ

実際に企業出版を行う場合、流れは以下のようになります。

ライターに原稿を書いてもらうパターンです。

◆ステップ①企画立案

出版の目的やターゲット読者を明確にし、内容やテーマを決定します。企画段階では、書籍の仮タイトルや章立てを作成します。

◆ステップ②取材・執筆

著者本人や著者の会社の社員へのインタビュー取材を行い、必要な情報を収集します。取材データをもとにライターが執筆作業を進め、章ごとに文章をまとめていきます。

インタビューは一冊分で合計10時間程度になることが多いです。

◆ステップ③編集・校正

執筆された原稿を、著者と編集者で協力して校正(チェック)します。文章のクオリティや表現を整え、誤字脱字や文法の修正なども行います。

◆ステップ④デザイン・レイアウト

書籍のデザインやレイアウトを決定します。カバーデザインについては、いくつかの候補から最終的に著者が選ぶパターンが多いです。

使用してほしい色や求めるテイストがあれば、事前に担当編集者に伝えておきましょう。

◆ステップ⑤印刷・製本

カバーと本文が完成したら、印刷所に原稿を送り、書籍の印刷と製本を行います。ここまで来たら、著者は刷り上がりを待つだけです。印刷が完了したら、いよいよ書店に書籍が並びます。

企業出版の失敗事例と成功のポイント

生涯に一度かもしれない企業出版、絶対に成功させたいのは著者として当然でしょう。

成功のポイントをつかむために、企業出版にありがちな失敗事例を以下に挙げます。

失敗事例①出版目的が絞られていない

企業出版では、「何のために誰に向けて出版するのか」がしっかり定義されていてこそ、クオリティの高い企画ができます。

「集客にも採用にも個人ブランディングにも効かせたい」「若者にもシニア層にも届けたい」など欲張りすぎると、読者から見て役立つ本であると伝わりづらくなってしまいます。

出版目的とターゲットについては、企画書の段階で編集者としっかり議論しましょう。前提条件によって書籍タイトルや原稿の書き方がまったく変わるので、企画書段階の議論は企業出版のプロセスでもっとも大切です。

失敗事例②ターゲット読者の選定ミス

企業出版では、ターゲット読者のニーズや興味に合わせた出版物を提供することが重要です。

たとえば、マーケティングの初心者向けに書籍を出版したいのに、コトラーのマーケティング理論などを完璧に理解していないとわからないような高度な内容で本を書いても、ミスマッチになってしまいます。

ほか、そもそも本を読まない層をターゲットにしてしまうミスもあります。一例として10代女性などは、ファッション系やタレントものなどでない限り、出版してもほとんど本を買ってもらえないので注意しましょう。

失敗事例③広告的な内容にしすぎる

読者のニーズや要求を意識せず、自社の情報や宣伝ばかりを強調した内容にしてしまうのも、よくある失敗ケースです。

せっかく費用を投じての出版ですから、著者として自社を存分に宣伝したいのは当然です。ただし、書籍は読者にお金を出して買ってもらうもの。「広告だ」という認識で読者は本を手に取っていないので、著者の宣伝色が強すぎるとかなり違和感をもたれます。

「伝えたいこと」を「価値あるコンテンツ」に変更するためには、編集者を使い倒すのがコツです。

失敗事例④ターゲットに合わないデザイン

カバーをはじめとするデザインを選ぶうえでは、「ターゲットの好み」に合わせるのがとても重要です。

よくやってしまうのが、著者が「自分の好み」でデザインを指定してしまうパターン。著者の好みがターゲットの求めるデザインに合致するとは限らず、あまり自身の意向を強く押しすぎると多くの場合、違和感のあるデザインになってしまいます。

それを避けるため、どうしても譲れない部分は伝えつつも優秀な編集者の提案に任せたほうが出版効果は見込みやすいでしょう。

まとめ

以上、この記事では、企業出版(ブックマーケティング)とは何かをはじめ、メリット・デメリット、ブックマーケティングの最新トレンドなどについて紹介しました。

企業出版は、しっかりしたパートナー出版社と戦略的に取り組めば、投資対効果としてほかの施策ではあり得ないほどの効果が見込めます。

上記のコラムを参考に、企業出版という選択肢をぜひ検討してみてください。

ブックマーケティングを活用すれば、ただ書籍を出版するだけでなく、その書籍を自社のブランディング、認知度や購買意欲向上などに積極的に役立ていくことができます。

主に次のような方にブックマーケティングは最適です。

  • ・Web広告やSEOなどあらかたの集客施策をすでに行っているが、なかなかそれ以上の集客効果が得られないと悩んでいる中小企業
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そんな方は、ぜひ次のステージへの一歩として、ブックマーケティングを活用してみませんか。

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執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

コンテンツマーケティングとは、顧客にとって有益な情報コンテンツを届け、ニーズを育成したうえで購買につなげ、ファン化を目指すマーケティング手法のことです。

言葉にすると簡単なようですが、コンテンツマーケティングを実践したものの成果が出ないという企業も多く存在します。

今回は、そもそもコンテンツマーケティングはSEOマーケティングとは何が違うのかや、具体的な効果を発揮するためにどのような戦略を組み立てる必要があるのか等を解説していきます。

コンテンツマーケティングとコンテンツSEOは違うのか?

WEBを活用したマーケティング手法として、メジャーになりつつあるコンテンツマーケティング。しかし、コンテンツSEOと混同されているケースも散見されます。

コンテンツSEOとは、ターゲット読者が求める情報をコンテンツとして提供し続け、Google等の検索結果で上位を目指す手法のことです。

コンテンツマーケティングの一種ですが、イコールではありません。

コンテンツSEOは検索エンジン(SEO)対策の方法であり、あくまで検索結果の上位表示を目指してコンテンツを提供することが目的です。

一方、コンテンツマーケティングはさらに広い意味で用います。広告以外の手段で有益な情報を発信し続け、見込み顧客に興味を持ってもらい、行動に移してもらうまでを戦略的に設計するのがコンテンツマーケティングです。

簡単にいうと、顧客側から興味を持ってこちら側に寄ってくるインバウンドマーケティングの仕組みづくりをコンテンツマーケティングといいます。

コンテンツマーケティングで期待できる効果とは

コンテンツマーケティングでは、次のような効果が期待できます。

①潜在顧客のリード獲得

ユーザーが欲する情報を提供し続けることで、自社に興味を持ってもらうきっかけができます。

興味を持ったユーザーがホワイトペーパーをダウンロードする等のアクションを起こす際、連絡先など必要事項の記入を行ないます。これが「リードの獲得」です。

ほかにも、コンテンツ発信をきっかけとしたメルマガの登録などもリード獲得の手法として考えられます。

②自社の認知度向上とブランディングの実現

ユーザーにとって有益な情報を提供し続ければ、SEO順位で上位獲得ができ、自社の認知度が上がることが期待できます。有益な情報であれば、ユーザーによって拡散されていく可能性があるので、自ずと認知度が上がっていくのです。

