【周年担当者必読】周年記念の意味と手段、具体的な事例とは

10周年、50周年、100周年……企業が存続するうえで一つの節目となる周年記念

このような周年記念にはどのようなイベントや施策を実行すべきでしょうか。

本記事では、周年の意味や方法、さらに出版を活用した周年記念の手法、成功事例などを解説します。

目次【本記事の内容】

執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイ取締役マーケティング統括)


福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経済法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を担当し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。2023年9月取締役就任。グループの出版社、株式会社パノラボの流通管理も担う。

◉周年とは

周年とは、企業が創業や設立のタイミングを記念して、10周年や50周年といった節目でお祝いやイベントを実施することです。

企業の創業50周年記念といった事業立ち上げからの節目を祝うこともあれば、ブランドの立ち上げ10周年などを祝うケースもあります。

会社のほか、店舗や病院施設、福祉施設、学校など、業種・業態に関わらず、節目を祝うイベントとして催されます。

このような節目のタイミングで、周年を祝う社内外の関係者を招くイベントや記念品の制作などを行うのが通例です。

◉-1、周年の意味とは

周年記念を祝う意味は、お世話になっている従業員や取引先などに感謝の気持ちを表すことや、自社のプロモーションの役割もあります。

社員の家族をイベントに招いて労うこともあれば、会社を定年退職した元役員や社員を招待することもあるでしょう。

ただ、周年記念は単なる社内向けの祝い事ではなく、取引先との関係性を保つうえで重要な事業戦略の一つでもあります。

周年という節目をきっかけとして、社内外に向けて自社への愛着を高めてもらったり、プロモーションを行ったりするのが目的として考えられます。

◉-2、企業における周年の意義

企業における周年の意義は、前述したように従業員や取引先との関係性を深めることがあります。

自社の企業理念やこれまで歩んできた歴史を振り返ることで、今後の目標や会社としての方向性を、周りと認識合わせしていくことが重要です。

周年記念のイベントを実施することで、社員同士の交流が深まり、一体感やモチベーション向上につながることが期待できるでしょう。

取引先に対しては、自社をより深く知ってもらい、今後も良好な付き合いを継続していくために、限定商品やキャンペーンの実施など周年ならではの催しを実施するのが効果的です。

◉周年記念の方法

次に、周年記念の方法をご紹介しましょう。ひと言「周年」といっても様々なやり方があるのです。

◉-1、周年記念のイベント開催

周年記念の方法として代表的なものはイベントの開催でしょう。

従業員やその家族、取引先など、感謝の意を表明した自社に関係する多くの人たちを招くパーティーが節目で開催されます。

このような周年記念の式典やパーティーは、普段過ごしている会社とは異なる空間で実施することが多いです。

たとえば、ホテルなどの豪華な空間を貸し切って開催するなどが考えられます。

自社の周年記念式典およびパーティーの模様を動画に撮影して、後日DVDとして配布したり、広報の一環でプレスリリースを配信したりする方法も良いでしょう。

◉-2、周年割引や特典の提供

周年をきっかけにした、ユーザーに向けた割引や特典の提供も一つの手段です。

周年記念限定の割引クーポンを発行して、ユーザーにはSNSなどで拡散してもらえる効果が期待できます。「周年」というキーワードを皮切りに話題性を醸成することで、多くのユーザーと新規でつながるきっかけとなり得ます。

周年記念で、来店記念特典としてノベルティを配布する方法も考えられます。ノベルティは、Tシャツやマグカップ、ボールペンなど実用的なアイテムにするのがおすすめです。

◉-3、周年限定商品の販売

周年記念で限定商品を制作して販売するのもよくある方法の一つです。

商品販売を主たる事業とする会社であれば、限定商品をWEBサイトや広告などで打ち出し、消費者にインパクトを与えることができるでしょう。抱き合わせて購入者プレゼントなどを用意するのもおすすめです。

また、レストランといった飲食事業であれば、周年記念の限定メニューを提供するのも一案です。普段は提供されない特別メニューだからこそ、特にリピーターには希少性から来店のきっかけとしてもらえるでしょう。

◉-4、感謝を込めたメッセージの発信

周年記念は、様々な人たちに感謝の気持ちを表明する貴重な機会です。

そこで、日頃の感謝をメッセージカードなどに込めて、社員や取引先の人たちに贈ってみましょう。

周年ならではの貴重なギフトや記念品を用意するのもおすすめです。

◉-5、オリジナルコンテンツの企画と制作

周年にちなんだオリジナルコンテンツの企画と制作はアイデア力が試されます。

たとえば、会社の商品と人気キャラクターのコラボレーションとして、周年記念の企画でオリジナル商品を制作して限定販売する手も考えられます。

会社の100周年といった大きな節目を記念したWEBサイトを制作したり、周年記念出版をしたり、周年記念のオリジナルソングを制作したりと、アイデアは無限大です。

5年や10年単位でしか訪れない貴重な機会ですので、対外的なプロモーションにつながるようなコンテンツを作ってみると良いでしょう。

◉周年記念の出版とは

周年記念の一環としてよく取り組まれるのが周年記念の出版ならびに社史制作です。

10周年、50周年、100周年など、節目の年を機に周年史の制作を決断する企業は少なくありません。

◉-1、出版を活用した周年記念のメリット

周年記念出版のメリットとしては主に次の4つが考えられます。

  • ・社員に対するモチベーションアップ、ロイヤリティ向上
  • ・取引先、パートナー企業への自社理解の促進
  • ・求職者に対して自社の理念やメッセージの訴求
  • ・潜在顧客に対して競合他社との違いを訴求し差別化を実現

このように社内外に向けたプロモーションやブランディングのために周年出版をすることは、あらゆるメリットをもたらしてくれるのです。

◉-2、出版物を通じたPR効果

周年記念の出版を通じたPR効果について解説しましょう。

周年史は、社内向けに配布するインナーツールと、社内外どちらにも訴求が可能になる流通書籍のタイプがあります。

この流通書籍として周年史を制作すると、一般の書店へ流通・配本されるため、一般読者への認知促進の効果が期待できます。

なかでもリクルーティングの効果は絶大です。一般市場に流通した書籍を出版している企業という箔がつくことで、求職者にとっては親御さんへの説得材料になります。

たとえば、競合他社に大手がひしめく業界で、書籍を手に取ったことをきっかけに親御さんから子どもに対して、「この企業を受けなさい」と中堅の企業を推薦した事例もあるほどです。

もちろん商品PRとしても効果的です。詳細は後ほどの事例紹介で解説しますが、会社の歴史を紐解く周年史を作ろうとして、結果的に自社製品にスポットを当てた出版をしたことで、全国各地の企業から「商品を仕入れたい」という声が殺到しました。

それだけでなく、出版をきっかけにテレビのディレクターの目にとまり、全国放送のバラエティ番組に著者の出演が決定。全国の視聴者に向けて自社製品のPRをすることができました。

このように周年をきっかけに、市場に流通する書籍を制作することで、商品販促やリクルーティングと様々なPR効果が期待できるのが周年記念出版です。

◉-3、周年記念出版の具体的な手法

周年記念出版の具体的な手法としては、「企業出版」が挙げられます。

企業出版とは、企業が自社の情報や専門知識を書籍の形式で出版することです。出版社によってカスタム出版とも呼ばれます。

この企業出版の方法としては、いくつかの大手出版社がサービスとして提供しています。主な出版社としては次のとおりです。

  • ・幻冬舎メディアコンサルティング
  • ・ダイヤモンド社
  • ・日経BP社
  • ・東洋経済新報社
  • ・クロスメディア・マーケティング

いずれも企業のブランディングのための出版を支援する会社として実績は十分です。ただし、大手出版社となればかかるコストは安くはありません。

ちなみに、当社のグループ出版社であるパノラボも企業出版サービスを提供しているので、企業出版や周年史出版に関心のある人は一度お問い合わせください(パノラボサービスサイトはこちら)。

▼企業出版については、「企業出版の教科書|メリットから費用、成功のポイントまでまとめて解説」でも解説しているので、こちらも合わせてお読みください。

◉-4、出版を通じたブランドイメージの向上

出版を行うと、企業のブランドイメージが向上する効果も期待できます。

では、なぜ出版がブランドイメージの向上に寄与するのでしょうか。

まず、ブランディングとは、顧客に一貫したイメージを持ってもらうことにあります。書籍を出版すると、ある分野での第一人者として認識され、信頼性を獲得することが可能になるのです。

昨今は、SNSやホームページなどで、誰でも簡単に情報発信ができるようになりました。このように情報が氾濫しているからこそ、ユーザーはどの情報を信じて良いのか迷ってしまうのです。

「ブランド力が高まる」「企業ブランディングの実現」とはこのように特定分野や業界での第一人者としてのポジショニングを行い、圧倒的な信頼感を勝ち得ることと言えるでしょう。

◉周年記念の効果とは

ここまでに紹介した通り、周年記念の出版では期待を超える効果がもたらされます。次に周年記念の効果に着目して、それぞれ見ていきましょう。

◉-1、顧客ロイヤルティ向上への影響

周年記念の施策で重要な要素として考えられるのは、これまでの愛顧の気持ちをイベントやキャンペーンで表すことでしょう。

日頃の感謝を示すイベントやキャンペーンを実施することで、顧客のロイヤリティ向上が期待できます。

たとえば、宝酒造の人気いも焼酎ブランド「一刻者」の20周年キャンペーンとして実施されたのが、「マストバイキャンペーン」です。

「頑固にこだわって20年」というキャッチフレーズを打ち出し、商品の購入者のうち抽選で500名に「一刻者」オリジナル陶器をプレゼントしました。

信頼の強固なロングセラー商品のファンに対して、オリジナル陶器をプレゼントすることでブランドのより一層のファン化が進んだ事例といえます。

◉-2、競合他社との差別化手法

周年事業は、その貴重な機会をきっかけに競合他社との差別化を図る手段としても効果的です。

周年を記念した特別な企業ロゴを作れば、他社とは異なる印象をユーザーに印象付けることができます。

前述したキャンペーンやイベントなども差別化にはもってこいの方法ですが、ほか自社ならではの趣向を凝らしたノベルティを作成して配布するなどもおすすめの方法です。

このように競合他社では真似できない特別な手段を用いることで、現代ではSNSでユーザーが拡散してくれるPR効果も期待できるのです。

◉-3、社内のモチベーション向上に与える影響

周年をきっかけとしたイベントでは、社内の従業員らのモチベーション向上にも寄与します。

考えられる方法としては、普段はなかなか行くことのできないパーティー会場やレストランで周年記念のイベントを実施したり、社員旅行をしたりすることです。

なかには珍しい方法として、会社の特別なプロジェクトとして書籍企画のプロジェクトチームを立ち上げて、毎年恒例のイベントになったような例もあります。

これは某大手IT企業が、ITをテーマにした小説を社員参加型で企画したところ、「あのプロジェクトに自分も参加したい」という声が社内から上がり、モチベーションアップやロイヤリティの向上に寄与しました。

自分が企画に携わった書籍が書店に並んでいるともなれば、モチベーションが上がるに違いありません。このプロジェクトチームがテレビからの取材を受けるなどして、対外的なPRにも繋がったといいます。

◉周年記念の計画立案の方法

では、次に周年記念をどのような計画で進めていけば良いのでしょうか。具体的に進め方を解説していきましょう。

◉-1、周年のゴール設定と目標の明確化

周年記念のイベントをするにせよ、出版をするにせよ、ゴールの設定は最重要と言えます。

周年事業を実施することで、「何を目指すのか」「どう見せたいのか」「どんなことを伝えたいのか」「何を作り出したいのか」といった目的をまず設定しましょう。

さらに、ターゲットの設定も重要です。社員やその家族がメインのターゲットなのか、もしくは社外の取引先や潜在顧客、採用応募者がターゲットとなりうるのかーー会社の予算を使って施策を実施する以上は、一つの経営戦略として施策実施後にどのようになっているのかの理想を思い描くと良いでしょう。

◉-2、予算とリソースの確保

周年事業は予算や多くの人の手が必要です。

ここまでに紹介したように周年事業の手法には様々あります。どの施策にいくらの予算が必要なのか、そもそも周年事業全体でどのくらいの予算が確保できるのかを整理しなければなりません。

さらに、周年事業は大掛かりになることがあり、なかなか片手間で社員にやらせるのは至難の業です。

そのため、周年事業に取り組むと決めたら、周年事業のプロジェクトチームを立ち上げ、プロジェクトの成功に向けてのリソース確保することが重要です。

たとえば、周年出版のプロジェクトの場合は、企業出版の実績豊富な会社に依頼すれば、窓口に立つ担当者を1人でも配置すれば十分に回すことができるでしょう。

◉-3、タイムラインの設定とスケジュール管理

周年事業は、創立記念日や設立記念日といった周年の節目となる日に設定してプロジェクトをスタートするケースがほとんどです。

そのため、まずは周年事業のゴールから逆算してスケジュール設定することが必要です。同時並行で様々なプロジェクトを進行する場合は、2〜3年といった余裕あるスケジューリングをすることがおすすめです。

周年出版の場合は1年半〜2年ほどかけて、企画から執筆、出版、プロモーション施策の実行までの工程を組むことが多いです。

◉-4、広報・宣伝戦略の策定

周年イベントを実施するには、広報や宣伝活動の戦略立案をしなければなりません。

周年事業をやる以上は知ってもらって、メディアにも取り上げられるまたとない機会だからです。

周年記念式典といったイベント実施の時期を確定させ、その期日に向けてプレスリリースや広告宣伝の準備を行いましょう。

イベントの規模にもよりますが、具体的な企画やアイデアを具現化するまでに半年程度は要すると考えられます。そのため、広報や宣伝のスケジュールは全体で共有しながら丁寧に進めることをおすすめします。

◉周年記念の成功事例

次に、周年記念の出版で成功した事例をいくつか紹介しましょう。

◉-1、企業の周年記念の出版事例①/100周年記念出版をきっかけに商品が爆売れ

企業の100周年をきっかけに書籍出版した事例としては『よみがえる飛騨の匠』があります。会社は岐阜県高山市に所在する老舗家具メーカーの飛騨産業株式会社

著者は2000年に代表取締役社長に就任した岡田贊三氏でしたが、出版によって廃業寸前の赤字企業をV字回復させた改革の手法について解説をしました。

この書籍がテレビ東京『カンブリア宮殿』のスタッフの目にとまり、岡田氏は同番組への出演オファーが舞い込みます。

番組の出演をきっかけに、会社のホームページへのアクセスが殺到してサーバーがダウンするほどに。結果的に、番組出演後の1ヶ月だけで前年の売上を超えたといいます。

この書籍については、100周年の前年に出版したこともあり、同社の周年事業は大きな盛り上がりを見せました。

◉-2、企業の周年記念の出版事例②/70周年記念の出版が販路拡大に大きく貢献

企業の70周年をきっかけに書籍出版した事例としては『その「サラダ油」をやめれば健康寿命はのびる』があります。会社は愛知県一宮市に本社を構える食品製造会社のオリザ油化株式会社

当初は企業の70周年を振り返る、いわゆる社史の制作を検討していましたが、自社製品の「こめ油(米油)」の有用性を訴求するテーマに方針転換しました。

市場に一般的に流通しているサラダ油の過剰摂取に警鐘を鳴らし、書籍の中でその解決策として「こめ油」をとることの有用性を説きました。

このテーマが反響を呼び、サラダ油などの食品販売を行う全国各地の企業から「商品を仕入れたい」と新規取引の開始のきっかけに。一般書店に流通した甲斐もあり、北海道から鹿児島県まで幅広いエリアからの問い合わせを獲得するに至りました。

テレビ東京『主治医が見つかる診療所』へも出演が決定するなど、メディアでのPRにも一役買ったのがこの周年史施策だったのです。

◉-3、企業の周年記念の出版事例③/30周年記念出版が中途採用に大きな効果を発揮

企業の30周年の総括として書籍出版した事例として『35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画』があります。会社はソニー生命株式会社

ソニー株式会社とザ・プルデンシャル・インシュアランス・ カンパニー・オブ・アメリカとの合弁出資による「ソニー・プルーデンシャル生命保険株式会社」として日本進出した同社でしたが、ライフプランニングの重要性をもっと知ってもらう必要がありました。

そこで、東京都における義務教育初の民間人校長として杉並区立和田中学校の校長を務め、当時大阪府教育委員会特別顧問を担っていた藤原和博氏に白羽の矢を立て、書籍を執筆する企画がスタート。

東京都、大阪府、愛知県といった大都市圏の大型書店を中心に書店プロモーションを実施し、書籍は7万部超えのベストセラーになりました。

同社の若手社員やマネージャーに、自社の理念やビジョンを浸透させたことのほか、中途採用の新入社員のほとんどが書籍を読んでおり、ライフプランナーを憧れの職業の一つへと昇華させることに成功しました。

ただの会社案内では伝えることが難しかった自社のメッセージを、書籍という媒体を通して伝えることができ、とても効果的な周年プロジェクトとなったといいます。

◉まとめ

このように周年事業といっても、様々な手段があり、時間も予算も人員もたくさん確保しなければなりません。

しかし、企業としては社内外に向けて自社をアピールするまたとない機会。目的とターゲットを決定したうえで、綿密な準備をして告知を実践することが重要です。

本記事で紹介した成功事例などを参考に、自社であればどのような施策が合致しているかを考えてみましょう。

ブックマーケティング

経営者として将来的に出版したい思いがある人は少なくないでしょう。

中でも出版社から声がかかる商業出版に夢を見ている人もいるかもしれません。

今回の記事では、そんな商業出版の基本情報のほか、複数ある出版の方法や企業が取り組む上で重要視したいポイントを解説します。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉商業出版とは

商業出版とは、出版社が費用を負担して書籍を出版する方法を指します。

◉-1、商業出版の定義と特徴

商業出版は、出版社が利益を出すことを目的とするため、より多くの書籍が売れるような内容の企画やプロモーションを行うのが特徴です。

実際に、ベストセラーとして有名な書籍のほとんどは商業出版です。

具体的には、今でも売れ続けている岸見一郎・古賀史健著の『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』や、岩崎夏海著の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』などが、商業出版の代表的な事例として挙げられます。

しかし、商業出版の場合、著者の伝えたいことよりも出版社側の意向が優先されます。そのため、いくら著者に言いたいことがあったとしても、書けなかったり、出版社によって修正されてしまうことが多々あります。

著者が書きたいことが100%書ける方法ではないのも商業出版ならではの特徴と言えるでしょう。

◉-2、出版することのメリット

書籍を出版すること自体のメリットとしては、「信頼性向上」「著者のブランディング」「メディアへの露出」などが挙げられます。

現代ではインターネット上のWebやブログなどで情報を発信することもできますが、書籍として発信した情報の方が格段に信頼性が高くなります。

たとえば、ダイエット時に推奨される食事に関する情報を得たいと思った時に、個人が運営しているブログの情報よりも、専門家が出版している本の方が信頼できると感じる方は多いのではないでしょうか。

信頼度が高い情報は様々なメディアへの露出にもつながります。

実際に、商業出版をしたことで雑誌への掲載やゴールデンタイムのテレビ番組への出演につながった例があります。

出版やメディア露出により「その道の専門家である」と認識されることで、著者自身をブランディングすることが可能です。

さらに、副次的なメリットとして、出版社から発刊するとISBNコードが付与されることが挙げられます。

国会図書館にも収蔵されるため、ほぼ永久的に保存されて後世に残すことが可能です。

このように、出版することは著者自身のイメージ向上やブランディングで高い効果を期待できる手段と言えます。

◉商業出版のメリット

「出版すること」のメリットとして、信頼性向上、著者のブランディング、メディアへの露出などが挙げられますが、もう少し的を絞って「商業出版」のメリットに焦点を当てると、次の2つが挙げられます。

◉-1、著者の費用負担がない(出版社負担)

出版社の費用負担がない場合、著者が出版費用を負担することになります。

自費で出版する場合の費用は100万〜500万円ほどかかるため、著者の費用負担がないことは、著者にとって大きなメリットです。

◉-2、印税の支払いがある

商業出版の場合、書籍の販売数や印刷数に応じて、著者に印税が支払われます。つまり、収入が得られるということです。

自費出版や企業出版などは、そもそも印税を目的とした出版方法ではありませんが、「重版して総流通部数が10,001部を超えたら定価の5%をお支払い」のように、契約によっては印税が支払われることもあります。

このように、印税が支払われるのは商業出版する最大のメリットと言っても過言ではありません。

印税は印刷した部数に応じて支払われる「刷り部数印税」が主流で、相場は書籍価格の5〜10%です。たとえば、1,300円の書籍が初版で3,000部印刷されたとすれば、印税は10%の場合で39万円となります。

100万部を超えるミリオンセラーともなれば、1億円以上の印税が発生することもあります。

◉-3、出版社主導での販売活動

出版した書籍が売れなければ出版社が損をすることになるため、出版社は売るためのプロモーションを積極的に行います。

商業出版は出版社が利益を出す目的で行うため、ベストセラーやヒット作になるようにプロモーションにも力を入れるのです。

実際に、書店での販促では、出版社の主導でPOPの設置やブックDM、広告やウェビナーなどのネット施策などが行われます。

著者自身で販促をせず、プロである出版社に任せることができるため、効率よく本を売ることが可能です。

◉商業出版のデメリット

一方、商業出版のデメリットとしては、次の2つが挙げられます。

◉-1、企画の自由度が低い

自費出版や企業出版の場合は、著者が書きたい企画を自由に立てることができますが、商業出版は企画を出版社側が立てるのが一般的です。出版社側が立てた企画に合った著者に「出版などどうですか?」と持っていくという流れで出版に至るのが商業出版です。

そのため、基本的には著者が書きたいことではなく、出版社の企画に沿って書きます。

つまり、商業出版はたとえ著者が書きたいと思っていた企画であっても、出版社の企画内容に沿わなければ修正されてしまうということです。著者が書きたい内容を書けない出版方法とも言えます。これが商業出版の最大のデメリットと言えるでしょう。

◉-2、商業出版自体のハードルが高い

商業出版自体のハードルが高いということもデメリットとして挙げることができます。

なぜなら、よほど有名で話題性のある企業の経営者でない限り著者に選定されることは難しく、著者自身が持ち込んだ企画が商業出版に採用されるケースはまれだからです。

また、そもそも企画書の持ち込みを受け付けている出版社が少ないという現実があり、インターネットで公表している出版社は、専門分野の出版社を除くと数社程度しかありません。

運よく企画書の打ち合わせまで持ち込めた場合でも、最終的に自費出版に誘導されてしまったり、さらに運よく商業出版できたとしてもほとんど売れないという状態に陥ったりすることも考えられます。

◉商業出版の現実と出版業界の実情

著者の費用負担がなく販売活動も出版社が行ってくれる魅力的な商業出版ですが、その現実と出版業界の実情についても知っておく必要があります。

商業出版の現実と出版業界の実情について詳しく解説していきます。

◉-1、出版業界は斜陽産業?

