本を出版したい!経営者が取り組むべき戦略的書籍出版について

「本の出版には興味があるが、何か自分自身や、経営する会社、行っている事業にとってメリットがあるのか?」と、本を出版する効果について疑問を持っている経営者は多いと思います。

結論から言えば、本の出版は、経営者に多くのメリットをもたらします。

しかし「うまく活用すれば」という条件付きです。

ただ本を出版しただけでは、自己満足で終わってしまいます。

この記事では、本の出版を経営者自身のブランディングや、経営する会社や行っている事業の発展につなげていくための、戦略的書籍出版の方法について解説していきます。

経営者で本の出版に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉経営者が本を出版するメリットとは?

「全く同じ内容が書いてあるネットの記事と本、どちらが情報として信用できるか?」と聞かれたら、多くの人が本と答えると思います。

ネットやSNSで自分の欲しい情報がいつでも手に入る時代ですが、今でも本は信用性の高い媒体として多くの人に認知されているのです。

そのため、経営者が本の出版をうまく活用すれば、次のような7つのメリットを得ることができます。

◉-1、メリット①:経営者自身のブランディング・認知度向上につながる

これまで会社を経営してきた経験や、培った専門性、想いなどを本にすることで経営者自身のブランディングや認知度向上につながります。

なぜなら、多くの人が「一握りの専門家しか本を出版できない」というイメージを持っているためです。

たとえば、ある経営者がサイバーセキュリティに関する本を書いて出版したとしましょう。

それを読んだ多くの人が、「サイバーセキュリティの業界ですごい人なんだ」と思うはずです。

このように、本の出版をうまく活用することで、世の中に自分自身の専門性や、人となりを認知してもらえるようになります。

後にご紹介しますが、ある保険代理店の経営者は、「自身の保険代理店の経営論」に関する本を出版し、多くの業界関係者からの理解と共感を獲得。

講演依頼がくるなど、業界内での認知度向上やブランディングにつながっています。

このように、本の出版をうまく活用すれば、経営者自身のブランディングや認知度向上につなげることができるのです。

▶︎認知度向上については、関連記事【経営者必読!認知度向上の方法と効果的なマーケティングの選択肢】もあわせて参考にしてください。

◉-2、メリット②:会社や事業のブランディング・認知度向上につながる

本に自身が経営する会社のことや、事業について書くことで、ブランディングや認知度の向上につながります。

後にご紹介しますが、実際に、ある建設業専門のコンサルティング会社の経営者は、本の出版により認知度が向上し、仕事の依頼や商圏の拡大につながっています。

「見込み顧客である層に本を届けることができれば」という条件付きではありますが、「こんな会社だったんだ」「こういう事業をやっているんだ」「こういう強みがあるんだ」と認知度向上につながり、問い合わせや仕事の依頼につながる可能性だってあるのです。

▶︎企業ブランディングについては、関連記事【企業ブランディングとは?企業の成長における重要性や手法を徹底解説】もあわせて参考にしてください。

◉-3、メリット③:経営者・企業の社会的信頼性の向上につながる

いまだに本は社会的信用性の高い媒体として多くの人に認知されています。

ネットやSNSでの情報収集が主流となった現代であっても、「本を出した」と言ったら、「本を出版できるすごい人なんだ」と思ってくれる人は多いはずです。

また、本の出版をきっかけに、テレビや雑誌などのメディアに注目が集まれば、番組出演やインタビューなどへのオファーにつながる可能性もあります。

本を出版しているというだけで、地域や業界内で一目置かれる存在になれるかもしれません。

このように、経営者が本の社会的信頼性の高さをうまく活用することができれば、自分自身や経営する企業、行っている事業の社会的信頼性を高めることができるのです。

◉-4、メリット④:競合他社との差別化ができる

ネットやSNSのように、パッと見た印象や、判断されるキャッチーさが求められる媒体とは違い、本はじっくり読まれる媒体です。

ネットやSNSとは違い、本を手に取ってくれた読者に、しっかりと経営者の事業にかける想いや、商品やサービスなどが作られた背景などを伝えることができてしまうのです。

つまり、浅く広く多くの人に認知されやすいネットやSNSとは違い、本は狭い範囲で深い共感を得られやすいのです。

後ほどご紹介しますが、実際にある保険代理店の経営者は、本に自分の想いや考え方を入れ込み、同業他社からの深い共感を得ることに成功しています。

本という媒体の性質を正しく理解し、うまく活用することができれば、同業他社との差別化につなげることができるのです。

▶︎差別化戦略については、関連記事【差別化戦略の成功の秘訣−メリットやデメリット、成功事例とは!?】もあわせて参考にしてください。

◉-5、メリット⑤:潜在顧客へのアプローチができる

書店を訪れるのは、あらかじめ購入したい本を決めている人ばかりではなく、「こんな感じの本がないかなぁ」という漠然としたイメージを持っている人や、「なにか面白い本がないかなぁ」と全くイメージを持たずに訪れる人もいます。

タイトルを見て回ったり、立ち読みしたりしながら本を選ぶ人もいるでしょう。

このように、書店は潜在的なニーズを持った人が多く集まる場所でもあります。

該当するジャンルの書棚に陳列されることで、そのジャンルの悩みや課題を抱えた潜在顧客に出版した本を購入してもらえる可能性があるのです。

このように、一般的な営業やマーケティング手法では接することができない潜在顧客へのアプローチができることも、本の出版の大きなメリットの1つと言えるでしょう。

◉-6、メリット⑥:成約までの期間の短縮ができる

本に入れることができる情報量は多く、一般的なビジネス書(200ページ程度)であれば、7万字〜10万字という膨大な情報を入れ込むことができます。

そのため、本の中には、次のような経営者に関わるあらゆる情報を入れることが可能です。

【ブックマーケティング著者のご紹介】・自社の紹介
・自社商品やサービスの紹介
・経営者自身の考えや想い
・創業のきっかけや、これまでの経緯
・商品やサービス開発の背景
・自社の強みやノウハウ

単に会社や商品・サービスの内容だけではなく、その背景にある考えや想いなどもまとめて伝えることができてしまうのです。

このように、本ならではの強みを活用すれば、顧客との信頼関係構築がしやすくなるだけではなく、自社の事業の理解も得られやすくなります。

たとえば、本を読んでいない人と商談を行う場合と、本を読んで問い合わせをしてくれた方と商談を行う場合であれば、後者の方が成約につながりやすく、リードタイムも短くなる可能性が高いと言えます。

なぜなら、すでに本を読んで自社や商品、サービスについてある程度理解してくれている可能性が高いからです。

中には自社や商品、サービスのファンになり、成約前提で問い合わせをしてきている方もいらっしゃるかもしれません。

このように、本をうまく活用すれば、これまで顧客との信頼関係の構築にかかっていた期間や、成約前に顧客教育が必要だった期間が不要となり、成約までのリードタイムを短縮することができるのです。

◉-7、メリット⑦:経営者や企業にとっての棚卸し(強みの再構築)につながる

本を作る前には、出版する目的や、本にどのような内容を盛り込みたいか、を企画していきます。

経営者へのヒアリングや、打ち合わせを入念に実施した上で企画を作っていくため、そのプロセスの中で経営者自身が「これが自社の強みだ」と改めて気づくことも多いのです。

たとえば、弊社のクライアントさまの中にも、出版のプロセスの中で自身や自社の強みを再認識し、「セミナーで自分の言葉で語れるようになった」「自分自身の自信につながった」という経営者が実際にいらっしゃいます。

本をきっかけに講演に呼ばれて話しても、自信を持って語れる。以前から考えてはいたけど言語化されていなかった概念が、出版によってスルスルと言葉になって出てくるようになった。その言葉が聴衆に刺さっているのも感じます。

引用元:【事例コラム】大口案件の集客、人材採用、大手企業からの講演依頼!出版ですごいことになった保険代理店

◉経営者が出版する目的を明確に!選ぶべき最適な出版方法が異なる

ここまで、経営者が本を出版することで得られるメリットをお伝えしてきましたが、ただ本を出版しただけでは、これらを得ることは難しいと言えます。

出版する目的をはじめ、「誰に、どのような情報を、どうやって届けていくのか」など、出版後も見据えた戦略があってはじめてメリットを享受できるようになります。

そのための第一歩が出版方法の選択です。

出版「商業出版」「自費出版」「企業出版」という3種類がありますが、その中から最適な出版方法をまずは決めていく必要があります。

◉-1、自費出版:書籍化が目的

自費出版は、次のように書籍化が目的の場合に選択される出版方法です。

・自分史を後世に残したい
・名刺代わりに配る本を作りたい
・趣味の集大成を書籍にしたい

著者が書きたい内容を書けるというのがメリットですが、出版のためにかかる費用は全て著者負担になります。

また、自費出版の場合は、出版後の書店配本やプロモーション費用も著者負担になることがほとんどです。

よって、「出版しても流通しにくい」というのがデメリットです。

本を出した後に、経営者自身が出版パーティーを開いたり、名刺代わりに積極的に配ったり、送付したりすれば、前述した出版のメリットのうち、いくつかは享受できる可能性はありますが、基本的には何か成果を求めて選択するような出版方法ではありません。

「書きたいことがあるので、どうしてもそれを本にしたい」という方におすすめの出版方法です。

▶︎自費出版については、関連記事【自費出版とは?メリットやデメリット、費用相場、成功事例などを解説】もあわせて参考にしてください。

◉-2、企業出版:企業の集客・ブランディングなどの課題解決が目的

企業出版は、企業が、集客やブランディングなど、経営課題を解決するという目的で選択される出版方法です。

次のような、さまざまな経営課題を解決したい場合におすすめの出版方法と言えます。

・自社やサービス、商品の認知度をあげたい
・競合他社と差別化を図りたい
・自社のブランディングを強化したい
・自社やサービス、商品の社会的信用性をあげたい
・社内ブランディング(インナーブランディング)を強化したい
・成約までにかかるリードタイムを短縮したい
・上場に向けて、会社の認知度や社会的信用性をあげたい
・WebやSNSで集客しているがうまくいかない、それ以外の集客方法を探している
・富裕層や決裁権者などに効率的にアプローチしたい

出版費用はすべて企業側の負担となる点や、本の内容の最終決定権が企業側にあるという点は自費出版と同じです。

しかし、企業の課題解決が目的であるため、「目的達成のためにどのような本を出版すれば良いのか」という企画提案が出版社側からあるのが、大きな違いと言えるでしょう。

また、自費出版とは違い、出版後のプロモーションや配本も行われることが前提です。

出版社の流通網を活用し、商圏内の書店に的確に配本できることも自費出版にはない、企業出版ならではの特徴と言えるでしょう。

「本がどれぐらい売れたのか」というよりも、「いかに見込み顧客に1冊でも多く届けられるか」ということが重要なので、出版後のプロモーションをどうするかも見据えて本の企画を行っていく必要があります。

出版社によっては、SNSや、SEO、Web広告、クラウドファンディングなど、あらゆるマーケティング施策を活用していくことを見据えて本の企画を考えていくこともあります。

マーケティング施策の一環として本の出版を活用することから、ブックマーケティングとも呼ばれることもある出版方法です。

◉-3、商業出版:出版社の売上向上が目的

商業出版は、出版社がヒット作を作り、売上や利益を向上させることが目的の出版方法です。

売れる本を作るために、出版社が自ら本の内容の企画や著者の選定を行い、配本やプロモーションを大々的に行っていくので、ベストセラーが生まれやすいというのが商業出版の特徴です。

実際にベストセラーの本のほとんどが商業出版によって生まれています。

出版社主導の出版方法なため、企業や経営者個人の一存で商業出版ができるわけではありません。

著者自身や出版コーディネーターが企画を出版社に持ち込んで出版されるケースもありますが、全体のごく一部です。

また、出版社が決めた方向性に沿って本を作るため、著者が伝えたいことを自由に書ける訳ではありません。

出版社都合で内容が変更されることもよくあります。

あくまで出版社の企画に沿って著者がアサインされる、という形になるため、著者には印税という名の報酬が発生します。

▶︎商業出版については、関連記事【商業出版とは?企業がブランディングを考えたときの出版の選択肢】もあわせて参考にしてください。

◉単なる自己満足な出版で終わらせないためには?

「商業出版からなぜベストセラーが多くでるのか」というと、出版社が「売れる本を作る」という明確な目的を持って、トレンドや読者の興味関心をリサーチしたり、配本やプロモーションなども見据えて戦略的に本の企画を行うためです。

商業出版のようにベストセラーが目的では無かったとしても、何か本を出版することで成果を得たい場合は、「いかに戦略的に本を企画し出版するか」が自己満足な出版で終わらせないコツです。

具体的には次のようなポイントを押さえましょう。

◉-1、本を出版する目的を明確にし、有効な出版方法を選択する

まずは「何のために本を出版するのか?」という目的を明確にしましょう。

「社会的信用性をあげるために本を出したい」「何か自分の生きた証を残したい」「自分の考えや想いを形にしたい」という目的であれば、自費出版がおすすめです。

このような目的の場合は、「自分が好きなことを書ける」ということが重要です。

一方で、本を出版することで、自社の認知度・知名度向上や、競合他社との差別化、ブランディング、集客アップ、新規顧客獲得などを期待するのであれば、企業出版がおすすめです。

この場合は、「自分が好きなことを書く」というよりも、「いかにターゲットに1冊でも多く届けるか」が重要であり、配本やプロモーション、マーケティング戦略が必要になってきます。

企画の段階から、こういったことを含め、コンセプトや戦略を練っていくことが何より重要です。

◉-2、出版後のプロモーション戦略と書籍活用も見据えた企画を立案する

自己満足で終わらないためには、「これを書きたい」ということよりも、「自社の強みが何なのかを再認識し、その強みを誰にどうやって伝えるのか」の方が重要です。

そのためには、本の企画の段階から、ターゲット決めや、出版後のプロモーション方法や本の活用方法をある程度決めておく必要があります。

むしろ、それを見据えた本の内容にしていくことが重要なのです。

たとえば、本の出版後にSNSで情報を拡散していく予定であれば、小出しにできるような見出し構成にしたり、SNSと連動する要素を盛り込んでいくなどができるはずです。

また、本の出版後にセミナーや講演会を積極的に行っていく場合には、そこに思わず足を運びたくなるような内容を盛り込むことができます。

このように、先を見据えた戦略的なプロモーションやマーケティングを踏まえて、本の内容を決めていくことが、ただの自己満足で終わらせないコツの1つです。

◉-3、出版後の書籍の流通経路をあらかじめ考え、出版社と相談しておく

出版後の流通経路も重要です。

商圏以外の地域に配本しても意味がありません。

そのため「どの地域の書店に配本していくのか」などを出版社と相談しておきましょう。

「商圏拡大のためにこの地域に配本していきたい」「この地域で競合他社との差別化を図りたい」という明確な目的があるのであれば、流通経路もそれに応じて変えていくべきです。

◉-4、出版後に書籍を活用したプロモーションを実施する

「本を出版したけど、何も反響がなかった」という声をよく聞きますが、その原因は明確です。

本を出版した後に、何もしなかったから、反響がなかったのです。

すでに知名度が高い経営者、企業であっても、書店配本はもちろんのこと、SNSで定期的に書籍の内容の一部を投稿したり、出版記念セミナーを開催したり、営業ツールとして積極的に配ったり、見込み顧客に送付したり、出版後にあらゆるプロモーションを行わなければ、反響を得ることは難しいと言えます。

実際に、ベストセラーになっている本の多くは、内容が良いだけではなく、出版社がお金をかけて積極的にプロモーションをしているから売れているのです。

そのため、出版後にも積極的にプロモーションを実施していきましょう。

◉-5、電子版のみはNG!紙の書籍を出版する

「デジタルの時代だから」と、電子書籍のみで出版を検討している方も多いと思いますが、注意してください。

なぜなら、誰でも無料で電子書籍を出せるというハードルの低さから、競合が多く、見つけてもらうことが難しいためです。

ある程度知名度がある会社だったとしても、簡単に埋もれてしまいますので、プロモーションやマーケティングをしっかりと行っていかないと、電子書籍のみで企業の課題を解決するのは難しいと言えるでしょう。

あくまで紙媒体の補助的な役割で電子書籍を活用するのがおすすめです。

◉-5-1、Kindle出版やプリントオンデマンドには注意

出版費用を抑えるための方法として、Kindleなどの電子書籍やプリントオンデマンドがありますが、利用は慎重に検討しましょう。

なぜなら、電子書籍は紙媒体に比べて社会的信用性が低いからです。

誰でも無料で出せるのが電子書籍の強みであり、弱点でもあるのです。

安易に安いから、といって手を出すのはおすすめしません。

◉経営者の出版成功事例

本の出版をうまく活用すると、実際にどのような成果が期待できるのか。

実際に経営者が本の出版をうまく活用した事例をいくつかご紹介します。

◉-1、事例1:保険代理店の経営者の場合

ある保険代理店の経営者は「保険業界の給与体系を変えることによって業績拡大ができる」という持論を世に問うために書籍を出版。

書籍の中で、保険業界では当たり前の「成果報酬型」を「一律報酬型」に変えることを提唱し、「一部のスーパー営業マンに頼った経営から、全員がアベレージヒッターになる経営に変えていこう」と訴えかけました。

保険業界の当たり前とは反対の持論を展開した形でしたが、予想以上に多くの業界関係者から理解と共感が得られたのです。

結果として、ブランディングに成功。

本の出版によって保険の契約獲得数も増え、新規コンサルティング契約の獲得や講演会の依頼などにもつながっています。

なんというか、当社の見られ方が確実に変わりましたね。同業者の集まりに出ても「あのイナバプランニングカンパニーさん」という反応で最初から一目置かれている。保険の商談に従業員と同行するときも、お客様に事前に本を読んでおいてもらうと、ご面談するときにちゃんと「あったまっている」んですよね(笑)

引用元:【事例コラム】大口案件の集客、人材採用、大手企業からの講演依頼!出版ですごいことになった保険代理店

◉-2、事例2:不動産会社の経営者の場合

高収入な医師をターゲットに不動産投資サービスを提供していた、ある不動産会社の経営者は、SNSやWeb広告を運用しても成果が得られない現状や、成約までのリードタイムの長さを改善したいと考えていました。

不動産投資サービスは、高額で、パッと判断して購入に踏み切れる商品ではありません。

「見込み顧客といかに信頼関係を築けるか」や、「いかに必要性や有効性を理解してもらうか」が重要です。

そのため、パッと見て一瞬で「買う・買わない」や、「興味ある・ない」を判断されるSNSやWeb広告とは相性が悪かったのです。

そこで「高収入な医師に最も効果的な節税対策は不動産投資である」というテーマで本を出版。

ターゲットである医師に的確に本を届けるためのプロモーション戦略を企画段階から練っていたことが功を奏して、多くの医師に本を読んでもらうことに成功しました。

実際に、本を読んだ医師に、不動産投資に大きな節税効果があることが認知されて問い合わせが増加。

さらには既存顧客や、本を読んだ医師からの口コミなどによって評判が広がり、新規顧客の獲得につながっています。

◉-3、事例3:建設業専門コンサルティング会社の経営者

この経営者は、自社で行う事業があまり世間に認知されていないことを課題に感じていました。

そこで、知名度向上や商圏の拡大のために本の出版に踏み切りました。

ターゲットである建設業者の決裁権者に確実にアプローチするために、書籍のタイトルに「建設業のための」という文言を入れたり、その後のプロモーション戦略も見据えて本の内容を企画。

出版後、ターゲットとしていた建設業者の決裁権者に読んでもらうことができ、出版翌日から電話が鳴り止まないほどの反響を得ています。

結果として、10件近くの新規顧問契約獲得につながり、首都圏中心に配本したことにより、商圏の拡大にも成功しました。

建設業専門のコンサルティング会社としての地位を確立し、ブランディングにも成功。

業界からの認知度向上にもつながっています。

◉【まとめ】目的を持って戦略的に本を作ろう!