さらに発信するコンテンツが企業のブランドイメージそのものになるため、自社の事業領域における専門家としてのブランディング効果が期待できます。

③将来的な広告費の削減

自社のサービスや商品を購入してもらう手っ取り早い方法は、広告です。ただし、広告は成果が期待できますが、打ち続ける必要があり、結果的に広告費がかさみます。

しかし、コンテンツマーケティングで発信した情報は継続的に費用を投じなくてもネット上に残り続け、長期的な広告費の削減になります。

顧客がファン化して継続的に自社サービスを利用してくれれば、費用対効果が非常に高い施策となるのです。

コンテンツマーケティングの戦略設計の仕方

コンテンツマーケティングの失敗でよくあるのが、目的設定や準備も行なわずにいきなりコンテンツを作りはじめてしまうケースです。

しかし、まずは成果を得るための戦略設計が最重要。

具体的に取り組む準備としては、以下の通りです。

①これが決まらないと全てが狂う:ターゲットの設定

まずコンテンツマーケティングを実施するにあたり最重要といえるのが「ターゲットの設定」です。

ターゲットがぶれてしまうと、制作するコンテンツもテーマが不明瞭なものが増えてしまい、結果的にはコンテンツマーケティング自体が徒労に終わる可能性が高まってしまいます。

その中で、ターゲット設定のコツとしては「これまでに集客できていない理想の顧客像」を分析のうえ、設定することです。

マーケティング用語でいう「ペルソナ」を設計します。自社の顧客になりうる人物像を想像し、言語化することが重要です。

ペルソナ設計においては、「デモグラフィック」と呼ばれる人口統計の属性データを使用します。

「住所」「性別」「年齢」「職業」「所得(年収)」「世帯規模」「学歴」など、自社サービスにマッチするよう細かく想定するのです。

そのうえで、求めるユーザーの「ライフスタイルの送り方」「思考の傾向」「特有の悩みやストレス」「願望」を設定し、明確に文章で言語化することでペルソナが完成します。

②問い合わせの質を決める要素:目的の明確化

ターゲットが明確になったら、次は「目的の明確化」を行ないます。

コンテンツマーケティングで解決したい具体的な課題を整理したうえで、「CV(コンバージョン)の獲得」、「見込みの高いリードの獲得」、「自社の認知度やイメージアップを図る」、「採用活動につなげるべくブランディングを実施する」、などを明確化することです。

さらに、CVやリードの獲得など、自社サービスや商品の購買につなげたい場合、「どのサービスおよび商品を誰に届けたいのか」を明確に設定する必要があります。

目的とマーケティングの着地点となるサービスを明確化し、社内で共通認識を持って取り組むことが大切です。

③成果を出す必要条件:責任者とメンバーの決定

後にも解説しますが、コンテンツマーケティングは成果を安定して出すまで時間がかかります。したがって、コンテンツマーケティングのプロジェクトに根気よく情熱を持って取り組んでくれる、理解ある責任者を決定する必要があります。

コンテンツマーケティングでは、成果につながらない時期というのが訪れます。常にトライアンドエラーを繰り返しながら、成果につながらないコンテンツはどのように改善していくのか、といった意識が重要です。

責任感と覚悟を持って意思決定を行なえる責任者を任命しましょう。

そして、責任者を決めたら、次はともにプロジェクトに取り組むメンバーの招集です。

会社としてコンテンツマーケティングを実施する目的と意義を理解して、そこに共感して取り組んでくれるメンバーを選びましょう。

ありがちな失敗としては、次のようなメンバーを集めてしまうパターンがあります。

・文章を書くのが好きなメンバー
・過去にライティング経験があるメンバー
・通常業務の合間に手伝ってくれそうなメンバー

コンテンツマーケティングおけるSEOライティングには、必ずしも紙媒体などでライティングに従事した経験は必要ありません。

また、片手間ではそのうち手が回らなくなって放置されてしまうのがオチです。

コンテンツの品質を保つには、あくまでビジョンと目的に共感してくれるメンバーを集めなければなりません。

「コンテンツマーケティングの失敗を招くNG行動6」でも失敗要因について解説しています。合わせてお読みください。

④1年間を根気強く乗り越えるために:スケジュールとコンテンツテーマの確定

最後に、「スケジュール」と「コンテンツテーマ」を確定させます。

前述した通り、一朝一夕で成果や効果が出にくい施策のため、最低でも1年間のスケジュール計画を立てる必要があります。

その際、決めなければならない要素としては以下の通りです。

・アクセスやCVといった1年後の数値目標
・具体的なコンテンツの内容と制作担当者、制作の締め切り

コンテンツマーケティングによって、広告に頼らない価値ある基盤を1年後に作り上げるために、詳細なタスクを整理して、「誰が」「いつまでに」「どんなコンテンツ」を制作するのかを計画立てましょう。

目標達成に向けて、たとえば3ヶ月目までは認知獲得や商品理解を促すコンテンツを制作し、6ヶ月目以降は少しずつCVに繋げていくために、「購入欲求」をかき立てるコンテンツを制作する、といった計画です。

さらに、上記スケジュールの組み立てができたら、具体的なコンテンツの確定をしていきましょう。

決めるべきコンテンツの種類としては以下の通りです。

・文字コンテンツ:コラム記事、SNS投稿、ダウンロード用資料など
・画像コンテンツ:写真、イラスト、図、漫画など
・音声コンテンツ:音楽配信、音声メディア、インターネットラジオなど
・映像コンテンツ:YouTubeなどの動画配信、ウェビナーなど
・体験型コンテンツ:ゲーム、アプリなど

目的や顧客がどのような情報を欲しているかを、先に設計したペルソナを参考に考え、手法をセレクトしていきましょう。

コンテンツマーケティングはターゲットと戦略設計がカギを握る

以上のように、コンテンツマーケティングは根気よく続ける必要がありますが、自社コンテンツを魅力に感じた顧客はファン化して、サービスを利用し続けてくれることが期待できます。

そのためには、「ブレないためのターゲット設定」と「目的を見失わないための戦略設計」が重要です。

広告費を削減し、安定した売上を積み上げるためのコンテンツマーケティングを実施するうえで本記事の内容を参考にしてください。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、編集者)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月にはエリアマーケティングに特化した出版社、株式会社パノラボを設立。

企業がPRやブランディングを実現する手段として、「出版」という選択肢はかなり広まりました。

ただ、会社で出版すると一口にいっても、出版にはさまざまな形態があり、作り方から費用、書店に並ぶか並ばないかといった細かい違いがあります。

今回は、企業が出版を検討する際に押さえておくべきポイントについて解説します。

企業出版と自費出版

「企業出版」という言葉は、一般的な認知度はあまり高くないかもしれません。

一方で、「自費出版」と聞くとなんとなくイメージはつくのではないでしょうか。

まず、企業出版と自費出版の違いを説明します。

出版の「目的」が違う!