現代は、ひと昔前に比べると本が売れにくい時代です。

インターネットを使えば無料で簡単に情報が手に入ってしまう現代社会。ひと昔前に比べると紙の書籍が売れにくい時代と言われています。

実際に出版業界の市場規模は年々縮小していますが、その主な原因は雑誌の販売数の減少であり、ビジネス書や実用書などは昔とそれほど変わらずに売れ続けています。

公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所の『2023年版 出版指標 年報』に掲載されている「出版物の推定販売金額」によれば、1996年時点での雑誌の推定販売金額が15,633億円なのに対して、2022年時点では4,795億円にまで減少しています。

一方で、書籍に関しては、1996 年時点での推定販売金額が10,931億円なのに対して、2022年時点では6,497億円となっています。

雑誌ほど減少していないというのが現実です。また、書籍についても趣味の多様化により小説などのエンタメ系書籍が販売部数を落としてしまったのが大きな要因です。

実際に、雑誌や小説などの売上が落ち込み、書店の数が減少していたり、市場規模は大きく下がっていたりしますが、ビジネス書や実用書などは今現在も堅調に売れ続けています。

◉-2、著者の知名度頼りの販売

商業出版では出版社が著者を選定しますが、その選定基準としてはSNSのフォロワー数やメディア露出が多いなどの著者の知名度が頼りになっているという現実もあります。

実際に、芸能人やSNSでフォロワー数の多い専門家やインフルエンサーなどが著者として選ばれることが多いです。

出版社が販促を行うとはいえ、無名の経営者が書いた本を売るのは難しいものがあります。

そのため、どうしても著者の知名度に頼ってしまう面があるのです。

◉-3、商業出版だから「売れる」は盲信

もし運よく出版社から商業出版で出版できたとしても必ず売れるとは限らないということも覚えておく必要があります。

実際に、著者が著名人やタレントであっても、販売数が数千部や数百部程度になってしまうこともあります。

ましてや、無名の人物が書いた本が売れる確率は低いです。

「商業出版だから売れる」という考えは捨てましょう。

◉商業出版プロデューサーの罠(出版コンサル)

商業出版プロデューサーとは、著者を発掘し、企画を立案し、出版社に企画を持ち込み、その企画を出版に導く人のことで、出版コンサルタントと呼ばれることもあります。

無名の経営者が商業出版を目指す場合には、商業出版プロデューサーにコンサルティングを依頼することがあります。

なぜなら、経営者は企業経営のプロではあるものの、出版のプロではないからです。

出版プロデューサーの費用は、実績やサービス内容によって異なりますが、200万~300万円もの高額の費用がかかる場合があります。

これだけの高額費用がかかっても商業出版が実現できれば良いのですが、出版社への企画の売り込みだけで終わってしまうという詐欺まがいのケースもあるようです。

もちろん、これは悪い出版プロデューサーに引っかかってしまった場合であって、全ての出版プロデューサーが悪いというわけではありません。

「商業出版プロデューサーがついているから必ず売れる」ことはないと理解したうえで依頼しましょう。

◉商業出版以外の出版の選択肢

商業出版以外の選択肢には自費出版(個人出版)、共同出版、電子書籍での出版、企業出版の4つがあります。

それぞれの特徴を表にまとめました。

商業出版自費出版
(個人出版)
共同出版電子書籍での出版企業出版
出版目的ヒットする本をつくる個人的な表現欲求を満たす・出版社の販路を活用し、より多くの人々に書籍を届ける
・費用を抑えて書籍を出版する
・費用をかけずに書籍を出版する
・国内外の人々に書籍を届ける
・認知度を向上させる
・企業ブランディングを行う
・信頼性を向上させる
費用負担出版社著者出版社・著者著者企業
書籍企画出版社著者出版社著者出版社
自由度
プロモーション出版社著者出版社著者出版社
初版発行部数3,000部〜10,000部100部〜500部100部〜1,000部1,000部〜1万部

それぞれの特徴を詳しく解説します。

◉-1、自費出版(個人出版)

自費出版(個人出版)とは、書籍の出版にかかる費用を著者自身が負担する出版方法です。

自費出版は、出版社の販路を利用して書店で販売するものと書店での販売はしない私家版に分けることができます。

自費出版のメリットは、本の内容の自由度が高いことです。

出版社は書籍の企画に介入せず、著者自身が企画をするため、内容を自由に決めることができます。

たとえば、著名人ではなくても「自分のこれまでの人生を一冊の本にまとめたい」「築いてきたノウハウを読者に共有したい」など、個人的な活動を周囲に知ってもらう本を出版することが可能です。

実際に、島田洋七『佐賀のがばいばあちゃん』は著者の自伝を著した自費出版の書籍ですが、全世界で累計800万部を売り上げたベストセラーとなりました。

自費出版は本の内容の自由度が高いことがメリットとなる一方で、出版に関わる費用をすべて負担する必要があること、発行部数が少ないことがデメリットとして挙げられます。

費用がかかったとしても大きな利益を出すことができればいいのですが、そもそも書籍の発行部数が100部程度〜と少ないため、大きな利益を出すことは簡単ではありません。

このように、自費出版は書籍の内容にこだわりがある人には適した出版方法ですが、費用の面でデメリットが大きい出版方法です。

◉-2、共同出版

共同出版とは、書籍の出版にかかる費用を著者と出版社が事前に決めた割合で負担する出版方法です。

共同出版では、費用負担に加え初版発行部数の一部を買い取るやり方もあります。

自費出版では費用さえ負担できれば誰でも出版できる方法ですが、共同出版は出版社が企画内容によって採用の可否を決めるため、誰でも出版できるわけではありません。

たとえば、出版社が「この内容では売れない」と判断した場合は、出版費用を出してもらうことはできないということです。

ほとんどの場合、出版社が損失を被ることはないため、企画は通りやすいものの、自費出版よりも自由度は低くなります。

たとえば、自伝や個人的なノウハウは採用されないことが多いでしょう。

また、自費出版との違いとして、出版社の販路を使って全国の書店やインターネット書店で販売できることが挙げられます。

このように、共同出版は費用負担、自由度、販売される場所の3点において商業出版と自費出版(個人出版)の中間に位置している出版方法と言えます。

◉-3、電子書籍での出版

出版方法には、紙媒体で出版する方法の他にも、電子書籍で出版する方法があります。

電子書籍として出版する方法のメリットは主に以下の3つです。

  • ・出版までのハードルが低い
  • ・在庫を抱える可能性がない
  • ・国内外に発信できる

また、印税率も紙の書籍より高いため、同じ冊数だけ売ることができれば、紙の書籍よりも儲かることになります。

しかし、電子書籍は紙媒体よりも売るのが難しいとされているだけでなく、紙の書籍よりも通常では定価が安いため、利益も少なくなってしまうのが現状です。

よほど影響力のある著名人でない限り、大きな利益を出すのは難しくなっています。

実際に、電子書籍を出版してもほとんど読まれずに終わってしまったという書籍は数多くあります。

電子書籍の市場は年々拡大しているとはいえ、現状ではまだまだ認知度が低く、利用率が限られているため、うまくプロモーションできなければ利益を出せずに終わってしまうのです。

そこで重要となるのが企業出版をはじめとする紙媒体の書籍です。

紙媒体の書籍は、電子書籍よりも社会的信頼性が高いため、出版における効果を高めることができます。

このように、電子書籍はメリットの大きい出版方法である反面、デメリットも大きい出版方法です。

社会的信頼度の面で紙媒体の出版方法に大きく劣ることから、企業が事業の発展を目指して行う場合には適していません。

◉-4、企業出版

企業出版とは、企業が「商品・サービスの認知度を向上したい」「他社と差別化したい」「企業のファンを作りたい」などの企業が抱える課題を解消することを目的として行うものです。

書籍の出版にかかる費用は企業が負担して出版します。

内容は自由に企画できるため、企業が伝えたいメッセージをしっかりと書籍に込めることができます。

自費出版(個人出版)との大きな違いは、「誰が出版するのか」「誰がプロモーションを行うか」という点です。

自費出版は著者が出版し、著者自身でプロモーションを行う必要がありますが、企業出版の場合は出版社に依頼することができます。

企業主導でセミナーやWebでのプロモーションを組み合わせれば、よりピンポイントでターゲットに訴求することが可能です。

このように、企業が抱える課題を解決したい場合には、企業出版が最も適した出版方法と言えます。

◉ブックマーケティングという選択肢

これまでに、出版の選択肢として「商業出版」「自費出版(個人出版)」「共同出版」「電子書籍出版」「企業出版」という5つの出版方法を紹介しましたが、実は「ブックマーケティング」という選択肢もあります。

新しい選択肢となるブックマーケティングについて詳しく解説します。

◉-1、ブックマーケティングとは

ブックマーケティングとは、書籍を活用してマーケティングに活用する手法です。

自社の創業ストーリーや商品開発ストーリーなどをまとめ、企業や商品・サービスの認知度向上や購買意欲向上などに役立てることが主な目的です。

ブックマーケティングの特徴は、あくまでもマーケティングの一環として書籍を活用する点です。

明確なターゲットを定め、どのように顧客ターゲットに届けるかをマーケティング戦略の知見で組み立てるため、書籍販売プロモーションに限らず、様々なマーケティング戦略をとることができるのです。

引用元:ブックマーケティングとは?メリットや効果的な戦略の作り方(https://forway.co.jp/post_column/bookmarketing/

商業出版や共同出版、企業出版の場合は、書店プロモーションや新聞広告などのプロモーション方法によってマーケティング効果を得る方法です。

一方で、ブックマーケティングは、マーケティングの一環として書籍を活用します。

書店プロモーションや新聞広告などに加え、SNSマーケティングやSEOコンテンツマーケティング、クラウドファンディングなどを組み合わせて戦略を練るため、通常の出版社ではマネできないやり方で効果を最大化させることが可能です。

ブックマーケティング

◉ビジネス目標達成のための出版戦略

企業戦略として書籍を出版する場合は、最初に「出版の目的とターゲットを設定する」ことが重要です。

なぜなら、出版の目的とターゲットが明確になっていないと、対象となる読者がはっきりせず、書籍の内容も販売戦略も不明確になってしまうからです。

出版の目的やゴールを設定するためには、現在企業が抱えている課題を把握することから始めましょう。

「書籍を使って解決したい課題は何なのか」について最初にしっかりと考えておくことで、その後の道筋を明確にすることが可能です。

出版で叶えられる企業の課題には、「商品やサービスの認知度向上」「集客や売上の向上」「企業理念や経営方針の浸透」「優秀な人材の育成・採用」などが挙げられます。

最初に目的やターゲットを明確に設定できるとプロモーションの方法も明確になり、できあがった書籍の活用方法も具体的にイメージすることができるようになります。

課題を洗い出しても、目的やターゲットを設定しなければどのように戦略を立てればよいかわからず、道に迷ってしまいます。

最短距離かつ効果の高い方法で目的を達成しターゲットに訴求できるよう、出版戦略を練ることが重要です。

◉-1、出版を戦略的に活用するためのポイント

出版を戦略的に活用するためのポイントは、「書籍に合ったプロモーション施策を行うこと」です。

書籍販売プロモーションには、以下のように様々な施策がありますが、とにかくすべてやればいいというわけではありません。

  • ・書店の広告プロモーション
  • ・書店ポスター
  • ・新聞広告
  • ・ランキング買取
  • ・Amazon施策(ランキング1位、広告)

その理由は、書籍によって効果のあるプロモーション方法が異なるからです。

たとえば、ビジネス書であれば、ウェビナーやAmazon施策、書店ポップやポスター、広告の設置など、王道のプロモーション方法が効果的です。

一方で、ビジネス書とは対極にある絵本では、ワークショップの開催やオンライン読み聞かせ会などで、どのような話なのかある程度知ってもらうことが大切になります。

このように、出版を戦略的に活用するには、より効果のある方法でターゲットに訴求することが重要なのです。

◉-2、出版による競合優位性の構築

インターネットやSNSが発達した現代では、いかに差別化を図り競合優位性を確保するかが重要です。

なぜなら、顧客はインターネットを介して多くの製品やサービスを容易に知ることができるため、良い製品やサービスを作ったからといって必ず売れるという時代ではなくなったからです。

自社にしかない魅力をアピールしたり、多くの顧客に認知してもらったりする手段として出版を利用する一つの方法が「ブックマーケティング」ということになります。

◉-3、出版を通じた顧客との関係性構築

出版を通じて、顧客の信頼を獲得して顕在層をファン化させるなどの関係性構築を図ることができます。

なぜなら、「書籍を出版している企業」だということによって信頼性が高まり、書籍を通じて自社の取り組みや商品・サービスなどを顧客に伝えることができるからです。

これによって、ファン化した顧客に商品やサービスの購入を働きかけることができるなど良好な関係性の構築につながります。

◉まとめ

この記事では、出版方法の一つとして商業出版について解説しました。

商業出版は出版社が出版に関するすべての費用を負担し、企画からプロモーションまでを行う出版方法です。

書籍を出版することで「信頼性向上」「著者のブランディング」「メディアへの露出」など様々なメリットを享受できるため、企業にとってはプラスになることが多いのが魅力です。

商業出版は著者にとって夢のある出版方法である反面、書籍内容が制限されたり持ち込み企画が通りにくかったりと、内容にこだわりのある人にとってはデメリットの大きい出版方法と言えます。

著名人でない場合、「この内容であれば売れる」と思われない限り、採用されることはありません。

また、運良く商業出版で書籍を出せたとしても、確実に売れる保証はありません。

その点、ブックマーケティングであれば、様々なマーケティング施策を組み合わせて戦略を練るため、より多くのターゲットの元へ届けることが可能です。

書籍の出版によって企業や事業を成長させたいと考えている方は、ブックマーケティングも視野に入れて検討してみてはいかがでしょうか。

ブックマーケティング

認知度拡大や採用強化のためのブランディング実現を目的に、自費出版を選択する企業が増えています。ただ、実は企業向けの出版施策として、自費出版のほかに企業出版という手段があります。

企業が出版を検討する際に、効果的な戦略となるのはどちらの出版方法でしょうか。具体的な出版社の選び方まで解説していきます。

目次【本記事の内容】

執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイ取締役マーケティング統括)


福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経済法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を担当し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。2023年9月取締役就任。グループの出版社、株式会社パノラボの流通管理も担う。

◉自費出版と企業出版の違いとは

自費出版と企業出版はどちらも費用負担の必要がある点では同じものといえます。

ただし、それぞれ出版の目的や出版後の展開に大きく違いがあるため、異なる名称で差別化しているのです。

自費出版は、著者が自身で費用を負担して、出版社の編集者に書籍化してもらう出版形式です。出版後は書店に必ず並ぶわけではなく、自己満足に終わる可能性も十分にあります。

企業出版は、企業が広告宣伝費などの名目で費用負担をし、企業の課題解決のためのマーケティング手段として書籍出版を活用することです。出版社の編集者やプロのライターの取材により原稿を執筆してもらうことができ、会社としての理念や考え方の棚卸しもできる方法です。

企業の課題とは、会社によって異なります。たとえば、出版をきっかけに企業としてのブランド価値を高め、競合他社よりも顧客に選んでもらえるようにする認知度拡大、ブランディングが出版目的の一つです。

企業出版は、出版社によって呼び方が異なることがあり、カスタム出版やブランディング出版と呼ぶこともあります。

▶企業出版については、関連記事【「出版の広告効果とは? 企業出版と自費出版の違い」】もあわせてご参考にしてください。

◉自費出版と企業出版のコストの違い

自費出版と企業出版では、目的のほか、かかるコストの違いが大きいです。

◉-1、自費出版のコストは安価だが料金体系は幅広い

自費出版は、基本的には自分の執筆した原稿を、プロの編集者に編集や校正してもらう流れをとります。

自費出版は地方の小さな出版社から大手出版社まで幅広く展開されています。

そのため、出版社によってコストに差が生じます。部数によっても変わりますが、100万円以下で対応する印刷会社の延長のような業務請負もあれば、300万〜400万円で請け負う自費出版もあります。

会社の広告宣伝や書店流通を希望する場合は、自費出版を選択するのは得策とはいえません。「書店に並びます」というセールストークで売り込む自費出版会社もありますが、そういった出版社は大型書店の一角に、誰が立ち寄るかわからない自費出版専用の棚を購入しており、そこへの展開となるのが大半です。

書店に配本はしても、棚に陳列されることなく返品されるのもよくある話です。

◉-2、企業出版はかなりの高額だが書店に流通する

企業出版は、出版後のプロモーションまで担うため、書店には流通していくのがポイントです。

コストは有名な大手企業出版会社の場合、1000万円ほどかかるのが当たり前の世界です。1000万円という高額な費用を負担しても、出版後の宣伝効果で費用回収ができる企業であれば活用してもよい手段でしょう。

業界最大手の企業出版会社では、不動産投資会社は1〜2件の契約が決まれば出版費用が簡単に回収できることもあり、不動産関連の書籍が多数出版されていました。

ただ注意が必要なのが、出版された書籍は大型書店には基本的に陳列されますが、どれほどの期間展開されるのかは未知数な点です。というのも、出版業界は書籍の販売が落ち込んでいることもあり、売れなければ即返品される厳しい世界だからです。

たとえ大手出版社の名を冠した書籍であっても、売れなければすぐに返品されると考えてください。

くわえて、確実に書店に展開させるためのプロモーションを実施する手もありますが、前述の1000万円近いコストから、さらに数百万円の広告費を投じる必要があることは覚えておきましょう。

◉自社に適した出版社の選び方

では企業が自費出版もしくは企業出版を検討した際に、出版社はどのような点に着目して選ぶのがよいでしょうか。

◉-1、対外PRよりも説明ツールが必要であれば安価な自費出版を

まず、自社で配布するための営業ツールや採用の際に応募者に配布する採用ツールなど、書店展開の必要性以上にツール自体が必要ということであれば、自費出版でもよいでしょう。

ライターを用意してくれる出版社であれば、自社で執筆する必要もなく、自由度高く自分たちの思い通りに制作することができます。

なによりも自費出版は安価です。広告費を抑えながら、営業活動や採用活動のプラスアルファが欲しいときに選択肢となりえます。

ただし、少しでも対外的なPRやブランディングの目的があるならば、自費出版は選択すべきではないでしょう。

自費出版で満足に書店流通してくれる出版社はないと言っても過言ではありません。自費出版はあくまで自社で完結する場合の選択肢として考えましょう。

◉-2、企業出版の見極めの仕方

対外的なPRやブランディング目的で出版を検討した際、企業出版を選択するのがよいでしょう。前述のように1000万円近くのコストがかかる出版社がありますが、なかにはもっと安価に企業出版を提供している出版社もあります。

大手出版社であればコストは高くなりがちですが、会社のブランド力があります。会社としても箔がつき、競合他社が出版施策をすでに実施している場合にはコンペなどで対抗する手立てとなるでしょう。

一方、一般的に知名度は高くなくとも、大手出版社に引けをとらない制作力と流通力を誇る出版社も存在します。会社のブランド力よりもコスト面を抑えたいのであれば、このような企業出版会社を選択するのも一つの手段です。