経営者が本を出版するなら、自身の自己満足で終わらせるのではなく、経営者自身にとっても、経営する企業や行っている事業にとっても良い影響が期待できる「企業出版」がおすすめです。

もちろん、「自己満足でも自分の書きたいことがかければ良い」ということであれば自費出版で良い思いますが、せっかくお金をかけて本を出版する訳ですから、目的を明確にして、戦略的に本を作った方がメリットが大きいと言えます。

もし、経営者自身や経営する企業の目的に合わせた、戦略的な出版をお考えであれば、フォーウェイまでご相談ください。

配本やプロモーション戦略はもちろんのこと、SNSやWeb広告、SEO、クラウドファンディング、セミナーなど、あらゆるマーケティング施策を駆使した戦略的書籍出版をご提案いたします。

 

製造業は、競合他社が多く、差別化が難しいうえに、価格競争に巻き込まれてしまいやすい業種の1つ。

そんな製造業を営む企業にとって、自社のコトや、自社の商品・サービスの内容や強みを的確に伝えることができる会社案内パンフレットは重要なツールの1つです。

会社案内パンフレットの作り込みにより、自社の企業価値を高め、認知度を向上させ、売上や利益につなげていく1つのきっかけを作ることができます。

今回は、そんな製造業の会社案内パンフレットをより魅力的、かつ売上向上や利益向上につなげるためのポイントや、有効な活用方法などをご紹介いたします。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉製造業にとって会社案内は売上に直結するツール!

製造業は、原材料を加工したり部品を組み立てたりして商品を製造する業種のことで、生産形態によって「見込み生産型」と「受注生産型」に分けることができます。

「見込み生産型」は、自動車や家電品、食料品、日用品などのようにあらかじめ大量生産をして商品を作りあげておき、商品在庫を持って顧客に提供する生産形態です。

これに対して「受注生産型」は、受注後に顧客の要望に合わせた商品を製造する生産形態で、多くの場合、顧客ごと注文ごとに仕様が異なる商品を製造して顧客に納品します。

「受注生産型」の製造業の場合、顧客は過去に入手した会社案内パンフレットを見て発注先候補を選ぶことが多くあります。

会社案内パンフレットがなければ、自社の存在や商品・サービスをアピールする機会の損失につながってしまうのです。

また、「受注生産型」の製造業の場合は、顧客から「ちゃんと取引ができる会社」であることや「ちゃんとした実績のある会社」であることなどの信頼性を勝ち取ることも重要です。

Web上で情報提供するだけではなく、しっかりと紙媒体の会社案内パンフレットを作って顧客に配布することで信頼感の獲得にもつながります。

このように、会社案内パンフレットは製造業の売上や利益の向上に直結する重要なツールと言えるのです。

◉製造業が会社案内を作り込むメリット

メリット

製造業が会社案内パンフレットを作り込むことによるメリットは、主に次の4つです。

・企業の認知度が上がる(ブランディング)
・相見積もりの際に選ばれやすくなる
・優秀な人材を採用しやすくなる
・営業・マーケティング活動の効率化につながる

各メリットについて、くわしく見ていきましょう。

◉-1、企業の認知度が上がる(ブランディング)

会社案内パンフレットを作り込み、新規顧客開拓などに活用することによって、自社や自社の商品・サービスの認知度を上げることができます。

たとえば、会社案内パンフレットを作り、顧客となる企業に送付すれば、紙媒体であるが故に誰かが目にするはずです。

会社案内パンフレットは、チラシやDMなどとは違い「必要な時もあるかもしれないから一応取っておこう」と、すぐに捨てられる可能性が低く、タイミングがよければ担当者に中身を見てもらえる可能性もあります。

中身がしっかりと作り込まれていれば、発注元企業の担当者の印象にも残りやすく、場合によっては相談などの機会につながる可能性もあります。

このように、小さな認知の積み重ねが、企業の認知度向上につながっていくのです。

◉-2、相見積もりの際に選ばれやすくなる

大企業が発注先を選定する際には社内ルールで「相見積もりをしなければならない」ことになっていることが多く、相見積もりの候補先を探すときに過去にもらった会社案内パンフレットを見返すことがよくあります。

しっかりと作り込まれた会社案内パンフレットであれば、担当者の目に止まりやすくなり、相見積もりの候補先として選ばれやすくなります。

また、将来の発注先候補になり得る企業の会社案内パンフレットはそう簡単に捨てられることはありません。

保管されて必要なタイミングで見返されて、新たな仕事の相談につながる可能性もあるのです。

◉-3、優秀な人材を採用しやすくなる

会社案内パンフレットは、人材採用においても効果を発揮するツールです。

製造業の場合、提供している技術や、作っている商品が専門的すぎて、「どれぐらい凄いのか」が分かりにくい傾向があります。

いくら日本でトップクラスの技術を誇る企業であっても、その凄さが伝わらないと、求職者の候補先にも入ることができません。

そんな時、会社案内パンフレットに技術力の高さや将来性、販売する商品・サービスがどのように世の中で役に立っているのか、などが分かりやすく記載されていたり、社内の様子や働いている人の顔が見えたりするとどうでしょう。

求職者も「どういう会社で、どれだけ凄い技術力を持っているのか」を理解でき、「この会社なら自分の力を発揮できそうだ」と、興味を持ってもらいやすくなるはずです。

また、求職者がどの会社に応募しようかと検討する際に、紙媒体のパンフレットであれば複数の会社を並べて比較することができます。

そういった意味でも、紙媒体の会社案内パンフレットは優秀な人材の採用のために重要なツールと言えるのです。

◉-4、営業・マーケティング活動の効率化につながる

会社案内パンフレットを活用することで「自社や自社の商品・サービスを伝える」という業務の大幅な効率化が可能になります。

たとえば、営業担当が初めて会う顧客に製品やサービスの強みを口頭で伝えようとしても、相手がピンと来なかったり理解が深まりにくいことがあるでしょう。

これでは、相手に自社を理解してもらうために時間ばかりが取られて、不効率です。

そこで会社案内パンフレットの登場です。

わかりやすい図や実績、独自の取り組みがまとまっていれば、顧客も視覚的に「なるほど、こういう会社か」と理解しやすく、会話がスムーズに進むはずです。

結果として、商談の効率化や売上アップにもつながる可能性も高くなります。

同様に、マーケティング活動でも、自社の紹介を「会社案内パンフレットを見てもらう」ということで効率化できるはずです。

◉ただ作るだけではダメ!製造業の会社案内に盛り込むべき7つのコト

会社案内パンフレットをただ作るだけでは、前述したようなメリットを享受することはできません。

「とりあえずあればいい」というのであれば、一般的な会社案内パンフレットに盛り込まれているような内容を記載しておけば良いでしょう。

しかし、もし「成果を出したい」と考えるのであれば、次のような内容を工夫して盛り込むことをおすすめします。

・製造実績
・明確な商品・サービス内容
・顧客視点(顧客の声、顧客からの質問への回答など)
・営業やマーケティング、人事の視点
・会社案内パンフレットを見た人への行動喚起・導線の設置
・自社のブランドコンセプトに則った一貫性のあるデザイン・コピー
・どんな人が作っているか?製造設備や体制など

具体的にどのようなことを盛り込むべきか、くわしく見ていきましょう。

◉-1、製造実績

製造業の会社案内パンフレットにおいて、製造実績の記載は重要です。

サービスや商品を購入する側の立場になってみれば、「失敗したくない」というのが本音であり、「過去に同じような依頼をたくさん受けている経験豊富な企業にお願いしたい」と思っています。

会社案内パンフレットを見る段階では、発注元の担当者は「依頼して本当にこちらが依頼したものを作ってくれるのかどうか」が不安なのです。

こういった不安を取り除いてあげるためにも、これまでに「どのような商品をどれくらいの数量生産した実績があるのか」を明確に記載しましょう。

複数の生産拠点がある場合は、それぞれの拠点ごとに製造実績などを明記するのがおすすめです。

◉-2、明確な商品・サービス内容

商品・サービスの内容を明確に記載することも重要です。

特に「受注生産型」の製造業の場合は「どんなものでも作れます」というアバウトな内容ではなく、より具体的に製造可能な商品・サービスの内容を記載することがポイントです。

会社案内パンフレットを見て「この会社で対応可能なのかどうなのか」が不明瞭だと、発注はもちろん、問い合わせをすることにも不安を感じてしまいます。

製造している商品・サービスが明確に示すことができるのであれば、それを記載するようにしましょう。

また、「受注生産型」で顧客の要望によって「なんでも作れる」ということであれば、「これまでにどのような商品を、どのような仕様や精度で作ってきたのか」などを具体的に記載するのがおすすめです。

◉-3、顧客視点(顧客の声、顧客からの質問への回答など)

自社の視点だけではなく顧客から見てどのような企業なのか、商品・サービスなのかを記載することも重要です。

たとえば、顧客の声や顧客からの質問への回答などを掲載すると、顧客側から見てどのような企業なのかが分かります。

また、より顧客の要望に寄り添おうとしている企業姿勢を伝えることにもつながります。

また、「こういう会社とも取引がある企業」だという信頼感を持ってもらうことにもつながるため、顧客企業名が掲載可能であれば、相手側に許可を取り、積極的に掲載しましょう。

◉-4、営業やマーケティング、人事の視点

会社案内パンフレットは社内のあらゆる部署で活用されるツールなので、他部署での活用を見据えて制作しましょう。

会社案内パンフレットは自社の商品やサービスを紹介するツールですから、営業やマーケティング、採用などの現場で主に使われます。

活用を見据えて、「営業やマーケティング、人事などの視点」も積極的に入れ込むのがおすすめです。

具体的には、営業においてどのような項目があると利用しやすいのか、マーケティングのどのあたりで活用できそうか、人事としてどのようなことが書いてあると良い人材に響そうか、などをヒアリングしてニーズに合った内容を入れ込んでいきましょう。

◉-5、会社案内を見た人への行動喚起・導線の設置

配布した会社案内パンフレットが「読んで終わり」にならないようにする工夫も大切です。

興味を持ってくれた顧客が次のアクションを起こしやすいように、顧客に次の行動を喚起するような仕掛けを埋め込むようにしましょう。

・QRコードの設置によるLINE公式への導線
・QRコードの設置によるHPへの導線
・特典クーポンやオファーチケットなどの付与

◉-6、自社のブランドコンセプトに則った一貫性のあるデザイン・コピー

会社案内パンフレットのような紙媒体のパンフレットの場合、パッと見のデザインやコピーのインパクトによって、内容を見るか見ないかが変わります。

そのためには、自社のブランドコンセプトに則った一貫性のあるデザインやコピーを考えることが重要です。

特に表紙です。

表紙でいかに「ちょっと見てみようかな」と興味を惹かせるような、自社を印象づけるようなデザイン、コピーを検討しましょう。

◉-7、どんな人が作っているか?製造設備や体制など

発注元は、新しい企業に発注する際、次のようにさまざまな不安を持っているはずです。

・この数量の発注に耐えられるだけの生産体制があるのか
・この仕様を満足できる生産機械があるのか
・どんな人が作っているのか

自分たちが「安心して依頼できる先である」ということを伝えるためにも、どのような現場で製造しているのか、どのような人たちがどんな生産体制で、どんな製造設備や機械を使って製造しているのかを盛り込みましょう。

顧客は「より詳しく知りたい」と思って会社案内パンフレットを見ますので、製造現場のことをリアルに伝える内容にした方が信頼感や安心感につながります。

◉パンフレットを作って配るだけではダメ!積極的に活用しよう!

会社案内パンフレットをせっかく作るのであれば、戦略もないままでただ単に配布するよりは、成果を出すために積極的に活用すべきです。

会社案内パンフレットの活用方法としては次のようなものがあります。

・他の営業・マーケティング媒体・手法との連携
・既存顧客や代理店への送付
・効果測定と分析により、精度をあげる
・会社案内パンフレットのコンテンツをWebサイトやSNSで小出しにする

それぞれについてくわしく見ていきましょう。

◉-1、他の営業・マーケティング媒体・手法との連携

会社案内パンフレットは紙媒体ですが、他のさまざまな媒体や営業・マーケティング手法と連携することによって、相乗効果を生むような活用ができます。

具体的には次のような連携が可能です。

◉-1-1、Webサイト×会社案内

Webサイトは顧客に会社の情報を伝えるネット上の「顔」であり「窓口」です。

しかし、情報量が多いため、顧客にとって必要なポイントが埋もれがちです。

そこで、Webサイト上で会社案内パンフレットを閲覧できるようにしたり、お問合せフォームを送信すると自動返信でPDFの会社案内パンフレットが送られてくるような仕掛けを入れておきましょう。

顧客が必要な時に必要な情報をパッと閲覧できるようになる上、お問い合わせフォームで、会社名や担当部署・担当者名などを入力必須としておくことによって顧客リストという資産の獲得にもつながります。

◉-1-2、お問い合わせフォーム営業×会社案内

ターゲット企業のWebサイトからフォーム営業をする際に、会社案内パンフレットのPDFデータのURLを記載しておきます。

文章で会社紹介をする必要がなくなるため、フォーム営業で送る文章が短く、シンプルになりますし、受け取った相手も「どんな会社なのか?」を、必要があればPDFでパッと確認することができます。

会社紹介を省くことにより、本題を伝えやすくなり、端的に要件を伝えられますし、受け取った相手側も理解しやすくなるのです。

◉-1-3、書籍(ブックマーケティング)×会社案内

書籍を出版して流通させることで、自社や商品・サービスの認知度向上や購買意欲向上などに役立てるマーケティング手法をブックマーケティングと言います。

ブックマーケティングの一環として、会社案内パンフレットを送ったターゲット企業の中で反応のあった企業などに、書籍をお送りしてみましょう。

読まれるかどうかは別として、少なからず会社案内パンフレットで興味を持ってくれている訳なので、書籍を送付することによって「すごい会社なんだ」というイメージを持ってもらいやすくなります。

また、書籍を読んでもらうことができれば、自社への理解が深まり、ファンになってくれる方や深い共感や親近感を持ってもらえる可能性もあります。

会社案内パンフレットで反応を見て、反応があったところに、書籍でさらなる興味付けをしていくという流れで活用してみましょう。

株式会社フォーウェイでは、書籍をマーケティング施策に活用するブックマーケティングを行っており、パンフレットやWebサイト、SNSなどと連携して成果につながるサービスを提供しています。

▶ブックマーケティングについては、関連記事【ブックマーケティングとは?メリットや効果的な戦略の作り方】もあわせて参考にしてください。

◉-2、既存顧客や代理店への送付

会社案内パンフレットを既存顧客や代理店へ送付することも有効です。

既存顧客や代理店に会社案内パンフレットを送付しても意味がないと思われがちですが、「会社案内パンフレットをリニューアルしました」などといって積極的に送付すると、新規顧客を紹介してもらえたり、代理店での営業活動に利用してもらえる可能性が高くなります。

また既存顧客であっても、その会社が一体全体どのようなサービスを提供しているのかを細かく知っている訳ではありません。

「こんなサービスもやってるんだったら、これも相談できるかも」と追加発注につながる可能性もあるのです。

◉-3、効果測定と分析により、精度をあげる

紙媒体の会社案内パンフレットなどの効果測定は難しいと言われていますが、何らかの効果測定と分析を行って費用対効果を把握してPDCAを回しながら精度を上げていくことは重要です。

たとえば、会社案内パンフレットに記載するWebサイトのQRコードにパラメーターを付与することによって「会社案内パンフレット経由のアクセス」であることが判別できます。

これにより、会社案内パンフレットの効果を分析することが可能です。

また、会社案内パンフレットの配布エリアやマーケティング施策ごとに、URLに付与するパラメーターを変えておけば、エリアごとや施策ごとのアクセス数を計測することができるようになります。

「この施策、このエリアからの流入が多い・少ない」ということが把握できるようになるので、次の施策を実施する際や会社案内パンフレットを配布する際に「このエリアには集中的に配布しよう」など集中と選択を行うことができ、施策の精度が上がります。

◉-4、会社案内のコンテンツを小出しにする

会社案内パンフレットのコンテンツを、自社のWebサイト記事やSNS投稿などに引用して利用することも有効な活用方法の1つです。

Webサイト記事やSNS投稿にコンテンツを引用することによってWebサイト訪問者が増加したり、オリジナル性の高いコンテンツ発信という観点でSEO対策にもつながります。

◉【まとめ】パンフレットを作り込み認知度向上、売上向上につなげよう!

本記事では、製造業の会社案内パンフレットを作り込むメリットや盛り込むべき7つの内容、積極的活用法などについてくわしく解説しました。

せっかく費用をかけて会社案内パンフレットを作るのですから、ただ作るだけではなく売上向上や利益向上などの成果につながるようなものにしましょう。

効果を見据えた製造業の会社案内パンフレットを制作するのなら、パンフレットや書籍などの紙媒体から、WebやSNSなどのデジタル媒体までのコンテンツをさまざまなマーケティング施策に活用することができる株式会社フォーウェイにお任せください。

多くの中小企業が「他社との差別化」を考えていると思いますが、「どのようにして差別化すべきなのかがわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

実際に士業や保険代理店、不動産会社、金融業など、競合他社と商品やサービスの差別化が難しい業種があるのも実情です。

そんな状況の突破口となり得るのが、ブランドマーケティングです。

ブランドマーケティングに成功すると、競合他社から一目置かれる存在になったり、価格競争からの脱却、売上や利益率の向上が期待できます。

本記事では、そんなブランドマーケティングについて中小企業の成功事例を踏まえた上で、くわしく解説いたします。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉ブランドマーケティングとは?