企業出版と自費出版は、費用を投じて出版するという点では同じです。ただ、単に個人向けか法人向けかという違いだけでなく、企業出版と自費出版では出版の「目的」がまったく異なります。

自費出版とは、制作や印刷、流通といった出版にかかる費用を著者が負担する出版形式です。「自身で書きためた小説を本という形にしたい」や「自分の半生を振り返った自伝を作りたい」というニーズに応える出版形式です。

一方で企業出版は、主に企業がビジネス上のゴールを達成するために取り組む出版形式です。出版社によっては、「カスタム出版」と呼ぶところもあります。

企業出版は個人的な欲求を満たすための自費出版とは根本的には異なり、ブランディングや集客、顧客の質向上など企業ごとに「目的」を設定したうえで取り組む必要があります。

自費出版の実態は?

自費出版の価格は、出版社によって違いはありますが、100万〜200万円程度が相場です。なかには、数十万〜100万円未満で出版を請け負う自費出版会社も多く存在します。

ただ、格安の自費出版は完成した書籍が書店に並ぶことは基本的にありません。さらに、表紙や本文のデザイン、校正などを統括する編集機能は働かず、印刷会社などが副業的に自費出版サービスを行なっているケースが多くなります。

100万円を超える自費出版についても、書店に展開されることをウリにはしているものの、実態としてきちんとした流通は見込めません。大型書店の、来店客がほとんど立ち寄らない「自費出版棚」に短期間、陳列されるのがせいぜいです。

したがって、企業が出版費用を抑えるために自費出版を利用する、という目的にはマッチしません。

さらに、企業出版には、編集者がクライアントの「目的」や「ターゲット」をヒアリングして、目指すゴールを叶えられる書籍を提案するコンサルティングの知見が出版社に求められます。

そういったノウハウを持つ出版社はコストが高額で、特にネームバリューのある大手出版社の場合は価格が1000万円を超えることもざらにあります。

とはいえ、企業出版は前述した自費出版とは異なり、大手出版社の流通網を利用して書店に配本するため、しっかりと書棚に並ぶのは大きなメリットで

す。あとは、販促のオプションなどで出版社ごとの付加価値が変わってきます。

企業出版の方法と一連の流れ

では、企業出版のプロセスを解説します。

まずは、出版を検討しているという名目で出版社に問い合わせをしてみましょう。営業に熱心な出版社は自分たちで営業リストを作成して、各企業にテレアポなどでアプローチしている場合もあります。

力のある出版社であれば、営業マンと面談すれば、近しいニーズで出版した事例を紹介するなどして出版後のイメージを膨らませてくれるでしょう。

商談を経て企業出版を決断した場合、契約を締結して書籍制作に進めることになります。

企業出版のスケジュール

書籍制作が企画からスタートし、印刷された本が書店に並ぶまでのスケジュールは、おおよそ8ヶ月〜1年程度です。企業が広告として出版に取り組むときに、この期間を長いと感じるか、適正と感じるかは重要です。

大手出版社は同じ編集者が同時に何十件も担当案件を抱えている場合もあり、スケジュールは最低1年程度は見ておく必要があります。柔軟にスケジュール対応できる出版社もありますが、それでも6ヶ月〜8ヶ月かかるのは想定しておきましょう。

“出版不況”と“電子書籍好調”から読み解く企業出版

すでにご存知の人も多いと思いますが、出版業界は長らく“出版不況”といわれており、実際に市場規模は右肩下がりでした。ただ、近年は電子書籍の台頭もあり、ずっと下がり続けているわけではありません。

公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2020年の出版市場規模は、紙+電子出版市場(推定販売金額)が、前年比4.8%増の1兆6168億円。紙が1.0%減に対し、電子が28.0%増と大きく伸長し、2年連続のプラス成長となっています。

ただし、だからといって企業が紙の書籍ではなく、好調の電子書籍で出版すれば良いかというと、そう単純な話ではありません。

電子書籍の販売増加には、コロナ禍によるニーズの増加も一因として考えられますが、販売部数の多くを占めているのはコミックだからです。

つまり、一般的にまだ認知度の低い企業がただ電子書籍を出版したところで、集客などのゴールにつながる可能性はかなり低くなります。

肝心なのは出版してからのプロモーション

企業出版では、いかに紙の出版の露出を増やして売っていくかの戦略が重要になってきます。

つまり、出版してからのプロモーション、「売り方」が非常に重要なのです。

ただし、大手出版社はもともとの出版コストが高いだけでなく、さらにプロモーションを仕掛けようとすると多額のコストが追加されます。

そのため、企業出版を成功させるための鉄則は、出版の入り口段階で出版後の販売戦略と予算計画まで綿密に固めておくことです。そのためには、フロントの営業マンがしっかりした出版知識を持っている会社に相談する必要があります。

企業出版は会社のさらなるステップアップに大きく起因する

このように、企業出版には多額のコストがかかるだけでなく、担当する営業マンの経験値や業界知識に結果が左右されるリスクがあります。

ただ、出版は自社の強みやサービスを棚卸しして再認識する最良のきっかけになります。

社内外へのブランディング効果も絶大です。簡単に取り組める施策ではないからこそ、同業他社との差別化に大きく寄与する可能性があり、その効果は数字だけでは測り知れない魅力を秘めています。

今回紹介したポイントを押さえつつ、企業出版に取り組めば、企業としてさらに大きなステップアップが期待できるでしょう。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから

執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイゼネラルマネージャー)

福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経営法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を歴任し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。

 

 

日本にWebマーケティングという手法が入ってきて20年あまり。多様な広告手段が取られるようになった中で、Web戦略の重要性は年々増しています。

今回の記事では、企業がWEBマーケティングに取り組むにあたって最低限押さえておくべき基礎と、実践する上で知っておくべき知識をまとめました。

Web(ウェブ)マーケティングとは?