最後に、企業出版ならびにカスタム出版のサービスを提供している出版社を簡単に紹介しましょう。

・幻冬舎メディアコンサルティング
企業出版最大手の出版社。ベストセラー書籍を多数輩出する幻冬舎の子会社であり、企業出版では業界随一の1800社以上の実績を誇ります。企業の成功事例も多数。

・ダイヤモンド社
ビジネス書では随一の実績とブランド力を誇る出版社です。企業出版のほか、広報誌や会社の歩き方などの企画も取り扱っています。自社雑誌およびWEB媒体とのコラボも可。

・日経BP社
ビジネス書の実績が豊富な経済系出版社。「日経ビジネス」といったビジネス系雑誌媒体を発行しているのも強みの一つ。社史・周年史も豊富な実績を誇ります。

・東洋経済新報社
雑誌・東洋経済やWEB・東洋経済オンラインを発行、運営するビジネス系出版社。カスタム出版の実績も多く、紙やデジタル、リアルイベントといったプロモーション提案も可。

・クロスメディア・マーケティング
企業出版に力を注ぐ成長著しい出版社。年々刊行点数も伸ばしており、費用も安価なメニューから幅広く揃えています。大手出版社に遜色ない流通力を保持しているのもポイント。

・フォーウェイ(出版社パノラボ)
大手の企業出版会社よりも安価な適正価格でブランド力ある出版社から出版ができます。また、自社グループに企業出版専門の出版社パノラボがあり、マーケティング視点を持った成果にこだわるブックマーケティングを提供できるのも特徴。出版後のプロモーションまで企業の出版目的に合わせて設計できる点も強みの一つです。

上記の特徴を踏まえて、自社の課題や広告予算との兼ね合いで選択するのがよいでしょう。逆に上記以外の企業出版は制作面もしくは流通面のクオリティや対応の悪さが大きな不満点につながり、自費出版したのと結果が変わらない可能性が高まるためおすすめはしません。

▶企業のブックマーケティングについては、関連記事【ブックマーケティングとは?メリットや効果的な戦略の作り方】もあわせて参考にしてください。

◉【まとめ】ブランド力かコストパフォーマンスのどちらを優先するかが重要

以上のように、企業が出版を選択する場合、目的をいかに達成させるかが重要になります。

企業出版を実施するとしても、出版社のブランド力を信じて高額な広告予算で施策を打つか、コストパフォーマンスを重要視するかを決めなければなりません。

ただ、市場に自社の書籍を流通させることは直接的な売上アップ以外のリターンもたくさんもたらしてくれます。出版をきっかけにメディアから取り上げられるようになり、副次的な出版効果で売上が向上したという事例も珍しくありません。

企業としてステップアップを図るならば、企業出版という手段はさらなる成長のための起爆剤になりえるでしょう。

ブックマーケティング

自伝を書きたいという理由や動機は人それぞれでしょう。

たとえば、「自分が生きた証を残したい」「自分の知識や経験を後世に伝えたい」「自分が創業した会社の技術を多くの人に知ってほしい」などいろいろな理由や動機が考えられます。

しかし、自伝を書きたい人すべてが文章を書くのが得意というわけではありません。

本記事では、自伝を書きたいと思っている人のために、構成や執筆の仕方、出版方法までをわかりやすく解説します。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 29d5ead1ee41a6d25524876e7bd315d5-scaled.jpg
慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

自伝を書く意義とは

自伝とは、自分の人生や半生における経験や考え方などを自分で記述した本のことです。

自伝のことを、自叙伝や自分史ということもあります。

有名な自伝としては、フランスのジャン=ジャック・ルソーの「告白」、アメリカのベンジャミン・フランクリンの「自伝」、ドイツのヨハン・ヴォルフガンク・ゲーテの「詩と真実」、福沢諭吉の「福翁自伝」などがあります。

最も古い自伝はローマのアウグスティヌスの「告白録」といわれていますが、これは「神への告白」という性格を持っているものでした。

しかし、近年では、親族や子孫・後生の人に「自分の生きた証」や「自分の知識や経験」を残したり、「自分の存在や生き方」「自分の考えの正当さ」を書き残したりするものに変わってきています。

自伝を書く意義は人によって異なっていますが、代表的なものは次のようなものでしょう。

  • ・自分が生きた証を親族や子孫に残す
  • ・自分の知識や経験を後世の人に残す
  • ・これまでの人生を振り返って今後の人生の糧とする
  • ・自分が興した会社の技術を役立ててもらう
  • ・ある物事や事故・事件の真実を伝える
  • ・特定の人に感謝の気持ちを伝える

自伝の書き方や目的別タイプ

自伝は、その「書き方」と「目的別」によっていくつかのタイプに分けることが可能です。

「書き方」は「ストーリー型」と「年表型」の2つに分けることができ、「目的別」は「ビジネスタイプ」「啓蒙タイプ」「伝世タイプ」の3つに分けられます。

以下では、それぞれについて詳しく解説していきます。

書き方①:ストーリー型

「ストーリー型」は、名前の通りストーリー(物語)を重視した自伝の書き方です。

読者を引き付けるストーリー(物語)にするためには「起承転結」を考慮した構成を考えることが不可欠となります。

時系列にこだわらずに現在と過去を行き来するような内容になっても構いませんが、ストーリー(物語)性を持たせるためには、ストーリーテリングの執筆技法が必要になります。

たとえば、企業経営者の方が自伝を書くのであれば、ストーリーテリングを含めた、ストーリーブランディングという手法で、自身の考えを伝えていくのが有効です。

▶︎ストーリーブランディングについては、関連記事「ストーリーブランディングとは?企業の物語を伝えてファンを作る方法」をあわせて参考にしてください。

書き方②:年表型

「年表型」は、自分の人生を振り返りながら、出生から現在までの出来事を順に書いていく書き方です。

自分の身に起こったことなどを時系列に沿って書いていくので、「ストーリー型」のように「起承転結」を考慮した構成にする必要はありません。

著者にとってはこの点が大きなメリットですが、読者にはやや退屈で単調なものとなりがちです。

「年表型」の目次の例としては、次のようなものが考えられます。

  • 1.生い立ち
  • 2.幼少期
  • 3.小学校
  • 4.・・・

しかし、これではあまりに当たり前で平凡なので、特徴のあるサブタイトルを付けることによって変化を持たせることができます。

たとえば、次のようなサブタイトルを入れれば、「年表型」であっても読者に興味を抱かせることができます。

  • 1.生い立ち:波乱万丈の人生の幕開け
  • 2.幼少期:今と違って寡黙な子供時代
  • 3.小学校:親の仕事の都合で10回以上も転校
  • 4.・・・:○○○○○○○○

こういった年表型の書き方が推奨されるのは、企業の周年記念のタイミングでの記念出版などです。

もし、記念出版をお考えであれば、年表型の構成を検討してみましょう。

▶︎周年については、関連記事「【周年担当者必読】周年記念の意味と手段、具体的な事例とは」をあわせて参考にしてください。

目的別①:ビジネスタイプ

「ビジネスタイプ」は、自分が経営している会社のことをより多くの人に知ってもらいたいというブランディングや知名度向上などを主な目的とした自伝です。

会社のことは前面には出さずに、自分や自分が経営している会社が保有している技術やノウハウについて記述して、それに興味を持った人が問い合わせをしてくることによってブランディングや知名度向上に寄与させることも可能です。

「書籍を出版している」という事実だけでも信頼性や知名度の向上に結びつきますし、テレビや新聞などのメディアで話題になれば、新規顧客の獲得や売上高の向上につながることも期待できます。

基本的に、自分のビジネスについて執筆するのですが、自伝なので、自分の生い立ちやなぜそのビジネスを始めようと思ったのかなどについても触れることになります。

一般的には、「ビジネスタイプ」の自伝を書くのはかなり難易度が高いといわれているので、プロの編集者の力を借りて「読者にとって魅力的な本」となるように注意する必要があるでしょう。

また、ブランディングや知名度向上を狙うためには、プロモーションや出版社の流通を上手に使うことも大切です。

目的別②:啓蒙タイプ

「啓蒙タイプ」は、自分の身に起きた病気や事故、事件などの経験を読者に知らせるために書く自伝です。

何らかの啓蒙のために出版するので、読者から共感を得られるような構成や内容にすることが大切です。

より多くの読者に自分の経験を知ってもらって、共感や勇気を与えることができるようにしたいものです。

たとえば、闘病経験を自伝にする場合であれば、読者に何を伝えたいのかで構成や内容が変わってきます。

伝えたいことが「誰でもかかる可能性がある病気なので毎年健康診断を受けましょう」なのか、「病気になってもこうやれば症状が改善します」なのかでは、書き方が変わってくるからです。

なお、病気や事故、事件などが特殊な場合は、あまり関心を持たれない可能性があることに注意が必要です。

目的別③:伝世タイプ

「伝世タイプ」は家族や親族などに向けて作る自伝で、自分が生きた証を子孫に残すことを目的とした自伝です。

「伝世タイプ」の書き方は自由なので、一般的な自伝の書き方にこだわる必要はありません。

むしろ、自分の個性を前面に押し出したような構成や内容にすることによって、親近感を抱いてもらえるようになると思われます。

自伝はターゲット設定が重要

自伝に限ったことではありませんが、「誰に読んで欲しいのか」「誰に伝えたいのか」というターゲット設定が重要です。

ターゲットが定まれば、その後の自伝の構成や執筆、出版後のプロモーションまで一貫性を持って取り組むことができるようになります。

特に「ビジネスタイプ」の自伝の場合は、ブランディングやビジネスチャンスの獲得を目的として出版するので、ターゲットの心に刺さるタイトルや構成、目次にすることも重要になります。

また、内容によっては市場調査を行う必要性も出てくるので、何となくターゲットを選定しただけでは、自伝がブランディングや知名度向上につながることにはなりません。

▶知名度向上については、関連記事【経営者必読!認知度向上の方法と効果的なマーケティングの選択肢】をあわせて参考にしてください。

自伝の書き方の基本プロセス

自伝を書く際には、基本的なプロセスがあります。以下で説明します。

まずは自分の人生を振り返ろう

自伝の書き方に「ストーリー型」と「年表型」があることを紹介しましたが、どちらで書くにしても、年表を作って自分の人生を振り返って言語化することが必須であり、最も重要な作業です。

まずは、すぐに思い出せるものから書き出していきますが、すぐに思い出せるということは自分にとって印象に残る出来事だったということなので、自伝の中でも重要なエピソードとなる可能性があります。

自分の身の回りで起こったことはもちろん、世の中でどんなことがあったのかなども記載しておき、「いつ」「何が」「どのようにして」起こったのかを明確にしておきましょう。

ただし、この作業はかなり労力が必要なので、出版社の編集者やライターに依頼すれば、自分の年表の整理をしてもらうことができます。

執筆だけでも大変な作業になるので、出版社の力も有効活用した方が良いでしょう。

構成の作成(目次とタイトル、サブタイトルの決定)

一般の人が本を購入する際には、タイトルだけではなく目次を見る人も多いはずです。

目次を見ることによって「何がどのように書かれているのか」を知ることができます。

特に「ビジネスタイプ」の自伝の場合は、誰かに購入してもらうことを意識しなければなりませんので、本の構成や目次を決定する作業も重要です。

書店で本を手に取った人に興味を持ってもらえるような各章のタイトルやサブタイトルを考えましょう。

また、実際に執筆する際にも構成や目次がきちんと出来上がっていれば、それに沿って文章を書くことができます。

この段階でも、出版社の編集者やライターに依頼すれば、読者を惹きつけるタイトルの付け方や構成・目次などについての有益な提案をしてもらうことができます。

執筆方法の検討

ここでいう執筆方法とは、自分で書くのか、取材をしてもらってライターに書いてもらうのかということです。

自伝なので、自分で書くのが当然という考え方もありますが、文章を書き慣れていない人にとっては、一冊の本を執筆するのは思いの外大変な作業です。

もちろん、普段から文章を書き慣れている人や自分で書くことにこだわる人は、自分のペースで少しずつ執筆していけばいいと思います。

しかし、文章を書き慣れていない人や「ビジネスタイプ」の自伝で自分の経営する会社のブランディングを目的とする方などは、プロのライターに取材して書いてもらうという執筆方法も検討してみましょう。

実際に出版されているビジネス書のほとんどはライターが執筆したものですし、読者が読みやすい本を目指すのであればプロのライターに任せるのも一案だと思われます。

ブックマーケティング

自伝を自身で執筆する場合の注意点

ここでは自伝を自分で書くことにこだわる人の場合の注意点について説明します。

目標設定を明確にする

まず挙げておきたいのは、目標設定を明確にするということです。

たとえば、「いつまでに年表を完成させるのか」「いつまでに構成や目次を決定するのか」「いつまでに何文字の原稿を書いて、いつまでに完成させるのか」などです。

「時間が取れたときに少しずつ書いていこう」などという考えで取り掛かると、いつまでたっても完成できないということになってしまいます。

計画倒れにならないためにも、きちんと具体的な目標設定をするようにしましょう。

書くことを習慣づける

次に、文章を書くことを習慣づけることも大切です。

自分で会社を経営している方であれば、何ごとも習慣化することの大切さが分かっていることでしょう。

自伝の原稿を書くことが日常生活の中に組み込まれると、毎日「原稿を書き進めることができた」という達成感が得られるようになるので、自ずと原稿を完成させることに近づいていきます。

自伝を出版する方法

原稿が出来上がると、次は自伝を出版する方法を考えなければなりません。

以下では、自伝を出版するメリットやデメリット、3つの出版方法について具体的に説明します。

自伝を出版するメリットとデメリット

自伝を出版するメリットとしては、主に次のことが挙げられます。

  • ・自分が生きていた証を残せること
  • ・自分の人生を振り返って見つめ直すきっかけとなること
  • ・読者に何らかの影響を与えることができること
  • ・自分の会社や保有する技術などを世の中に知ってもらえること
  • ・ベストセラーになる可能性があること

また、デメリットとして次のようなことがあります。

  • ・出版費用が自己負担になってしまうこと
  • ・自分の人生が公になってしまい誹謗中傷などを受けるリスクがあること

出版方法(自費出版、企業出版、商業出版)

出版方法としては「自費出版」「商業出版」「企業出版」の3つがあるので、自伝の場合もこの3つの中から選ぶことになります。

「自費出版」は、自伝を本という形にして残したい人が最も利用する一般的な方法です。

出版費用が全額著者負担となる点がデメリットと言えますが、その分著作権を自分で持ったり、自分の書きたいことを書籍にかけるのがメリットです。

発行部数などによって費用は変わってきますが、原稿を直接印刷会社に持ち込んで印刷してもらってコストを削減することも可能です。

「企業出版」も著者(会社や会社の経営者)が出版費用を全額負担する出版方法ですが、出版社による企画や編集・書店への流通・プロモーションなどの費用が含まれます。

そのため、「企業出版」を利用すれば書店に流通させたり出版社によるプロモーションを行ったりすることができるので、「ビジネスタイプ」の自伝の場合、会社や著者である経営者のブランディングや知名度向上につなげることが期待できます。

「商業出版」は出版社がベストセラーを狙って著者と協力して出版する方法で、出版費用は全額出版社の負担です。

著名人やタレントなどの自伝の場合は「商業出版」もありえますが、ほぼ無名の一般人の自伝が「商業出版」されることはありません。

自伝を読者に届けるための工夫

「ビジネスタイプ」や「啓蒙タイプ」の自伝の場合は、本を出版しただけでは目的を達成することができません。

ブランディングや知名度向上、啓蒙活動を達成するためには、その自伝を読者に届けるための工夫が必要になります。

つまり出版社の流通チャネルを利用して書店に配本して、読者に手にとってもらって購入してもらう必要があるということです。

ここでは、そのための工夫をいくつか紹介します。

読者に興味を持たせる表現方法

出版社の流通チャネルを利用して書店に配本され書棚に並んだとしても、読者が購入してくれるとは限りません。

まず、読者の目を引き興味を持って手に取ってもらうためには、タイトルを工夫する必要があります。

たとえば、「借金1億円を背負いながらも会社をV字回復させた」というようなタイトルがついていれば、読者は「そんな状態からどうやってV字回復させたのか?」と、もっと知りたくなって、本を手に取ることでしょう。

そして実際に購入してもらうためには、さらに企画段階における本の構成や目次の組み立て方にも工夫をする必要があります。

読者に届ける戦略的なプロモーションの方法

自伝を書いて出版したというだけでは、読者に手に取ってもらうことは難しいと言えます。

なぜなら、毎年多くの書籍が出版されているためです。

総務省が2022年に発行した「日本統計年鑑」によれば、年鑑約7万冊(月間約6千冊)もの本が出版されています。

そのため、会社や経営者のことを全く知らない読者に書店などで手に取ってもらうためには、プロモーションなどを工夫する必要があります。

自伝を読者に届けるための工夫として、次のようなことが考えられます。

  • ・書店営業をして書店員さんにその自伝のことを認知してもらう
  • ・書店でのプロモーションを行う
  • ・Amazonなどのウェブ広告を活用して多くの人に知ってもらう
  • ・新聞広告などによって認知してもらう

ただ自伝を出版しただけでは本を売ることは難しいので、売る手段を持っている出版社に依頼することが賢明だと思われます。

まとめ

本記事では、自伝の構成の作り方や執筆の仕方、出版方法などについて解説しました。

自伝は、その目的によって「ビジネスタイプ」「啓蒙タイプ」「伝世タイプ」に分けることができます。

この中で「ビジネスタイプ」は、経営者が自分の経営する会社のブランディングや知名度向上などを目的として出版する自伝で、出版社の流通チャネルを利用した書店への配本やプロモーションなどを行います。

実際に書店に配本されて書棚に並びますが、実際に読者に手に取ってもらい購入してもらうためには工夫が必要です。

ただ単に本を出せば売れて知名度が上がるというようなことはほぼありませんので、「ビジネスタイプ」自伝の場合は、売れるためのサポートをしてくれて、売るための手段を持っている出版社を選ぶ必要があります。

ブックマーケティング
 
 

企業ブランディングの方法としてストーリーブランディングが注目を集めています。

売れ続ける企業には理由があり、共通点は発信しているストーリーに消費者が心を動かされていることです。

本記事では、ストーリーブランディングの価値やメリット、具体的な方法を解説します。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉ストーリーブランディングとは

ストーリーブランディングとは、企業や製品・サービスのブランドイメージを確立するために、ストーリーを活用するブランディング手法の一つです。

心理学では「人は感情が揺さぶられたときのことを深く記憶する」と言われています。

そのため、単に企業の成り立ちや、製品の開発エピソード、発売・リリースまでの道のりを解説するよりも、ストーリーにのせて伝えた方が、自社や製品・サービスの印象が強く残りやすくなるのです。

たとえば、経営者が自伝や伝記を出版しファンを増やしたり、ブランドムービーを作ったり、CMを物語調にしたりするのはストーリーブランディングの手法の一つです。

また、ストーリーブランディングは、結果として競合他社との差別化にもつながります。

たとえば、競合他社よりも製品・サービスの質や価格が劣っていたとしても、ストーリーで顧客の感情に強く訴えかけることができれば、「この製品・サービスを買いたい」と思ってもらえます。

このように、ストーリーブランディングは、単なるブランディング手法としてだけではなく、競合他社との性能・価格競争を脱却し、強固な差別化を図るための手法としても注目されているのです。

◉ブランディングのもたらす価値を知る

ブランディングがもたらす価値の種類は、主に次の4つです。

  • ・機能的便益
  • ・情緒的便益
  • ・自己表現便益
  • ・社会的便益

それぞれどのような価値なのかを詳しく見ていきましょう。

◉-1、その1:機能的便益

機能的便益とは、商品やサービスの基本的な便益のことです。簡単に言えば、「商品やサービスそのものの良さ」という意味です。

機能的便益が低いと、商品やサービスを利用したユーザーから低い評価しか得られなくなります。そのため、企業がブランディングにより真っ先に取り組むべきものは機能的便益の向上と言えるでしょう。

たとえば、スポーツシューズの場合であれば「履き心地が良い」や「走ったときの衝撃が小さい」という機能的便益があります。

「このメーカーのスポーツシューズは履き心地が良い」「このメーカーのスポーツシューズは走ったときの衝撃が小さい」のように、ブランディングにより、自社製品・サービスの機能的便益が向上すれば、売上に繋がります。

しかし、現代ではさまざまな特徴を持った製品サービスが市場に溢れているので、機能的便益だけで他社との差別化を図るのは難しいのが実情です。

◉-2、その2:情緒的便益

情緒的便益とは、特定のブランドの商品を購入する時に覚える感情のことです。

顧客が商品やサービスを選択する際には、機能的便益だけでなく、情緒的便益も重要な要素です。

たとえば、パソコンを購入する際に、機能面や価格の安さで劣っていたとしても「スタイリッシュでかっこいい」「これを持っていると気持ちが高揚する」というように、情緒面でApple社のMacBookシリーズを選ぶ人は多いのではないでしょうか。

このような情緒的便益は、企業やブランドの歴史、独自の世界観などのブランドストーリーによって作り上げられます。

競合他社の商品やサービスとの価格・性能競争にならず、差別化を図るために有効なのが、この情緒的便益です。

◉-3、その3:自己表現便益

自己表現便益とは、特定のブランドの製品やサービスを身に着けたり、利用したりすることによって顧客が自己表現をできる便益のことです。

たとえば、高級ブランド品を持っていることによって「お金持ちになった気分になれる」「自信が持てるようになる」というような気持ちになれるのが、自己表現便益になります。

自社の製品・サービスが顧客に自己表現便益を提供できるようになると、ブランドと顧客との関係が強固になり、結果としてリピートやLTV(ライフタイムバリュー)の向上につながります。

◉-4、その4:社会的便益

社会的便益とは、特定ブランドの製品やサービスが顧客をある社会的集団やコミュニティに所属させる便益のことです。

さらに、その商品やサービスを所有していることにより感じる「集団の一員である」という所属感や、それに伴う喜びや満足感も社会的便益にあたります。

たとえば、あるブランドのファッションを着ていることによって「おしゃれな人」に属していると感じる場合は、そのブランドは社会的便益を持っていることになります。

◉ストーリーブランディングのメリット

ストーリーブランディングを実施するメリットは、主に次の3つがあります。

  • ・シーンが伝わりやすい
  • ・共感を得られやすい
  • ・ファン獲得に繋がりやすい

それぞれどのようなメリットなのかを具体的に見ていきましょう。

◉-1、シーンが伝わりやすい

創業時の苦労、製品・サービスの開発プロセスが、映画のワンシーンのように顧客に伝わりやすくできることは、ストーリーブランディングならではのメリットです。

たとえば、製品・サービスを利用している最中に、開発プロセスや開発者の想いなどが映画のワンシーンのように脳裏に浮かび、感慨深い気持ちになったり、「頑張るぞ」と気持ちが高揚してきたりした経験がある方も多いのではないでしょうか。

ただ利用することとは違った感情が顧客に芽生えるため、製品・サービスに特別な感情を抱くようになります。結果として顧客に「この製品・サービスでないとダメだ」と思ってもらいやすくなり、リピート購入などにつながりやすくなります。

◉-2、共感を得られやすい

ストーリーブランディングは顧客の共感が得られやすいというメリットもあります。

たとえば、次の2つの製品の紹介文を比べてみてください。

・その1:子育てと仕事の両立に悩むシングルマザーのためのサプリメントです。
・その2:このサプリメントは、「子育てと仕事の両立に悩むシングルマザーの悩みを解決したい」という開発担当の女性社員の想いから生まれました。またその想いに共感した3人のシングルマザーの社員が立ち上がり、プロジェクトチームが発足。300以上の試作品を作り、成分1gまで細かく調整。5年かかってようやく完成したサプリメントです。

簡単ではありますが、その2の紹介文の方が開発プロセスや開発者のバックグラウンドも見え、ただのサプリメントとは違う感情が湧き出てきませんか?