ブランドマーケティングとは、自社の商品・サービスの価値を認めてもらうためにブランドを作り、顧客をファン化させるための活動のことです。

顧客体験やブランドストーリーによって、顧客との関係を深めることを目的としています。

顧客のファン化が進んでブランドマーケティングに成功すれば、ブランドの知名度が上がり、「〇〇と言えば〇〇」というようにブランドが認知されるようになります。

◉-1、ブランディングやマーケティングとは何が違う?

ブランドマーケティングと似た用語として「ブランディング」と「マーケティング」があります。

まず、ブランディングとは、自社の商品・サービスそのものの価値やイメージを高めようとする活動のことで、顧客の頭の中に自社の商品・サービスへの良いイメージを作ってもらうことを目的としています。

顧客の中に良いイメージが浸透すると、他社よりも多少価格が高かったとしても、自社の商品・サービスが選ばれるようになるというのが主なメリットです。

一方で、マーケティングとは、自社の商品・サービスを効率的に売るために行う活動全般のことです。

商品・サービスを売るための市場調査や商品企画、価格設定、流通・販売チャネルの構築、広告宣伝、顧客の声のフィードバックなどの活動すべてがマーケティングに含まれます。

◉企業がブランドマーケティングを実施するメリット

企業がブランドマーケティングを実施する主なメリットは次の5つです。

・企業や商品・サービスの認知度が向上する
・価格競争に巻き込まれなくなる
・長期的な広告費用の削減が期待できる
・人材採用がしやすくなる
・資金調達がしやすくなる

それぞれのメリットについて、くわしく見ていきましょう。

◉-1、企業や商品・サービスの認知度が向上する

ブランドマーケティングを行うことによって、企業や商品・サービスの認知度を向上させることができます。

ブランドマーケティングでは、ブランドコンセプトを具現化する商品・サービスの設計を行い、統一したロゴやデザインによってブランドの確立を図ります。

このような一貫した顧客体験を通じて顧客がファン化して、企業や商品・サービスの認知度向上につながるのです。

▶認知度向上については、関連記事【経営者必読!認知度向上の方法と効果的なマーケティングの選択肢】をあわせて参考にしてください。

◉-2、価格競争に巻き込まれなくなる

ブランドマーケティングが成功すると、自社の商品・サービスへの信頼感が高まります。

機能がほぼ同等であれば価格が多少高くても自社の商品・サービスを購入してもらえるようになり、価格競争から脱却できるようになるのです。

例えば、星野リゾートは日本の文化や自然を体感できるような滞在を提供する旅館・ホテルというブランディングに成功し、高価格帯での集客に成功しています。

このように、ブランディングに成功すると、競合他社との価格競争に巻き込まれないだけではなく、より高い価格でも購入してもらえるようになることから、利益率も高くなります。

◉-3、長期的な広告費用の削減が期待できる

ブランドマーケティングによって企業の認知度が向上すると、広告宣伝をしなくても商品・サービスに対する問い合わせが増えたり売れたりするようになります。

また、既存顧客からの口コミなどによって新規顧客の獲得ができるようになるので、従来のような広告宣伝を行って売上を喚起する必要がなくなります。

さらに、知名度が上がって「〇〇と言えば〇〇」というようにブランドが認知されるようになれば、必要以上の広告宣伝をしなくても、自社の商品・サービスが安定的に売れる効果が期待できるのです。

◉-4、人材採用がしやすくなる

企業が成長していくためには企業活動に必要な人材を採用しなければなりません。

ブランドマーケティングによって認知度が向上すると、企業の取り組みや商品・サービスに共感した求職者が、この企業で働きたいと思って応募してくるようになります。

また、求職サイトなどを利用しなくても、優秀な人材が獲得できるようになるため、人材採用コストも削減できるようになります。

◉-5、資金調達がしやすくなる

ブランドマーケティングに成功すると、自社の商品・サービスのファンが増えて投資家からも注目されるようになり資金調達がしやすくなります。

投資家が企業への投資判断をするときには、環境・社会・ガバナンスへの取り組みを基準にしていると言われているため、ブランド確立によってその貢献が認知されやすく、理解してもらいやすくなるためです。

資金調達がしやすくなると、より優位な企業経営が行えるようになります。

◉ブランドマーケティングを行う手順

ブランドマーケティングは具体的に次のような手順で行います。

◉-1、①市場ニーズの調査

市場ニーズは常に移り変わっていくものですから、まずは顧客ヒアリングやアンケート・ネット調査・SNS調査などを行って、自社の商品・サービスに対する市場ニーズを正確に把握することが重要です。

これによって、消費者がその商品・サービスについて重視しているポイントや欲している付加価値が何かを知ることができます。

◉-2、②商品・サービスのペルソナを設定

市場ニーズの調査が終わったら、自社の商品・サービスに興味を持ちファンになってくれるのはどのような人物・企業なのかを想定してペルソナ(架空の顧客像)を設定します。

ペルソナを設定すると、顧客目線での検討が可能になりますし、関係者全員で共有する顧客像を統一することができます。

商品やサービスのラインナップが多くある場合には、それぞれでペルソナを設定しましょう。

◉-3、③カスタマージャーニーの設定

ペルソナの設定が終わったら、その人物がどのようなタイミングで自社の商品やサービスの情報を得てファンになり購入に至るのかというカスタマージャーニーを設定します。

カスタマージャーニーは行動だけでなく思考や感情も含めて考えるもので、顧客が購買プロセスの中のどこにいるのか分かり、どのような情報やコンテンツなどを提供すべきなのかが分かります。

◉-4、④ブランドコンセプトの設計

カスタマージャーニーの設定が終わったら、ファンになってもらうためのブランドコンセプトを設計します。

ブランドコンセプトとは、ブランドの価値を言葉で表したもので、ブランドが選ばれる理由となるものです。

ペルソナの生活の中で、自社の商品・サービスがどのような利益や利便性を提供できるのかを考えて言語化していきます。

同様に、自社の商品・サービスの社会全体に対する使命や存在価値も考えましょう。

◉-5、⑤商品・サービスの設計

ブランドコンセプトの設計が完了したら、それを具現化する商品・サービスの設計を行います。

ブランドコンセプトを商品・サービスに反映させて、一貫した顧客体験が提供できるようにするのがポイントです。

ブランドコンセプトに合った商品を提供することによって、顧客の信頼性が向上し、自社の商品・サービスをリピートしてくれるようになります。

◉-6、⑥顧客コミュニケーションの設計

商品・サービスの設計が終わったら、顧客コミュニケーションの設計を行います。

具体的には、どのようなチャネルでどのような流れで顧客コミュニケーションを行っていくのかを設計するもので、いつ・だれに・どのように情報を提供するのかを検討します。

◉-7、⑦具体的なクリエイティブ制作

顧客コミュニケーションを行う上で必要な広告バナーやイメージ画像などのクリエイティブを制作していきます。

設定したペルソナが、どのようなクリエイティブに目を向けるのかなどを考えて、制作の優先順位を決めることも必要です。

◉-8、⑧ブランドマーケティング施策の実施

クリエイティブの制作が終わったら、ブランドマーケティング施策を実施していきます。

制作したクリエイティブを使って設計した顧客コミュニケーションの流れに沿って広告宣伝を行い、口コミを書いてもらったりリピートしてもらったりしてブランドの認知拡大を目指していくフェーズです。

広告宣伝媒体はターゲットに応じて選定する必要があり、たとえば10代~20代がターゲットならばTikTokやInstagramなどのSNSを活用する必要があります。

◉ブランドマーケティングを実施する手法

ブランドマーケティングは、次のようなさまざまなデジタル手法やアナログ手法を用いて実施することができます。

・Web広告(SNS広告含む)
・SNS運用
・ブランドサイト・メディアの制作・運用
・書籍(企業出版)
・パンフレット・リーフレット
・マス広告
・看板広告・デジタルサイネージ広告
・タクシー広告

以下で、それぞれについてくわしく見ていきましょう。

◉-1、Web広告(SNS広告含む)

Web広告とは、大手のポータルサイトなどの広告枠を購入してWebサイトやアプリなどにデジタル広告を表示することで広告費が発生します。

業者に依頼せずに自社で広告運用することもできますが、広告オークションの入札方法やターゲット設定、アクセス解析の方法など、最低限の基礎知識が必要となります。

効率的な広告運用のためには、継続的に広告を出して改善を繰り返すことが必要です。

◉-2、SNS運用

SNSの自社アカウントを取得して情報発信をしたり、SNS内に広告を出したりすることができます。

代表的なSNSには、X(旧Twitter)やInstagram、Facebook、TikTokなどがあり、その種類によって主な利用者の属性が異なりますので、自社の商品・サービスに応じて適切なSNSを選択することが重要です。

SNSは情報の拡散スピードが速いため、自社の商品・サービスのブランド認知度の向上が期待できます。

◉-3、ブランドサイト・メディアの制作・運用

自社でブランドサイト・メディアを制作・運用してブランド価値を高めるような情報発信を行います。

ブランドサイト・メディアのデザインや配色などを統一して、効果的な訴求ができるようにするのがポイントです。

ブランドサイトではSEO対策を行って検索上位を狙ったり、アクセスを解析して継続的に改善を行いましょう。

◉-4、書籍(企業出版)

競合他社との差別化が難しく、Web広告やSNS広告などのデジタル手法を行っても効果が得られなかったという場合には、アナログ手法の紙媒体を活用したブランドマーケティングを検討してみることをおすすめします。

具体的には、書籍をブランドマーケティングに活用する企業出版(ブックマーケティング)という手法があります。

企業出版(ブックマーケティング)を活用したブランドマーケティングは、高単価やBtoBの商品・サービスで、差別化が難しい士業や保険関係の業種などにおすすめの手法です。

▶ブックマーケティングについては、関連記事【ブックマーケティングとは?メリットや効果的な戦略の作り方】もあわせて参考にしてください。

◉-5、パンフレット・リーフレット

パンフレットやリーフレットなどの紙媒体も書籍と同様にブランドマーケティングに効果的なアナログ手法です。

パンフレットやリーフレットをブランドマーケティングに利用する際は、ただ作るのではなく、積極的な活用を見据えて作ること、そして実際に活用することが重要となります。

◉-6、マス広告

テレビCM、新聞広告、雑誌広告、ラジオ広告などのマス広告もブランドマーケティングに活用することができます。

マス広告は不特定の幅広い人にアピールすることができるため認知拡大が見込めるのが特徴。

また、信頼性が高いため、ブランドイメージの向上にも有効ですが、ターゲットを細かく設定できないことと、費用が高いこと、数値による効果測定が難しいというデメリットがあります。

◉-7、看板広告・デジタルサイネージ広告

看板広告やデジタルサイネージ広告もブランドマーケティングに活用することができます。

看板広告は従来から街角などで見かける広告です。

一方、デジタルサイネージ広告は、デジタルサイネージと呼ばれるディスプレイに表示する広告で、現在では駅構内・商業施設などのさまざまな場所に設置されています。

デジタルサイネージ広告は画像だけでなく動画を使用して多くの情報を伝えることができるのが特徴です。

通勤や通学、プライベートな外出の際にターゲットに見てもらえるチャンスが多い媒体なので、ブランドマーケティングには非常に有効です。

◉-8、タクシー広告

タクシー広告もブランドマーケティングに活用することができます。

タクシー広告は、タクシーの後部座席に設置してあるディスプレイに表示される広告で、静止画像だけではなく動画を活用しているためより多くの情報を伝えることができます。

◉ブランドマーケティングを成功させるポイントは「連携」

ブランドマーケティングで成功している企業とそうでない企業の違いは、面で捉えているかどうかです。

具体的には、様々な手法を俯瞰して面で捉えて実行している企業は成功していますが、「デジタル広告だけ」「SNS運用だけ」というように1つの手法だけにこだわって視点が狭くなっていると、なかなか成功にはつながりません。

成功につなげるために重要なのは、さまざまな手法を連携して面でブランドマーケティングを実施していくということです。

◉-1、デジタルな手法とアナログな手法の連携

実は今広告などで成果をあげているのはデジタル手法とアナログ手法の連携です。

株式会社リコーが行った「実証実験」によれば、メルマガを使ってWebサイトに顧客を誘導していた時のメルマガ開封率は13.8%、Webサイト遷移率にいたってはわずか1.5%に過ぎないという状態だったところ、メルマガ送付後に紙のDMを送った場合の、メルマガ開封率が5.5倍の75.8%に、Webサイト遷移率が3.4倍の4.4%に大幅に向上したとのこと。

つまり、デジタル手法とアナログ手法をうまく連携することによって大きな相乗効果が得られることが確認できたのです。

このように、デジタル手法とアナログ手法の連携は、ブランドマーケティングで成果を上げるためには非常に重要です。

◉-2、プル型とプッシュ型の連携

ブランドマーケティングの手法にはプル型のものとプッシュ型のものがあり、主なものを挙げると次表のようになります。

プル型・Webサイト
・SNS運用
・各種広告(マス広告、看板広告、タクシー広告など)
・展示会への出典
プッシュ型・訪問営業
・電話営業(テレアポなど)
・DM

ブランドマーケティングで成功するためには「プル型だけ」「プッシュ型だけ」ではなく両方を連携した仕組みを作っていくことが非常に重要です。

◉ブランドマーケティングの成功事例

ここでは、実際にブランドマーケティングを行って成功した事例をいくつか紹介します。

◉-1、不動産投資会社

不動産投資会社の経営者は、高収入なために高額な納税をしている医師をターゲットとして「医師に最も効果的な節税対策は不動産投資である」という書籍を出版。

書籍の出版前からSNSやクラウドファンディングなどを利用してプロモーションを行い、顧客の興味を喚起してファン化を促進しました。

出版直後すぐに成果が表れ、書籍を読んだ多くの医師からの問い合わせが殺到。

問い合わせをしてきた医師らは、書籍を読んで「最も効果的な節税対策が不動産投資である」ことを十分理解してくれていたため、ほぼ100%が成約につながるという圧倒的な成果をあげることができました。

競合が多くて商品・サービスの差別化が難しい業種にこそブランドマーケティングが有効だということが分かる事例です。

◉-2、保険代理店

保険代理店の経営者は、新規事業である保険代理店のコンサル契約の獲得のためにはブランドマーケティングが必要との考えから書籍を出版。

従来からSNSなどを利用した情報発信を行っていましたが、1つ上のステージに上るための手法として書籍出版を選択したのです。

書籍の中では、保険業界では当たり前となっている「成果報酬型」という給与体系を自社でも採用している「一律報酬型」に変更すべきだという持論も展開して注目度を上げることを目指しました。

出版後は業界内での地位も向上して、保険会社からも一目置かれる立場になり、ブランド確立を実感されています。

そして驚いたのは、保険会社から講演の依頼が来たり同業支援の話が回ってきたりと、「保険会社にとって頼れる代理店」というありがたいイメージを持ってもらえるようになったことです。
引用元:【事例コラム】大口案件の集客、人材採用、大手企業からの講演依頼!出版ですごいことになった保険代理店

◉-3、金属製品製造・販売会社

1951年に大阪府八尾市で開業した藤田金属は、家庭用金属製品を製造販売している町工場です。

価格競争から脱却し職人の技術を守るために行ったのがブランドマーケティングで「フライパン物語」という自社ブランドを立ち上げました。

持ち手の部分が数百通りにカスタマイズできるという強みが顧客のニーズに刺さり、ブランドが確立し売上も大幅に伸長。

当初の顧客はほとんどが一般生活者でしたが、近年では法人をメインにした販売戦略へと切り替えて更なる成功をおさめています。

「フライパン物語」は、フライパンを自分好みにカスタマイズできるという工夫によってブランド価値を高めたブランドマーケティングの成功事例です。

◉【まとめ】競合との差別化が難しい業種・商品・サービスにブランドマーケティングは有効

本記事では、企業がブランドマーケティングを実施するメリット・手順・手法などについて事例をあげてくわしく解説しました。

ブランドマーケティングは、士業・保険代理店・不動産会社・金融業などの競合他社との差別化が難しい業種・商品・サービスにおいて有効な施策です。

また、ブランドマーケティングを成功させるためには、デジタル手法とアナログ手法、プル型手法とプッシュ型手法などを組み合わせた広告宣伝を行うことが重要です。

フォーウェイは、デジタルとアナログ手法、プル型とプッシュ型手法の連携を得意とするコンテンツマーケティング会社です。

ブランドマーケティングや書籍を活用したブックマーケティングに取り組みたいとお考えなら、ぜひフォーウェイまでご相談ください。

今回は、今さら聞けないブランディングの何たるかと、ブランディングを達成するための具体的な手法を解説します。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉ブランドとブランディング

ブランディングの説明をするうえで、まずは「ブランド」という概念について説明しましょう。

ブランドとは簡単にいえば、企業や商品、サービスなどを他と区別し、ユーザーに共通のイメージを持ってもらうための要素すべてを指します。

ブランドという言葉は英語の「burned(焼印を押す)」から来ており、放牧している牛や製造したウイスキー樽に焼印を押して所有者・製造元を明確に示したことに由来して、「ブランド」という概念が用いられるようになりました。

◉現代のブランドを構成する要素

ビジネスでいわれるブランドとは、たとえば高級革製品のエルメスやグッチといったブランドが皆さんにも馴染み深いでしょう。こうしたハイブランドのみならず、自動車のトヨタや家電のパナソニックなどもブランドです。

現代のブランドを構成する要素には、たとえば次のようなものがあります。

・企業や製品のロゴ
・名称や商標
・広告などに用いられるキャッチフレーズ
・WEBサイトやその他制作物のデザインとコンテンツ
・CSRなど企業の理念を体現した取り組み
・経営者や社員による社会への発信

これら、企業と社会とが接点を持つすべての施策による総合的なイメージから、ブランドが形作られるのです。

そして、ブランドを意図して確立するために行なう取り組みを総称して、ブランディングと呼びます。

◉ブランディングによって価格競争から解き放たれる

「ブランド力がある」というと、「高級なイメージがあって価格が高くても買ってもらえる」という意味と同義で考えている人が多いかもしれません。こうした認識はブランドの一部を捉えていますが、本来のブランドはもう少し広い概念を含みます。