Webマーケティングとは、言葉の通りWebを中心に実施するマーケティング施策のことです。

なかでも、従来型のオフライン施策と大きく異なる点として、Webマーケティングは施策の効果がすべて数値として表れるという特徴があります。

たとえば、チラシやポスティングなどのオフライン施策は、配布した数は把握できても、どれだけのユーザーが見たのかの確認はできません。

一方で、Webマーケティングの場合は、どこをきっかけにサイトに訪れたのか、どのコンテンツを見て問い合わせや購入に至ったのかを数値で確認できるのです。

数値を把握できれば、効果検証して改善を図ることができ、活用次第では緻密な戦略性をもって集客や販売促進に役立てられます。

ただし、名前の通り、Webマーケティングを成功させるには、「マーケティング」を理解しなければなりません。

Webマーケティング基礎編:マーケティングを理解する

まず、勘違いしてほしくないのは、Webの施策とはいえ、安易にWEBサイトやLP(ランディングページ)を「とりあえず」制作すればよいわけではない点です。

大事なのはマーケティング戦略、つまり「ターゲット」「競合把握」「自社の強みや課題を把握」等を明確にしてから施策を実行することです。

これらを設定、把握せずにWEBサイト制作を始めてしまうと、目的地もわからず、ただ闇雲に走るだけ。十中八九、施策は失敗に終わります。

自社のサービスを欲する「ターゲット」の設定

企業の売上を向上させるにあたり、より多くの人々に自社を認知してもらうのはとても大事です。

ただし、いきなり幅広い人々をターゲットに発信しても、ターゲットそれぞれの欲求やニーズは異なるため、自社の魅力を平等に伝えるのは困難です。

だからこそ、訴えたい事業に応じた段階を踏まなければなりません。つまり、現在の自社のサービスや商品内容の特徴から考えて、特にどのような人に利用してもらいたいか、もしくはどのような人が気に入ってくれるかを想定し、対象ユーザーを考えることが最優先事項となります。

明確なターゲットが設定できれば、自社の強みやポジショニングを把握した上で、購入や問い合わせなどの「行動」に誘導する戦略を組み立てられるのです。

さらに、自社のビジネスがBtoBビジネスであれば、ユーザーの業種や規模、見込み客の担当役職も設定する必要があります。ユーザーの属性を絞り込めば絞り込むほど、優先すべき広告やコンテンツ戦略を決めやすくなります。

競合企業を設定する

Webマーケティングの戦略に限らず、経営戦略上で競合把握をすることは必要不可欠です。自社のサービスや商品と類似の事業を展開している競合企業はどのような先があるのかは把握しておきましょう。

まだ競合他社がはっきりとは浮かんでいない場合は、自社の設定したターゲットユーザーが検索しそうなキーワードで、GoogleやYahoo!で検索してみることをおすすめします。検索結果の上位に表示された企業が競合になる可能性があります。

自社の強みを言語化する

競合が把握できたら、自社のサービスや商品のどの部分が優れているのかを、しっかりと分析して言語化しましょう。言語化すれば、競合他社に負けない独自の要素が自ずと浮かび上がります。

自社の強みや課題を整理したとき、自社の強みだと思っていた要素が実は他社と差別化できていないポイントだと判明したり、逆に当たり前だと思っていた特徴が強みだと気付いたりする瞬間が出てきます。そういった意味でも、現状把握はとても重要なのです。

Webマーケティング実践編:効果的な集客戦略とは

「ターゲット」「競合」「自社の強み」という3つの要素を定義できたら、次は具体的な施策に取り掛かりましょう。

Webマーケティングの集客施策は、自社で取り組める手法から、広告費を払って外注する方法まで様々です。

代表的な手法を紹介しましょう。

リスティング広告でターゲットに的確にリーチ

リスティング広告とは、GoogleやYahoo!といった検索エンジンの検索結果に連動して表示される広告です。

ターゲットが関心を示す特定のキーワードに対して広告を表示させるため、コンバージョン率が高くなるのが特徴です。

リスティング広告のメリットは、サービスに関心のあるターゲットに直接アプローチができる点です。

表示されている情報がユーザーの欲している内容であればあるほど、問い合わせや購買につながりやすくなります。1000円〜と安価にスタートできるため、容易に取り組める施策の一つです。

一方、デメリットは、リスティング広告自体が社会に普及したため、「広告リンクはクリックしない」と決めているユーザーが一定数現れてしまっている点です。

リスティング広告は競合他社も取り組んでいるパターンが多く、競争が激化しやすいのも難点です。

メールマガジンでターゲットとの信頼関係を構築

メールマガジン(メルマガ)は、ユーザーに継続的に情報を配信できる手段です。テキストだけでなく、HTML形式で本文内に画像を入れたり装飾を施したりして、視覚的にユーザーに訴えかけられる点は強みでしょう。

メルマガのメリットはほかにも、コストが通信量のみで、DMと比べても安価に済むことがあります。定期的に配信することで、読者であるターゲットから自社を深く知ってもらえるきっかけとなり、信頼関係の構築に役立てられるのです。

一方、定期的に配信する必要がある分、企画立案や執筆の手間がかかってしまうのがデメリットです。さらに、メルマガに取り組んでいる企業が多いため、ユーザーのなかにはメールの受信フォルダがメルマガだらけという人も少なくありません。そうなれば、開封してもらうことすらできず、放置されて終わりという可能性も考えられます。

SNS運用で顧客ターゲットをファン化させる

SNS(ソーシャルメディア)は、FacebookやInstagram、Twitterなどが隆盛を極めており、日常生活に欠かせなくなりました。近年はTikTokのような15秒の「リップシンク(口パク)動画」のSNSも流行っています。

企業のSNSでいえば、タニタシャープが有名です。Twitter上でタニタのアカウントがシャープに日常的にコミカルな交流を行なうことで、大きな話題となりました。一般ユーザーに親しみをもってもらうだけでなく、企業同士でのコラボレーションが生まれるきっかけともなったのです。

SNSの活用がうまくいけば、自社サービスや商品を無料で認知拡大することができ、大変効果の高い施策になりうるでしょう。

ただ、SNS運用にもデメリットがあります。

「SNSの中の人」でもある従業員の不適切発言や誤操作などで大炎上を起こす可能性がある点です。一度炎上すれば、企業イメージに大きな損害を与えます。

一方で、炎上を恐れて当たり障りのない投稿ばかりしていれば、ユーザーには興味を持ってもらえないのが難しいところです。

ブランディング効果も期待! コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングは、顧客にとって有益な情報を継続的に提供し続け、企業と顧客の接点をつくって集客を実現する手法です。SEOツールで分析したうえで、検索上位に上がりやすいコンテンツを生み出すことで、自社の狙うべきキーワードで検索上位を獲得できます。

広告とは違い、制作したコンテンツが自社の資産として蓄積される点は大きなメリットです。

専門的知識や役立つ情報を発信し続けることで、業界の有識者的ポジションとして自社をブランディングする効果も期待できます。

一方で、コンテンツマーケティングで重要なのは長期的な仕込みです。根気よく6ヶ月〜1年は取り組んでいかないと、コンテンツマーケティングで継続的な効果を得ることは難しいです。くわえて、コンテンツの企画立案から制作の手間がかかるため、継続的に内製で取り組んでいくのは、人材的に余裕のある企業でもない限り困難でしょう。