このように、ストーリーは顧客の感情に訴えかけるため、機能性をアピールするブランディング手法よりも顧客の共感を得やすく、拡散性が高いという特徴があります。

◉-3、ファン獲得に繋がりやすい

ファンの獲得につながりやすいということもストーリーブランディングのメリットと言えるでしょう。

顧客がストーリーに共感するとブランドそのものに魅力を感じるようになり、ファン化してブランドから離れづらくなります。

ファンが獲得できると、LTV(ライフタイムバリュー)が上がったり、リピート購入につながったり、製品・サービスの性能や価格によらず、売れ続ける状況が生まれやすくなります。

◉企業がストーリーブランディングを始めるべき理由

商品やサービスの機能などでは競合他社との差別化が難しくなってきている時代。

そのため、今後は、機能的便益以外の要因によって差別化を図る必要があります。

機能的便益以外で競合他社との差別化を図るために有効な方法として注目されているのが、ストーリーブランディングです。

具体的に、なぜ今企業がストーリーブランディングを始めるべきなのか、その理由は次の3つです。

  • ・容易に商品・サービスが購入できる環境
  • ・ものや情報が溢れている環境
  • ・SNSの普及による情報キャッチの速さ及び拡散性

それぞれ3つの観点について解説していきます。

◉-1、容易に商品・サービスが購入できる環境

今は、いつでも好きなときにネットショッピングを利用して、製品・サービスが購入できる時代です。

もっと極端に言えば、どのメーカーの製品・サービスを買っても基本的に必要な機能はあらかた備わっています。また、ネットで購入した商品は翌日か翌々日には届きます。

今や機能や品質、納期などで差別化することに限界が来ている時代なのです。その突破口の一つとして、ストーリーブランディングが重要になってきます。

◉-2、ものや情報が溢れている環境

インターネットでも店舗でも、今現在、市場にはモノが溢れています。

むしろ、「製品・サービスを購入したくても選択肢が多すぎて選べない」という悩みを抱える人の方が多いのではないでしょうか。

このように、物質的に満たされた環境だからこそ、顧客はモノの豊かさよりも心の豊かさを重視する傾向にあります。

また、それに伴い、顧客は自分のライフスタイルや価値観に合った製品・サービスを選択する傾向が増えてきています。

だからこそ、顧客の感情に訴えかけるストーリーブランディングが有効な時代とも言えるのです。

◉-3、SNSの普及による情報キャッチの速さ及び拡散性

今は、FacebookやX(旧Twitter)、Instagramなど、SNSの普及によって情報の伝達や更新、拡散のスピードが早い時代です。

また、各SNSの「いいね」や「リツイート」「リポスト」などの機能より、共感の意思表示や、情報の拡散も容易です。

そのため、SNSのユーザーが共感しやすいストーリーブランディングの方が、従来のマーケティング手法よりも、より多くの見込み顧客にアプローチでき、認知してもらえる可能性が高くなります。

実際に、SNSを利用したストーリーブランディングを展開する企業も増えており、インフルエンサーが消費者目線で企業のストーリーを投稿したり拡散したりする活用法も増えてきています。

このように、今の時代に、競合他社との差別化を図るためには、SNSの活用も必要不可欠です。

▶️ストーリーブランディングを含む、他社との差別化戦略成功の秘訣については、関連記事【差別化戦略の成功の秘訣ーメリットとデメリット、成功事例の解説】をあわせて参考にしてください。

◉ストーリーブランディングの3パターン

実際にストーリーブランディングを行おうと思ったら、次の3つのパターンを押さえておくと良いでしょう。

3つのパターンを一つひとつ紹介します。

◉-1、パターン①:エピソードストーリー

エピソードストーリーとは、一つひとつの細かいエピソードのことです。

簡単に言えば、創業や製品・サービス開発のこぼれ話、と呼ばれるような小さなエピソードのことです。

たとえば、『沈黙のWebマーケティング』という書籍で有名なSEO会社である株式会社ウェブライダーは、自社運営の文章作成アドバイスツール『文賢』のバージョンアップに伴うHP改善MTGをYouTubeでライブ配信しています。

一見、「自社MTGを配信するなんて、誰のため、何のためのYouTubeライブなのか」と思われるかと思いますが、これはれっきとしたストーリーブランディングの施策です。

なぜなら、このYouTube配信を通して、製品開発にどのような人がどういう温度感で関わっているのかが伝わるからです。「誠実に真剣に仕事をしている会社」「ちゃんと色々とやってくれる会社」というイメージを顧客に理解してもらう上で有効なエピソードと言えるでしょう。

また、その他にも次のようなちょっとした社内でのエピソードが、そのままストーリーブランディングとして使える可能性があります。

  • ・ぶっちゃけた話
  • ・失敗した話
  • ・他社と比べて劣る点の話
  • ・コミットした話
  • ・社内で感情と感情がぶつかり合った話
  • ・苦労した話
  • ・開発の裏側

一つひとつのエピソードは小さくても、順にストーリーとして伝えていくことによって、全体としてまとまったイメージを顧客に持ってもらうことができます。

たとえば、「開発責任者がミーティングに遅刻して社長に怒られた話」など、一見すると「使えないだろう」と思われるようなエピソードも、使いようによってストーリーブランディングに有効な可能性があるのです。

◉-2、パターン②:ブランド化ストーリー

ブランド化ストーリーとは、自社や商品・サービスが認知されてブランド化されるまでのストーリーのことです。

創業ストーリー、製品・開発ストーリーなどがこれにあたります。

ブランド化ストーリーを作る上で重要なのが、ナンバーワンではなくオンリーワンになることです。

自社が勝てる強みを見つけ、その軸で創業ストーリーや製品・開発ストーリーを語っていくことが何より重要になります。また、ここでいう強みとは、製品・サービスの品質や性能の高さ、安さなどではなく、「自社らしさ」のことです。

たとえば、チームプレーを大切にしている企業であれば、社員同士で衝突したり、助け合ったりしたエピソードなどをメインに語ることで、「チームプレーを大切にしている会社」というイメージが伝わりやすくなります。

製品・サービスをメインに紹介しがちですが、ブランド化ストーリーの場合は、むしろ製品・サービスよりも、「自社らしさ」にフォーカスした方が、良い結果につながりやすいと言えるのです。

◉-3、パターン③:ビジョンストーリー

ビジョンとは「まだ実現はしていないが将来こうありたい」という想いのことです。

将来の見通しや長期的な目標という言い方もできるでしょう。

ビジョンストーリーは、顧客に対してだけではなく自社の社員に対しても働きかける効果があり、モチベーションを高めたり組織の活性化を図ったりする効果が期待できます。

あくまで1つの参考例ではありますが、「人を成長させる会社」というビジョンを顧客や自社の社員に印象づけたければ、「一人の失敗が多い社員が仕事を通して成長していく様を追ったドキュメンタリー風のストーリーにする」などがストーリーとして有効でしょう。

「会社のビジョンを安直に表現しなければ伝わらないのでは?」と思ってしまう人もいらっしゃるかと思いますが、違います。それがストーリーブランディングの難しいところです。

言いたいビジョンをそのまま安直に伝えるのではなく、人の成長や、気持ちの変化などを通して暗にビジョンを伝えるから、伝わるのがストーリーブランディングです。

たとえば、今はもう公開終了していますが、アニメーション映画監督の新海誠さんが手がけた大成建設のCMを見たことはあるでしょうか。

色々な社員が抱える悩みや葛藤を乗り越えて、「それでも自分の仕事はきっと人々の役に立つから」と仕事に邁進していく姿を30秒ほどのアニメーションで描いています。

このCM内では、大成建設のビジョンなどはほとんど語られていませんが、同社が伝えたい「地図に残る仕事」というビジョンを強烈に印象づけられます。

「直接ではなく、暗につたえる」ということがビジョンストーリーを作る上でのポイントと言えるでしょう。

◉ストーリーブランディングの具体的な方法

ストーリーブランディングによってブランドイメージを確立するにはいくつかの方法がありますが、特に有効なものが、「SNS活用」と「ブックマーケティング」です。

実際に、これら2つがどのような方法なのかを解説します。

◉-1、ストーリーブランディングでのSNS活用方法

顧客の多くがSNSを情報収集やコミュニケーションツールとして利用している時代。ストーリーブランディングにおいても、SNSを積極的に活用していきましょう。

ストーリーブランディングでのSNS活用で最も重要なのは、「企業側が一方的に発信したい情報だけを発信しても意味がない」と言う点です。

たとえば、毎回投稿が「新サービスをリリース」「新しいサービスを開始」「セミナーを開催」などの告知ばかりでも、顧客には全く響きません。

SNS上で顧客が見るのは、興味関心のあることだけです。企業が発信したいこと、宣伝目的の発信などには反応されません。

ストーリーブランディングをSNS上でうまく行うためには、顧客が共感するようなことを投稿していく必要があります。

たとえば、「商品開発の裏側」など前述のエピソードストーリーでお伝えしたような、細かくキャッチーなエピソードは、SNS上の顧客の心に響く可能性があります。

たとえば、2020年ごろにX(旧Twitter)上でされた「冷凍餃子を夕食に出したら夫に手抜きだと言われた」という投稿に対して、味の素は「それは手抜きではなく、手”間”抜き」ですよ。大変な手間をお母さんの代わりに丁寧に準備しております〜(以下省略)」といった想いの丈を投稿。

このハートフルな味の素の投稿は話題となり、多くの共感が集まりました。また、このタイミングで味の素は冷凍餃子の製造工程を公開。

ただ「弊社の冷凍餃子の特徴は〜」と安直に語るのではなく、1人の女性に救いの手を差し伸べる自然な形で自社のブランディングを高めることに成功しています。

このように、一方的な情報発信の場ではなく、顧客とのコミュニケーションの場として、投稿を作成していくことが、後々結果につながっていく、というのがストーリーブランディングのSNS活用の鉄則と言えるでしょう。

▶SNSマーケティングについては、関連記事SNS運用のやり方をとことん解説|フォロワーを集めてビジネスに繋げる成功法則とは?もあわせてご参考にしてください。

◉-2、ストーリーブランディングとしてのブックマーケティング

ブックマーケティングは、書籍をマーケティングに活用する手法のことです。

企業が自社や商品・サービスなどについてまとめた書籍を出版して認知度向上や購買意欲向上などに役立てていきます。

ブックマーケティングは、一般的に企業の強みや独自技術、企業としての取り組みなどをストーリーとしてまとめますが、ストーリーブランディングに活用する場合は、顧客の感情に訴えるような内容にする必要があります。

そして、ブランディングのためのストーリーの見つけ方として、「絞り込む」「見せ方を変える」「宣伝してしまう」という3つのアプローチ方法があるので、これらをうまく組み合わせて行っていきましょう。

「絞り込む」とは、商品やサービスの分野や、ターゲットを絞り込むことです。自社の強みとなる専門性や魅力などが見つかればブランド化につながります。

たとえば、「不動産投資による節税対策」という本を書いたとしても、ターゲットとなる対象が広すぎて手にとってもらえない可能性があります。

しかし、「医師のための不動産投資による節税対策」のように、高額所得者であり高額納税者でもある医師にターゲットを絞ることで、医師に手にとってもらいやすくなります。

実際に、この書籍を出版した不動産会社には医師からの問い合わせがあり、約2ヶ月で約6億円の売上がありました。

出版から約2ヶ月で、医師からの問い合わせがあり、約6億円の売上があがった書籍はこちらです。

このように、「絞り込む」ことで特定の対象に刺さりやすくなります。

「見せ方を変える」は、自社の商品やサービスに新しい何らかの付加価値を付けて、顧客に新しい何かを見せることです。今までにない新しい共感を顧客から得るきっかけにつながります。

たとえば、とある保険代理店は、一般的な少人数のスーパー営業マンに頼る経営から、アベレージヒッターを育てていく再現性のある経営への切り替えを提唱し、書籍で紹介。結果的に、保険業界の関係者からの共感を呼び、多くのセミナーや講演会に招かれたり、紹介者が増えて保険契約数の向上につながっています。

このように、「保険代理店だから保険を提案する」という見せ方から、「保険代理店の常識を変える」という見せ方に変えたことによって、ブランディングに成功し、結果として成果につなげることができたのです。

実際に、出版した書籍がこちらです。

「宣伝してしまう」は、とりあえず宣伝してしまうことによって、それが一人歩きしてブランド化につながるというものです。

たとえば、次の書籍の方は、「年商一億円のフリーランス」という名目で宣伝してしまうことで、フリーランス業界の成功者のようなブランディングを作り上げています(書籍はこちら)。

嘘はいけませんが、実際にこのように自身の成果や結果を肩書きとして語ることで、ブランディングにつながる可能性は十分にあります。

この「絞り込む」「見せ方を変える」「宣伝してしまう」という3つのアプローチ方法を、お互いにリンクさせることで、ブックマーケティングをストーリーブランディングに最大限活用することが可能になります。もし、自分でこれらのアプローチ方法が難しいと言う場合には、弊社のような外部業者に入ってもらうなどを検討してみてください。

自社の事業や商品・サービス、ターゲットに対する固定概念を持たない人が加わることによって、新しいブランド化のストーリーが生まれる可能性があります。

▶ブックマーケティングについては、関連記事ブックマーケティングとは?メリットや効果的な戦略の作り方もあわせてご参考にしてください。

ブックマーケティング

◉ストーリーブランディングとブックマーケティングの相乗効果

ストーリーブランディングを行う上で、ブックマーケティングは前述した通り相性がよい手法と言えます。また、Webでは得られない、書籍ならではの信頼性やPR効果、一貫性などの相乗効果も十分に見込める方法です。

◉-1、ブランディングと書籍販促の一貫性とPR効果

そもそも、コンセプト設計やジャンルの絞り込み、ターゲットの設定、など、企業がブランディングするために必要な工程をひと通り行ってからでなければ、書籍を作ることはできません。

また、書籍の販売促進のための企画も、企業の専門性や特徴などをまとめ、市場でのポジショニングを明確にした上で行います。

なぜなら、ブックマーケティングは、企画コンセプトの制作段階から発売後の販促プロモーションまでの全体に一貫性を持たせなければ成功しないからです。

これはストーリーブランディングの戦略立案にも通じるところがあります。

このように、ブックマーケティングはストーリーブランディングを行わないとできないマーケティング手法であるため、全てのマーケティング施策の中で最も相性が良い方法と言えるのです。

また、書籍は人に文章を読んでもらいやすい媒体です。Web広告や記事のように「読まれない前提」の媒体ではありません。ターゲットに長い文章を読んでもらいやすいため、Web以上に書籍を通しての関係値構築や顧客教育が一冊でできてしまいます。

つまり、ストーリーなどを通じてファン化していくストーリーブランディングの長期的なプロセスを、書籍の場合は一冊でできてしまう可能性を秘めている媒体、と言うことができます。

◉-2、ストーリーブランディング×出版の成功事例

実際に、ストーリーブランディングを書籍を活用して行い成功した事例はたくさんあります。

たとえば、ウエディング事業を営む老舗企業では、働くウエディングプランナーに取材を行い、思い出に残っている結婚式のエピソードを「感動的な21のストーリー」としてまとめ書籍を出版。

書籍の中には、父親の病床で結婚式を挙げた話や再婚者同士の子連れの結婚式の話、サプライズ結婚式の話など、小説以上にドラマティックなエピソードが紹介されています。

これらのエピソードが、多くの人の共感や感動を呼び、結果的にブランディングに成功しました。

書籍でなくWebなどであれば、きっとこの21のエピソードは読まれずに終わったかもしれません。書籍だからこそエピソードをしっかりと読んでもらえ、結果的にストーリーブランディングに成功した典型的な事例と言えるでしょう。

◉まとめ

この記事では、企業ブランディングの一つの方法としてストーリーブランディングについて解説しました。

ストーリーブランディングは、自社や製品・サービス、社員などに関わるストーリーを対象者に読ませ、共感や感動させなければ成功しません。

そのため、ターゲットに長文を読んでもらえる可能性が高い書籍や、それを活用するブックマーケティングこそ、最も相性の良い手法だといえます。

しかも、ブックマーケティングは、ただ書籍を出版するだけではなく、コンセプトを決めたり、ターゲットやジャンルを絞り込んだり、SNSやSEO、クラウドファンディング、セミナーを活用したり、ストーリーブランディングに必要なありとあらゆる手法を網羅しています。

つまり、ブックマーケティングを行えば、同時にストーリーブランディングもできてしまうということです。

これからストーリーブランディングへの取り組みを考えている方は、ぜひブックマーケティングを手法の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

ブックマーケティング

書籍を出版する方法は、大きく自費出版、商業出版、企業出版の3つに分けることができます。

本記事では、3つの出版方法の中で、自費出版とはどういうものなのか、そしてメリットやデメリット、費用相場、成功事例などについて詳しく解説します。

目次【本記事の内容】

執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイ取締役マーケティング統括)


福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経済法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を担当し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。2023年9月取締役就任。グループの出版社、株式会社パノラボの流通管理も担う。

■自費出版とは?