たとえば、アウトドアファッションブランドのパタゴニアは、「リサイクル素材100%使用のアイテム開発」「持続的な農業研究への参画」など、環境意識の高いサステナブルな企業としての取り組みを積極的に発信しています。

このブランディングが功を奏し、環境意識の高い先進的な人々から、他のブランドではなく絶対にパタゴニアを選ぶ、というファン層を多く獲得しているのです。

シューズメーカーのドクターマーチンは、その独特な丸みを帯びた靴のフォルムがイギリスのロックカルチャー文化の体現としてブランド化され、ブリティッシュロックのファン層から積極的に選ばれています。

ほかに有名どころだと、コーヒーチェーンのスターバックスは、元CEOのハワード・シュルツ氏による「サードプレイス(家でも職場でもない素敵な第三の場所)」というコンセプトに基づいたブランディングの成果で、外で落ち着いてコーヒーを飲みたいユーザーが真っ先に思い浮かべる場所として自社を位置づけることに成功しました。

これらのブランディング成功企業は、必ずしも競合に比べて価格がとても高いわけではありません。

重要なポイントは、ブランディングによって自社の位置付けや考え方をユーザーと明確に共有し、競合と比較されずに指名で選ばれる商品・サービスにできた点です。それにより、ブランディング成功企業は競合との値下げ競争から解き放たれ、適正な利益を確保しながらブランドをより強化する取り組みに経営資源を割くことができています。

◉ユニクロをグローバルブランドに押し上げたブランディング戦略

ブランディングの意義について理解を深めるため、日本企業の例についても紹介しましょう。

柳井正氏率いるファーストリテイリングによる、ユニクロです。

ユニクロロゴ

(画像引用元:Wikipedia)

皆さんもご存知のこちらのロゴは、ユニクロのリブランディングを依頼されたアートディレクターの佐藤可士和氏によってデザインされました。

佐藤氏は、柳井正氏へのヒアリングの際、このような質問をしました。

「柳井さんはユニクロを、『日本発のブランド』として印象付けたいですか?」

それに対し柳井正さんは、

「これからは、日本発のアパレルブランドとしてユニクロを世界中に拡大したい」

と返答したそうです。

そのやりとりから最終的に決定したのが、ユニクロの現在のロゴです。

以前はエンジ系の沈んだ色がベースだったロゴは「日の丸カラー」のパキッとした紅白ロゴに生まれ変わり、文字は欧米人にも好まれるシャープなフォントに。英語だけでなくカタカナ版も用意することで、あえて海外向けに「アジア感」を演出する機会にカタカナ版を使用する提案も佐藤氏からされています。

その後、ユニクロがグローバルブランドとして飛躍したのは、周知の事実です。ユニクロのリブランディングは、経営者の思いとブランディングのアウトプットの方向性がバッチリ噛み合った好例といえるでしょう。

◉ブランディングを成功させる3ステップ

では、実際にビジネスの現場でブランディング、あるいはリブランディングを成功させる方法を解説します。

今回は、個人事業主や小さな企業でもブランディングを実行できるように、ごくごくシンプルなステップにまとめました。

◉-1、ブランディングのステップ①自社ブランドの現状測定

ブランディングに取り組むうえでまず行なうべきは、現状の自社ブランドについて、客観的に把握することです。

それには、ユーザーの声を聞くのが最も適切です。自社の既存ユーザーにアンケートを取ったりヒアリングをかけたりして、なぜ自社を選んだのか聞いてみてください。

自社の担当者から直接聞くとおべっかを使われてしまう可能性があるので、外部調査機関を使っても良いでしょう。

一方で、「選ばれなかった理由」を知るのはさらに重要です。

営業マンなどから、商談のなかで競合に決まってしまったケースの情報を可能な限り多く集め、社内で徹底的に分析しましょう。

この際、「価格では負けていなかったのに競合に取られてしまった」「競合であると考えていなかった低価格低品質の他社に取られた」といった事例が必ず出てくるはずです。このような事例こそ、自社のブランド力不足を炙り出すヒント。ブランドが確立していれば起こり得ないケースだからです。

とことん突っ込んで議論し、自社の現状を謙虚に把握しましょう。

◉-2、ブランディングのステップ②ブランドコンセプトとターゲットの決定

自社のブランドについて現状を把握したら、次は進むべき方向を定めます。

ステップ①で把握した現状の不足に対して、それを克服できるようなブランドコンセプトを定め、自社のターゲットも同時に明確にします。

実在の例を用いると、次のような内部コンセプトを決定するイメージです。

・おしゃれで先進的な人々に対し、クールな製品を通じたスタイリッシュなライフスタイルを提供する(Apple)
・最も安心できる自動車をお手頃価格で求める人々に対し、運転しやすく安全性能の高い、丈夫なクルマを適正価格で提供する(トヨタ自動車)
・モノへのこだわりを表現して自分自身をブランディングしたいハイソサエティ層に対し、職人一人ひとりのストーリーが詰まった最高品質の腕時計を提供する(リシャール・ミル)

※それぞれのブランドの内部コンセプトは、当社の独自分析によるものです。

このように、ターゲットを含めた内部コンセプトがはっきりすると、ブランディングの方向性は自然と明確になってきます。

◉-3、ブランディングのステップ③個別施策の精査と実行

ブランドコンセプトとターゲットが定まったら、自社が現在、ユーザーと持っている接点をすべて再検証します。

たとえば、ハイソサエティ向けに高品質な商品・サービスを提供しているのに、自社サイトがポップなデザインで「安さ・手軽さ」を売りにしているようであれば、ブランドコンセプトとのミスマッチになります。製品に対する哲学やサービスに対する思いを強みにしたいのに、自社の理念やストーリーを何も公開していないとしたら、ブランディングは成功しません。

このように、あるべき自社のブランドに沿った施策をきちんと取っているか精査し、足りない施策は新たに実行する必要があるのです。

ブランディングプロセスの好事例として、ゼネコンの前田建設工業の取り組みを紹介しましょう。

ゼネコンとは非常にブランディングの難しい業種です。ある程度の規模であればどこも技術力や得意な工事にはさほど差がなく、結局横並びで「安心」「誠実」といった抽象的なメッセージを発信するブランディング施策になってしまいがちなのです。前田建設工業についても、特徴や強みの打ち出しに苦労していたことは容易に想像できます。

そこで前田建設工業が行なったのは、特設ページによる「前田建設ファンタジー事業部」というコンセプトの打ち出しです(https://www.maeda.co.jp/fantasy/)。

前田建設ファンタジー営業部は特設サイトにおいて、「マジンガーZ地下格納庫一式工事は予算72億円、工期6年5ヵ月(ただし機械獣の襲撃期間を除く)で引き受けます」など、ファンタジー世界の構造物を実際に大手ゼネコンが請け負ったらどうなるか、という空想を面白コンテンツとして展開。そのマニアックさと異様なまでの緻密な分析によってサイトが大ヒットし、同テーマで出版した書籍もベストセラーになりました。2020年には映画も公開されています。

こうした、ブランドの現状を見据えた一連のブランディング施策により、前田建設工業は「遊び心があって挑戦的なゼネコン」としてのブランドを確立することに成功。会社の知名度を大きくアップさせるとともに、競合と比べられない独自の立ち位置を確立したのです。

このほかにも、テレビCMをはじめとした大規模な広告ブランディングや、自社店舗の全店改装でブランディングを成功させた事例が見られます。ただ、今回は「予算がそれほど潤沢でなくても実行できる」という観点に重きをおいて解説しました。

◉-Tips:「インナーブランディング」の威力

最後に、ブランディングの副次的効果としての、社内へのブランディングーー「インナーブランディング」について簡単に触れましょう。

ブランディングの威力は、ユーザーに対するものにとどまりません。

自社の立ち位置と目指している方向を明確にすれば、同時に、従業員の意思を統一し、全員が同じ方向を向いて仕事に取り組む組織をつくることにつながります。

たとえば、「同業他社にはない超一流の気配りと温かみを提供するホテル」というブランドコンセプトを設定し、それに則った施策を実行すれば、従業員も自然に「私たちは超一流の気配りと温かみを提供しなければいけないのだ」という意識になります。従業員の間違った行ないに対するフィードバックもしやすくなるでしょう。

よく、経営においては従業員に理念を浸透する重要性が説かれますが、理念浸透もブランディング強化によって自然に実現することができるのです。

◉【まとめ】ブランディング施策で最も重要なのは?

ブランディングという概念の意味と、ブランディングを成功させる施策について述べてきました。

重要なのは、どういったストーリーに基づいてブランドコンセプトを導き出すかと、コンセプトを自社のすべてに一貫させることです。

よく、「なんとなく高級感を出したい」などといってウェブサイトだけハイブランドのように作り直す企業がありますが、一貫性のあるコンセプトに則っていなければ無駄な出費になります。

うまくポイントをおさえてブランディングを成功させ、ユーザーから積極的に選ばれるブランドづくりを実現しましょう。

参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから

▼ブランディングに効果的なブックマーケティングはこちら

企業がマーケティングやブランディングのために行なう、企業出版(ブックマーケティング)。出版不況と呼ばれる時代において、企業出版をメインでサポートしている出版社は売上や刊行点数を伸ばし続けています。

つまり、企業が企業出版を決断する機運は高まっているといえるでしょう。

今回の記事では、企業出版(ブックマーケティング)のメリットを紹介しつつ、数字では表せない、企業出版だからこそ実現できる書籍の使い道を解説します。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉企業出版とはベストセラーを狙う出版ではない

出版を実施するにあたり、どうしても気になるのは書籍が売れるかどうか。ただし、企業出版については、売れる本を作ることを目的としていません。

誤解を避けるために詳しく解説すると、企業出版はベストセラーになる本を目指してはいませんが、「狙ったターゲット」に売れる本を作ります。

出版に際しては企業のマーケティング戦略同様、自社の商品やサービスを知ってほしい顧客層をターゲットとして設定します。そのうえで、設定したターゲットが手に取りたくなるような企画づくりや、書籍のカバーデザインを仕上げるのです。

不特定多数へ知らしめる広告手法としてではなく、明確なターゲットがある企業であればあるほど、企業出版は適しているといっても良いでしょう。

改めて正確にお伝えすると、企業出版とは、企業が自社の情報や専門知識を書籍の形式で出版することです。出版社によってカスタム出版とも呼ばれます。

企業出版はブランディングや販促活動の一環として活用され、読者に対して企業の知見や価値を提供し、著者のビジネスにつなげることを目的としています。

近年、経営課題を解決する方法として出版を選ぶ企業は増え続けており、多くの企画が実際に出版に至っています。

そうした需要を背景に、既存の出版社が企業出版サービスを提供するケースも増えており、企業出版を専門とする出版社も出始めているようです。

企業出版の発行部数は、プランによって幅がありますが1000〜1万部くらいです。部数が多く、流通範囲が広くなるほど出版費用が上がります。

流通については通常の商業出版と同様の規模で書店にまくケースや、特約書店のみに配本するケース、オンライン書店のみで流通するケースなどさまざまです。

ただ共通するのは、実際に本を店頭に並べるかどうかは書店側の判断になるため、出版前の想定どおりに書店に並ぶかどうかは出してみるまでわからない、という点です。

本の企画をはじめ内容については、出版社からの提案を著者が承認して決める形になります。自費出版のように自分ですべて作るのではなく、自分の表現したい内容をプロの編集者のスキルを借りて形にできるのは大きなメリットです。

出版社がプロのライターをつけてくれる方式が一般的なため、インタビューに答えて上がってきた原稿に赤入れすることが著者の負担になります。

なお、以下にフォーウェイが行った、企業出版経験者への効果実感アンケートの結果リンクも掲載します。

上記のメリットが想像以上に発揮されている事実がよくわかるので、興味があればぜひご覧ください(以下の画像をクリック)。

▶企業出版については、関連記事【「出版の広告効果とは? 企業出版と自費出版の違い」】もあわせてご参考にしてください。

◉企業出版と他の出版の違い

続いて、企業出版と他の出版形態の違いを説明しましょう。

出版の方式には大きく分けて「商業出版」「自費出版」「企業出版」の3種類があります。

◉-1、商業出版

商業出版は、出版社が費用を負担して企画し、著者に執筆を依頼する出版方式です。

著者には出版社から、発行部数に応じた印税が支払われます。出版した本が重版すればするほど印税が増える、著者にとっては夢のある出版です。

予算のかけ方は企画によってさまざまで、原稿の書けない著者にはゴーストライターを用意したり、イラストレーターやデザイナーを用意して全ページカラーにしたりと、出版社が「売れる」と判断した企画内容に沿って体制が作られます。

注意点として、商業出版では企画から原稿の内容に至るまで、基本的には出版社に決定権があります。書籍を売ることを目的に出版社が投資し、売れなかった場合のリスクも引き受けるためです。

したがって、自分の本であっても著者の希望は通らない場合が多くなります。

具体的には、「著者にとってはマイナスイメージになりそうな企画でないと出さないと言われた」、「著者の事業の宣伝を入れようとしたら「流通に支障が出る」「作品性が損なわれる」と断られた」、「全然気に入っていないカバーデザインに決められた」などが実際あったケースです。

そのため、商業出版の経験者のなかには、「自社のビジネスメリットにもなるかと思って依頼を受けたけど、全然思いどおりにならなかった」といった不満が残っている方もいるようです。

◉-2、自費出版

自費出版は、個人が自身の著作物を自己負担で出版する形式です。小説や詩集など趣味で書き溜めていた原稿を出版したい、自分の生きた証を残すために自叙伝を出版したい、といったニーズが多いです。

特徴としては、流通規模の小ささです。自費出版は概ね100〜500部程度の発行部数で、書店流通はまったくなしか、ごく一部の書店への配本に限られます。書店へ配本されるケースでも、「自費出版棚」などの棚にまとめられたり、配本だけされて書棚に並ばなかったりといったケースが多いようです。

内容については、自費出版は100%、著者の思いどおりです。カバーに自作のイラストを入れたりといったアレンジも好きなようにできます。自費出版での出版社の仕事は、持ち込まれた原稿を校正し、デザインレイアウトして印刷することです。

一方で、「内容に自信がないからもっと売れるように改善提案してほしい」といった希望は叶わないと思ったほうが良いでしょう。

◉企業出版を実施するメリット

企業の商品やサービスをPRするうえで、世の中にはさまざまな広告手法が溢れています。

そんななかで企業出版という形式だからこそ得られる、大きなメリットを紹介します。

◉-1、自社商品やサービスを知ってほしいターゲットに認知拡大できる

世間一般的に認知度を上げるのに手っ取り早いのは、テレビCMや全国紙の新聞広告掲載です。それぞれかなりの視聴者や購読者がいる媒体なので、認知度を上げるには最適でしょう。

ただし、こうしたマス媒体への広告は1回あたりの負担額が数百万〜数千万円と高額で、しかも広告を打ち続けないと効果は持続しません。

一方、企業出版の広告宣伝の場は書店にある各書棚になります。先述した通り、狙ったターゲットに知ってもらえる理由の一つです。

たとえば不動産投資会社が潜在顧客に自社を知ってほしければ、書店の「不動産投資」や「資産形成」の棚に並べることで、自ずと手にとってもらえます。

耳鼻科のお医者さんが耳の病気に関する書籍を出版すれば、耳の病気に悩む人が立ち寄る「家庭の医学」の棚に展開されます。

このように、知ってほしいターゲット層に認知してもらうには企業出版が適しているのです。

◉-2、競合に対する優位性を高め信頼度も向上

書籍は出版社から取次会社を介して書店に流通し、値段をつけて販売されます。

「書籍を出版している企業」という事実により、競合企業に比べた優位性を高められ、信頼度が向上するのです。

書籍を活用した情報発信でその道のプロフェッショナルとして認知してもらえ、社会的な信用が上がり企業ブランディングに大きく貢献します。

◉-3、他媒体に比べて圧倒的な情報量を誇る

さまざまな広告手段のなかでも、書籍の持つ情報量は圧倒的といえます。

テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、看板……広告のどれと比較しても、書籍ほどの情報量を盛り込める媒体はないでしょう。

書籍一冊でおよそ200ページの量があり、文字の組み方によって変わりますが、文字数にすると7万〜10万字もの情報を発信できるのです。

企業の商品やサービスの魅力だけでなく、企業理念や代表者の考え方などを余すことなく伝えることができる稀有な媒体といえるでしょう。

◉-4、質の高い顧客からの問い合わせが獲得できる

書籍制作をするにあたって最初に考えるのが、「出版の目的」です。集客を目的にする場合、自社商品やサービスが見込み客にとってどうメリットになるのかを整理していきます。

マーケティング戦略の基本であるペルソナの設計を、書籍企画づくりの中で同時に行なうことができるのです。

先に解説した通り、書籍は信頼度の高い媒体ということもあり、自らが欲する情報が掲載された書籍を読むことで、読者ならびに見込み客から著者の会社に問い合わせする、という導線を作ることができます。

著者のファンになった読者は自社ビジネスの内容を理解しているため質の高い顧客となり、商談も簡略化することができます。

このように企業出版は、一冊出版するだけで、他の広告媒体にはなし得ない認知度拡大や啓蒙、集客力向上、そしてブランディングを同時に達成できます。

◉企業出版による副次的効果とは

ここまでは、企業出版をすることで実現できるわかりやすいメリットを紹介してきました。

次に、出版という手段だからこそ発揮される副次的な効果を解説します。

◉-1、著作権が企業側に帰属するため二次活用が可能

企業のマーケティング戦略の一環として出版を実施する以上、無視できないのが著作権です。著作権とは、書籍出版においては本の原稿など、著作物を保護するための権利です。

知的財産権の一つで、著作物を著作権者以外に無断で使用させない権利でもあります。

企業出版においては、ライターが取材して原稿執筆するケースが一般的ですが、ライターは著作権を放棄し、出版契約した企業側に著作権が帰属するのが基本です。

なかにはイラストや写真など、各コンテンツに応じて著作権が制作者側に帰属しているケースがあるため、使用の際は確認が必要ですが、基本的に原稿については自社の判断で二次利用ができます。

昨今はCookieの規制が強化されるという話題もあり、オンライン上のGoogle広告やSNS広告が利用できなくなる可能性も考えられます。

WEB広告でアクセスを集められなった場合、SEO対策として自社サイトのコンテンツを強化する重要性はますます増すでしょう。そこで書籍があれば、コンテンツをホームページや自社オウンドメディアに転載することで、SEO対策としても活用できるのです。