外部リソースにアウトソーシングする手もありますが、質のバラツキが大きいため、コンテンツマーケティングを得意とする業者に依頼するのがポイントです。

自社を知りサービスの質を高める企業努力が一番重要

以上のように、Webマーケティング戦略は入り口のターゲット設定が特に重要です。いかに競合他社に負けない魅力を発揮するのか、すべては自社を知ることから始まります。

自社サービスや商品自体の魅力を引き上げ、自社の魅力を顧客ターゲットに届ける努力を続けていきましょう。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、編集者)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月にはエリアマーケティングに特化した出版社、株式会社パノラボを設立。

ブランディング−-ブランド力の強化は、中小企業にとっても重要なキーワードとなりました。かつてはBtoCの企業が自社のブランドを重視するのが一般的でしたが、近年ではBtoBブランディングもかなり浸透してきています。

しかし、「当社はブランディングに取り組んでいる」と胸を張る会社でも、ブランディングがビジネスにどんな効果をもたらすのか、ポイントを正確に認識できている会社は少ないのではないでしょうか。

今回は、ブランディングの価値とその可能性について解説します。

ブランディングがもたらす5つの効果

ビジネスにおけるブランディングのメリットとは、大きく次の5つが挙げられます。

効果①競合との競争に強くなる

ビジネスの現場では、結局のところ競合他社との価格競争やサービス合戦で勝負が決するケースが多いものです。

しかし、ブランディングによって自社のイメージをはっきり打ち出せていれば、価格やサービス内容以外の部分で見込み客にアピールできます。

ウェブサイトや広報冊子によって会社の一貫したブランドイメージを発信することで、「他社よりも高いけど御社のブランドイメージに惹かれた」といった理由で契約を決めてもらえる可能性が出てくるのです。

さらに重要なのは、条件面以外を決め手に顧客から選んでもらえれば、無理な値下げは不要となる点です。

ブランディングに成功すると、適正なコストを商品やサービスに費やして顧客満足度を上げてさらにブランド力を強化する、という正のサイクルを形成できます。

効果②顧客が自社の「ファン」になる

条件面だけで顧客から選ばれた場合、またニーズが出た際に無条件でリピートしてもらえる確率は低くなります。おそらく、再度競合と条件比較されて業者選定されるだけでしょう。

しかし、ブランドによってユーザーを勝ち取れば、その顧客はあなたの会社の「ファン」になります。「スマホなら必ずiPhone」「車なら必ずベンツ」「時計なら必ずロレックス」といったように、機能や価格よりもブランドで差別化される企業の仲間入りができるのです。

ブランドのファンが増えるのには、何より新規営業経費の削減というメリットがあります。実際、中小企業でもブランディングに成功した企業の事例では、元々あった新規営業部隊がリピート増加で不要になった、という劇的な変革をしたケースも見られるのです。

たくさんのファンが自社にいれば、市場環境の変化で業績が苦しくなりそうな場合でもきっと支えてくれるでしょう。

効果③広告の効果が高まる

WEB広告にしろオフライン広告にしろ、現代の日本には広告が氾濫しています。より多くの広告費をかけている競合他社より自社の広告を目立たせ、消費者に届けるのは至難の業です。

しかし、明確なブランディングに基づいたメッセージはひときわ目立ち、ターゲットの心にダイレクトに刺さります。

「売り文句に反応した」のではなく、「ブランドに共感した」人たちから反響を得られるのです。さらに、ブランディングに成功すればすでに自社にファンがいる状態になるので、広告やマーケティングによる集客効果はより高まることが期待できます。

効果④人材採用がやりやすくなる

多くの中小企業にとって、人材採用は悩みの種でしょう。募集広告を打っても応募数が伸びないうえに内定受諾率は低く、入社してもすぐに離職してしまうケースが多くなります。

しかし、自社が発信する記事やサイトデザインなどのコンテンツに魅力を感じて応募してくれた応募者であれば、無事に入社して自社にマッチングしてくれる可能性は非常に高まります。

企業と応募者がすでに十分理解し合えた状態で、面接の機会に臨めるからです。これは面接の短い時間だけではなかなか難しいことです。

結果が出にくいまま採用費をかけ続けるよりも、まずはブランド構築をしっかりしてから採用に力を入れたほうが効率的でしょう。

効果⑤社員のモチベーションが上がる

社外に対するアピールのみならず、インナーブランディングもブランディングの大きなメリットです。

大体の場合において、従業員は自分の会社が持っている価値観や、向かっている方向性をはっきりとは理解していません。

しかし、WEBの記事にしろSNSの投稿にしろYouTube動画にしろ、会社として発信している内容が豊富にあれば、従業員に対して自社の強みや理念を理解してもらう助けになります。顧客をファンにするのと同様に従業員を自社のファンにすれば、生産性は劇的に向上し、離職率も下がることが期待できます。

ブランディングがもたらす効果について、紹介してきました。

ブランディング戦略を成功させられれば、その効果は絶大です。売上や利益をアップさせるだけでなく、ブランドは組織として長期的に拡大していくための力強い基盤になりえます。

FacebookやtwitterなどのSNS、動画広告、SEO対策など、現代では短期的な売上増加だけでなく長期的なブランド構築に役立つ手法は増えています。たとえ最初に使える予算が少なくても、長期的なブランディングの視点は明確に持っておいたほうがよいでしょう。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、編集者)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月にはエリアマーケティングに特化した出版社、株式会社パノラボを設立。

広告費用の高止まり、マス媒体の衰退、見込み客のリテラシー成熟……ありとあらゆる角度からビジネスに困難が訪れ、従来的な広告・マーケティングの施策はとにかく効きにくくなりました。

広告・マーケティングの予算を投じれば一定の効果が見込める時代はもはや終わり、多額の予算をかけられる大企業だけが成果を手にできる、パワーゲームの様相を呈しているのが、ビジネスを襲うマーケティング戦争の現状なのです。

そんななか、当社フォーウェイは、小さな企業でも工夫次第で圧倒的な成果を生み出せる、「コンテンツ」によるマーケティングにこだわり続けています。

厳しさを増すマーケティング戦争の先行きと、当社が見据える、コンテンツが秘めた無限の可能性について、紐解いていきましょう。

どれも効かなくなった従来のマーケティング施策

商品を売り伸ばすために必須である、マーケティング活動。

2000年ごろを境にしてインターネットを通じた各種施策も続々と登場し、少額予算でもアイデアやテクニックによって大きな販促効果を発揮するケースが続出しました。

しかし、時は令和となった昨今、残念ながらオフライン・オンラインともに、マーケティング施策はどれもすっかり効きにくくなっています。

企業マーケティングを取り巻く現況について、解説しましょう。

「バカ高いのに効かない」4大マス広告

オフラインの広告施策として代表的なのが、テレビ・新聞・雑誌・ラジオという、いわゆる4大マスメディアへの広告出稿です。

4大マス広告は、それぞれの媒体が持つ膨大な購読者層・視聴者層へ確実にリーチすることで、かつては絶大な広告効果を発揮していました。広告効果のみならず、有名媒体の広告審査を通って出稿を実現している、という事実だけでも、広告主企業に大きなブランディング効果をもたらしたのです。