自費出版とは、主に個人が自分の経験や考えを伝えたり、自分史をまとめたり、趣味の集大成としたりするために原稿を書き、それを出版社に依頼して書籍化する出版方法です。

出版費用は全て著者負担となりますが、売上や発行部数などにとらわれずに一冊の本としてまとめることができるのが特徴であり、魅力と言えます。

収益を得るためではなく書籍化すること自体が目的の出版方法です。

また、個人ではなく企業経営者などが原稿を書いて自費出版するというケースもありますが、この場合も名刺代わりに配るためなどであり、書籍化することに重点が置かれます。

自費出版、商業出版、企業出版それぞれの特徴について、以下の表に分かりやすくまとめました。

出版方法特徴
自費出版主に個人が、自分の経験や考えを伝えたり自分史をまとめたり趣味の集大成とするために、自分で書籍の内容やデザイン、発行部数などを決めて出版する方法。書籍の出版費用は著者が全額負担し、初版発行部数は100部~500部程度。
商業出版出版社がヒット作をつくって利益を上げるために、書籍の企画や内容などを決めて出版する方法で、積極的にプロモーションを行う。書籍の出版費用は出版社が全額負担するのが一般的で、初版発行部数3,000部~10,000部程度。
企業出版企業や企業経営者がブランディングや信頼性向上、集客などの経営上の課題を解決するために書籍を出版する方法。書籍の出版費用は企業が全額負担し、初版発行部数は1,000部~10,000部程度。

商業出版との違い

商業出版とは、出版社と著者が協力して書籍を出版する方法です。

出版社が書籍の企画をして著者を選定し、書籍がたくさん売れるような内容にして積極的にプロモーションを行うのが特徴です。

実際に世の中で実際にベストセラーとなった書籍のほとんどは商業出版によって出版されたものです。

ヒット作を作って出版社が利益を上げることが商業出版の目的なので、出版費用は出版社の全額負担になります。

また、出版社の企画に協力した著者には、販売・印刷部数に応じて決められた割合で印税が入ります。このように、著者に報酬が支払われることも商業出版の大きな特徴の1つであり、自費出版や企業出版との違いです。

一方で、商業出版の場合は、著者の伝えたいことよりも出版社側の意向が優先されるので、著者の言いたいことが書けなかったり、修正されたりすることがあります。

自費出版のように、著者が伝えたいことを自由に書けるわけではないという点も商業出版の大きな特徴であり、違いの1つと言えるでしょう。

▶商業出版については、関連記事【商業出版とは?企業がブランディングを考えたときの出版の選択肢】もあわせて参考にしてください。

企業出版との違い

企業出版とは、企業や企業経営者が自社のブランディングや信頼性向上、集客などの経営上の課題を解決するための手段として使われる、出版方法です。

出版費用は企業や企業経営者である著者が全額負担するので、この点では自費出版と同じです。そのため、自費出版とよく混同されがちですが、次のように出版する目的が大きく異なります。

  • ・企業出版の目的:【課題解決】企業のブランディングやマーケティングの課題解決
  • ・自費出版の目的:【出版】自分の書きたい内容を本として出す
  • ・商業出版の目的:【利益】売れる本を作り、売上をあげる

企業出版は課題解決が目的であるため、その費用の中には、出版社が行う企画、編集、デザイン、校正、書店への流通、プロモーションなどの費用が含まれています。

そのため、自費出版よりも費用は高額です。

■自費出版の費用相場はどれぐらい?

自費出版の費用は、出版する書籍の形式(単行本、文庫、写真集など)や判型、出版部数、紙質、含まれるサービスなどによって変わってきます。費用相場には幅があり、約100万円〜1,000万円程度です。

他の出版方法の費用相場と比べると次のようになります。

出版方法費用相場
自費出版100万円~1,000万円程度(一般的なのは251万円〜600万円程度)
商業出版0円(出版費用は出版社が負担するため)
企業出版400万円~1000万円程度

自費出版する際にかかる費用の項目としては次のようなものがあります。

  • ・企画費
  • ・執筆費
  • ・編集費
  • ・写真・イラスト費
  • ・デザイン費
  • ・校正・校閲費
  • ・印刷・製本費
  • ・プロモーション費

執筆費は、クオリティの高い書籍にするためにライターに執筆を依頼する場合に発生する費用です。

また、写真・イラスト費は、写真集などを自費出版する際の写真撮影や書籍の中にイラストを入れたりする場合に必要となります。

プロモーション費は、出版社の営業力を使って広告宣伝を行う場合に発生する費用です。

たとえば、写真やイラストを自分で用意したり、自分で執筆したり、プロモーションなどを自分で行うなどをすれば、費用はその分安くなる可能性があります。

自費出版の費用対効果

自費出版する際の費用対効果に関して、ポイントとなるのは出版目的と書籍のクオリティです。

とにかく書籍にして出版することが目的なのであれば、そもそも効果を期待する必要がありません。

しかし、セルフブランディングという目的がある場合は、その目的を達成するためにどの程度の書籍のクオリティにするのが最適なのかを考えなければなりません。

また、販売数をある程度伸ばして印税収入を得たいという目的があるのであれば、クオリティを上げるのに加えて、出版社の販路などを利用してプロモーションを行うことも必要となり、相応の費用がかかります。

このように、自費出版の場合の費用対効果は、その出版目的に応じて変わってきます。

【参考】企業出版の費用対効果

企業出版は、自費出版と同様に著者が出版費用を全額負担する出版方法ですが、自費出版との違いは明確な出版目的があることです。

企業の宣伝・PRや問い合わせによる成約率の向上などの目的があるのであれば、ターゲットの設定とそのターゲットに書籍を購入してもらうためのプロモーションが必要となります。

そういった目的を見据えて書籍の企画や出版を行うため、企業出版に成功すると出版費用などを上回る大きな利益が期待できます。

実際に企業出版によって経営課題を解決した2つの事例を紹介します。

企業出版事例①:読者からの反響により出版から2ヶ月で6億円の売上達成

これは、ある不動産投資会社の企業出版事例です。

出版前は、Web広告による新規顧客の集客はほとんどなく、紹介のみに頼っていたそうです。

また、見込み顧客との信頼関係の構築などにかなりの時間が必要で、成約までのリードタイムが長いことが課題となっていました。

そこで、年収は多いものの税金も多いという悩みを抱える医師をターゲットとして「節税対策に不動産投資が効果的」という内容の書籍を発売。

出版社の販路を利用して、主に一都三県や大阪府、福岡県を中心に書店への流通・配本を実施しました。

出版後、多くの読者である医師から問い合わせがあり、出版から2ヶ月で6億円の売上を実現しています。

問い合わせのほとんどは不動産投資に関心のある読者からの反響が中心で、成約までのリードタイムが短縮でき、営業効率の向上にもつながっています。

企業出版事例②:出版記念のイベントを開催し企業の認知度が向上

これは、わさびの製造・販売会社の企業出版事例です。

出版前は、自社で製造・販売しているわさびの魅力に関する顧客へのアピール不足が課題で、同業他社との差別化も不十分だという認識がありました。

そこで、料理に関心のある30代~40代の女性をターゲットとして、わさびの効能や歴史、レシピを収録した書籍を出版。

また、出版後に本社がある名古屋の書店で、書籍へのレシピを提供してくれた料理研究家とのコラボレーションで出版記念のトークイベントを実施したところ、当日はイベント会場が満員御礼となり書籍を50冊以上売り上げるなど大盛況となりました。

その後、出版をきっかけに平均聴取者数20万人の全国放送のラジオ番組から2週連続の出演依頼があるなど、書籍を出版したことにより、企業の認知度向上や売上向上につながりました。

■自費出版のメリット

メリット

自費出版のメリットとしては次のようなものがあります。

自分の企画や内容、デザインで本が出版できる

自費出版の最大のメリットは、自分の思い通りの本を作ることができることです。

自分自身で企画をして、本の内容もデザインも自由に決めることができます。

一方、商業出版の場合は、企画を出版社が行うため、著者が書きたいことを書くことはできません。企業出版も、マーケティングやブランディングが目的であるが故の制約があり、自分の自由に本を作ることは難しいと言えるでしょう。

しかし、自費出版であれば、著名人ではない一般人であっても、自分の人生をまとめた自分史を出版したり、趣味の句集や詩集を出版したりして、個人的な活動を知ってもらうために書籍を出版することができてしまいます。商業出版や企業出版などに比べて制約が少なく、自由に自分の本を出版できるのが自費出版の魅力なのです。

なんでもアリではない。薬機法や景品表示法などには注意!

ただし、自費出版であってもなんでもアリというわけではありません。

たとえば、本の内容によっては薬機法(旧:薬事法)や景品表示法に抵触する可能性もあります。該当する場合は、出版社や専門家に相談したり、専用のチェックツールなどを利用して法に抵触しないように注意しましょう。

▶薬機法(旧:薬事法)については、関連記事【薬機法(旧:薬事法)とは?違反せずに広告・PRする7つのポイントを分かりやすく解説】もあわせて参考にしてください。

出版実績が自分で作れる

自費出版の場合は、著者の都合によって好きなときに好きな内容の本を出版することができます。

つまり、自分の出版実績は自分で作ることができるのです。

たとえば、あるセミナーを開催したとしましょう。

出版実績のある講師の方が、セミナーの参加者から「信頼できる」と感じてもらいやすくなります。このように、自費出版はセルフブランディングにつながります。

また、名刺代わりに配ることで、相手に「出版したことのある人なんだ」と強く印象づける効果も期待できます。

このように、簡単に自分のビジネス上のブランディングができてしまうのも自費出版ならではのメリットの1つです。

出版後は書籍が著者の著作物になる

書籍の著作権は出版費用の負担者に帰属します。そのため、自費出版の場合は著者の著作物になります。

商業出版の場合には、出版費用を出版社が持つため、いくら著者と言えども無許可で内容を使うことはできませんが、自費出版の場合には、著作権が著者にあるため、書籍の一部を抜粋した冊子を作ったり、Webやブログなどに転載したりすることも自由に行うことができます。

■自費出版のデメリット・リスク

自費出版のデメリットやリスクとしては次のようなものが挙げられます。

出版費用が全額著者負担なため、高額になりやすい

自費出版の場合、出版費用は全額著者負担となります。

出版費用は、自費出版の依頼先によっても異なりますが、大手出版社の自費出版部門はサポートが手厚い一方で費用は高額になりがちです。

出版後のプロモーションなどが行われないことが多い

自費出版の場合、出版後のプロモーションが行われないケースが多いと考えておきましょう。

大手出版社の自費出版部門などに依頼する場合は、プロモーション費用を支払えばオプションとして行ってもらえますが、期待通りのプロモーションを行ってもらえるのかは出版社次第です。

プロモーションを依頼する場合は、事前にどのようなプロモーションを行ってもらえるのかを確認しておくことをおすすめします。

出版後の流通を行ってくれないことが多い

自費出版の場合、出版後の流通も行ってくれないことが多いと考えておきましょう。

プロモーションと同様に、大手出版社の自費出版部門などに依頼する場合は、書店流通費用を支払えばオプションとして行ってもらえますが、商業出版や企業出版のように積極的には行ってもらえないと思っておきましょう。

流通を依頼する場合も、事前に出版社に「流通をどれぐらい行ってもらえるのか?」「流通の方法は何か?」などを確認しておくことをおすすめします。

なぜなら、書店を訪れた方が全く足を運ばないような自費出版専門棚に1冊置いてあるだけで「流通している」と謳う出版社も実際に存在するためです。

自費出版を行う場合には、その点に十分警戒しましょう。

■自費出版を行う際の注意点

自費出版は費用さえ捻出できれば、誰でも出版することが可能です。

そういったハードルの低さ故に注意しなければならないことがいくつかあります。

自費出版が最適な方法なのかを慎重に検討する

個人や企業・企業経営者が出版を行う場合に、自費出版が最適な方法なのかを慎重に検討する必要があります。

たとえば、企業経営者が個人的に名刺代わりに書籍を配ったり、個人のセルフブランディングをしたりするのが目的であれば、自費出版がおすすめです。

自費出版の目的は、著者のこれまでの経験や考えを書籍の形にまとめることにあり、自分史や回顧録などのように自身を振り返る手法に向いています。

その他に、個人的に創作してきた小説や俳句、詩などを自分の成果として1冊の書籍にすることもできます。

一方、企業や企業経営者が、自身の事業やビジネスのブランディングや宣伝・PRを目的として出版するのであれば、企業出版がおすすめです。

なぜなら、企業出版のサービスは書店への流通力や営業力を持った出版社が提供していますので、これらを利用して全国の書店で販売されるからです。

企画段階で書籍を購入してくれるターゲットを設定して、ターゲットの目に留まるような書店の書棚に並べることができます。

このように、著者の目的によって自費出版、企業出版どちらが良いかが変わってくるので、今一度慎重に考えてみましょう。

参考までに、自費出版と企業出版の目的別のおすすめの人は次表の通りです。

出版方法こんな目的を持つ人におすすめ
自費出版名刺代わりに自分の書籍を配りたい企業経営者や個人のセルフブランディングをしたい人など
企業出版自身の事業やビジネスのブランディングや宣伝・PRをしたい企業や企業経営者など

信頼できる出版社を選ぶポイント

自費出版ができる出版社はたくさんあります。

そのため、中には思ったようなサポートをしてもらえない出版社や、価格だけ高いような出版社があるのも事実です。

自費出版は費用が高額なので、失敗しないためにも、信頼できる自分に合った出版社を選ぶ必要があります。出版社選びで押さえておくべきポイントとして、まず、ホームページなどで自費出版を行っている出版社かどうかを確認します。

自費出版を取り扱っているのであれば、出版社としての歴史や実績がしっかりしているのか、代表や社員がどのような経歴や実績を持っている人なのかについても確認しましょう。

そのうえで、実際に営業担当者と打ち合わせをして自費出版に必要な費用や期間などについてヒアリングをして見積もりを依頼します。

また、自費出版の場合は、発行部数や紙質の選び方などによって見積金額が変わってきますし、提示された見積金額以外に追加費用が発生する可能性もありますので、この点についてもきちんと確認しておく必要があります。

営業担当者が信頼できるかどうか?

営業担当者と打ち合わせしたり見積もりを依頼したりする際に注意したいのは、その営業担当者が信頼できる人物かどうかということです。

たとえば、見積書の内容を詳細に説明しなかったり契約を急がせたりするような場合は要注意と考えた方が良いでしょう。

「社員は会社の顔」とよく言われますが、自費出版の場合も、営業担当者の対応がよく信頼できる場合は、良い出版社である可能性が高いです。

「営業担当者が信頼できる人なのかどうか?」はしっかりとチェックしておきましょう。

原稿のチェックやアドバイスをしっかりと行ってくれるかどうか?

見積もりを依頼する際に、営業担当者や編集者と打ち合わせをすることになりますが、その際に企画内容や原稿などのチェックやアドバイスをしっかりと行ってくれるかどうかもチェックポイントの1つです。

営業担当者には売上ノルマが課せられている場合があり、自分のノルマを稼ぐために契約させるようなケースもあります。

また、営業担当者や編集者が適切な原稿チェックやアドバイスをするだけの経験がないというケースも考えられます。

印税や儲けを目的にしない

世の中には、自費出版からスタートしてベストセラーになった書籍が実際にあります。

たとえば、夏目漱石の「こころ」、島田洋七の「佐賀のがばいばあちゃん」、山田悠介の「リアル鬼ごっこ」などが有名ですが、これは非常に稀な事例です。

よく、自費出版の営業などの際に語られるこういった事例を真に受けないようにしましょう。

基本的に、自費出版の場合は印税で儲けるというようなことを目的とするべきではありません。

内容は自分でよくチェックする

自費出版の場合も出版社で編集や校正をやってくれますが、その分だけ費用が発生するので注意しましょう。

基本的な誤字脱字や表記ゆれのチェック・修正などの校正作業は出版社に依頼する必要がありますが、最小限の費用で収まるように自分でよくチェックする必要があります。

適切な発行部数を選択する

自費出版の費用は全額著者が負担しますので、発行部数も著者が自由に決めることができます。

発行部数が増えると1冊あたりの単価は安くなりますが、出版費用は高くなります。

自費出版の書籍が余ってしまっても困りますので、適切な発行部数を選択するようにしましょう。

ブックマーケティング

■自費出版の流れ・出版までにかかる期間

以上、自費出版の費用や特徴、さらには出版社の選び方まで詳しく解説しました。

自費出版でも企業出版でも、自分のニーズを満たしてくれる出版社なのかどうかはとても重要です。

費用が安いに越したことはありませんが、「安かろう悪かろう」に当たらないためには契約前に出版社の営業担当者と綿密にやり取りをし、懸念を払拭しておくことです。

見積もり

書籍の企画が決定すると、出版社が見積もりを行います。

見積もりに際しては、金額を大きく左右する条件などについて双方でよく確認しておく必要があります。

また、この段階で見積もり以外にどのような費用が発生する可能性があるのか、についても事前に聞いて把握しておくことが重要です。

出版業界には専門用語も多く、業界ならではの常識も多いので、結果的に自分で想定していた金額よりも大幅に高くなってしまった、などのトラブルもよくあります。十分に注意しましょう。

申込・契約

出版社から提示された見積金額や条件に納得できた場合は、出版の申し込み・契約となります。

費用の支払いについては、「全額前払い」「着手金+校了時に残金」など出版社によって異なるので、契約前によく確認しておきましょう。

また、自費出版の場合の著作権は著者に帰属しますが、この点も事前に確認が必要です。

原稿・デザイン作成

契約が終わると、著者は原稿作成と写真やイラストなどの準備をします。

原稿や写真・イラストなどの素材が揃ったら、出版社の編集者からアドバイスをもらい必要に応じて修正をします。

原稿や写真・イラストなどの素材の準備に必要な期間は約2週間~6か月です。

原稿が完成後、デザイナーが表紙や紙面のデザインやレイアウトを行います。

デザイナーからの提案によって、原稿の加筆や減筆、写真やイラストの見直しなどが発生することがあるので、デザインやレイアウトに必要な期間は、2週間~1か月です。

校正・校閲

デザインが終わった初校を紙やPDFに出力して、校正を行います。

イメージ通りのデザインになっているか、誤字脱字や表記ゆれはないか、写真やイラストの見え方は適切か、などについて校正と修正を繰り返します。

また、校閲を行い事実関係に誤りがないことなどを確認(ファクトチェック)していくので、校正・校閲に必要な期間は、2週間~1ヶ月程度です。

印刷・製本・納品

校正が終わると、出版社から印刷会社に書籍のデータが送られますが、これを入稿といいます。

印刷会社から実際の本に近い紙やインクを使って印刷した色校正が提示されるので、インクのノリ具合や写真の色味を確認して、必要に応じて調整を依頼します。

色校正が終わったら、契約部数の書籍が印刷・製本されて納品、と言う流れです。

印刷・製本に必要な期間は、約1ヶ月です。

■自費出版の成功事例

ここでは自費出版の成功事例について紹介します。

しかし、前述の通り、そもそも自費出版が書籍を出版することが目的だったり、名刺代わりに知人に配りたいという目的、セルフブランディングに活用したいという目的、ベストセラーで印税収入を得たいという目的まで千差万別ですので、何をもって「成功」というかは人それぞれです。

1つ目の成功事例は、自費出版をきっかけに新聞や週刊誌などに取り上げられて話題となり、テレビ番組などへの出演オファーが殺到したというケースです。

その書籍はビジネス書だったので、書籍の売上部数の大幅アップにはなりませんでしたが、その後も講演依頼や執筆物の依頼が増えて、専門家としての認知度も向上しました。

2つ目の成功事例は、自費出版をきっかけとしてラジオ番組を担当することになったものです。

たまたまその書籍を読んだラジオ番組の関係者が、番組制作の担当者に話をして、トントン拍子に1つのラジオ番組を担当することになりました。

大きなビジネスチャンスにつながったというような成功事例ではありませんが、著者としては自身の専門性を認めてもらえて、より多くの人に自分の意見や考えを伝える場をえることができ、セルフブランディングにつながりました。

■自費出版は出版目的を持つが大切

自費出版はただ出すだけではなく、「何のために出すのか?」という出版目的をしっかりと持って行うことが重要な出版方法です。

出版目的が明確であれば、100万円程度の安い自費出版サービスでも最高の満足度を得られる場合もあります。

しかし、一方で高額な自費出版サービスを使ったからと言って自分にとって最高の満足度が得られるとは限りません。

「あれだけ、高額な費用を使って、できたのがこれか・・・」と後悔してしまうケースもあります。

そのため、もし今みなさんが自費出版を考えているのであれば、自分自身に「何を目的に出版するのか?」を問いかけて、明文化してみてください。

とにかく書籍化するのが目的であれば、安価なサービスでも問題はないでしょう。

しかし、他の目的であれば、今一度出版社の人と本当に自分に適した出版方法は何なのかを相談してみましょう。

■まとめ

本記事では、自費出版とはなにか、メリット・デメリット、費用相場、成功事例などについて解説しました。

自費出版は、著者が自由に本の内容を決めることができるので、名刺代わりに配ったりセルフブランディングをしたりするのには最適な方法です。

しかし、著者自身の事業やビジネスの宣伝・PRやブランディング目的の場合にはあまり効果が期待できません。

なぜならば、出版社によるプロモーションなどがないため、多くの顧客に購入してもらうことができないからです。

自分自身が行っている事業やビジネスをより拡大していくための宣伝・PRやブランディング、マーケティングが目的ならば、企業出版や企業出版を活用して問い合わせにつなげるブックマーケティングという手法を検討してみてください。

▶ブックマーケティングについては、関連記事【ブックマーケティングとは?メリットや効果的な戦略の作り方】もあわせて参考にしてください。

▼ブックマーケティングのご案内はこちら

ブックマーケティング
 

買い手市場と言われていますが、企業の担当者さまの中には「良い人材がなかなか採用ができずに困っている」と頭を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、良い人材が採用できない時に見直すべきポイントや施策について詳しく解説いたします。

もし、採用に悩みがあるのであれば、ぜひ活用してみてください。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 29d5ead1ee41a6d25524876e7bd315d5-scaled.jpg
慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉採用を難しくしている主な原因

今現在は買い手市場なため、企業が採用できる人材は豊富にいるというのが実情です。

では、どうして人材採用が難しいということになっているのでしょうか。

実は、次に示すように人材採用を難しくしている原因は自社にあるのです。

・自社の発信したい情報だけを発信している
・選考が遅い
・選考中のフォローを行っていない
・競合他社との差別化ができておらず埋もれてしまっている
・求職者のニーズの変化に合わせていない
・求職者に求める要件が多すぎる
・適切な採用手法を実施していない