ただ、出版権や所有権については契約での取り決めがあるので、各出版社に問い合わせてみましょう。

◉-2、営業ツールとしての活用で囲い込みやクロージングに寄与

書籍が完成すれば、手元に営業ツールとして活用できる書籍が届きます。

活用の仕方は幅広くさまざまですが、来店した見込み客にプレゼントとしてお渡しすることで、信頼性を向上させ、サービスや会社に対する理解度を促進させることができます。

セミナーを開催して販売や配布するという手段も考えられるでしょう。

競合他社との相見積もりになった際に、書籍を送ることでクロージングツールとして効果を発揮したという例も珍しくありません。

ほか、見込み客のリストや過去名刺交換をしたような掘り起こし顧客にDM(ダイレクトメール)として送付するという活用方法も考えられます。

◉-3、社員教育や採用強化に活用できる

企業出版でできる書籍には代表者の考え方やサービスのメリットが網羅されていることもあり、採用や人材育成に効果を発揮します。

企画内容によりますが、企業が成長するまでにぶつかった壁やそれを乗り越えた方法など、事業拡大するまでの紆余曲折を、これから入社する新人にも知ってもらうことができるのです。

会社がどのような考えをもって経営しているのかを新人が理解できれば、採用時のミスマッチを防ぐことが期待でき、採用後の定着率アップにも大きく寄与します。

◉企業出版と他の発信施策の比較

続いて、企業出版と他の発信施策の特徴を比べてみましょう。

「紙媒体広告」「WEB広告」「WEB媒体施策」との比較は以下のとおりです。

◉-1、紙媒体広告との比較

まず、新聞や雑誌といった紙媒体への広告出稿を見てみましょう。

紙媒体の広告はその発行部数の多さを活かし、数万〜数百万の人々にリーチできる点が大きな強みです。

一方で、紙媒体は基本的に広告出稿される号が世に出た瞬間にのみ、効果を発揮する施策となります。効果の長期的継続はありません。

さらに、出稿によってもらえる枠は非常に限られており、盛り込むメッセージはかなり取捨選択しなければいけません。

書籍の場合は、書店流通によって広告効果が持続的に発揮されるのが紙媒体広告と比較した際の強みです。

さらに、詳細な情報や専門知識を一冊分盛り込めるため、読者に対してより深い理解や感動を与えることができます。説明が難しかったりセールスに長期間かかったりする製品・サービスには非常に適した発信手段です。

◉-2、WEB広告との比較

WEB広告はご存じのとおり、費用を投じている間のみ広告が回ります。メリットとして、少額でも始められること、詳細にデータが出ることで細かな改善アクションを繰り返しやすいことが挙げられます。

一方、実物がある紙媒体以上に「残らない」広告施策であるところが難点。「先につながらないのはわかっているけど、広告止めると売上落ちるから止められない…」と悩む経営者は多いです。

一方、企業出版では紙媒体との比較同様、長期間にわたって読者に提供されて持続的な効果が期待できる点がポイントになります。

また、本によって読者の関心を引きつけるコンテンツを提供することができるため、たとえば「WEB広告で集客した見込み客に書籍をプレゼント」といった合わせ技で受注確度を高める戦略は非常に効果的です。

◉-3、WEB媒体施策との比較

WEB媒体施策はWEBメディアに対する記事広告出稿や、自社サイトでコンテンツを発信するオウンドメディア施策を指します。

WEBメディアの記事広告はずっと掲載してもらえる場合があり、自社サイトコンテンツも半永久的に残る点は大きなメリットです。

一方でWEBコンテンツはどうしてもユーザーが軽い気持ちで閲覧する傾向にあり、問い合わせなどの反響につなげるには相当クオリティの高いコンテンツを自社で作る必要がある点がハードルになります。

また、WEBコンテンツの閲覧者と書籍の読者はかなり層が違うため、こちらもターゲットや目的によってうまく併用することが成果を出すコツです。

◉企業出版の成功事例

以上、企業出版の強みについて見てきました。

さらに理解を深めていただくために、ここからは弊社の編集部がお手伝いしてきた実際の出版による成功事例を紹介します。

事例は非常に数多くあるため、代表的な例を簡単に以下にまとめました。

●個人事業の経営コンサルタントがクライアント業界の経営改善ノウハウを説く書籍を企業出版。出版直後から問い合わせが殺到し、最終的に顧問先が30社増加。売上が出版前の3倍に。

●投資用不動産を販売する会社が企業出版。確度の高い問い合わせもさることながら、営業ツールやセミナーのお土産として配ったところ成約率が飛躍的に上昇。本の効果が非常に大きく、プッシュ営業体制の廃止にも成功。

●注文住宅の工務店が家づくりの考え方を出版。近隣の図書館が取り寄せてくれたこともあり、問い合わせがその後5年にもわたって続いた。書籍反響だけで毎年の売上目標を達成できる体制に。

●WEBマーケティング会社が企業出版したところ、コンペ案件にとても強くなった。「書籍を読んで御社に決めました」という声が複数。不調に終わったプレゼンの後に書籍を読んだクライアントから連絡が来て、案件復活したケースも。

●FC型の会員組織が会員集めのため出版。書籍を「紙芝居」がわりにして既存会員が新規会員を募るスタイルで、1000人だった会員が出版後半年で2000人までに。

●自身の健康論を出版した医師。キー局の番組や都内で流れる大手ラジオ局からの出演依頼が複数あり、専門ジャンルにおける第一人者としての位置を確立。現在でもメディアで特集があれば真っ先に取り上げられる先生になり、医院の集客(集患)にも貢献。

他にも効果事例はたくさんありますが、今回は以上です。

企業出版にはこのような、ビジネスモデル自体を変革するような大きな効果が出た事例がたくさんあります。

◉企業出版の費用相場

では、企業出版の気になる費用相場はいくらくらいなのでしょうか。

まず、企業出版の価格に影響する要素は、以下のとおりです。

・書籍の仕様

通常の企業出版は、四六判と呼ばれる130mm×188mmサイズで中面が白黒、200ページ程度の書籍が多いです。

効率よく文字情報を詰め込めるサイズで、もっともメジャーな判型のため書店も取り扱いやすいからです。

企画内容により、判型を大きくしたい、ページ数を大幅に増やしたい、中面をカラーにしたい、写真やイラストを作って入れたい……といった仕様変更には追加費用がかかってきます。

・部数

部数については当然、多くなればなるほど価格が高くなります。

注意したいのは、部数によって費用が変わる要因は物理的な印刷費用だけではない点。流通拡大に伴う書店営業の経費も加算されますし、書店から本が返品された際に出版社が被る損失のヘッジ分も、部数に応じて増額することになります。

あまり返品が多いといくら出版費用をもらっても損が出てしまう危険があるので、ある程度以上の部数増は受け付けてもらえない出版社もあります。

・制作費用

制作費用は基本的に人件費になります。

まず、ライターをつけて原稿を書いてもらうのか持ち込み原稿なのかで、大きく金額が変わります。

ほか、編集者の地方出張を要望したり、取材先が非常に多岐にわたったりする場合は追加費用になるケースが多いです。

・プロモーション費用

企業出版のプロモーションについて、書店やメディアへのリリースと人力による書店営業は基本的に出版の費用内でやってもらえます。

それ以外に別途費用を払って、WEB広告を回したり新聞広告を出稿したり、イベントを打って出版社に手伝ってもらうことができる会社もあります。

プロモーション費を戦略的に使うことはとても重要で、大部数でただ書店にまくよりも部数を絞った流通でプロモーションのほうに予算を使ったほうが効果的なケースも多いです。出版社に相談してみましょう。

それらを踏まえた一般的な相場としては、450万〜1000万円くらいが企業出版の費用になります。

基本的に値段が上がるほど出版社の規模が大きくなり、流通部数も多くなると考えてください。どの価格帯で出版するのが望ましいかは、出版目的や自社ビジネスの規模によります。

ちょっとしたテクニックとして、原稿を自社で書くと費用は少し相談に乗ってもらえる場合が多いでしょう。

◉企業出版の流れ

実際に企業出版を行う場合、流れは以下のようになります。

ライターに原稿を書いてもらうパターンです。

◆ステップ①企画立案

出版の目的やターゲット読者を明確にし、内容やテーマを決定します。企画段階では、書籍の仮タイトルや章立てを作成します。

◆ステップ②取材・執筆

著者本人や著者の会社の社員へのインタビュー取材を行い、必要な情報を収集します。取材データをもとにライターが執筆作業を進め、章ごとに文章をまとめていきます。

インタビューは一冊分で合計10時間程度になることが多いです。

◆ステップ③編集・校正

執筆された原稿を、著者と編集者で協力して校正(チェック)します。文章のクオリティや表現を整え、誤字脱字や文法の修正なども行います。

◆ステップ④デザイン・レイアウト

書籍のデザインやレイアウトを決定します。カバーデザインについては、いくつかの候補から最終的に著者が選ぶパターンが多いです。

使用してほしい色や求めるテイストがあれば、事前に担当編集者に伝えておきましょう。

◆ステップ⑤印刷・製本

カバーと本文が完成したら、印刷所に原稿を送り、書籍の印刷と製本を行います。ここまで来たら、著者は刷り上がりを待つだけです。印刷が完了したら、いよいよ書店に書籍が並びます。

◉企業出版の失敗事例と成功のポイント

生涯に一度かもしれない企業出版、絶対に成功させたいのは著者として当然でしょう。

成功のポイントをつかむために、企業出版にありがちな失敗事例を以下に挙げます。

◉-1、失敗事例①出版目的が絞られていない

企業出版では、「何のために誰に向けて出版するのか」がしっかり定義されていてこそ、クオリティの高い企画ができます。

「集客にも採用にも個人ブランディングにも効かせたい」「若者にもシニア層にも届けたい」など欲張りすぎると、読者から見て役立つ本であると伝わりづらくなってしまいます。

出版目的とターゲットについては、企画書の段階で編集者としっかり議論しましょう。前提条件によって書籍タイトルや原稿の書き方がまったく変わるので、企画書段階の議論は企業出版のプロセスでもっとも大切です。

◉-2、失敗事例②ターゲット読者の選定ミス

企業出版では、ターゲット読者のニーズや興味に合わせた出版物を提供することが重要です。

たとえば、マーケティングの初心者向けに書籍を出版したいのに、コトラーのマーケティング理論などを完璧に理解していないとわからないような高度な内容で本を書いても、ミスマッチになってしまいます。

ほか、そもそも本を読まない層をターゲットにしてしまうミスもあります。一例として10代女性などは、ファッション系やタレントものなどでない限り、出版してもほとんど本を買ってもらえないので注意しましょう。

◉-3、失敗事例③広告的な内容にしすぎる

読者のニーズや要求を意識せず、自社の情報や宣伝ばかりを強調した内容にしてしまうのも、よくある失敗ケースです。

せっかく費用を投じての出版ですから、著者として自社を存分に宣伝したいのは当然です。ただし、書籍は読者にお金を出して買ってもらうもの。「広告だ」という認識で読者は本を手に取っていないので、著者の宣伝色が強すぎるとかなり違和感をもたれます。

「伝えたいこと」を「価値あるコンテンツ」に変更するためには、編集者を使い倒すのがコツです。

◉-4、失敗事例④ターゲットに合わないデザイン

カバーをはじめとするデザインを選ぶうえでは、「ターゲットの好み」に合わせるのがとても重要です。

よくやってしまうのが、著者が「自分の好み」でデザインを指定してしまうパターン。著者の好みがターゲットの求めるデザインに合致するとは限らず、あまり自身の意向を強く押しすぎると多くの場合、違和感のあるデザインになってしまいます。

それを避けるため、どうしても譲れない部分は伝えつつも優秀な編集者の提案に任せたほうが出版効果は見込みやすいでしょう。

◉まとめ

以上、この記事では、企業出版(ブックマーケティング)とは何かをはじめ、メリット・デメリット、ブックマーケティングの最新トレンドなどについて紹介しました。

企業出版は、しっかりしたパートナー出版社と戦略的に取り組めば、投資対効果としてほかの施策ではあり得ないほどの効果が見込めます。

上記のコラムを参考に、企業出版という選択肢をぜひ検討してみてください。

ブックマーケティングを活用すれば、ただ書籍を出版するだけでなく、その書籍を自社のブランディング、認知度や購買意欲向上などに積極的に役立ていくことができます。

主に次のような方にブックマーケティングは最適です。

  • ・Web広告やSEOなどあらかたの集客施策をすでに行っているが、なかなかそれ以上の集客効果が得られないと悩んでいる中小企業
  • ・難しすぎてWebではなかなか集客できないようなビジネスモデルをお持ちの経営者様
  • ・ある程度事業も安定しているが、更なる成長をするための打ち手に困っている経営者様

そんな方は、ぜひ次のステージへの一歩として、ブックマーケティングを活用してみませんか。

 「採用ブランディング」という言葉が企業の戦略の中で広がりつつあります。

ただし、なぜ採用ブランディングが必要なのか、明確な目的やメリットを理解できていない経営者、人事担当者も少なくありません。

今回の記事では採用ブランディングを実現するにあたり、目的の組み立て方や具体的な方法を解説します。

目次【本記事の内容】

執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイ取締役マーケティング統括)


福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経済法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を担当し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。2023年9月取締役就任。グループの出版社、株式会社パノラボの流通管理も担う。

◉採用ブランディングとは

採用ブランディングとは、自社をブランド化し、採用活動において求職者に魅力的に感じてもらうために取り組む採用戦略のことです。

自社の魅力や強みを発信して認知度を上げたり、自社のイメージ向上を行ない求職者の共感や信頼を得たりする戦略です。

数多ある企業の中でも「自社を選んでもらう」努力を行ない、求職者からは「この企業で働きたい」と思ってもらわなければなりません。

さらに、採用ブランディングで強く意識されるのは、採用した人材の定着です。

企業の戦略として、新規採用で数を取ることも重要ですが、せっかく入社してもらっても採用後のミスマッチにより早期退職されてしまってはもったいないからです。

企業側の価値観と応募者の価値観が合致し、エンゲージメントの高まる人材を獲得することが将来的な企業の成長にもつながるといえるでしょう。

◉-1、採用ブランディングがなぜ求められるのか

今、この採用ブランディングが求められている背景としては、少子高齢化と労働環境の変化が考えられます。

労働人口の減少だけでなく、とくに新卒一括採用や終身雇用といった日本特有の雇用形態が崩れ始めたこともあって、各企業の採用競争が激化しているのです。

SNSを活用したダイレクトリクルーティングの普及も手伝い、企業が求職者に直接アプローチできる手段も増えています。だからこそ、企業のイメージをポジティブに伝えるためにも「採用ブランディング」が必要になってきているのです。

◉採用ブランディングがもたらすメリット

企業が採用ブランディングを実行することで、次のようなメリットを享受できます。

◉-1、①企業の認知向上につながる

採用ブランディングに取り組むことで、まずは企業の認知度が向上することが考えられます。求職者にとっては、その会社を知っているかどうかが応募のきっかけにもなり得るからです。

誰もが知る大手企業はともかく、中小企業やベンチャー企業などは、採用ブランディングに取り組んで認知度を上げないことには、採用に苦労するでしょう。

◉-2、②応募者の増加につながる

採用ブランディングにより自社の認知度が上がれば、おのずと応募者も増加するでしょう。

そのためには「この会社で働きたい」と思ってもらう魅力的な求人情報を発信したり、就職先候補の一つと検討してもらえるように有益な情報を発信したりすることが必要です。

◉-3、③採用後のミスマッチを避けることにつながる

どんなに優秀な人材を採用できたとしても、自社の理念を明確に伝えられていなければ、「思っていた会社とイメージが違う」と早期退職する可能性を高めてしまいます。

自社のブランドイメージや理念などの考え方を発信することで、それらに共感するマッチ度の高い人材を採用することができるでしょう。内定辞退を避けることや入社後の定着率向上に大きく寄与します。

◉-4、④競合他社との差別化につながる

採用ブランディングに戦略的に取り組んでいる企業はまだまだ少ないです。

とくに中小企業やベンチャー企業は予算がなく、積極的な採用ブランディングに取り組めていないケースが多いです。

しかし逆に小さな会社こそ、競合他社が取り組めていない採用ブランディングを実施することで、他社との違いや特徴、強みを明確に打ち出せるようになります。

求職者からは「この会社で働きたい」という動機付けになりますし、企業イメージを向上させることで仕事の取引先拡大など信頼感の向上にもつながっていきます。

◉-5、⑤採用コストの削減につながる

基本的に中小企業が新規採用を実行する際に考えるのは、リクナビやマイナビなどの採用媒体への広告掲載です。ただし、広告予算がかけられる企業ほど掲載上位になる優位性があるため、潤沢に予算をかけることができない中小企業には不利な施策です。

採用ブランディングを効果的に実行することで、口コミや自社の発信で情報拡散することが見込めるため、結果的に求人広告費の抑制につながるのです。

◉-6、⑥社員のモチベーションアップにつながる

自社の採用ブランディングにより、企業イメージが向上したり認知度が高まったりすることで、社員の帰属意識が高まります。自社のメッセージ発信だけでなく、採用ブランディングの施策の中で社員にも協力してもらう場面を設定することでモチベーションアップにもつながるでしょう。

自分がなぜその会社で働いているのか、再認識にもなり得ます。

◉採用ブランディングがもたらすデメリット

企業が採用ブランディングを実行することで、考えられるデメリットは次のようなものです。

◉-1、①効果を発揮するまでに時間がかかる

採用ブランディングは企業のブランドイメージ浸透、認知度の向上、応募者の増加や質の向上など、さまざまな効果を発揮させるためには時間を要します。

手段にもよりますが、基本的には2〜3年はかかると考えておきましょう。

◉-2、②全社で取り組む意思統一が必要になる

採用ブランディングは人事担当者だけでなく、会社の全社員を巻き込んで取り組む必要があります。経営者や人事担当者だけでメッセージを発信したところで、現場との意思統一が進んでいないと、結局採用後のミスマッチにもつながります。

企業が発信するメッセージは嘘になってはいけません。企業理念を浸透させ、労働環境も整備しながら、社員が働きがいのある場として魅力を高めていく必要があるでしょう。

◉-3、③情報発信を継続させるため忍耐力が必要

採用ブランディングは会社の将来を左右する取り組みになります。5年後や10年後といった先々を見据えたメッセージ発信を継続させ、ブランドイメージを定着させなければなりません。