しかし、今や4大マスの影響力は失墜しました。たとえば新聞は、2000年におよそ年間5400万部あった発行数が2020年には約3500万部にまで減少しています(一般社団法人日本新聞協会調べ)。

テレビも数字を見てみましょう。2000年において国民一人当たり1日の平均テレビ試聴時間はおよそ200分でしたが、2015年の調査ではおよそ170分と約30分も減っています(総務省 令和元年版情報通信白書)。

ほか、ラジオと雑誌についても、それぞれ聴取率と発行部数の低下が著しいのは、皆さんもすでに見聞きしているところだと思います。かつて隆盛を極めた4大マスは、衰退の一途を辿っているのです。

にもかかわらず、4大マスの広告費用は変わりません。全国紙やキー局であれば一回の出稿だけで1000万円以上の費用がかかることが当たり前で、全国紙の最も小さな枠に広告を出すだけでも価格は数百万円です。

結果、4大マス広告は媒体価値に対する費用がまったく釣り合いが取れなくなり、巨額の広告費を投じてもすぐに売上増につながらなくても良いような、大企業のためだけの施策になってしまったのです。

少額予算ではもはや無意味になったWEB広告・SEO対策

インターネットの普及に伴ってサイバーエージェントなどのネット系広告代理店が勃興し、2021年現在、マーケティングの手段としてネット広告はすっかり一般化しまし
た。2019年には、日本のネット広告費は広告費全体の30.3%にまで拡大しています(電通報より)。

WEB広告は、広告の媒体社側が広告費を決めるのではなく、予算を広告主が自分で設定し、求める売上に応じてリスティング広告などを実行できます。

さらに、ユーザーからよく検索されるキーワードや広告が表示されるターゲット属性を細かく絞り込むことで、中小企業でも大手企業よりはるかに費用対効果の高いマーケティング活動が可能になりました。

しかし、近年になって状況が変わってきています。数多く検索されるビッグワードを狙ったり、ビジネスパーソン・主婦層など魅力的なターゲットに表示先を絞り込んだりする施策を大手企業が軒並み実行し、広告をターゲットに届けるための単価が高騰してしまったのです。

もちろん、現在でも効果的なニッチワードを狙うなど工夫の余地は残っていますが、WEB広告においても大部分の領域においては予算勝負のパワーゲームになってしまいました。

くわえて、被リンクの自動生成といったテクニカルなSEO対策で検索順位を上げようという行為は、いたちごっこのようにGoogleのアップデートでペナルティを課せられるようになっており、テクニカルSEO対策についても効果が見込めないのが現状です。

「コンテンツ」によるマーケティングはどんな状況でも効果的

マーケティング競争がますます激化するなかで、最適な費用対効果をもって、巨額の予算をかけなくても成功できるマーケティング施策はないのでしょうか。

この問いと立ち向かい続けたフォーウェイがたどり着いたのが、「コンテンツ」によるマーケティングです。

コンテンツとは?

コンテンツマーケティングという言葉をご存知の人であれば、「コンテンツ=コラム記事でしょ?」ぐらいの認識はお持ちかもしれません。

自サイトにアップする「コラム記事」も、コンテンツの一つです。しかし、フォーウェイはコンテンツをもっと広くとらえています。

たとえば、自サイトにアップする「経営者や従業員の写真」もコンテンツです。コラム記事だけでなく、会社としての考え方を象徴する、「経営者挨拶」も重要なコンテンツといえるでしょう。それだけでなく、事業内容やオフィスを紹介する動画、音声、また、自社セミナーを開いて聴講者に話す内容も広義のコンテンツです。

ビジネスを営む企業や人が誰かに対して「発信」する内容とは、すべてがコンテンツである--それが、フォーウェイの考え方です。

営業嫌い・広告嫌いの見込み客に圧倒的に刺さる

コンテンツによるマーケティングは、とにかく営業嫌い・広告嫌いな見込み客の心を動かしやすいのが最大の強みです。

現代の見込み客は、営業を受けたり広告を見せられたりすることには飽き飽きしています。特にインターネットの普及によりネット社会の口コミ機能が異様なまでに発達し、しつこい営業を行なう会社や頻繁に広告を出している会社はそれだけで「晒し者」になってしまうリスクが非常に高くなっているのです。

しかし、コンテンツとして、見込み客の求める情報やためになるノウハウを発信すれば、自然な形で自社に対する信頼感を高められます。

皆さんには、本を読んでその内容に感銘を受け、著者に対する印象が非常に良くなった、という経験がないでしょうか。良質なコンテンツは、ユーザーをコンテンツの発信者のファンにさせる、という威力を秘めているのです。

たとえば経営コンサルティングの会社であれば、自社サービスの売り込みではなく、経営者全般の役に立つような最新情報や経営ノウハウなどのコンテンツを発信してみましょう。見込み客の役に立つ情報を発信すれば、コンテンツ発信者に対する信頼感が醸成され、自然な問い合わせが生まれるのです。

一つのコンテンツの威力は10時間の商談に匹敵する

特にBtoB商材や高単価の商材については、商談に時間がかかるのがビジネスにおける大きな難しさです。商材やサービスを説明するのが難しかったり、見込み客の購買ハードルが非常に高かったりすることで、商談のなかで多くの情報を提示して、心理的なネックを丁寧に取り除いていかなければ購買に至りません。

しかし、コンテンツを発信すれば、見込み客が商材について自分で勉強して知識を蓄え、購買意欲を高めてくれた状態で商談に臨めます。困難を極める商談のプロセスを、コンテンツによって大きくショートカットできるのです。

一つの例として、コンテンツマーケティングと親和性の高い投資用不動産業界の企業を紹介しましょう。

投資用不動産は非常に高額な投資商品であり、営業をかけても契約に至る可能性が非常に低いビジネスです。しかし、「自社サイトでコラムを継続的に配信する」「代表が自著をマーケティング出版する」というコンテンツマーケティングに踏み切ったある企業には、WEB・書籍を見た人からの、「購入したい前提」の問い合わせが殺到したのです。

広告を出稿していた際の問い合わせと比べると、数もさることながら問い合わせの質が圧倒的に高く、短時間の商談で契約に至るケースが続発。コンテンツマーケティングに大きな手応えを感じ、現在では新規開拓営業部を廃止して問い合わせオンリーの集客でビジネスを維持できるまでに発展しました。