それぞれどのような点がよくないのか、についてくわしく見ていきましょう。

◉-1、自社の発信したい情報だけを発信している

多くの人材に応募してもらってその中から良い人材を選びたい、競合他社に良い人材を取られたくないという思いはどの会社にもあるものです。

そのため、自社にとって不利な情報や不利と思われる情報の公表を控えて、自社の良いところや都合の良いことだけを発信してはいないでしょうか。

たとえば、実際には残業が多い部署や時期があるにもかかわらず、全社平均や年間平均の残業実績だけしか公表していなかったとすると、せっかく入社した優秀な人材がその事実を知って退社してしまうというようなことになりかねません。

このように、求職者にとって不都合な情報であっても公表しておかないと、入社後にミスマッチが発覚してしまう可能性があるのです。

残業については「今は残業が多い部署や時期があるが、今後人員を増やして残業を減らしていく方針である」などのように、現状のデメリットと改善策を伝えておくとネガティブな印象を和らげることができます。

人材採用の際は、自社の不利なことも不都合なことも発信して、同時に今後の改善策を伝えるようにした方が良いでしょう。

◉-2、選考が遅い

選考が遅いということは、応募受付から採用決定までのステップが多いか、少なかったとしても各ステップでの審査や次に進むまでに時間がかかっていると思われます。

これはいずれも自社内での採用業務が標準化されていなかったり、人事部門と配属部門の間の連携がうまく行っていなかったり、ということなどが原因です。

一方、求職者は「連絡が来ないのは落ちたのかもしれない」という不安を抱き、他社に流れてしまう可能性があります。

また、内定を出していたとしても最終決定の連絡が遅い場合は同様の不安を感じて、他の内定先に決めてしまって内定辞退されることもあります。

優秀な人材であればあるほど、複数の会社から内定をもらっている可能性が高いため注意が必要です。

ほとんどの求職者は早く就職先を決めたいと思っているので、求職者の気持ちを考えて最終選考までにかかる時間を削減すべきです。

◉-3、選考中のフォローを行っていない

内定を出した求職者に適切なフォローを行っていない場合は、内定辞退される可能性が高くなります。

求職者は「内定はもらったものの最終決定ではない」ことへの不安や「早く就職先を決めたい」という考えを持っているので、選考中のフォローが適切に行われない場合は、内定辞退や就職したものの早期に離職してしまうことになりかねません。

◉-4、競合他社との差別化ができておらず埋もれてしまっている

競合他社との差別化ができていないと求職者から魅力的な会社と見られないために応募者が少なくなります。

結果として、採用者は少なくなり人材不足も解消されません。

優秀な人材が競合他社に流れてしまい、自社がさらに埋もれてしまうという悪循環に陥ってしまいます。

◉-5、求職者のニーズの変化に合わせていない

新卒でない求職者は何らかの勤務経験があり、転職したかこれから転職しようと考えているかのどちらかですが、転職を考えるきっかけとして最も多いのは「やりがい・達成感のなさ」だと言われています。

つまり、自分が求めるキャリア像が会社と合っていないと感じる場合に転職を考えるということです。

採用する企業側もこれに対応して、どのようなキャリアパスがあるのかをきちんと示して、入社後にミスマッチが発覚して離職ということにならないようにしなければなりません。

◉-6、求職者に求める要件が多すぎる

採用する企業側は、ある特定の職種しかできない人材よりはなるべく多くの職種に対応できる人材を採用したいと考えます。

また、経理担当などの特定の職種の人材を採用する場合は、関連資格を持っていることやある年数以上の業務経験があることなどの要件を設定して優秀な人材が応募してくれることを期待します。

しかし現実問題として、これらの厳しい要件が設定されていると、よほど自信のある求職者でない限り応募を躊躇してしまうと考えられます。

◉-7、適切な採用手法を実施していない

採用がうまくいかない原因として、適切な採用手法が実施されていないことがあります。

代表的な採用手法には次のようなものがあります。

・求人広告の出稿
・人材紹介会社への依頼
・就職イベントへの参加
・求人誌本や求人ナビへの掲載
・ダイレクトリクルーティング
・自社サイトの採用ページ

それぞれの採用手法の特徴を知り、自社が採用したい人材が応募してくる可能性の高い手法を採用しなければなりません。

採用手法の選択を間違えてしまうと、自社が求める人材に全くアプローチできないということになる可能性もあります。

◉採用が難しい時に検討すべきポイント

採用が難しい時に検討すべきポイントは次の通りです。

・自社の強みや競合他社との違いを明文化する
・求職者の働き方のトレンドやニーズを調べる
・選考時のフォローを手厚くする
・会社自体の社会的知名度・認知度を上げる
・デジタル施策だけではなく、アナログ施策も組み合わせる

採用活動について求職者目線で再検討すべきなのはもちろんですが、自社の強みの棚卸しや見直しを行うことが、採用活動への良い影響になることも考えられます。

それぞれ、くわしく見ていきましょう。

◉-1、自社の強みや競合他社との違いを明文化する

自社の強みが不明確で競合他社と差別化できていないと、会社説明会でのプレゼンが漠然としていたりパンフレットを見ても何が良いのかが求職者に伝わらなかったりします。

また、自社の強みが把握できていたとしても、それを求職者に分かるように説明できなければ意味がありません。

これらを解決するためには、自社の強みや競合他社との違いをきちんと把握して、求職者に伝わるような言葉で明文化しておく必要があります。

プレゼンもパンフレットでの説明も言葉や文章で伝えるわけですから明文化して、関係者全員で共有しておくことが重要です。

たとえば、自社の強みや競争力を端的に表すキャッチコピーを作って、採用関係の資料に共通して使用することなども考えられます。

▶︎他社との差別化ついては、関連記事【差別化戦略の成功の秘訣ーメリットやデメリット、成功事例とは!?】もあわせて参考にしてください。

◉-2、求職者の働き方のトレンドやニーズを調べる

求職者の働き方へのニーズは常に変わっているので、そのトレンドを把握しておく必要があります。

特に、2020年からのコロナ禍をきっかけに、テレワークやリモートワークなどの在宅勤務ができる働き方を希望する求職者が増えています。

さらに、採用活動自体がリモートで行われることを重視する求職者も増えており、たとえば北海道や九州の求職者がわざわざ東京の採用説明会に行くことなく、オンラインで面接を受けて合格したという事例もあるほどです。

このように、求職者の働き方に対する価値観が大きく変わっているので、企業もしっかりとこれに寄り添っていかないと採用はどんどん難しくなっていきます。

◉-3、選考時のフォローを手厚くする

今のZ世代などは手厚いフォローを求めています。

そのため、採用選考時であってもしっかりと応募者とコミュニケーションをとってフォローをすることが採用数の増加につながります。

特に内定者へのフォローとしては次のようなことが考えられます。

・内定者同士の面談や懇親の場を作る
・職場見学の機会を設ける
・社内行事へ招待する

内定者フォローの目的は内定者の意欲を高めて内定辞退を防ぐことですので、次のようなポイントに注意する必要があります。

・定期的に連絡をする
・社員とコミュニケーションできる場を設ける
・入社後の具体的なイメージが湧くようにする

内定者は選考ステップをクリアして自社に必要と判断された人材ですから、内定を辞退されると、それまでにかかった時間や費用が全く無駄になってしまいます。

応募者や内定者のフォローは最重要項目と考えて取り組むべきです。

◉-4、会社自体の社会的知名度・認知度を上げる

会社自体の知名度が低いことも採用を難しくしている原因の一つになっていますから、以下のような方法を活用して、会社の知名度を上げることも有効です。

▶︎認知度向上ついては、関連記事【経営者必読!認知度向上の方法と効果的なマーケティングの選択肢】もあわせて参考にしてください。

◉-4-1、企業出版(ブックマーケティング)

企業出版(ブックマーケティング)は、書籍を出版することによって自社の社会的知名度や認知度を上げる方法です。

書籍を出版することや書籍そのものに信頼性があるので、知名度や認知度が上がり自社のブランディングにもなります。

商品やサービスの紹介のほかに、自社の独自技術や実績、企業理念や取り組みなどをストーリーとしてまとめて読者に届けるので、求職者に対しても非常に有効です。

特に採用活動に活用する場合は、両親や家族の説得材料になります。

実際に、中堅の知名度の低い監査法人が書籍を出版したところ、たまたまその本を読んだ求職者の父親(会計士)が、自分の子供に「この監査法人を受けてみなさい」と勧めたというエピソードがあります。

企業出版(ブックマーケティング)を採用活動に活用する際は、自社が採用したい求職者像をターゲットとして設定して、そのターゲットに自社をどんな会社だと認識してもらいたいのかを、企画段階からしっかりと検討することが重要です。

▶︎ブックマーケティングついては、関連記事【ブックマーケティングとは?メリットや効果的な戦略の作り方】もあわせて参考にしてください。

◉-4-2、大手メディアへの寄稿

大手メディアに自社に関する記事を寄稿することによって、記事になって社会的知名度や認知度が上がります。

寄稿しても必ず記事になるかどうかはわからないのですが、社会的に影響の大きい新商品や新サービス、トレンドになっている話題に関連する独自技術の紹介などは取り上げられる可能性があります。

多くのメディアがあるので、自社の事業分野の業界専門メディア、過去にプレスリリースなどを取り上げてもらって縁のあるメディアなど、寄稿先も良く検討する必要があります。

◉-4-3、プレスリリースの活用

プレスリリースは企業などの公式発表であり、メディアに取り上げられて記事にしてもらうことを目的として行うものです。

そのため、積極的にプレスリリースを出すことによってメディアの目に留まって、記事に取り上げられる可能性が高くなります。

メディアに取り上げられるためには、新商品や新サービスのメリットが分かりやすくまとめられているなど、メディアで記事を作成する際の手間が減るような配慮があると取り上げられる機会が増えます。

多くのメディアで記事になると自社の知名度が上がって、求職者から認知されて求人への応募者の増加につながります。

◉-5、デジタル施策だけではなく、アナログ施策も組み合わせる

インターネットの発達やスマホの普及によって、企業からの求人情報の発信はデジタル主体になっていると感じますが、実際にはデジタル施策とアナログ施策の組み合わせで行われていることが多いものです。

また、求職者側の行動もスマホやPCで求人サイトを見る一方で、会社案内などのアナログの資料を取り寄せて比較検討したり、会社説明会に参加したりしています。

つまり、デジタルとアナログを横断しながら、情報を集めたり比較したりして決断をしているのです。

そのため、採用活動についても、デジタル施策一辺倒ではなくアナログ施策も組み合わせて、うまく連携していくことが重要です。

採用活動に関する具体的なアナログ施策には以下のようなものがあります。

◉-5-1、採用DM

採用DMは、人材を採用したい企業が求職者に郵送などで送付するアナログ施策です。

一般的には、企業は求職者からの応募を待って応募者の中から選考して採用しますが、採用DMは企業から求職者へ積極的にアプローチするものです。

しかも本人宛に形のある郵送物などが届くので、開封率は高く企業名を強く印象付けることが可能です。

さらに、DMの内容に関心や興味を抱いて「この会社で働いてみたい」という気にさせることができれば応募する可能性も高まります。

◉-5-2、採用パンフレット

採用パンフレットや入社案内は、企業説明会などで配布する紙媒体の資料です。

スマホやPCなどのデジタルだけでは伝えきれない内容をしっかりと記載して伝えることができます。

紙媒体ですので、上質な紙を使うことによって企業イメージを上げることができたり、本人だけではなく両親などの家族と一緒に見て情報共有することもできます。

さらに、複数の企業の採用パンフレットを並べて比較検討することもできます。

最も一般的な配布方法は企業説明会などの対面の場での手渡しですが、オンライン形式で企業説明会が行われる場合は郵送などで事前に求職者宛に送付します。

また、就活や採用のポータルサイトに資料請求があったときにも郵送などで送付します。

対面以外で送付する場合は、PDF化したパンフレットを求職者にダウンロードしてもらって配布することも可能です。

◉-5-3、採用チラシ

採用チラシは、人材募集のための求人情報を記載した広告で求人チラシとも言います。

アルバイトやパートの募集に多く利用される手法です。

1枚の紙の両面または片面に印刷されているので、パンフレットよりも安いコストで制作することができ、アルバイトやパートの採用ニーズが出たときにその時の状況に合わせた内容で制作できます。

メリットとして、ポスティングや新聞折り込みなどで配布するので、エリアを指定して配布できることやデザインや文字の自由度が高いことが挙げられます。

◉採用状況の改善につながった施策事例

デジタル施策とアナログ施策の組み合わせによって、人材採用の改善につながった事例があるので、以下で紹介しましょう。

◉-1、【保険代理店】人材の定着と人員増加につながった事例

保険代理店を営む経営者は、保険業界の現状と問題点を解説し、これからの保険代理店経営に必要な考え方やシステムについての持論をまとめた『人材が続々集まる、メキメキ育つ! スゴい保険代理店経営』という書籍を出版しました。

保険業界では成果に応じて給与が決まる「成果報酬型」が当たりまえですが、その結果として少数のスーパー営業マンに頼る経営になっていました。

この保険代理店の経営者はこれに疑問を持ち「一律報酬型」に変えることによって、アベレージヒッターを育てて業績拡大ができることを紹介しました。

出版の結果、書籍のタイトル通りに「社員の採用・定着・育成」に非常に大きな効果があったのはもちろん、成約率の向上、新規コンサル契約の獲得などに大きな効果がありました。

従業員数10〜30人くらいの企業で、採用と人材に困っていないところはないと思います。当社もご多分に漏れず人材の定着などに課題がありましたが、出版後に私のマネジメントが変わったことでみるみる従業員が進化していきました。それぞれが自分で考え、メキメキ成長していった。もはや当社では、「人が育つのは当たり前」という感覚です。
人材が定着するので採用に力を入れられる。人が育つから当然、採用すれば人が増えていく。という、良いサイクルに入りましたね。
引用元:【事例コラム】大口案件の集客、人材採用、大手企業からの講演依頼!出版ですごいことになった保険代理店

◉【まとめ】採用できない、難しい時はアナログ施策を見直してみるのがおすすめ!

本記事では、良い人材が採用できない時や難しいときに検討すべきポイントや施策について解説しました。

結論としては、採用ができない原因はすべて自社にあるということです。

根本的に原因を解決するためには、採用手法やデジタル施策だけではなく、採用パンフレットなどのアナログ施策から見直してみることをおすすめします。

なぜなら、アナログ施策の見直しは、デジタル施策のように気軽にできるものではなく、自社の強みの棚卸しからマーケティング活用までを見据えて制作しなければならないからです。

つまり、アナログ施策の見直しをすれば、一石二鳥で自社の強みの見直しなどもできてしまうのです。

まず採用パンフレットの見直しから始めてみようという方は、ぜひフォーウェイまでご相談ください。

パンフレット

建設・建築業の会社で「なかなか契約や発注につながらない」と悩んでいる方もいらっしゃると思います。

デジタルマーケティング施策や営業手法などももちろん見直すべきことではありますが、その前にまず再検討しておきたいのが会社案内パンフレットです。

なぜなら、会社案内のパンフレットは、発注元企業における会社選びの際に「この会社に安心して任せられるかどうか」を判断する重要なツールの1つとなっているからです。

会社案内のパンフレットは、単なる会社案内資料ではありません。

今回は、契約や発注につながる建設・建築業の会社案内パンフレットを作るためには、どのような工夫をすべきなのか、活用方法などとともに解説いたします。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 29d5ead1ee41a6d25524876e7bd315d5-scaled.jpg
慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉建設・建築業で会社案内のパンフレットが必要な理由

建設・建築業の会社は、主に施主などの発注元企業から工事を受注する必要があり、その前段階として見積依頼に対して見積書を提出しなければなりません。

建設・建築業界には相見積もりを取る慣習があるので、相見積もりの依頼先に選定されて見積書を提出し、比較検討のうえ発注先に選定されなければ受注することはできません。

発注元企業では、相見積もりが揃ったら価格だけではなく工期やその会社の施工実績、信頼性などを総合的に比較検討して発注先を決めます。

このときに、会社案内パンフレットを並べて比較検討することもあるので、建設・建築業界では会社案内パンフレットは非常に重要なものとなっているのです。

建設・建築業で会社案内パンフレットが必要な理由をまとめると、以下のようになります。

・主な顧客が企業であるため
・顧客との信頼関係の構築が重要なため
・安心・信用して工事を発注してもらうため
・事業内容を明確に伝える必要があるため
・常に採用活動が必要な業種であるため

それぞれについて、くわしく見ていきましょう。

◉-1、主な顧客が企業であるため

発注元企業は、新しい発注先を探す際、多くの建設・建築業を営む会社の中から見積依頼先や発注先を選定します。

発注元企業が見積依頼先や発注先を選ぶ際には、紙媒体の会社案内パンフレットを並べて内容確認したり比較検討したりすることが多く、建設・建築業にとって会社案内パンフレットは仕事を取る上で重要なのです。

◉-2、顧客との信頼関係の構築が重要なため

一般的に、紙媒体のパンフレットの方がネット上の情報よりも信頼性が高いとされます。

これは紙媒体の情報の方が制作の手間や費用がかかっているからであり、発注元企業から「会社案内パンフレットを作っているしっかりとした会社だ」という印象を持ってもらえて、信頼関係構築のきっかけになります。

また、営業活動の際などに発注元企業のキーマンに会社案内パンフレットを手渡しして内容を説明し、信頼関係構築のきっかけとすることも可能です。

◉-3、安心・信用して工事を発注してもらうため

現代ではインターネットやスマホが広く普及していますが、紙媒体の会社案内パンフレットの方が、ネット上の情報よりも一覧性が良いことも理由の一つです。

建設・建築業の発注元企業は「工事を安心して任せられる会社」に発注したいと考えているので、パッと見てその会社の事業内容や工事実績などが分かることは重要です。

紙媒体の会社案内パンフレットがあれば、安心・信用して工事を発注してもらいやすくなります。

◉-4、事業内容を明確に伝える必要があるため

一口に建設・建築業といっても、実際には次表のように2種類の一式工事と27種類の専門工事に分かれており、建設業法で許可を受けた工事のみを施工することができます。

種類事業内容(施工できる工事内容)
土木一式工事道路・トンネル・橋梁・ダム・護岸などの工事
建築一式工事戸建住宅・マンション・店舗・ビル・公共施設などの建築
27種類の専門工事大工、左官、とび・土工、石、屋根、電気、管、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、鉄筋、ほ装、しゅんせつ、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、機械器具設置、熱絶縁、電気通信、造園、さく井、建具、水道施設、消防施設、清掃施設、解体の各工事

そのため、会社案内パンフレットでは、自社は建設業法のどの許可を受けていて、どの工事を施工できるのかを明確にしておく必要があります。

また、実際の営業活動では、工事現場の事務所で工事監督の方と接することがありますが、相手も多忙なのでiPadの動画で説明するなどというようなことはできず、会社案内パンフレットで説明するのが精いっぱいという実情もあります。

◉-5、常に採用活動が必要な業種であるため

建設・建築業では、急に人手が必要になって採用活動をしなければならなくなることがよくあります。

このような急な採用時にもすぐに配布できる資料として、会社案内パンフレットは非常に便利です。

採用活動で会社案内パンフレットを使うことを考えて、「社員が元気に働いている様子が分かる写真」や「社員インタビューの内容」などを入れておくことも大切です。

▶建設業のブランディングについてより詳しく知りたい方は、関連記事【建設業にブランディングは必要なのか? その効果と適した手法を解説】もあわせて参考にしてください。

◉発注や採用につながる!建設・建築業の会社案内のパンフレットを作るコツ

建設・建築業では、会社案内パンフレットが発注の決め手になることが多いということを意識して作る必要があります。

単なる会社説明資料という観点ではなく、「どうしたら発注元企業に発注したいと思ってもらえるか」「どういう項目を入れたら工事を安心して任せられる会社と思ってもらえるか」を意識して会社案内パンフレットを制作することが大切です。

発注や採用につながる会社案内パンフレットを作るためのコツは次の通りです。

・顧客が建設・建築業者の比較検討
・発注のために必要な項目を分かりやすく入れる
・問い合わせにつながる導線を分かりやすく入れる
・お客様の声など第三者目線を入れる
・自社の施工実績を入れる
・デジタルマーケティング施策への活用も見据えて制作する
・コンテンツマーケティングができるパンフレット制作会社に依頼する
・採用活動に使う会社案内パンフレットは別で作る

それぞれについて、くわしく見ていきましょう。

◉-1、顧客が建設・建築業者の比較検討・発注のために必要な項目を分かりやすく入れる

顧客(発注元企業)が発注先を決めるときに「どのような項目をみて発注先を決めているのか」から逆算して、その項目を分かりやすく入れておく必要があります。

自社で実施できる具体的な工事内容や工事実績、主な取引先など、判断基準になりそうな項目を入れておくようにしましょう。

特に規模の大きな工事実績や、いわゆるスーパーゼネコンなどから安定して工事を受注できているということが記載されていると、「安心して工事を任せられる会社」だと判断してもらえる可能性が高くなります。