さらに、短いスパンで次々に情報を更新しないことには、情報の鮮度も落ちてしまうことから、現実と乖離した内容を発信してしまうとマイナスイメージにもなり得ます。

とにかく忍耐強く、企業イメージを向上させ、求職者に真実を伝えるための情報発信をコンスタントに行なうことを心がけましょう。

◉採用ブランディングの戦略の組み立て方

採用ブランディングに取り組む上で、計画的に戦略を組み立てなければなりません。

具体的な戦略の組み立て方は次の手順です。

1、企業が欲しい人物像を確定させる
2、採用ブランディングの核となるキャッチコピーを決める
3、発信する方法を決め、メッセージを届ける

採用ブランディングを実施するにあたり、採用条件と合わない人材からの応募を減らす必要があります。

具体的に採用したい人物像を確定させ、決定したターゲットが魅力に感じるメッセージを発信しましょう。

具体的な手段は次に紹介します。

◉採用ブランディングの具体的な方法

採用ブランディングの手段は様々です。

まず、形式としては、文章、動画、画像、音声、会話などが挙げられます。

情報発信のチャネルとしては、求人媒体やWEBサイト、SNS、ダイレクトメールなどです。

これらを確定させ、どのようなタイミングで発信していくかを確定させなければなりません。

採用ブランディングの手法として有効な独自戦略を紹介します。

◉-1、【手段1】企業のメッセージを余すことなく発信できる「企業出版」

採用ブランディングで重要なのは、企業の意識統一です。

経営者の理念や目標など、社員と意識統一ができていなければ、社員はなぜ自社で働いているのか迷子になり、離職につながってしまいます。

そこで、理念を全社に浸透させつつ、対外的にも情報発信ができる「企業出版(カスタム出版)」は有効な手段となりうるでしょう。

企業出版は他の広告媒体と比較すると圧倒的な情報量を誇っています。さらに編集者が書籍企画という形で発信したい内容、発信すべき内容をまとめてくれるため、自社の考えの棚卸しにも寄与するのです。

完成した書籍は出版社や取次会社など多くのチェック機関を通じて、書店に流通し陳列されるため、情報としての信頼性も担保される稀有な手段といえるでしょう。

▶企業出版については、関連記事【企業出版のメリットとは? 企業が考えるべき出版による効果】もあわせてご参考にしてください。

▶くわえて前田建設工業の採用ブランディング成功事例を紹介している、関連記事【「ブランディング」の意味とブランディングの手法】もお読みください。

◉-2、【手段2】定期的な情報発信で企業イメージを浸透させる「コンテンツマーケティング」

採用ブランディングでは、短期的なスパンでの情報発信が効果的です。

鮮度の高い情報を発信し続け、さらに情報量が豊富であれば、積極的な企業姿勢を対外的に伝えることが可能です。

なかでもWEBのコンテンツマーケティングはおすすめの手段の一つです。

コンテンツマーケティングは、ペルソナの設計から開始します。自社に合致するターゲットを設定するため、ここで自社の理想の人物像を社内で確定させておくことです。

さらにコンセプトを決め、視覚的にも統一感のある情報発信を図ることです。

たとえば、採用ブランディング事業を展開しているトゥモローゲート株式会社の場合、新卒獲得のために「視覚」「体感」の2つのステップを経て、採用成功に向けた採用ブランディングを実行しました。

「ようこそブラックな企業へ」というコンセプトを定め、それに合わせて真っ黒なオフィスを借り、家具を真っ黒に塗りつぶすという統一感を出しました。

同コンセプトをリクナビやマイナビといった採用媒体にも掲載し、自社の採用特設サイトも黒を基調としたデザインで情報発信を積極的に実行。学生から口コミが相次ぎ、応募が殺到しました。

動画やパンフレットもコンセプトを統一したデザインで用意し、ゲーム形式の選考を実施するなど、応募者が体感できる面白い施策も実施したのは特徴的といえるでしょう。

このようにコンセプト設計からWEBデザイン、そして情報発信までのコンテンツマーケティングをフルサポートできる会社はそう多くありません。

WEBによる採用ブランディング成功のためには業者選びもかなり重要です。

◉【まとめ】採用ブランディング成功のためには長期的な計画と効果的な方法の選択を

採用ブランディングは一朝一夕で実現できる簡単なものではありません。

重要なのは、企業側の発信する内容と求職者が求める内容のマッチングです。

今回紹介したような手順を踏まえ、採用のための長期的な計画を立て、それを実現するための手段を目的に合わせて実行していきましょう。実行する手段についても、企業のカラーに合うかどうかは非常に大切です。

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▼採用ブランディングにも効果的なブックマーケティングはこちらから

 

コンテンツマーケティングとは、顧客にとって有益な情報コンテンツを届け、ニーズを育成したうえで購買につなげ、ファン化を目指すマーケティング手法のことです。

言葉にすると簡単なようですが、コンテンツマーケティングを実践したものの成果が出ないという企業も多く存在します。

今回は、そもそもコンテンツマーケティングはSEOマーケティングとは何が違うのかや、具体的な効果を発揮するためにどのような戦略を組み立てる必要があるのか等を解説していきます。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉コンテンツマーケティングとコンテンツSEOは違うのか?

WEBを活用したマーケティング手法として、メジャーになりつつあるコンテンツマーケティング。しかし、コンテンツSEOと混同されているケースも散見されます。

コンテンツSEOとは、ターゲット読者が求める情報をコンテンツとして提供し続け、Google等の検索結果で上位を目指す手法のことです。

コンテンツマーケティングの一種ですが、イコールではありません。

コンテンツSEOは検索エンジン(SEO)対策の方法であり、あくまで検索結果の上位表示を目指してコンテンツを提供することが目的です。

一方、コンテンツマーケティングはさらに広い意味で用います。広告以外の手段で有益な情報を発信し続け、見込み顧客に興味を持ってもらい、行動に移してもらうまでを戦略的に設計するのがコンテンツマーケティングです。

簡単にいうと、顧客側から興味を持ってこちら側に寄ってくるインバウンドマーケティングの仕組みづくりをコンテンツマーケティングといいます。

◉コンテンツマーケティングで期待できる効果とは

コンテンツマーケティングでは、次のような効果が期待できます。

①潜在顧客のリード獲得

ユーザーが欲する情報を提供し続けることで、自社に興味を持ってもらうきっかけができます。

興味を持ったユーザーがホワイトペーパーをダウンロードする等のアクションを起こす際、連絡先など必要事項の記入を行ないます。これが「リードの獲得」です。

ほかにも、コンテンツ発信をきっかけとしたメルマガの登録などもリード獲得の手法として考えられます。

②自社の認知度向上とブランディングの実現

ユーザーにとって有益な情報を提供し続ければ、SEO順位で上位獲得ができ、自社の認知度が上がることが期待できます。有益な情報であれば、ユーザーによって拡散されていく可能性があるので、自ずと認知度が上がっていくのです。

さらに発信するコンテンツが企業のブランドイメージそのものになるため、自社の事業領域における専門家としてのブランディング効果が期待できます。

③将来的な広告費の削減

自社のサービスや商品を購入してもらう手っ取り早い方法は、広告です。ただし、広告は成果が期待できますが、打ち続ける必要があり、結果的に広告費がかさみます。

しかし、コンテンツマーケティングで発信した情報は継続的に費用を投じなくてもネット上に残り続け、長期的な広告費の削減になります。

顧客がファン化して継続的に自社サービスを利用してくれれば、費用対効果が非常に高い施策となるのです。

◉コンテンツマーケティングの戦略設計の仕方

コンテンツマーケティングの失敗でよくあるのが、目的設定や準備も行なわずにいきなりコンテンツを作りはじめてしまうケースです。

しかし、まずは成果を得るための戦略設計が最重要。

具体的に取り組む準備としては、以下の通りです。

①これが決まらないと全てが狂う:ターゲットの設定

まずコンテンツマーケティングを実施するにあたり最重要といえるのが「ターゲットの設定」です。

ターゲットがぶれてしまうと、制作するコンテンツもテーマが不明瞭なものが増えてしまい、結果的にはコンテンツマーケティング自体が徒労に終わる可能性が高まってしまいます。

その中で、ターゲット設定のコツとしては「これまでに集客できていない理想の顧客像」を分析のうえ、設定することです。

マーケティング用語でいう「ペルソナ」を設計します。自社の顧客になりうる人物像を想像し、言語化することが重要です。

ペルソナ設計においては、「デモグラフィック」と呼ばれる人口統計の属性データを使用します。

「住所」「性別」「年齢」「職業」「所得(年収)」「世帯規模」「学歴」など、自社サービスにマッチするよう細かく想定するのです。

そのうえで、求めるユーザーの「ライフスタイルの送り方」「思考の傾向」「特有の悩みやストレス」「願望」を設定し、明確に文章で言語化することでペルソナが完成します。

②問い合わせの質を決める要素:目的の明確化

ターゲットが明確になったら、次は「目的の明確化」を行ないます。

コンテンツマーケティングで解決したい具体的な課題を整理したうえで、「CV(コンバージョン)の獲得」、「見込みの高いリードの獲得」、「自社の認知度やイメージアップを図る」、「採用活動につなげるべくブランディングを実施する」、などを明確化することです。

さらに、CVやリードの獲得など、自社サービスや商品の購買につなげたい場合、「どのサービスおよび商品を誰に届けたいのか」を明確に設定する必要があります。

目的とマーケティングの着地点となるサービスを明確化し、社内で共通認識を持って取り組むことが大切です。

③成果を出す必要条件:責任者とメンバーの決定

後にも解説しますが、コンテンツマーケティングは成果を安定して出すまで時間がかかります。したがって、コンテンツマーケティングのプロジェクトに根気よく情熱を持って取り組んでくれる、理解ある責任者を決定する必要があります。

コンテンツマーケティングでは、成果につながらない時期というのが訪れます。常にトライアンドエラーを繰り返しながら、成果につながらないコンテンツはどのように改善していくのか、といった意識が重要です。

責任感と覚悟を持って意思決定を行なえる責任者を任命しましょう。

そして、責任者を決めたら、次はともにプロジェクトに取り組むメンバーの招集です。

会社としてコンテンツマーケティングを実施する目的と意義を理解して、そこに共感して取り組んでくれるメンバーを選びましょう。

ありがちな失敗としては、次のようなメンバーを集めてしまうパターンがあります。

・文章を書くのが好きなメンバー
・過去にライティング経験があるメンバー
・通常業務の合間に手伝ってくれそうなメンバー

コンテンツマーケティングおけるSEOライティングには、必ずしも紙媒体などでライティングに従事した経験は必要ありません。

また、片手間ではそのうち手が回らなくなって放置されてしまうのがオチです。

コンテンツの品質を保つには、あくまでビジョンと目的に共感してくれるメンバーを集めなければなりません。

「コンテンツマーケティングの失敗を招くNG行動6」でも失敗要因について解説しています。合わせてお読みください。

④1年間を根気強く乗り越えるために:スケジュールとコンテンツテーマの確定

最後に、「スケジュール」と「コンテンツテーマ」を確定させます。

前述した通り、一朝一夕で成果や効果が出にくい施策のため、最低でも1年間のスケジュール計画を立てる必要があります。

その際、決めなければならない要素としては以下の通りです。

・アクセスやCVといった1年後の数値目標
・具体的なコンテンツの内容と制作担当者、制作の締め切り

コンテンツマーケティングによって、広告に頼らない価値ある基盤を1年後に作り上げるために、詳細なタスクを整理して、「誰が」「いつまでに」「どんなコンテンツ」を制作するのかを計画立てましょう。

目標達成に向けて、たとえば3ヶ月目までは認知獲得や商品理解を促すコンテンツを制作し、6ヶ月目以降は少しずつCVに繋げていくために、「購入欲求」をかき立てるコンテンツを制作する、といった計画です。

さらに、上記スケジュールの組み立てができたら、具体的なコンテンツの確定をしていきましょう。

決めるべきコンテンツの種類としては以下の通りです。

・文字コンテンツ:コラム記事、SNS投稿、ダウンロード用資料など
・画像コンテンツ:写真、イラスト、図、漫画など
・音声コンテンツ:音楽配信、音声メディア、インターネットラジオなど
・映像コンテンツ:YouTubeなどの動画配信、ウェビナーなど
・体験型コンテンツ:ゲーム、アプリなど

目的や顧客がどのような情報を欲しているかを、先に設計したペルソナを参考に考え、手法をセレクトしていきましょう。

◉【まとめ】コンテンツマーケティングはターゲットと戦略設計がカギを握る

以上のように、コンテンツマーケティングは根気よく続ける必要がありますが、自社コンテンツを魅力に感じた顧客はファン化して、サービスを利用し続けてくれることが期待できます。

そのためには、「ブレないためのターゲット設定」と「目的を見失わないための戦略設計」が重要です。

広告費を削減し、安定した売上を積み上げるためのコンテンツマーケティングを実施するうえで本記事の内容を参考にしてください。

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BtoC企業かBtoB企業かを問わず、商品・サービスが良くても売れるとは限らない今、注目されているのがファンマーケティングです。

ファンマーケティングに成功すると商品やサービスを継続的に使ってくれるファンを獲得することができます。

ファンが愛を持って商品・サービスをSNSやWeb上で広めてくれたり、自主的に自社の情報を拡散してくれたりするため、結果として商品・サービスの認知度や売上向上につながります。

しかし「本当にうまくいくのかが懐疑的」「実際にやってみたは良いが、うまくいかなかった」など、ファンマーケティングの効果について不安を持っている人も多いのではないでしょうか。

本記事では、さまざまな企業の成功事例から、ファンマーケティングを成功させるためのポイントや有効な手法などをくわしく解説します。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉ファンマーケティングとは?

ファンマーケティングとは、企業や商品・サービスを熱烈に支持するファンを増やして、売り上げを向上させていくマーケティング戦略のことです。

近年、ファンマーケティングが注目されていますが、その背景にはインターネットの発達などによる情報量の増大や顧客の購買プロセスの変化、少子高齢化による購買層の減少などがあります。

それにより、従来の広告などによる新規顧客の獲得が難しくなってきており、既存顧客や見込み顧客に対するアプローチを見直さざるを得ない状況になっているのです。

マーケティング分野において、ファンとはロイヤリティ(Loyalty:愛着)の高い顧客のことを言い、ロイヤルカスタマーと言います。

企業や商品・サービスのファンが増えることで、次のようなメリットが期待できます。

・中長期的な売上の向上
・SNSでの情報拡散による認知度拡大や新規顧客獲得
・商品・サービスの共同開発や改善

ロイヤリティの高い顧客は、商品・サービスを継続的に利用してくれるため将来にわたって安定した売上を見込むことができるだけではなく、ファンが自主的にSNSなどに投稿してくれて情報が拡散してくれる場合も多く、認知度拡大や新規顧客の獲得が期待できます。

さらに、商品・サービスの共同開発や改善などに積極的に参加してくれるのもファンの特徴で、実際にファンと共同開発したヒット商品もあるほどです。

◉成功事例に共通するファンマーケティングの7つのポイント

世の中でファンマーケティングに成功している企業はいくつも存在しますが、ファンマーケティングの成功事例には、次の7つの共通点があります。

・自社にとってのファンの定義を明確にする
・KPIを売上や利益にしない
・セールスやプロモーションなど一方的な情報発信をしすぎない
・ファン同士の交流ができるような場所、施策を用意する
・UGCを促進する
・短期的な成功を求めると失敗する
・BtoCとBtoBのファンマーケティングの違いを理解する

それぞれ、くわしく見ていきましょう。

◉-1、自社にとってのファンの定義を明確にする

ひと口にファンやロイヤルカスタマーと言っても、その定義は企業や商品・サービスによって異なります。

自社の顧客の中でファンというべき人がどの程度いるのかをはっきりするためには、その位置付けや定義を明確にする必要があります。

ファンを定義する際には、売上貢献度が高いという定量的な側面だけではなく、感情や感覚などの定性的な側面(顧客ロイヤルティ)も考慮することが必要です。

売上貢献度は購入金額・頻度などの購買データから求められますが、顧客ロイヤルティはNPS(ネットプロモータースコア)という指標を使って求めるのが一般的です。

NPSはアップルやグーグル、スターバックスなどが導入しています。

NPSとは「推奨者の正味比率」のことです。

測定するには「この会社(商品・サービス)を友人や知人に勧めたいか」という質問に対して0~10点の11段階で回答してもらって数値化する必要があります。

定量データと定性データにより、顧客ロイヤルティの高い顧客(ファン)を特定することができるのがこのNPSのメリットです。

◉-1-1、無印良品の事例 | ファンの定義を明確

無印良品は「無印良品ネットコミュニティ」という掲示板のようなサイトを開設して、匿名ユーザーの意見を取り入れて商品開発や販売促進の取り組みをかつて実施。

しかし、意見を出したユーザーが実際に商品を購入することは少なく売上へも貢献できていないという課題がありました。

そこで、「無印良品ネットコミュニティ」を会員制の「ファンサイト」に更新し、ファンの属性を正確に把握できるように改良。

ファンと一緒に商品開発のアイデアを練り、開発過程や経緯を全て公開するようにしました。

これらの施策により、ファンとの間で「共創意識」が高まり、新商品の発売直後から一気に売り上げの向上につなげることができたのです。

◉-2、KPIを売上や利益にしない

ファンマーケティングは、ファンを育成することによって中長期的な売上向上につなげようとするマーケティング施策です。

そのため、KPI(重要成果指標)を売上や利益に設定すると正しくファンマーケティングの効果を測定することが難しくなります。

実際にファンマーケティングに失敗する企業の多くは、「売上や利益を出さなければならない」と思いすぎてしまい、施策に「売りたい」という主張が滲み出てしまっていることがほとんどです。

ファンマーケティングの場合、「売り込み色」が滲むことで結果としてファンが離れていく傾向があるので、結果として売上や利益につながりません。

このような失敗をしないようにするためにも、ファンマーケティングのKPIとしては、次のようなものを設定してみましょう。

KPI概要
リピート率ファンが商品・サービスを再度購入してくれた割合。
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)ファン1人が自社にもたらしてくれる利益の総額。
フォロワー数・いいね数ファンのSNS上でのブランドへの関心の高さを示す。
コメント数・シェア数ファンのコンテンツへの反応を示す。
NPS(Net Promoter Score:顧客満足度指数)ファンの満足度とロイヤルティを示す。
CSAT(Customer Satisfaction Score)購買やサポートに関する顧客満足度を示す。
コンテンツの閲覧数・再生回数コンテンツへの関心の高さを示す。
コンテンツの共有率コンテンツの共有の程度を示す。