拡散し、残り続けるコンテンツは最強の無形資産に

広告というものは、基本的に出稿期間が終わったら広告効果も終わってしまいます。ターゲットの目に触れる機会がまったくなくなるからです。

しかし、コンテンツは広告とは異なり、一度公開すれば未来永劫にわたって見込み客に届け続けることができます。自サイトに公開した記事にしても、埋め込んだ動画にしても、公開期限というものは自分で設定しない限り、ありません。YouTubeなどのプラットフォームにコンテンツをアップした場合も、プラットフォームが生き残っている限りは公開され続けます。

つまり、一度コンテンツを問い合わせの起点として機能させることができれば、維持コストは無料で半永久的に問い合わせを生む状態をつくれるのです。それだけでなく、時間をかければかけるほどコンテンツが「育つ」ことが見込めるため、Google検索などによって見込み客を呼び込む力が強化されていきます。

公開当初はそれほど集客力のなかったコンテンツでも、時間をかけるだけで集客力がアップしていくことが期待できるのです。

広告と違い、マーケティングのための自社資産として残っていくのは、コンテンツが持つ大きな可能性であるといえるでしょう。

「コンテンツリッチ」がブランド力に直結する

以上のように、広告施策の効きにくくなった現代において、コンテンツはマーケティングにおける最終兵器になりえます。

さらに、「問い合わせを呼ぶ」という機能に付け加えてもう一つ指摘したいコンテンツの可能性があります。それは継続的に公開するだけで、自サイトや企業の「ブランド力を向上」させる効果がある点です。

ブランド力とは、言い換えれば「見込み客からの信頼感を生み出す力」だといって良いでしょう。そして、見込み客からの信頼感を生み出す大きな要因は、「専門分野に対する高い知見」なのです。

たとえば「医師」という肩書きは大きなブランド力を持っていますが、その理由は、医師免許を持っている人は国家試験に合格するレベルの医学知識を持っている、という証明になるからです。

したがって、コンテンツの継続的な提供によって自らの知見を発信し続けることによって、専門分野に関して高い知識を持っていると見込み客から認めてもらうことにつながります。これぞ、「ブランド力の強化」を意味するのです。

長期的な経営戦略を考えるうえで外せない「ブランディング」についても、コンテンツの発信によって実現できます。

まとめーーコンテンツは無限の可能性を秘めている

マーケティングが予算勝負のパワーゲームになっている現状を紐解いていきました。今後WEBまわりを中心とするマーケティング戦争はさらに激化し、高額な広告費なしにはマーケティングができなくなる未来が訪れるのは間違いありません。

そうなる前に、コンテンツの威力を発揮させ、一社でも多くの企業が未来への希望をつなげることを願っています。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、編集者)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月にはエリアマーケティングに特化した出版社、株式会社パノラボを設立。


経営者やマーケティング担当者の間で、「ブランディング」という言葉は広く普及しました。
「当社もこれからはブランディングが重要だ」「来期はブランディングのために予算を投じよう」……こうした会話がビジネスで日常のやり取りになっていますが、そもそもブランディングとは何なのか? という問いをかけられると、明確に答えられない人は意外に多いのではないのでしょうか。

今回は、今さら聞けないブランディングの何たるかと、ブランディングを達成するための具体的な手法を解説します。

ブランドとブランディング

ブランディングの説明をするうえで、まずは「ブランド」という概念について説明しましょう。

ブランドとは簡単にいえば、企業や商品、サービスなどを他と区別し、ユーザーに共通のイメージを持ってもらうための要素すべてを指します。

ブランドという言葉は英語の「burned(焼印を押す)」から来ており、放牧している牛や製造したウイスキー樽に焼印を押して所有者・製造元を明確に示したことに由来して、「ブランド」という概念が用いられるようになりました。

現代のブランドを構成する要素

ビジネスでいわれるブランドとは、たとえば高級革製品のエルメスやグッチといったブランドが皆さんにも馴染み深いでしょう。こうしたハイブランドのみならず、自動車のトヨタや家電のパナソニックなどもブランドです。

現代のブランドを構成する要素には、たとえば次のようなものがあります。

・企業や製品のロゴ
・名称や商標
・広告などに用いられるキャッチフレーズ
・WEBサイトやその他制作物のデザインとコンテンツ
・CSRなど企業の理念を体現した取り組み
・経営者や社員による社会への発信

これら、企業と社会とが接点を持つすべての施策による総合的なイメージから、ブランドが形作られるのです。

そして、ブランドを意図して確立するために行なう取り組みを総称して、ブランディングと呼びます。

ブランディングによって価格競争から解き放たれる

「ブランド力がある」というと、「高級なイメージがあって価格が高くても買ってもらえる」という意味と同義で考えている人が多いかもしれません。こうした認識はブランドの一部を捉えていますが、本来のブランドはもう少し広い概念を含みます。

たとえば、アウトドアファッションブランドのパタゴニアは、「リサイクル素材100%使用のアイテム開発」「持続的な農業研究への参画」など、環境意識の高いサステナブルな企業としての取り組みを積極的に発信しています。

このブランディングが功を奏し、環境意識の高い先進的な人々から、他のブランドではなく絶対にパタゴニアを選ぶ、というファン層を多く獲得しているのです。

シューズメーカーのドクターマーチンは、その独特な丸みを帯びた靴のフォルムがイギリスのロックカルチャー文化の体現としてブランド化され、ブリティッシュロックのファン層から積極的に選ばれています。

ほかに有名どころだと、コーヒーチェーンのスターバックスは、元CEOのハワード・シュルツ氏による「サードプレイス(家でも職場でもない素敵な第三の場所)」というコンセプトに基づいたブランディングの成果で、外で落ち着いてコーヒーを飲みたいユーザーが真っ先に思い浮かべる場所として自社を位置づけることに成功しました。

これらのブランディング成功企業は、必ずしも競合に比べて価格がとても高いわけではありません。

重要なポイントは、ブランディングによって自社の位置付けや考え方をユーザーと明確に共有し、競合と比較されずに指名で選ばれる商品・サービスにできた点です。それにより、ブランディング成功企業は競合との値下げ競争から解き放たれ、適正な利益を確保しながらブランドをより強化する取り組みに経営資源を割くことができています。

ユニクロをグローバルブランドに押し上げたブランディング戦略

ブランディングの意義について理解を深めるため、日本企業の例についても紹介しましょう。

柳井正氏率いるファーストリテイリングによる、ユニクロです。

ユニクロロゴ

(画像引用元:Wikipedia)

皆さんもご存知のこちらのロゴは、ユニクロのリブランディングを依頼されたアートディレクターの佐藤可士和氏によってデザインされました。

佐藤氏は、柳井正氏へのヒアリングの際、このような質問をしました。

「柳井さんはユニクロを、『日本発のブランド』として印象付けたいですか?」

それに対し柳井正さんは、

「これからは、日本発のアパレルブランドとしてユニクロを世界中に拡大したい」

と返答したそうです。

そのやりとりから最終的に決定したのが、ユニクロの現在のロゴです。

以前はエンジ系の沈んだ色がベースだったロゴは「日の丸カラー」のパキッとした紅白ロゴに生まれ変わり、文字は欧米人にも好まれるシャープなフォントに。英語だけでなくカタカナ版も用意することで、あえて海外向けに「アジア感」を演出する機会にカタカナ版を使用する提案も佐藤氏からされています。