◉-2、問い合わせにつながる導線を分かりやすく入れる

会社案内パンフレットには、電話番号やメールアドレスを分かりやすく明記しておくことはもちろんですが、自社のHPに飛べるようなQRコードを入れておくことも大切です。

会社案内パンフレットを見て発注元企業が電話したりメールしたりすることも考えられますし、Webサイトを確認するようなこともあるので、問い合わせにつながるような導線を分かりやすく入れておくようにしましょう。

◉-3、お客様の声など第三者目線を入れる

自社目線の一方的な会社案内パンフレットになっていると、信頼性が低くなってしまうので、自社以外の第三者目線を入れることが重要です。

たとえば、発注元へのインタビュー内容などの第三者の情報を入れることによって、施工実績などの説得力や信頼感を向上させることができます。

◉-4、自社の施工実績を入れる

自社の施工実績を明記しておくことは非常に重要です。

過去にどのような規模のどのような工事を施工した実績があるのかが分かると、発注元企業が発注先を選定する際の大きな根拠となります。

発注元企業にも「この会社は以前同じような工事を施工したことがあるようだから安心してお願いできそう」と思ってもらいやすくなるでしょう。

施工実績を記載する際に注意すべきことは、できる限り具体的に書くことです。

自社でどのような範囲で何の工事を担当したのかなどが分かるように書くことが重要です。

◉-5、デジタルマーケティング施策への活用も見据えて制作する

会社案内パンフレットは紙媒体のアナログマーケティング施策で、発注元企業が発注先を決める際の重要な参考資料となります。

しかし、せっかく制作するのですから、デジタルマーケティング施策への活用も見据えて制作しましょう。

たとえば、会社案内パンフレットはWebマーケティングやインサイドセールスなどに積極的に活用することが可能です。

会社案内パンフレットを、工事の発注元となる可能性のある企業に送るだけではなく、デジタルマーケティングに活用することを考えた構成や内容にすることが重要です

◉-6、コンテンツマーケティングができるパンフレット制作会社に依頼する

どうせパンフレットを制作するのであれば、パンフレット制作だけをやっている会社よりも、パンフレット・書籍・記事などのコンテンツをマーケティングに有効活用するサポートをしてくれる会社に依頼することをおすすめします。

契約や発注の増加などを狙うのであれば、コンテンツマーケティングができるプロに依頼した方が良いでしょう。

◉-7、採用活動に使う会社案内パンフレットは別で作る

採用活動に使う会社案内パンフレットは、営業活動に使う会社案内パンフレットと別に作ることが理想的です。

しかし、予算的なこともあるので、両方を兼ねたパンフレットにすることもできます。

または、採用活動に使う「社員が元気に働いている様子が分かる写真」や「社員インタビューの内容」などだけを別のリーフレットとして制作し、採用活動の際は会社案内パンフレットと採用リーフレットを渡すようにする方法も考えられます。

これについては、会社によって考え方も違うと思われるので、ケースバイケースでの検討が必要です。

◉ただ作るだけではダメ!積極的にターゲットに配布してこそ成果につながる!

会社案内パンフレットをただ作るだけでは効果を発揮することはできません。

せっかく手間や費用をかけて作るのですから、1件でも多くの受注や契約につながるような活用をしなければ、かかった制作費用をペイすることはできません。

会社案内パンフレットの活用方法としては、次のようなものが考えられます。

・PDF化してWeb上でも配布する
・ターゲットリスト先に配布する
・フォーム営業などに活用する
・会社案内のパンフレットの一部をHPやSNSなどで活用する
・デジタルマーケティングに活用する

それぞれについてくわしく見ていきましょう。

◉-1、PDF化してWeb上でも配布する

会社案内パンフレットは紙媒体のアナログマーケティングのツールですが、PDF化することによってデジタルマーケティングのツールとして活用することができます。

たとえば、PDF化した会社案内パンフレットを自社の公式Web上でも配布するようなことが考えられます。

◉-2、ターゲットリスト先に配布する

先述したように、建設・建築業界では発注元企業が発注先を決める際に、会社案内パンフレットを並べて比較検討することが多いという実情があるため、発注元となる可能性のある企業に予め会社案内パンフレットを配布しておくなどが有効です。

既存の取引先やパートナー企業はもちろんのこと、今後工事の発注元となる可能性があるターゲットの企業には、各種のリストなどをもとに配布しておきましょう。

会社案内パンフレットを送付しておくことによって認知を獲得して、今後見積依頼を受けたり発注してもらえたりする可能性が出てきます。

◉-3、フォーム営業などに活用する

フォーム営業とは企業HPの問い合わせフォームからメッセージを送ってアプローチする営業手法で、相手企業の担当部署や担当者と面識がない場合に利用されます。

建設・建築業界では、電話やFAXが主要な連絡手段となっていると言われているので、必ずしも成果に直結するかどうかはわかりませんが、送信したメッセージが相手企業内で担当部署に振り分けられてレスポンスが返ってくる可能性もあります。

レスポンスが返ってきたらすぐに返信をするとともに、アポを取って会社案内パンフレットを持参して訪問するようにしましょう。

◉-4、会社案内パンフレットの一部をHPやSNSなどで活用する

会社案内パンフレットに掲載された内容の著作権は自社にあるので、その一部をキャプチャしてHPやSNSなどで活用することができます。

これによって、会社案内パンフレットを直接受け取っていないターゲットに自社の情報を届けることができ、認知の獲得などにつながります。

◉-5、デジタルマーケティングに活用する

マーケティング効果を高めるためには、「接触時間×接触頻度」を最大化することが必要で、「接触時間」が長いのはパンフレットなどのアナログですが、「接触頻度」を上げるのはデジタルが効果的です。

建設・建築業界でも、アナログとデジタルをうまく連携させることによってマーケティング効果を高めることができるはずです。

アナログとデジタルを組み合わせることによって、より多くのターゲットに配布することが可能になります。

◉【まとめ】成果につながる会社案内パンフレットを制作しよう!

本記事では、建設・建築業で会社案内パンフレットが必要な理由、発注や採用につながる会社案内パンフレットを作るコツ、成果につながる活用方法などについて解説しました。

デジタルによるWeb広告やSNSなどが主流となっている現代ですが、アナログなツールの一つであるパンフレットには、ターゲットに手渡しができて、見てもらえて、読んでもらえるという大きな特徴があります。

これまでに取引の実績はないものの、発注元となる可能性のある企業に会社案内パンフレットを配布しておくことによって、見積もり依頼を受けたり発注してもらえる可能性が高くなります。

それなりの費用をかけて制作するパンフレットなのですから、成果につながる会社案内パンフレットを作りましょう。

会社案内パンフレットの制作や活用をお考えの方は、フォーウェイまでご相談ください。

パンフレット

老人ホームや介護施設の入居者の集客に、紙媒体のパンフレットを使っている運営会社は多いと思います。

そんな中で、「パンフレットを作っているけれど、なかなか集客や入居に結びつかない」という悩みを持つ広告・広報・営業担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、集客や入居につながりやすい老人ホームや介護施設のパンフレットを制作するためにはどうすれば良いか、そのコツを活用方法と合わせて解説いたします。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 29d5ead1ee41a6d25524876e7bd315d5-scaled.jpg
慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉老人ホーム・介護施設の集客にパンフレットが有効な理由

老人ホームや介護施設の入居者の集客に紙媒体のパンフレットが有効な理由は、主に次の3点です。

・紙媒体の方が親族などと一緒に比較検討しやすいため
・入居するための費用が高額なため
・資料請求や見学をしてから決める人が多いため

それぞれの理由について、くわしく見ていきましょう。

◉-1、紙媒体の方が親族などと一緒に比較検討しやすいため

老人ホームや介護施設を選ぶ際には、入居候補者が家族や親族と一緒に比較検討しながら選ぶことが多いと考えられます。

その際に、スマホやPCにデジタル表示された情報を見比べるよりは、紙媒体のパンフレットを並べて見比べた方が断然見やすいはずです。

これは、老眼などで目が見えにくくなった高齢者だからというわけではなく、複数のページに渡る情報を見比べるには、パンフレットの方が便利だからです。

このような理由から、デジタル技術全盛とはいっても、紙媒体のパンフレットが必要とされます。

◉-2、入居するための費用が高額なため

老人ホームや介護施設の入居費用が高額であることや、自分の親が入居して生活を任せることになるという責任感から、子どもが一緒にパンフレットを見て検討するケースが多いのが実情です。

その際に、紙媒体のパンフレットがあると、しっかりとした施設だという安心感や堅実さが伝わります。

必要な情報を伝えるだけであれば、Webサイトなどに掲載された情報だけで十分ですが、老人ホームや介護施設という特性上、パンフレットから安心感や清潔感、堅実さが伝われば選ばれる可能性が高くなります。

◉-3、資料請求や見学をしてから決める人が多いため

老人ホームや介護施設を選ぶ際には、次のようなチャネルから資料請求や見学依頼が行われるのが一般的です。

・紹介会社(仲介会社など)
・病院、居宅介護支援事業所、包括支援センター(行政の相談窓口)
・自社広告(ポータルサイト掲載、広告出稿、自社HP、チラシなど)
・その他(入居者の口コミ)

紹介会社や病院、居宅介護支援事業所、包括支援センターなどの場合、候補となる複数の老人ホームや介護施設のパンフレットを渡して選んでもらいます。

選んだいくつかの施設に連絡して見学日程を調整して決めるというのが一般的です。

また、自社広告やその他の場合でも、直接資料請求や見学依頼を行ってから入居する施設を決めます。

このように、老人ホームや介護施設の場合、パンフレットを見たり、見学をしたりすることが決め手の1つとなります。

そのため、老人ホームや介護施設の集客にはパンフレットが有効と言えるのです。

◉老人ホーム・介護施設の集客につながるパンフレット制作のポイント

老人ホームや介護施設のパンフレットを制作する際は、施設側が発信したい情報をまとめるのではなく、入居候補者が比較検討する項目や知りたい情報などから逆算して考えて、パンフレットの構成や盛り込む情報を整理していくことが必要です。

具体的には、以下のポイントに注意しながら制作していくと良いでしょう。

・老人ホーム・介護施設選びで重視するポイントを掲載
・お客様の声など利用者側の意見を掲載する
・情報を詰め込みすぎないように注意する
・施設見学申し込みや電話などの導線を分かりやすく入れる
・デジタルマーケティングでの活用を見据えて作る
・コンテンツマーケティングのできる制作会社に依頼する

それぞれ、順にくわしく見ていきましょう。

◉-1、老人ホーム・介護施設選びで重視するポイントを掲載

2023年に「LIFULL介護」が実施した「介護施設入居に関する実態調査 2023年度」によれば、「施設を検討する際に金額と立地以外で重視したもの」として、上位にあがっていたのは次の項目でした。

順位重視したポイント
1入居者、スタッフの雰囲気
2医療サービス体制
3空室状況
4提供しているサービス内容
5スタッフの質
6室内の清潔さ
7面会方法や、家族へのサポート
8安全対策と緊急時の対応
9食事の内容・質
10終身入居が可能か
11口コミ・評判
12施設種別
13居室の景観・日当たり
14提供レクリエーションの種類

老人ホームや介護施設のパンフレットの中で、これらの項目が説明されていれば、施設選びの際の重要な情報になるはずです。

特に「月額の利用料」「立地・周辺の環境」は必須情報だと言えますが、むしろそれ以外で重視したものとしてトップにあがっていた「入居者、スタッフの雰囲気」については必ず入れておくべき情報と言えます。

「月額の利用料」は、老人ホームや介護施設のグレードだけではなく、付帯サービスの種類などによっても変わってきますので、ケース分けするなどして分かりやすく記載するようにしましょう。

「立地・周辺の環境」については、老人ホームや介護施設へのアクセス方法、公共交通機関の最寄り駅、近隣の主要な施設などの説明を入れるなどが適切です。

人によって、街中の利便性の良いところを好む人もいれば、交通は多少不便でも自然に恵まれたところを好む人もいますので、周辺環境も重要な情報です。

「入居者、スタッフの雰囲気」については、和やかで和気あいあいとした雰囲気が伝わるような写真を所々に入れたり、入居者の声のように第三者の視点を入れるなどで「安心して預けられて、本人が楽しく過ごせそうな雰囲気」を伝えられるように工夫しましょう。

また、このアンケート結果での順位は低かったのですが、「スタッフの質」「食事の質・内容」も重視すべきポイントです。

「スタッフの質」については、見学時などに直接会って話をしたり、介護の様子などを実際に見たりしないと判断はできませんが、パンフレットの中には「スタッフの声」や「スタッフインタビュー」などの形で入れるのがおすすめです。

「食事の質・内容」についても、見学時などに試食したりしないと実際のところは分かりませんが、パンフレットには厨房や食堂・実際のメニューの写真などを入れて紹介するなど工夫しましょう。

◉-1-1、頻繁に更新する項目は別紙で紹介する(コスト削減)

パンフレットは紙でできた印刷物なので、一度出来てしまうとWebのように簡単に修正することができません。

頻繁に更新する可能性のある項目は、パンフレットからは省いてWebで公開したり、別紙に印刷したものをパンフレットに挟んだりする方法がおすすめです。

一部の項目の情報更新のためにパンフレット全体を印刷し直すようなことになると、無駄なコストが発生してしまいます。

そうならないように構成を考えるなど、先を見据えて情報を整理していくことが大切です。

◉-2、お客様の声など利用者側の意見を掲載する

老人ホームや介護施設側の目線だけではなく、第三者目線の意見や情報を掲載した方が、選ぶ側から見て分かりやすいパンフレットになります。

手間がかかりますが、たとえば、お客様の声や入居者の親族アンケート、利用者アンケートなどを載せることを検討してみましょう。

◉-3、情報を詰め込みすぎないように注意する

せっかくパンフレットを作るのだからと考えると、どうしても情報を詰め込みたくなってしまいがちです。

しかし、詰め込みすぎたパンフレットは読みにくいため敬遠されやすくなります。

老人ホームや介護施設の入居候補者や家族が比較検討する上で重要な項目だけに絞り込んで、それらをいかにパッと見て分かりやすく伝えられるかを考えることが重要です。

また、文章だけが並んだパンフレットは読む気が起きなくなってしまいますので、写真や図表を配置して読む気にさせる工夫も必要です。

◉-4、施設見学申し込みや電話などの導線を分かりやすく入れる

老人ホームや介護施設への入居をパンフレットだけ見て決めることはほとんどなく、パンフレットを見て問い合わせをしたり、実際に施設を見学してから入居となるケースが多いです。

そのため、問い合わせの電話番号やメールアドレスを記載して、パンフレットを見た人がすぐに分かるようにしておく必要があります。

また、施設の見学申し込みができることも明記しておきましょう。

可能であればQRコードなどを記載して、専用のカレンダーやフォームで申し込みができるような仕掛けを入れ込んで、次のアクションを起こしやすいようにしておくことが重要です。

◉-5、デジタルマーケティングでの活用を見据えて作る

老人ホームや介護施設の紙媒体のパンフレットを制作する際には、WebサイトでPDF化して配布することも考えて構成や配色、デザインなどを検討する必要があります。

WebサイトだけではなくSNSなどへも投稿してデジタルマーケティングへの活用も考えられます。

入居候補者本人は高齢者なのでデジタルにはあまり縁のない世代と言えますが、その子ども世代や親族はデジタルに慣れ親しんでいることが考えられるので、それらと連携した情報発信も必要です。

アナログとデジタルの組み合わせによって、より多くのターゲットに配布することが可能になります。

▶︎パンフレットのようなアナログマーケティングとデジタルマーケティングをどのように連携させていくのかについては、関連記事【デジタル全盛期だからこそ重要なアナログマーケティング戦略】もあわせて参考にしてください。

◉-6、コンテンツマーケティングのできる制作会社に依頼する

パンフレットを制作して資料請求が来たら送付する、紹介会社や病院などに送って配布してもらうというような従来の活用方法だけではなく、老人ホームや介護施設側から積極的にマーケティング活用することによって、さらなる集客につながります。

パンフレットを制作するのであれば、制作だけではなく、そういったマーケティング施策にも精通しているコンテンツマーケティングの会社に依頼するのがおすすめです。

◉ただ配るだけではダメ!デジタルと連携して有効活用しよう

自社広告など集客は行っていたとしても、老人ホームや介護施設を運営している会社の多くは、集客を紹介会社や、病院・居宅介護施設事業所・包括支援センターなどに頼っていることが多いという実情があります。

自社でもより集客できるように、アナログな紙媒体のパンフレットをデジタルマーケティング手法などと連携してターゲットにしっかりと届けられる工夫をすることが重要です。

アナログとデジタルを組み合わせた有効活用方法としては、次のようなものがあります。

・PDF化してWeb上でもターゲットに配布する
・パンフレットの一部をHPやSNSでコンテンツとして活用する
・紹介が生まれやすい場所をセグメントして配布する
・エリアでセグメンテーションして気軽に配りやすいDMやチラシも併用する

それぞれについて、くわしく見ていきましょう。

◉-1、PDF化してWeb上でもターゲットに配布する

パンフレットは紙媒体だけではなく、PDF化してWeb上でターゲットに配布することも考えましょう。

たとえば、公式HPから資料請求すると、PDF資料としてダウンロードできるようにしておくなどです。

メールアドレスなどを入れると資料が自動でメールで送られてくる、という仕組みにしていると資料配布と同時にリストが手に入るのでおすすめです。

◉-2、パンフレットの一部をHPやSNSでコンテンツとして活用する

パンフレットの一部を公式HPやSNSでコンテンツとして活用することも考えられます。

パンフレットの写真や文章をキャプチャ画像としてWeb記事に使ってSEO対策をしたりSNSに投稿したりして、二次利用によって情報を拡散していくことも重要です。

◉-3、紹介が生まれやすい場所をセグメントして配布する

パンフレットの配布場所や配布方法についてもきちんと検討しておく必要があります。

一口で老人ホームや介護施設と言っても、高級な施設から一般の方が利用できるリーズナブルな施設までいろいろなところがあります。

また、付帯サービスの種類も様々です。

そのため自社の老人ホームや介護施設を紹介してくれる可能性のある紹介会社や病院などの医療施設、場所をきちんとリサーチしてセグメンテーションし、パンフレットを配布してもらうようにする必要があります。

また、ネット上の老人ホーム・介護施設探しのサイトに資料請求が来ることもあるので、入居先を探している人の手に確実に渡るように手配しておきましょう。

◉-4、エリアでセグメンテーションして気軽に配りやすいDMやチラシも併用する

パンフレットは1冊当たりの費用が高めなので、配布の前段階としてDMやチラシを配布するなども検討しましょう。

入居候補者がいるかどうかも分からないところにパンフレットを配ると、かなりの出費になります。

そこで、まずは安価なDMやチラシをポスティングして、資料請求が多い地域や、マンションなどをセグメンテーションしてパンフレットを送付するようにすれば、コストを抑えながら集客効果を効率的に上げることができます。

同じ紙媒体であっても、コストの安いものから活用していくことも検討してみましょう。

◉【まとめ】集客につながるパンフレットを制作しよう!

本記事では、集客や入居につながる老人ホームや介護施設のパンフレットを制作するためのコツや活用方法について、くわしく解説しました。

パンフレットは入居施設を決める上で、入居希望者が必ず見る重要な媒体です。

入居者が安心して両親や祖父母、親族などを預けられるような安心感や、比較検討に必要な情報を分かりやすく掲載し、選ぶ決め手となるようなパンフレット制作を心がけましょう。

また、せっかくパンフレットを制作するのですから、デジタルマーケティング施策などとも連携し、自社でも集客がしっかりできるような活用方法を検討することが重要です。

もし、集客につながるパンフレット制作をご希望であれば、デジタルマーケティング施策とアナログマーケティング施策、どちらにも精通するフォーウェイまでご相談ください。

パンフレット

健康食品や化粧品、サプリメントなどの広告・PRに携わっている広告担当者や広報担当者にとって、薬機法(旧:薬事法)に関する知識は欠かせません。

薬機法(旧:薬事法)に違反する広告・PRを行ってしまうと、場合によっては罰金や逮捕などの厳罰が課せられることもあります。

そこで本記事では、まず薬機法(旧:薬事法)とは何かについて説明し、その後に薬機法(旧:薬事法)に違反せずに広告・PRするための7つのポイントについて分かりやすく解説していきます。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

■薬機法(旧:薬事法)とはどんな法律?