◉-2-1、マイネオ事例 | KPIを売上以外に設定

マイネオは携帯電話サービスを提供するMVNOの1つで、自社で通信設備を持たずに大手キャリアの通信ネットワークを借りて事業を行っています。

マイネオのファンマーケティング施策ではKPIとして下記を設定して、熱心なファンの獲得に成功しています。

・イベント実施時のアクション率
・NPS(顧客満足度指数)
・解約率

マイネオの事例のように、ファンマーケティングの目的はファンの獲得・ロイヤルカスタマーの醸成です。

売上や利益を意識しないまでも、「ロイヤルカスタマーを増やすことによって、二次的に売上や利益がついてくる」という考え方をすることが重要です。

◉-3、セールスやプロモーションなど一方的な情報発信をしすぎない

ファンマーケティングでは、「セールスやプロモーションなどの一方的な情報発信をしすぎないこと」「ファンとの交流を最優先すること」が重要です。

ファンマーケティングに費用をかけすぎると、すぐに費用対効果を考えてしまい、「もっと自社の商品・サービスの情報を発信しなくては」とセールスやプロモーションの投稿が多くなってしまいがちです。

そうすると、ファンは敏感にこれを察知してファンコミュニティから離れていき、ファンマーケティングが失敗してしまうことになります。

◉-3-1、不動産投資会社の事例 | ユーザーへの価値提供を書籍で実施

ファンを獲得する施策として書籍出版を行って成功した事例があります。

医師は高収入ですが同時に高額納税者でもあり、これが医師にとっては大きな悩みとなっていました。

不動産投資会社の経営者が、この悩みを解決する有効な選択肢の一つとして不動産投資を推奨する内容の書籍を出版したところ、発売直後から医師からの問い合わせが急増し数億円以上の成約につながりました。

これは、不動産投資物件を売ることを前面に出さずに、医師の悩みの解決策の1つとして不動産投資を打ち出したことでファンを獲得することができたのです。

自社の商品・サービスの直接的なセールスではなく、顧客の悩みの解決などの価値提供を行うことによってファンを獲得することができた事例です。

◉-4、ファン同士の交流ができるような場所、施策を用意する

ファンマーケティングを成功させるためには、ファン同士やファンと企業が交流できるような接点を作ることが重要なポイントとなります。

接点を作る方法の一つとして「ユーザーコミュニティ」があります。

たとえば、会員制のサイトなどを運営して、その中で会員同士が自由に発信できるような機会を設けると、商品・サービスに関するレビューを投稿したり新商品のアイデアについて意見を交わしたりすることができます。

また、ユーザーコミュニティ以外にも、次のようにさまざまなファン同士の交流ができる場所・施策があります。

ファン同士の交流ができる場所・施策概要
オンラインコミュニティサイトファン同士やファンと企業の接点となる交流の場のことで、時間や場所にとらわれずに参加できるようにインターネット上に設けられます。オンラインのコミュニティサイトが活性化するとファンの帰属意識が強まり、商品・サービスへの愛着も深まります。
ファン感謝祭などイベント定期または不定期に開催されるオフラインのコミュニケーションの場です。ファン感謝祭やファンミーティングなどの形で開催されるイベントでファンの熱量を高めることができます。その他に会社見学ツアーや新商品発表会などのイベントが開催されることもあります。
コンテスト・賞ファンコミュニティサイトなどで何らかのコンテストやチャレンジを開催してファン同士の競争や協力を促し創造性を刺激するものです。きちんと審査を行って上位者は賞を受賞できるようにします。
クラウドファンディング資金調達のためだけではなくファンからの意見を集めるためにクラウドファンディングを行います。商品・サービスに対する自社の思いを伝えてファンからのフィードバックを得ることができます。ファンと企業の一体感の醸成ができます。市場に出す前の商品を販売してファンからの意見をもらうというテストマーケティングの目的でも行われます。
各種SNS複数のSNSで専用のアカウントを取得して商品・サービスに関する情報だけではなく、コンセプトや思い、裏話などを交えて情報発信します。SNSを利用したキャンペーンはファンによって拡散されて新規顧客の開拓につながります。キャンペーンへの応募の際に専用のハッシュタグを付けて投稿する方法が一般的で、ハッシュタグを通じてユーザー同士の交流も生まれます。

自社で上記のような場所の用意、施策ができないかを検討してみましょう。

◉-4-1、川崎ブレイブサンダースの事例 | SNSの積極的な活用

Bリーグに所属するプロバスケットチーム「川崎ブレイブサンダース」は6つのSNSを積極的に活用してファンづくりを行いました。

目標はアリーナの最大収容人数5,000人を目指すことで、2019年~2020年のホームゲームを毎試合ほぼ満員にすることに成功。

試合のライブ配信(オンライン施策)では限界があったため、試合以外の「練習前の一コマ配信」「選手との直接対話ができるオンラインサロン」などのオフライン施策を組み合わせたことが功を奏した事例です。

◉-4-2、ヤッホーブルーイングの事例 | ファンベースの取り組み

クラフトビールメーカーのヤッホーブルーイングでは、この「ファンベース」という考え方を取り入れて、オウンドメディアやSNSでの積極的な交流、ビールファンが一堂に会するリアルイベント「超宴」の開催などの施策を行って熱量の高いファンに支持されるようになりました。

「ファンベース」とは顧客に対する新しい概念で、顧客を自社に利益をもたらす存在としてではなく、企業を支えるファンとしてとらえて顧客を大切にしていこうという考え方です。

「ファンベース」は顧客を囲い込んで利益を出そうという発想ではなく、お互いに共感や愛着・信頼を構築して良い土台作りをすることが重点となっています。

◉-4-3、チロルチョコの事例 | オンラインファンミーティングの開催

チロルチョコを販売する「チロルチョコ株式会社」もファンマーケティングを行って成功している企業の1つです。

事前にSNSを使ってミーティングへの参加を呼びかけ、「オンラインファンミーティング」では発売前のフレーバーの試食ができたり、限定グッズがもらえるクイズ大会を開催したりして、ファンと企業が一緒に楽しんで交流する場を設けてファンの心をつかみました。

◉-4-4、株式会社MAPPAの事例 | クラウドファンディングの活用

アニメーション制作会社の株式会社MAPPAは、プロデュース会社の株式会社ジェンコと映画監督の片渕監督と、『この世界の片隅に』の劇場版アニメ化を目的にクラウドファンディングを立ち上げました。

プロジェクトページに、制作者の想いや制作過程のシナリオ・絵コンテなどの情報を掲載してファンの共感や信頼を獲得。

資金提供したファンには「制作支援メンバーミーティングの参加権利」などのリターンがあり、制作支援メンバーミーティングでは、マスコミよりも早いタイミングで作品の進捗状況が公表されて作品に対する愛着を高めました。

クラウドファンディングでは約3,900万円の資金を調達してファンとの共創を実現しています。

◉-4-5、雪見だいふくの事例 | ネタ切れキャンペーン

ロッテが販売しているアイスの雪見だいふくは、2019年に「雪見だいくふう」というキャンペーンを行って雪見だいふくに工夫を加えた新しい食べ方を募集。

これまで50種類以上のフレーバーを発売してきましたが、まさに「ネタ切れ」だったためファンからのアイデアを募ったのですが、他社商品とのコラボも生まれ成功をおさめました。

その後、2020年以降の商品リニューアルや新たなコラボにもつながっています。

◉-4-6、ママリの事例 | 商品開発の実施や、賞の設置

ママリは、妊活・妊娠・出産・子育ての疑問や悩みを解決するアプリやWebでのQ&Aサービスを行っています。

「ママの一歩を支える」をミッションとして、妊活中の女性やプレママ・ママが集まるプラットフォームを提供しファンの意見を集めて商品開発などに活用。

商品開発例としては「ママ向けリュック」があり、定期的に「本当に使ってよかったグッズ」についてのアンケートを行って「ママリ口コミ大賞」を実施しています。

またクラウドファンディングを実施して、育休をとるパパ向け雑誌の制作も行っています。

◉-5、UGCを促進する

UGC(User Generated Content)とは「ユーザー生成コンテンツ」のことで、企業ではなく顧客によって発信されるコンテンツのことです。

UGCの例としては、SNSでの投稿、ブログやウェブサイトでのコメント、オンラインストアでのレビューや評価などがあり、ユーザーによって発信されたコンテンツが、商品・サービスの宣伝となるのが特徴です。

たとえば、比較的高額な商品やサービスの場合、実際に購入する前に他のユーザーの評価を見て、購入検討の参考にしたい人が多いという傾向があります。

UGCはユーザーによる評価コンテンツですから、企業によるコンテンツよりも信頼性が高いと考えられていますので、企業としてはUGCの促進を望んでいます。

◉-5-1、テスラ・モーターズの事例 | UGCの促進

自動車業界ではUGCが強力なマーケティングツールとなっており、テスラ・モーターズでもUGCを積極的に活用している企業の1つです。

テスラ・モーターズは、ユーザーが自発的に投稿する動画や写真を公式サイトや公式SNSでシェアしています。

その中でも特に、顧客が公開しているドライブ体験が、他の潜在顧客に対して強力な説得力を持つコンテンツとなっています。

◉-6、短期的な成功を求めると失敗する

ファンマーケティングは、ファンとの交流を深めることにより二次的な成果として対価が生まれる長期的なマーケティング手法です。

ですから、P/L(損益計算書)的な短期的なものの見方ではなく、B/S(貸借対照表)的な長期的なものの見方をして実施していくことが前提となります。

短期的な成功を求めるのであれば、そもそもファンマーケティングを選択すべきではありません。

もっと短期で成果を収めることができる広告などを選択すべきです。

◉-7、BtoCとBtoBのファンマーケティングの違いを理解する

BtoBでもファンマーケティングは有効ですが、BtoCと同じようなやり方で行うと失敗します。

なぜなら、BtoCの顧客が一般消費者であるのに対して、BtoBの場合は事業者だからです。

ファンの対象が違うため、当然ファンの作り方も異なります。

BtoBのファンマーケティングのファン作りの方法としては次のようなものが一般的です。

BtoB のファンマーケティングの手法概要
ユーザーコミュニティ企業のファン同士が交流する場としてユーザーコミュニティやファンコミュニティを提供します。商品・サービスのユーザーや企業の熱心な支持者が集まり商品に対する意見交換が行われます。顧客は肯定的な他社ユーザーの声を聞く機会が得られるためさらに商品・サービスへの帰属意識を高めていくことになります。
書籍(ブックマーケティング)書籍は社会的信用度が高い媒体であるため、書籍を出版してその中で自身の考えや理念を打ち出して共感を得ることによってファンを獲得することが可能です。ターゲットを明確にして、そのターゲットに購入してもらい読んでもらうことが重要ですので、SNSやクラウドファンディングなどを用いたプロモーションを行うことも有効です。
勉強会・セミナー・講演会BtoBのファンマーケティングの手法として勉強会やセミナー・講演会の開催があります。商品・サービスの紹介というよりは、開発ストーリーや開発秘話、これらが必要とされる背景、活用することによるメリットなど、この場でしか聞けないような内容をテーマにすることが効果的です。

◉-7-1、AWSの事例 | BtoBのユーザーコミュニティ

AWS(Amazon Web Services)とは、Amazonが提供しているクラウド型のプラットフォームで、BtoBのユーザーコミュニティによるファンマーケティングを行っています。

実際にAWSを利用している人が、ユーザーコミュニティの外にいる潜在顧客に対してその魅力を伝えて新規顧客を増やすという方法で成功しました。

さらに、ファンになった顧客のLTV(顧客生涯価値)を向上させることにも成功しています。

◉-7-2、保険代理店の事例 | 書籍の出版

法人向け保険を取り扱っている保険代理店の経営者は、保険業界に定着している「成果報酬型」の給与体系を「一律報酬型」に変えることによって、一部のスーパー営業マンに頼った経営から全社員総当たりの経営に変わり業績が向上するということを、保険業界の実態とともに書籍にまとめて出版。

その結果、同業他社からの多くの共感を得てファンを獲得することができ、ビジネス面でも新規コンサル契約の獲得や大口契約の成約、講演会の依頼などが増えました。

書籍の出版によって信頼性が向上し、担当者や経営者などから共感を得てファンの獲得に成功した事例です。

◉書籍出版も知る人ぞ知るファンマーケティングに適した手法の1つ

意外に思われるかもしれませんが、書籍の出版もファンマーケティングに有効な手法の1つです。

さらに、書籍を出版するだけではなく、SNSやクラウドファンディング、セミナーなどのあらゆるマーケティング手法を活用して、ターゲットの手元に確実に書籍を届ける「ブックマーケティング」はより効果的です。

書籍は社会的信用性が高い媒体ですので、BtoCだけではなく信頼性が重視されるBtoBのファンマーケティングにも有効なのが最大の強みと言えます。

実際に、保険代理店や不動産投資など一般的に難しいと言われるような業界でのファン獲得に成功しています。

◉【まとめ】ブックマーケティングを活用したファンマーケティングはフォーウェイに!

本記事では、ファンマーケティングの成功事例に共通するポイントや有効な手法などについてくわしく解説しました。

ファンマーケティングはBtoCにもBtoBにも利用できる施策ですが、このどちらにも有効な手法としてブックマーケティングがあります。

ブックマーケティングは書籍を出版して、SNSやクラウドファンディング、セミナーなどと組み合わせたマーケティング施策を行い、書籍を確実にターゲットに届けて読んでもらってファン化を促すという手法です。

書籍は伝えることができる情報量が多いため、単に商品・サービスの紹介だけでなく、自社の創業からの歴史、企業理念、開発裏話、強みなどをストーリーとして伝えることができ、読者をファン化させることができるのです。

ブックマーケティングを活用したファンマーケティングを検討してみたい、という方はフォーウェイまでご相談ください。

会社の周年記念日などに合わせて制作されるのが周年史です。

周年史は会社の節目を祝うための出版物ですから、周年記念日が終わった後は「会社の棚の奥にしまわれてしまう」ことが少なくありません。

せっかくお金をかけて作るのですから、周年記念日を祝うためだけに使うのではなく、その後もさまざまな形で会社の認知度向上や利益向上に役立つような出版物にした方が良いと言えます。

今回は、周年記念日だけに止まらずに活用できる周年史制作のポイントや、有効な活用方法についてくわしく解説いたします。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉周年史とは?

周年史とは、会社や各種団体・学校・官公庁などが周年記念日に合わせて発行する出版物のことです。

創立20年や50年などの周年記念日のタイミングに合わせて発行されます。

周年史の内容としては、年表に基づいた創立や設立からの沿革と、その間の代表的な出来事やイベントを時系列で記述したもの、などが一般的です。

◉-1、社史や記念誌との違い

周年史と似た出版物として、社史や記念誌があります。

周年史、社史、記念誌の違いは次表の通りです。

周年史社史記念誌
特徴会社や団体・学校・官公庁などが周年に発行する出版物。会社が自社の歴史をまとめた出版物で、周年史に含まれる。会社や団体・学校・官公庁などが何らかの出来事やイベントを記念して発行する出版物。
目的会社や団体・学校・官公庁などの歴史を記録として残す。会社の歴史を記録として残す。会社や団体・学校・官公庁などが何らかの出来事やイベントを記念として祝う。
出版のタイミング創立・設立20周年や50周年などのような区切りの良い年に発行される。創立・設立20周年や50周年などの区切りの良い年に限らず、株式上場や社名変更、経営トップの交代などのタイミングに発行されることもある。創立・設立20周年や50周年などの区切りの良い年に行われる記念行事、会社や社員の受賞、関連施設のオープンなどの出来事やイベントを記念して発行される。
構成・内容会社や団体・学校・官公庁などの創立や設立から現在までの沿革を時系列で記述する。会社の創立から現在までの沿革を時系列で記述する。会社組織になる前の年代までを網羅したものから、前回発行した社史以降のみをまとめたものなど多くの種類がある。記念する出来事やイベントを祝う内容が中心となる。歴史的な記述が必須ではないため、構成や内容は自由。

◉周年史を作るメリット

周年史を制作するメリットを一言で表すと「ブランディングの向上」です。

周年史の中には、通常の企業活動では伝えにくい「会社の歩みや実績、信条、理念」などが書かれているため、社外に向けて会社の存在意義や将来性などをまとめてアピールすることができます。

また、社外だけではなく社内向けのインナーブランディングにも効果的です。

さらに、会社の名刺代わりの1冊として、新規顧客開拓や人材採用などにも活用できることもメリットの1つと言えるでしょう。

◉-1、社内外へ感謝の気持ちを形として伝えることができる

周年史を発行することによって、自社が創立から現在まで存続し続けることができたことについての感謝の気持ちを、社外の顧客や取引先、株主などに「形のあるもの」として伝えることができます。

また、社員に対しても日々伝えることが少ない感謝の気持ちを改めて伝えることができ、モチベーションアップや社員間の連帯感の強化につながることが期待できます。

◉-2、会社の今までを社内外に伝えることができる

周年史は、会社が創立してから現在に至るまでの出来事などを年表形式で記述したものです。

周年史を発行することによって、自社が創立してから現在に至るまでの歴史やこれまで大切にしてきた信条や理念などを社内外に伝えることができます。

◉-3、将来の方向性を明確にし、社内外に伝えることができる

周年史は創立から現在までの出来事を年表形式で記述することが基本ですが、過去のことだけではなく将来の方向性を明確にして伝えることもできます。

自社の成り立ちや実績を明らかにすることによって、存在価値や社会的意義などを再認識することができ、将来どのような方向に進むべきなのかも示すことも可能です。

◉-4、社員の士気を高めることができる

社員が周年史を読むことによって、会社の今までの歴史や信条などに触れることができます。

そして、これをきっかけとして「自分たちが今後の会社の歴史を作っていくんだ」というように、社員の士気を高めることにつながります。

「会社の社会的な存在意義=自分達がこの会社で働くことの社会的意義」ということを再認識して、社員の仕事に対するモチベーションが高まるなどの効果が見込めるのも、周年史発行のメリットと言えるでしょう。