その後、ユニクロがグローバルブランドとして飛躍したのは、周知の事実です。ユニクロのリブランディングは、経営者の思いとブランディングのアウトプットの方向性がバッチリ噛み合った好例といえるでしょう。

ブランディングを成功させる3ステップ

では、実際にビジネスの現場でブランディング、あるいはリブランディングを成功させる方法を解説します。

今回は、個人事業主や小さな企業でもブランディングを実行できるように、ごくごくシンプルなステップにまとめました。

ブランディングのステップ①自社ブランドの現状測定

ブランディングに取り組むうえでまず行なうべきは、現状の自社ブランドについて、客観的に把握することです。

それには、ユーザーの声を聞くのが最も適切です。自社の既存ユーザーにアンケートを取ったりヒアリングをかけたりして、なぜ自社を選んだのか聞いてみてください。

自社の担当者から直接聞くとおべっかを使われてしまう可能性があるので、外部調査機関を使っても良いでしょう。

一方で、「選ばれなかった理由」を知るのはさらに重要です。

営業マンなどから、商談のなかで競合に決まってしまったケースの情報を可能な限り多く集め、社内で徹底的に分析しましょう。

この際、「価格では負けていなかったのに競合に取られてしまった」「競合であると考えていなかった低価格低品質の他社に取られた」といった事例が必ず出てくるはずです。このような事例こそ、自社のブランド力不足を炙り出すヒント。ブランドが確立していれば起こり得ないケースだからです。

とことん突っ込んで議論し、自社の現状を謙虚に把握しましょう。

ブランディングのステップ②ブランドコンセプトとターゲットの決定

自社のブランドについて現状を把握したら、次は進むべき方向を定めます。

ステップ①で把握した現状の不足に対して、それを克服できるようなブランドコンセプトを定め、自社のターゲットも同時に明確にします。

実在の例を用いると、次のような内部コンセプトを決定するイメージです。

・おしゃれで先進的な人々に対し、クールな製品を通じたスタイリッシュなライフスタイルを提供する(Apple)
・最も安心できる自動車をお手頃価格で求める人々に対し、運転しやすく安全性能の高い、丈夫なクルマを適正価格で提供する(トヨタ自動車)
・モノへのこだわりを表現して自分自身をブランディングしたいハイソサエティ層に対し、職人一人ひとりのストーリーが詰まった最高品質の腕時計を提供する(リシャール・ミル)

※それぞれのブランドの内部コンセプトは、当社の独自分析によるものです。

このように、ターゲットを含めた内部コンセプトがはっきりすると、ブランディングの方向性は自然と明確になってきます。

ブランディングのステップ③個別施策の精査と実行

ブランドコンセプトとターゲットが定まったら、自社が現在、ユーザーと持っている接点をすべて再検証します。

たとえば、ハイソサエティ向けに高品質な商品・サービスを提供しているのに、自社サイトがポップなデザインで「安さ・手軽さ」を売りにしているようであれば、ブランドコンセプトとのミスマッチになります。製品に対する哲学やサービスに対する思いを強みにしたいのに、自社の理念やストーリーを何も公開していないとしたら、ブランディングは成功しません。

このように、あるべき自社のブランドに沿った施策をきちんと取っているか精査し、足りない施策は新たに実行する必要があるのです。

ブランディングプロセスの好事例として、ゼネコンの前田建設工業の取り組みを紹介しましょう。

ゼネコンとは非常にブランディングの難しい業種です。ある程度の規模であればどこも技術力や得意な工事にはさほど差がなく、結局横並びで「安心」「誠実」といった抽象的なメッセージを発信するブランディング施策になってしまいがちなのです。前田建設工業についても、特徴や強みの打ち出しに苦労していたことは容易に想像できます。

そこで前田建設工業が行なったのは、特設ページによる「前田建設ファンタジー事業部」というコンセプトの打ち出しです(https://www.maeda.co.jp/fantasy/)。

前田建設ファンタジー営業部は特設サイトにおいて、「マジンガーZ地下格納庫一式工事は予算72億円、工期6年5ヵ月(ただし機械獣の襲撃期間を除く)で引き受けます」など、ファンタジー世界の構造物を実際に大手ゼネコンが請け負ったらどうなるか、という空想を面白コンテンツとして展開。そのマニアックさと異様なまでの緻密な分析によってサイトが大ヒットし、同テーマで出版した書籍もベストセラーになりました。2020年には映画も公開されています。

こうした、ブランドの現状を見据えた一連のブランディング施策により、前田建設工業は「遊び心があって挑戦的なゼネコン」としてのブランドを確立することに成功。会社の知名度を大きくアップさせるとともに、競合と比べられない独自の立ち位置を確立したのです。

このほかにも、テレビCMをはじめとした大規模な広告ブランディングや、自社店舗の全店改装でブランディングを成功させた事例が見られます。ただ、今回は「予算がそれほど潤沢でなくても実行できる」という観点に重きをおいて解説しました。

Tips:「インナーブランディング」の威力

最後に、ブランディングの副次的効果としての、社内へのブランディングーー「インナーブランディング」について簡単に触れましょう。

ブランディングの威力は、ユーザーに対するものにとどまりません。

自社の立ち位置と目指している方向を明確にすれば、同時に、従業員の意思を統一し、全員が同じ方向を向いて仕事に取り組む組織をつくることにつながります。

たとえば、「同業他社にはない超一流の気配りと温かみを提供するホテル」というブランドコンセプトを設定し、それに則った施策を実行すれば、従業員も自然に「私たちは超一流の気配りと温かみを提供しなければいけないのだ」という意識になります。従業員の間違った行ないに対するフィードバックもしやすくなるでしょう。

よく、経営においては従業員に理念を浸透する重要性が説かれますが、理念浸透もブランディング強化によって自然に実現することができるのです。

まとめーーブランディング施策で最も重要なのは?

ブランディングという概念の意味と、ブランディングを成功させる施策について述べてきました。

重要なのは、どういったストーリーに基づいてブランドコンセプトを導き出すかと、コンセプトを自社のすべてに一貫させることです。

よく、「なんとなく高級感を出したい」などといってウェブサイトだけハイブランドのように作り直す企業がありますが、一貫性のあるコンセプトに則っていなければ無駄な出費になります。

うまくポイントをおさえてブランディングを成功させ、ユーザーから積極的に選ばれるブランドづくりを実現しましょう。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、編集者)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月にはエリアマーケティングに特化した出版社、株式会社パノラボを設立。