薬機法(旧:薬事法)とは、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品などの品質と有効性、安全性を確保するために、製造から販売、販売後の安全対策までを規制する法律です。

この法律は従来「薬事法」と呼ばれていましたが、2014年(平成26年)に改正が行われて、名称が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に変更されたため、これを略して「医療品医療機器等法」や「薬機法」と呼ばれています。

薬機法(旧:薬事法)の規制対象となるジャンル

薬機法(旧:薬事法)の規制対象となっているのは、主に以下のようなジャンルの商品・サービスです。

  • ・医薬品
  • ・医薬部外品
  • ・化粧品(コスメ)
  • ・医療機器
  • ・再生医療等製品

薬機法(旧:薬事法)の規制対象となる広告の3要件

1998年(平成10年)9月29日、厚生労働省は「医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知」において、「薬機法(旧:薬事法)の規制対象となる広告」とは、次の3つの要件をすべて満たすものであるということを示しました。

  • ・顧客を誘引する意図が明確である
  • ・特定医薬品等の商品名が明らかにされている
  • ・一般人が認知できる状態である

以下では、この3つの要件について詳しく見ていきましょう。

顧客を誘引する意図が明確であること

1つ目の要件は「顧客の購入意欲を昂進(こうしん)させる意図が明確であること」と言い換えることが可能です。

つまり、「商品を販売したい」という目的が明確にわかることが要件だということです。

この意味から、アフィリエイトリンクやインフルエンサーによるPR投稿などは、この要件を満たしているため、「広告」とみなされます。

逆に、学会などでの論文において「ある健康食品の効果」について発表したような場合は、「商品を販売したい」という目的で行われたものではないので、この要件を満たさず、「広告」とはみなされません。

特定医薬品等の商品名が明らかにされていること

2つ目の要件は、販売者(事業者や企業など)から消費者に対して行うアプローチを総合的にみて「広告」に該当するかどうかが判断されます。

たとえば、販売者(事業者や企業など)が消費者に「ある商品に含まれる成分の効果効能について説明されたチラシ」を送付した場合、このチラシは効果効能だけを説明しているので「広告」とはみなされません。

しかし、その数日後に「商品のチラシ」や「商品の購入案内」などを送付すると、総合的に判断して「広告」とみなされてしまうのです。

また、ホームページなどで「ある商品に含まれる成分の効果効能を説明するページ」と「商品の購入申し込みページ」が分かれている場合であっても」、「ある商品に含まれる成分の効果効能を説明するページ」から「商品の購入申し込みページ」へのリンクが貼られている場合には、「広告」とみなされてしまいます。

このように、単独のチラシやページだけでは「広告」に該当しない場合であっても、総合的に見て「広告」とみなされるということです。

一般人が認知できる状態であること

3つ目の要件は、「広告の3要件」の中で最も広く解釈されて運用されているものです。

そのため、この要件にはホームページ(HP)、LP、広告、SNS投稿、などほとんどすべての情報発信が該当します。

たとえば、2014年(平成26年)5月22日の厚生労働省の通知において、IDやパスワードを入力しないと入れないサイトであっても「一般人が認知できる状態」に該当するとされています。

■薬機法(旧:薬事法)における広告・PR担当者が知っておくべき主な禁止事項

健康食品や化粧品、サプリメントなどの広告・広報担当者の頭を悩ませる薬機法(旧:薬事法)。

もちろん、専門家によるチェックや修正は重要ですが、担当者もある程度「これはダメ」「これはOK」と言った薬機法(旧:薬事法)の禁止事項などを事例とともに知っておいた方が良いと言えます。

そうすることで担当者である程度チェック・修正することができますし、薬機法(旧:薬事法)のチェックにかかる費用の削減や、ダブルチェックにもつながります。

薬機法(旧:薬事法)に該当するような商品・サービスの広告・広報担当者は、次に挙げるような「薬機法(旧:薬事法)における主な禁止事項」をぜひ知っておきましょう。

虚偽・誇大広告の禁止(過度な褒めや効果効能など)

薬機法(旧:薬事法)では、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品などの名称や製造方法、効能・効果、性能に関して、虚偽広告や誇大広告をすることが禁止されています。

具体的には、「過度な褒め」や「過度な効能・効果」などを謳った広告がダメということです。

実際に「ズタボロだった肝臓が半年で復活」という肝臓疾患の予防に関する誇大広告を行ったとして摘発された事例や、解毒成分であるグルタチオンを含む錠剤 (医療用医薬品)に「美白や日焼け予防などの効果がある」と宣伝して摘発された事例などがあります。

このように、「〜するだけで痩せる」「〜することで血圧が下がる」など自社の商品やサービスを使うことによって何らかの健康効果が得られる」といった表現をする場合には十分注意しましょう。

未承認の医薬品の広告の禁止

薬機法(旧:薬事法)では、未承認の医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品などの名称や製造方法、効能・効果、性能に関して広告することが禁止されています。

たとえば、「米国食品薬品局が認可した画期的な飲む育毛剤」と広告した事例がありますが、たとえ米国食品薬品局で承認されていた医薬品であっても、日本で承認されていないものの広告をすることはできません。

実際に厚生労働大臣の承認を受けていない医薬品である「スーパープラセンタ」を、肌の若返りなどを謳って宣伝・販売したとして摘発された事例もあります。

そもそも取り扱う医薬品がきちんと厚生労働大臣の承認を受けているものなのかを確認することも重要です。特に他社の商品を取り扱う会社の広報・広告担当者は注意しましょう。

他社商品の誹謗広告の禁止

薬機法(旧:薬事法)では、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品などの名称や製造方法、効能・効果、性能に関して、他社商品の誹謗広告をすることが禁止されています。

たとえば、「〇〇社の製品よりも良く効きます」や「他社製品より安全です」などの表現が該当します。

「他社製品より安全です」のように、他社や他社製品を明示せずに漠然と比較する場合でも、間接的に他社を批判しているとみなされて薬機法に抵触するおそれがあるので注意が必要です。

そのため、製品同士で比較広告を行う場合は、自社製品の範囲で行う必要があります。また、対象商品の名称を明示しなければなりません。

医療関係者等の推せんの禁止

薬機法(旧:薬事法)では、「医療関係者等」による推せんが禁止されています。

ここでいう「医薬関係者等」とは、医療や美容に関する国家資格や同等の資格を持っている専門家のことを言い、医師や歯科医師、美容師、理容師、鍼灸師、教授などが該当します。

これは、医師や美容師による推せんには影響力があり「効能・効果や安全性の保証」とみなすことができると考えられるからです。

たとえば、医薬品などの広告で、医師が「〇〇に効きます」というような表現をしている場合は「効能・効果を保証している」と誤解されるおそれがあるため禁止されています。

また、化粧品の広告で「美容師がおすすめします」というような推せん行為もNGです。

ただし、医師や美容師が監修した商品の広告において、「共同開発した事実」を記載することは問題ないとされています。

化粧品の効能・効果の範囲を超えた表記の禁止

薬機法(旧:薬事法)では、化粧品の広告においては効能・効果以外の表記が禁止されています。

たとえば、基礎化粧品の広告で「脂肪分解を昂進(こうしん)してセルライトの除去や皮膚の老化防止をする作用があります」と表現したところ、肌の機能そのものに関わる表現は化粧品の効能効果の範囲を超えているとして摘発を受けた事例があります。

化粧品の効能・効果の範囲については、厚生労働省が平成23年7月に発表した「化粧品の効能の範囲の改正について」で明確に56項目が指定されています。

たとえば、以下が化粧品の効能の範囲として許されている表現例です。

(1)頭皮、毛髪を清浄にする。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4)毛髪にはり、こしを与える。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7)毛髪をしなやかにする。
(8)クシどおりをよくする。
(9)毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。

引用元:厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」

また、「化粧品であれば上記どのような表現を使っても良い」という事ではなく、あくまでその化粧品に該当するもののみ使用可能となっているので、注意しましょう。

■薬機法(旧:薬事法)に違反すると重い罰則を受ける可能性があるので注意

薬機法(旧:薬事法)に違反した場合は、業務停止や課徴金納付などの重い罰則を受ける可能性があるので注意が必要です。

以下では、具体的な罰則の内容などについて説明します。

「措置命令」や「中止命令」が下される

薬機法(旧:薬事法)に違反した事業者や企業に対しては、厚生労働大臣や都道府県知事から違反行為の中止や排除、再発防止策の実施を命じる「措置命令」や「中止命令」が下されることがあります。

なお、未承認の医薬品や医療機器の販売をした場合は、刑事罰の対象となる可能性もありますので、十分な注意が必要です。

売上に対する課徴金が課せられる

薬機法(旧:薬事法)に違反して虚偽や誇大広告を行った事業者や企業に対しては、厚生労働大臣から課徴金が課せられます。

この「課徴金制度」は2021年(令和3年)8月1日から施行されたもので、違反を行っていた期間における対象商品の「売り上げ金額×4.5%」を課徴金として納付しなければなりません。

社会的信用を失い契約打ち切りなど連鎖的に事業失墜に向かってしまう

薬機法(旧:薬事法)に違反して措置命令や中止命令が下されたり、売上に対する課徴金が課せられたりすると、その企業の社会的信用は低下します。

企業イメージがダウンして商品の販売中止・回収になったり、消費者はもちろんのこと株主や取引先からの信用も失って株式の下落や取引先との取引停止になることもありえます。

また、未承認の医薬品や医療機器の広告・販売をした場合は「未承認医薬品の広告禁止」に該当するため、より重い刑事罰の対象となりますので十分な注意が必要です。

最悪の場合、その企業の経営者などが逮捕されるケースも。

このように、1つの広告の違反行為によって大きな損失を被る可能性があることを知っておきましょう。

■実際の薬機法(旧:薬事法)の広告・PR違反事例

薬機法(旧:薬事法)は範囲や解釈が広いため、広告・広報担当者が一から全てを学ぶのには無理があります。

そこでおすすめしたいのが、「違反事例をたくさん学ぶ」ということです。

法律の文面や表現のOK・NG事例を覚えるよりも、実際に薬機法(旧:薬事法)違反をした事例が頭に入っているだけで、「これはOKかNGか?」の判断ができるようになってくるので、効率的です。

では、実際に発生した薬機法(旧:薬事法)の広告・PRの違反事例をいくつか見ていきましょう。

免疫機能を正常化

2023年(令和5年)9月27日、ペットフードの研究開発・製造・販売を行っている企業が、承認を受けずにホームページで「免疫機能を正常化」と広告したことにより、その企業の代表取締役が薬機法(旧:薬事法)の「承認前の広告の禁止等」に違反した疑いで逮捕されました。

ペットフードであっても薬機法(旧:薬事法)違反で摘発される可能性があるというもので、新潟県内では初の事例、全国でも2件目の事例となりました。

このように、「初の摘発事例」などは要チェックです。

今までは見過ごされていたものがある時期から摘発対象になる場合もあるので、十分注意しましょう。

アトピー治る

この違反事例は、2013年(平成25年)2月に、自ら作製した液体を「アトピー治る」と謳って医薬品として無許可で販売した製造業者が、当時の薬事法違反の疑いで逮捕されたものです。

この容疑者は、2009年(平成21年)ごろから食酢や緑茶の成分を混ぜた「クリン8」という液体を、インターネットで全国の約2400人に1本100ML入りを4900円で販売していました。

「クリン8」の購入者から「薬機法(旧:薬事法)違反になるのではないか」という相談が警察にあり、山形県警が捜査して逮捕に至ったようです。

未承認の医薬品を販売したことはもちろんのこと、広告・広報担当者として注目したいのは「アトピー治る」と未承認の医薬品を宣伝したということです。

がん予防

2020年(令和2年)10月に、「がんに効く」という広告をして医薬品として未承認のサプリメントなどを販売した容疑で医師らが逮捕されました。

この医師が経営するサプリメント製造販売会社のホームページで、4種類のサプリメントやお茶について「乳がん予防」「インフルエンザ予防」「便秘解消」などのように医薬品としての効果があるように広告・販売していました。

この事例では、代表者の医師だけではなくサプリメント製造販売会社の従業員2名も逮捕されています。

未承認の医薬品を販売したのはもちろんのこと、注目すべきはその製造や宣伝に関わった人も巻き込んで逮捕されているということです。

このように、薬機法(旧:薬事法)違反は、 周辺のさまざまな関係者を巻き込んでしまう可能性があることを知っておきましょう。

■薬機法(旧:薬事法)に違反せずに広告・PRするためのポイント

広告・広報担当者が薬機法(旧:薬事法)に違反せずに、健康食品や化粧品、サプリメントなどの広告・PRを行うためにはどのようなことに注意すれば良いのでしょうか。

具体的には以下の5つのポイントを押さえておくことで、薬機法(旧:薬事法)違反を防ぐことができます。

自社商品・サービスが薬機法(旧:薬事法)に該当するかをチェックする

まず最初にすべきことは、自社の商品やサービスが薬機法(旧:薬事法)に該当するかどうかをチェックすることです。

薬機法(旧:薬事法)の対象となるジャンルは、医薬品や医薬部外品、化粧品(コスメ)、医療機器、再生医療等製品などですので、自社の商品やサービスがこのジャンルに該当するかどうかで判断することができます。

業界のガイドラインを良く読む

次に、薬機法(旧:薬事法)に関するガイドラインをよく読み込んで理解することが必要です。

基本となるガイドラインとしては、以下の2つです。

また、広告に関する基準としては、以下のようなガイドラインがあります。

・厚生労働省「医薬品等適正広告基準

また、これらを元にして、以下のように各業界で個別のガイドラインが作成されているのでそちらを参考にするのもおすすめです。

これらのガイドラインを理解しておくことによって、広告を作成する際に意識して違反表現を避けることができるようになります。

また、次のように地方自治体のHPなどでも分かりやすいガイドラインが作られていたりするので、そちらも見ておきましょう。

また、これらのガイドラインを参考に、自社の商品やサービスに関する独自のガイドラインを作成しておくことも有効です。

他社の違反事例から学ぶ

他社の違反事例から学ぶことも重要なポイントです。

たとえば、2020年(令和2年)、健康食品輸入会社が「抗ウイルス効果がある」とお茶の広告を自社サイトで行い、医薬品として未承認の健康食品を販売したとして代表ら2人が逮捕されました。

この事例のように、特に健康食品については、医薬品と同等の効能・効果があるという広告をすると「未承認の医薬品」とみなされて薬機法(旧:薬事法)に抵触する場合があります。

これらの他社事例を参考にして、「OK表現」「NG表現」などを自社のガイドラインとしてまとめておくことも有効です。

専門家への確認 / リーガルチェック

薬機法(旧:薬事法)の専門家にリーガルチェックを依頼して確認してもらう方法もあります。

薬機法(旧:薬事法)の知識を持った専門家が行いますので、間違いや見落としが起こる可能性は非常に少ないのですが相応の費用が発生します。

Webページの更新頻度が高いような場合は、費用対効果について検討する必要があるでしょう。

薬機法チェックツールを使用

薬機法(旧:薬事法)チェックツールを使用する方法もあります。

薬機法(旧:薬事法)チェックツールとは、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、健康食品などの広告表現が薬機法(旧:薬事法)などの法律に抵触していないかどうかをチェックしてくれるツールのことです。

広告表現に問題がないかどうかを確認するだけではなく、代替表現の提案をしてくれるものもあります。

料金体系はツールごとに異なっており無料で利用できるものもありますが、文字数の制限などがある場合がありますので、用途に応じて検討が必要です。

主に以下のようなツールがあります。

薬事法広告表現チェックツール:無料のチェックツールで、30文字までの広告表現のチェックが可能です。主に健康食品や化粧品に対応しています。薬機法(旧:薬事法)に抵触する表現の場合は結果欄に抵触している箇所とその理由が表示されます。

TRUSQUETTA(トラスクエタ):従来KONOHAという名称で利用されていたツールで有料です。主に化粧品(コスメ)や健康食品に関する広告表現が薬機法(旧:薬事法)や景品表示法に抵触していないかどうかをチェックし、代替表現を提案してくれる機能もあります。

Cosme Design:化粧品(コスメ)の広告チェック、成分表示名称チェックなどを行うツールです。有料ツールですが、2日間だけ全機能を制限なしで利用できるお試し制度があります。

書籍(ブックマーケティング)による成分ブランディングの活用

広告宣伝というと、テレビCMやWeb広告、SEO記事、SNS投稿などのように、パッと見てすぐわかるような方法を考えますが、「書籍(ブックマーケティング)による成分ブランディング」という方法も有効です。

これは、商品やサービスの効果・効能を伝えるのではなく、それに含まれる成分などについて詳しく訴求することにより、その成分の入った商品・サービスのニーズを喚起するという方法です。

▶ブックマーケティングについては、関連記事【ブックマーケティングとは?メリットや効果的な戦略の作り方】もあわせて参考にしてください。

実際に書籍を使い成分ブランディングに成功して問い合わせが殺到した事例が数多くあります。

ただし、書籍だからといって一般広告よりも薬機法(旧:薬事法)の規制が緩いということではありません。

一般広告と同じように薬機法(旧:薬事法)のリーガルチェックが必要になりますし、薬機法(旧:薬事法)に違反すると、その罰則は著者だけではなく、出版社にも及ぶことがあります。

ブックマーケティング

バイブル商法にならないように出版社選択は慎重に

「書籍(ブックマーケティング)による成分ブランディング」を行う際に注意しなければならないのは「バイブル商法」にならないようにすることです。

「バイブル商法」とは、健康食品や化粧品、サプリメントなどの効果効能を書籍で宣伝すると同時に、その商品を販売するような商法のことをいいます。

出版業界では過去に出版社の社長がこの「バイブル商法」で逮捕されるという事件が発生しています。

これは2011年(平成23年)に発生したもので、書籍で「健康食品がガンに効く」と宣伝して健康食品の販売を幇助した容疑で逮捕されたものです。

どんなに広告担当者が薬機法(旧:薬事法)に気をつけていても、出版社に薬機法(旧:薬事法)の知識やノウハウがなければこのような事件に発展してしまいかねません。

「バイブル商法」にならないように、出版社選びは慎重に行いましょう。

■書籍(ブックマーケティング)による成分ブランディングの具体的な活用事例

ここでは、「書籍(ブックマーケティング)による成分ブランディング」を活用して問い合わせの増加や販促につながったという具体的な事例を2件紹介します。

事例①:コラーゲンという成分について説明し結果的にサプリメントの販売促進につながった事例

「あらゆる死に至る病気の原因は血管が老朽化することであり、その血管を若返らせることが健康寿命を延ばす近道だ」という内容の書籍があります。

著者は、コラーゲンサプリメントの開発・販売会社の代表者であり、医師でもありました。

書籍のタイトルやカバーなどには、サプリメントの販促につながるような話は一切入っておらず、内容も血管を若返らせるコラーゲンについて説明をする内容となっています。

しかし、本の出版後、書籍を読んだ読者から「この本で説明されているコラーゲンはどうやったら摂取できるのか」という問い合わせが出版社や著者に殺到し、結果的にコラーゲンサプリメントの販売促進につながっています。

書籍の中でコラーゲンについて説明することで、読者の中に「この本で説明されているコラーゲンを取りたい」というニーズが生まれたのです。

書籍は広告などと違い、長文をしっかりと読んでもらえる媒体です。

書籍の中でしっかりとコラーゲンに関する魅力を伝え、読者教育ができたからこそ、このようなニーズが読者の中に生まれたのだと言えます。

事例②:サラダ油の危険性を訴求し、結果的に米油ブームにつながった事例

この書籍の著者は米油の製造・販売している企業に勤務している研究開発者で、出版の目的は米油のBtoB販売の促進でした。

書籍の内容は「一般家庭で当たり前に使っているサラダ油を摂りすぎると、がんや脳卒中、心臓病の原因になりうるという」というものです。

特に商品の訴求などをしている訳ではありませんでしたが、出版後に大きな反響があり、結果的に米油ブームにつながりました。

その後は、出版目的のBtoBでの米油の卸先の開拓だけでなく、一般消費者の反響が大きかったためBtoCでの訴求にも成功しています。

このように、商品やビジネスの話を出さずとも、成分について詳しく語ることで、商品の販売促進やビジネスの活性化につながることを証明した事例と言えるでしょう。

■まとめ

健康食品や化粧品、サプリメントなどの広告担当者や広報担当者は、薬機法(旧:薬事法)に違反しないように、広告・PRについて自社で入念にチェックをしたり、社外の専門家にリーガルチェックを依頼したり、薬機法(旧:薬事法)チェックツールを使用したりといろいろなことを行っていることと思います。

しかし、同時に「広告やPR、SEO記事、SNS投稿など以外の方法で、自社商品やサービスの良さを効果的に伝える方法はないのか?」ということを検討していくことも重要です。

そこでおすすめしたいのが、この記事でご紹介した「書籍(ブックマーケティング)による成分ブランディング」です。

広告やPR、SEO記事、SNS投稿などのように商品やサービスの効果・効能をダイレクトに伝えるのではなく、商品に含まれる成分について訴求することで、ユーザーに「成分を取りたい」と言うニーズを喚起させるという、薬機法(旧:薬事法)規制が厳しい時代には有効なマーケティング手段の1つです。

「薬機法(旧:薬事法)の規制によりうまくマーケティングができていない」と感じている方はぜひ一度書籍による成分ブランディングを検討されてみてはいかがでしょうか。

※書籍であっても薬機法(旧:薬事法)の規制を受けますので、薬機法(旧:薬事法)に関する知識やノウハウを有する弊社のような出版社を選ぶようにしてください。

ブックマーケティング