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2021.05.24

Branding, Marketing

出版の広告効果とは? 企業出版と自費出版の違い

企業がPRやブランディングを実現する手段として、「出版」という選択肢はかなり広まりました。

ただ、会社で出版すると一口にいっても、出版にはさまざまな形態があり、作り方から費用、書店に並ぶか並ばないかといった細かい違いがあります。

今回は、企業が出版を検討する際に押さえておくべきポイントについて解説します。

企業出版と自費出版

「企業出版」という言葉は、一般的な認知度はあまり高くないかもしれません。

一方で、「自費出版」と聞くとなんとなくイメージはつくのではないでしょうか。

まず、企業出版と自費出版の違いを説明します。

出版の「目的」が違う!

企業出版と自費出版は、費用を投じて出版するという点では同じです。ただ、単に個人向けか法人向けかという違いだけでなく、企業出版と自費出版では出版の「目的」がまったく異なります。

自費出版とは、制作や印刷、流通といった出版にかかる費用を著者が負担する出版形式です。「自身で書きためた小説を本という形にしたい」や「自分の半生を振り返った自伝を作りたい」というニーズに応える出版形式です。

一方で企業出版は、主に企業がビジネス上のゴールを達成するために取り組む出版形式です。出版社によっては、「カスタム出版」と呼ぶところもあります。

企業出版は個人的な欲求を満たすための自費出版とは根本的には異なり、ブランディングや集客、顧客の質向上など企業ごとに「目的」を設定したうえで取り組む必要があります。

自費出版の実態は?

自費出版の価格は、出版社によって違いはありますが、100万〜200万円程度が相場です。なかには、数十万〜100万円未満で出版を請け負う自費出版会社も多く存在します。

ただ、格安の自費出版は完成した書籍が書店に並ぶことは基本的にありません。さらに、表紙や本文のデザイン、校正などを統括する編集機能は働かず、印刷会社などが副業的に自費出版サービスを行なっているケースが多くなります。

100万円を超える自費出版についても、書店に展開されることをウリにはしているものの、実態としてきちんとした流通は見込めません。大型書店の、来店客がほとんど立ち寄らない「自費出版棚」に短期間、陳列されるのがせいぜいです。

したがって、企業が出版費用を抑えるために自費出版を利用する、という目的にはマッチしません。

さらに、企業出版には、編集者がクライアントの「目的」や「ターゲット」をヒアリングして、目指すゴールを叶えられる書籍を提案するコンサルティングの知見が出版社に求められます。

そういったノウハウを持つ出版社はコストが高額で、特にネームバリューのある大手出版社の場合は価格が1000万円を超えることもざらにあります。

とはいえ、企業出版は前述した自費出版とは異なり、大手出版社の流通網を利用して書店に配本するため、しっかりと書棚に並ぶのは大きなメリットで

す。あとは、販促のオプションなどで出版社ごとの付加価値が変わってきます。

企業出版の方法と一連の流れ

では、企業出版のプロセスを解説します。

まずは、出版を検討しているという名目で出版社に問い合わせをしてみましょう。営業に熱心な出版社は自分たちで営業リストを作成して、各企業にテレアポなどでアプローチしている場合もあります。

力のある出版社であれば、営業マンと面談すれば、近しいニーズで出版した事例を紹介するなどして出版後のイメージを膨らませてくれるでしょう。

商談を経て企業出版を決断した場合、契約を締結して書籍制作に進めることになります。

企業出版のスケジュール

書籍制作が企画からスタートし、印刷された本が書店に並ぶまでのスケジュールは、おおよそ8ヶ月〜1年程度です。企業が広告として出版に取り組むときに、この期間を長いと感じるか、適正と感じるかは重要です。

大手出版社は同じ編集者が同時に何十件も担当案件を抱えている場合もあり、スケジュールは最低1年程度は見ておく必要があります。柔軟にスケジュール対応できる出版社もありますが、それでも6ヶ月〜8ヶ月かかるのは想定しておきましょう。

“出版不況”と“電子書籍好調”から読み解く企業出版

すでにご存知の人も多いと思いますが、出版業界は長らく“出版不況”といわれており、実際に市場規模は右肩下がりでした。ただ、近年は電子書籍の台頭もあり、ずっと下がり続けているわけではありません。

公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2020年の出版市場規模は、紙+電子出版市場(推定販売金額)が、前年比4.8%増の1兆6168億円。紙が1.0%減に対し、電子が28.0%増と大きく伸長し、2年連続のプラス成長となっています。

ただし、だからといって企業が紙の書籍ではなく、好調の電子書籍で出版すれば良いかというと、そう単純な話ではありません。

電子書籍の販売増加には、コロナ禍によるニーズの増加も一因として考えられますが、販売部数の多くを占めているのはコミックだからです。

つまり、一般的にまだ認知度の低い企業がただ電子書籍を出版したところで、集客などのゴールにつながる可能性はかなり低くなります。

肝心なのは出版してからのプロモーション

企業出版では、いかに紙の出版の露出を増やして売っていくかの戦略が重要になってきます。

つまり、出版してからのプロモーション、「売り方」が非常に重要なのです。

ただし、大手出版社はもともとの出版コストが高いだけでなく、さらにプロモーションを仕掛けようとすると多額のコストが追加されます。

そのため、企業出版を成功させるための鉄則は、出版の入り口段階で出版後の販売戦略と予算計画まで綿密に固めておくことです。そのためには、フロントの営業マンがしっかりした出版知識を持っている会社に相談する必要があります。

企業出版は会社のさらなるステップアップに大きく起因する

このように、企業出版には多額のコストがかかるだけでなく、担当する営業マンの経験値や業界知識に結果が左右されるリスクがあります。

ただ、出版は自社の強みやサービスを棚卸しして再認識する最良のきっかけになります。

社内外へのブランディング効果も絶大です。簡単に取り組める施策ではないからこそ、同業他社との差別化に大きく寄与する可能性があり、その効果は数字だけでは測り知れない魅力を秘めています。

今回紹介したポイントを押さえつつ、企業出版に取り組めば、企業としてさらに大きなステップアップが期待できるでしょう。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから

執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイゼネラルマネージャー)

福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経営法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を歴任し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。