◉-5、顧客や取引先とのコミュニケーションのきっかけになる

顧客や取引先を訪問したり面談したりする際に、周年史を見ながら自社の歴史や実績などを話題としてコミュニケーションを図ることが可能です。

周年史を制作する会社であれば周年記念イベントなども開催するはずですから、そのイベントに顧客や取引先を招待することもできます。

こういったちょっとしたきっかけから信頼関係は築かれていくため、直接的ではなくとも、間接的に新しい仕事やプロジェクトに発展したりすることも十分に考えられます。

◉-6、企業理念や風土を社内外に浸透させるきっかけになる

自社の社員も、顧客や取引先も、通常の業務や取引を行っている中では企業理念や風土などについて詳しく知ることは難しいものです。

もちろん、ブランディングに関連する部署に所属している社員は業務の一環としてよく見聞きするかもしれませんが、多くの社員はそうではありません。

しかし、周年史ではこれらのことを1冊の出版物にまとめることができるので、理念や風土をしっかりと社員や顧客や取引先、パートナー会社などに伝えることができます。

◉-7、会社のイメージアップ

周年史を発行すると「きちんと周年史を出す会社」「歴史を大切にしている会社」「きちんとお金をかけて周年記念日を祝える会社」というプラスのイメージを持ってもらうことができます。

◉ただ作るだけでは終わらない!活用しやすい周年史を作るポイント

周年史には「会社の歴史を紹介する出版物」というイメージがありますが、歴史を時系列で書くだけではなかなか読み進めてもらえない上に、その後の活用が難しくなります。

「周年記念パーティーの開催前後は話題となったが、気づけば棚の奥に眠ってしまっている」なんてことも珍しくありません。

せっかく作る出版物なのですから、ただ周年記念日を祝うだけで終わらせるのはもったいないと言えます。

周年記念日が終わってからも、営業やマーケティング、ブランディングなどの活動に活用したり社内を活性化したりできるようなものにした方がより良いはずです。

そのためには、以下のようなポイントを考慮して周年史を制作していくことが重要です。

◉-1、幅広い読者に興味を持って読んでもらえる企画を盛り込む

周年史に会社の歴史が時系列でまとめられていたとしても、なかなか読みたいと思ってもらえないのが実情です。

せっかく手間と費用をかけて制作するのですから、棚の奥にしまいこまれてしまうのではなく「読まれる1冊」「活用される1冊」にしなければなりません。

そのためには、「読ませる企画」を盛り込むことが重要です。

たとえば、次のような企画を盛り込むなどを検討しましょう。

・トップと社員の座談会の実施
・社員のインタビューページ
・全社員へのアンケート結果の掲載
・懐かしい写真の掲載
・全社員のメッセージや集合写真の掲載
・その他会社ならではの企画

◉-2、会社の将来の展望などを盛り込む

周年史は「会社の歴史や実績を記述する」という性格の出版物なので、どうしても過去のことばかり盛り込んでしまいがちです。

しかし出版後の活用を考えると、将来的なビジョンなども盛り込んだ方が活用の幅が広がります。

過去のことばかり書いてあると「あ~そうだったな」で終わりになってしまいますが、会社の将来的なビジョンや事業戦略が書かれていると、全社員が会社の方向性を再認識することにもつながります。

また、講演依頼が来ることも見込めたり、さらなる認知度拡大につながることが期待できます。

◉-3、会社の強みや事業内容を整理して入れ込む

周年史を、営業活動やマーケティング活動に活用していくことを考えると、会社の強みや事業内容がわかるような内容を盛り込んだ方が良いでしょう。

そうすることで、マーケティング担当者や営業マンなどが、自社の強みや事業内容を見込み顧客や取引先に使用する際に、周年史を有効に活用しやすくなります。

また、意外と自社の強みや事業内容を正しく把握している社員は多くありません。

社内的にも自社の強みや事業内容を改めて再認識するきっかけにもつながります。

◉-4、周年史の活用方法をあらかじめ検討しておく

周年史は社内でプロジェクトチームを結成して制作するのが一般的ですが、制作前の企画段階でやるべきことは「実際にどのような活用方法をするのか」「どんな場面で活用するか」を決めることです。

制作し終わってから活用方法を考えるのではなく、「営業現場で新規顧客獲得のツールとして活用する」「広告としても活用する」「人材採用ツールとして活用する」など、具体的な活用方法を企画の段階から検討しておくことが重要です。

◉-5、書店流通なども見据えた内容にする

周年史は書籍の出版なので、全国の書店に流通させることも可能です。

基本的に周年史は、その企業のことを既に知っている方向けのコンテンツになりやすい傾向があります。

そうではなく、初めて見た人の目を惹く、または企業のことを知らない人が読んでもタメになるような内容にすることで、企業の認知度向上や新規顧客獲得につながりやすくなります。

このように書店流通を見据えることで、既に知っている方にとっても、より面白く分かりやすい内容にする意識が芽生えるため、結果として誰が見ても「面白く読みやすい」書籍を作ることにつながるのです。

◉周年史の主な活用方法

周年史はただ周年記念のためにただ出版して終わりではなく、会社のブランディングや認知度向上、新規顧客開拓などに役立つように活用していくことが重要です。

主な活用方法としては、次のようなことが挙げられます。

・ブランディング
・新規顧客獲得
・認知度向上
・人材採用

実際にどのような活用をしていけば良いのか、それぞれくわしく見ていきましょう。

◉-1、ブランディング

周年史の制作は周年事業の一環として行われることが多いため、周年記念イベントとの相乗効果や関連するPR施策によって、世間に会社の存在意義や将来性などを効果的に社内外にアピールするきっかけにつながります。

たとえば、周年記念という理由で取引先や顧客企業に感謝の手紙とともに周年史をプレゼントすれば、もらった相手も悪い気はしないはずです。

周年史の制作や周年事業の開催などとの相乗効果によって、知名度や信頼性の向上につなげることができます。

また、社外だけではなく社内向けのインナーブランディングにも活用すべきです。

◉-2、新規顧客獲得

周年史を新規顧客獲得のための営業ツールとして活用することも考えられます。

たとえば、新規顧客への営業の際は通常、会社案内パンフレットで会社概要を説明しますが、周年史などを使って自社の創立からの歴史や実績なども必要に応じて分かりやすく説明することができます。

また、お土産で手渡したりすることも有効です。

顧客側は、周年史を発行できるほど信頼性が高く、また長年競争を勝ち残ってきた優れた会社だという印象を受けることでしょう。

◉-3、認知度向上

周年史は自社や商品・サービスの認知度向上にも大きく寄与する媒体です。

周年史を活用したブランディング施策を実施したり、見込み顧客リストに送付したり、紹介してくれそうな会社に配ったりすることによって、制作によって「企業理念や思い」「保有する独自技術」「商品やサービス」などを広く見込み顧客にアピールすることができ認知度向上につながります。

◉-4、人材採用

周年史を人材採用活動に活用することも有効です。

周年史には会社の成り立ちから現在、今後の展望などが書かれているので、求職者に自社の魅力をアピールすることができます。

たとえば、採用サイトに周年史からの抜粋記事を掲載したり、リクルート活動の際に配布したりするなど、自社の知名度向上を図ることができます。

◉周年史はいつから作り始めるべき?

周年史の制作期間は、会社規模や創立後の年数などによって異なりますが、1年~1年半ほどかかるのが一般的です。

なぜなら、周年史に収める資料や写真などを集める必要があるためです。

規模が大きな会社や歴史のある会社になると、それなりに時間がかかってしまいます。

そのため、周年史を作り始めるタイミングとしては、規模の大きな会社や創立後の年数の長い会社の場合は1年半前、その他の会社の場合でも1年前には活動を始めた方が良いでしょう。

◉周年史制作の流れ

周年史制作は一般的に次のような流れで行います。

会社によって周年史作成のプロセスは異なるので、あくまでも一般的な企業での例です。

◉-1、周年史プロジェクトチームの立ち上げ

周年史の制作はプロジェクトチームを立ち上げて行うのが一般的です。

会社規模が小さい場合には通常業務と兼務することもありますが、一般的には周年史の制作に専任する形でプロジェクトチームが結成されます。

なぜなら、周年史の制作は周年記念事業の一環として行われるものであり、周年記念イベントを実施したり、資料や情報を収集したり、さまざまな部署との連携が必要になってくるためです。

プロジェクトチームのメンバーは、社内の幅広い部署から集められ、プロジェクトリーダーには決定権のある役職者や、会社規模によっては役員が就任することもあります。

プロジェクトチームに役員が入らない場合でも担当役員が決められて、社内の各部門からの資料集めやヒアリングなどがスムーズに進められるような体制が整えられます。

また、周年史は1冊の書籍なので、書籍の編集や出版などの専門知識が必要となる制作作業については、周年史の制作を行っている出版社に依頼して行うのが一般的です。

そのため、プロジェクトチームの立ち上げと同時に、依頼する出版社の選定や決定を行う必要があり、次のステップ以降の具体的な作業はその出版社のサポートを受けながら進めることになります。

◉-2、企画・構成案の作成

周年史制作の基本方針(周年史の目的、想定される読者・ターゲット、納期・スケジュールなど)をプロジェクトチームのメンバー全員で策定します。

その後、決まった方針に沿って企画・構成案を作成していく流れです。

この時重要なのが、周年史にどのような内容を盛り込むのかというコンセプトを作り、プロジェクトメンバー全員で共有することです。

前述している通り、周年史には会社の過去の実績などとともに、将来の方向性を明確に社内外に伝えるという役割があるので、周年史が発行される時点での会社の方針や経営計画などと整合が取れた内容になっていなければなりません。

周年史の企画・構成案が固まると、判型やページ数などの書籍仕様や制作費用などが決まってきます。

◉-3、資料などの収集・会社年表作成

周年史の企画・構成案に基づいて、必要な資料を収集して整理し、基礎資料として会社年表を作成します。

会社年表には、コンセプトに基づいて代表的な出来事やイベントを記入していきます。

この会社年表を作成することによって、収集すべき資料や写真に漏れがないかを確認することができます。

会社で以前に何らかの周年史などを制作したことがあるという場合もあるため、その場合は過去の周年史などを参照して間違いがないかを確認しましょう。

また、古い出来事やイベントについては日時があいまいなこともあるので、当時を知る人に確認したり古い資料を確認したりすることも必要となります。

◉-4、取材・写真撮影

周年史の記事を執筆するために必要な取材や写真撮影を行います。

取材対象や撮影対象の選定は社内のプロジェクトメンバーで行うのが一般的ですが、実際の取材や写真撮影は周年史の制作を依頼する出版社のライターやカメラマンなどプロに依頼した方が良いでしょう。

また、昔の出来事で撮影対象(建物や設備、製品など)の現物がないという場合もあるので、その場合は当時の写真が残っていないかどうかを当時を知っている関係者に聞いてみるとスムーズです。

人物の写真で当時の写真が必要な場合は、ご本人またはご家族に確認して提供してもらうケースも出てくるかもしれません。

◉-5、原稿執筆

周年史の原稿執筆は、取材に引き続きプロのライターに依頼した方が無難です。

これは、周年史は単なる資料ではなく書籍ですから「読ませる周年史」にする必要があるためです。

同じ事実を書くにしても、素人の文章とプロの文章では全く違ってきます。

なお、原稿執筆にはそれなりの期間が必要となりますので、適宜打ち合わせなどを行って執筆内容のチェックを行い、必要に応じて修正依頼なども行いましょう。

◉-6、デザイン

原稿が完成すると、出版社のライターやデザイナーと一緒に、書籍の装丁、表紙デザイン、字詰めや行数・フォントの選定、写真のレイアウトなどのページデザインを決めていきます。

このステップは書籍制作に関する専門知識が必要になるので、出版社のライターやデザイナーに案を出してもらって、それに対してコメントをして自社の要望に合わせていくというやり方が望ましいでしょう。

◉-7、校正・校閲

デザインが終わると校正と校閲を行います。

紙やPDFに出力して、誤字や脱字の有無、表記にゆれがないか、イメージ通りのデザインになっているか、写真は適切かなどをチェックすることを校正と言い、最初の校正を初校と言います。

また、同時に記載されている内容の事実関係に誤りがないことを確認する校閲を行います。

出版物は、印刷してしまうと修正ができませんので、複数のプロジェクトメンバーの目で入念にチェックする必要があります。

◉-8、最終確認・校了

校正や校閲で指摘した内容が適切に修正されていることが確認出来たら校了となります。

もし、修正されていない箇所や新たに誤りが見つかった場合は、修正をして再チェックをしましょう。

このように再度校正を行うことを再校と言います。

校正や校閲の最終確認が終わると校了です。

◉-9、印刷・製本

校了すると、出版社から印刷会社に書籍の印刷データが入稿されます。

印刷会社から実際の書籍に近い紙やインクで印刷した色校正が提示されるので、インクのノリ具合や図表や写真の色味などを確認し、必要に応じて調整を依頼。

色校正が終わると、印刷所で印刷し、製本所で製本して納品されます。

◉【まとめ】周年史制作ならフォーウェイにお任せ

今回は、周年史を制作する上で知っておくべきポイントや制作の流れ、活用方法などについてくわしく解説しました。

周年史制作は、会社のこれまで現在の立ち位置を再認識して今後を考える良い機会となります。

また、せっかく手間や費用をかけて制作するのですから、周年記念以外にも会社の発展に寄与できるような周年史にすべきです。

ただ作るだけではない、会社の将来的な発展を見据えた周年史の制作をお考えであれば、ぜひフォーウェイまでご相談ください。

社史とは、企業がこれまで歩んできた歴史や活動などを過去の資料などを元に読み物としてまとめたものです。

主に企業の周年事業の一貫として社史を編纂するのが一般的ですが、上場や、企業にとって記念すべきイベントの開催などのタイミングに合わせて作られる場合もあります。

せっかくプロジェクトチームを作ったり、お金と時間をかけたりして作るものですから、棚の奥にしまっておかれるようなものではなく、企業により良い影響を与えるような読み物にしたいというニーズが増えてきています。

中には、営業やマーケティングなどに活用している企業もあるほどです。

そこで、今回は読まれ、活用され、会社に良い影響をもたらしてくれる社史を作るコツや、出版後の有効活用方法についてくわしく解説いたします。

目次【本記事の内容】

執筆者:仲山洋平(株式会社フォーウェイ代表取締役、クリエイティブディレクター)

慶應義塾大学経済学部卒業。清水建設株式会社を経て、幻冬舎グループ入社。企業出版の編集者として金融、IT、不動産、企業創業記などを中心に200冊以上の書籍を担当。2020年2月、東京編集部責任者を最後に幻冬舎グループを退職し、出版プロデューサー・マーケティングアドバイザーとして創業。同年9月、株式会社フォーウェイとして法人化、代表取締役に就任。2021年11月には「日本の地域ビジネスを元気にする」というビジョンを掲げ出版社パノラボを設立。

◉そもそも社史を作る目的とは?

社史を作る目的は、主に次の7つです。

・周年記念のお祝いと、節目の認識共有
・企業の価値観や理念、方針の共有
・企業のアイデンティティの共有
・全従業員の士気向上
・業界内外へのアピール
・資料や情報の保全

それぞれ、どのような目的なのか見ていきましょう。

◉-1、周年記念のお祝いと、節目の認識共有

創立10周年や20周年などの節目の周年記念イベントの一環として社史を編纂して出版するのが一般的です。

社史の出版は、企業がこれまで存続するために関わってきた顧客や取引先、株主、パートナー企業、地域社会、社内関係者である従業員・OBなどの方々に対するお礼の意味を込めて行われることがほとんどです。

社史を通じて、企業がこれまでさまざまな方々との関係性によって存続してこられたことを改めて認識し直すと共に、できあがった社史をお世話になった方々に贈ることによって、感謝の気持ちを伝えることができます。

◉-2、企業の価値観や理念、方針の共有

社史は企業の歴史だけを書き連ねるものではなく、創業の理念や企業が果たしてきた社会的意義・価値観、今後の経営方針なども記述される出版物です。

たとえば、会社の歴史を顧みるといろいろな出来事があったはずで、そのときの経営トップや幹部が意思決定をして乗り越えてきたからこそ、現在も企業として存続できているわけです。

このような企業としての価値観を、社内外の多くの関係者に共有してもらうことは大切なことです。

多くの方が社史を読むことによって、これらの企業の価値観や理念、方針などを共有することが可能となります。

◉-3、企業のアイデンティティの共有

社史を出版することによって、企業のアイデンティティ(コーポレート・アイデンティティ:CI)を共有することができます。

企業のアイデンティティ(コーポレート・アイデンティティ)とは、「企業文化の独自性などを社内的に再認識・再構築し、統一されたロゴやイメージ、メッセージを社外に発信して共有し企業の存在価値を高めていこう」という企業戦略のことです。

自社の歴史を書籍にまとめることによって、全従業員が創業理念や企業の存在意義などを認識することができ、社外に対しても自ら積極的に企業の存在価値を高めていくように働きかけることができるようになります。

◉-4、全従業員の士気向上

社史によって全従業員が自社の歴史を理解することができます。

「創業者がどんな想いで、どんな信念を持って企業を作ったのか」「どんな苦労を乗り越えて今があるのか」など企業が歩んできた道のりには必ず人の想いやドラマがあるはずです。

社史を通して、企業の一員であるということに、今以上に誇りを感じる従業員も多くいることでしょう。

このように、企業理解を深め、全従業員の士気向上につなげるのも社史編纂の大きな目的の一つです。

◉-5、業界内外へのアピール

社史を通じて、業界内外における自社の役割や存在意義、存在価値をアピールすることができます。

社史には自社に関する歴史的事実を記載していきますが、これによって業界内で自社が果たしてきた役割などを業界内外の人に周知することができるのです。

たとえば、かつて自社の社長が業界団体の会長を努めて業界の発展に尽力したことがあるような場合、そのことを知らない世代の人々にも伝えることで、「あの会社はこの業界になくてはならない存在だ」と一目おいてもらえる可能性が高くなります。

◉-6、資料や情報の保全

企業活動を行うことによって多くの資料が発生しますが、そのすべてを残しておくわけにはいきません。

一方で、日々しっかりと整理整頓しておかないと、企業にとって貴重な資料が行方不明となってしまうことも考えられます。

こういったことは、歴史の長い企業ほど、規模の大きい会社ほど起こりやすいことです。

そんな時、残す資料と捨てる資料との区別をつけたり、社内に分散している資料や情報を収集して整理するなどの保全を行うことができる1つのきっかけが社史の編纂です。

収集した資料や情報の中には、地域社会や業界にとっても重要な記録となりうるものが含まれる可能性もあるので、地域の図書館に寄贈したり、業界団体に寄贈したりすることもできるかもしれません。

このように、企業活動によって発生した資料や情報をしっかりと後世に残していくことも社史編纂の重要な目的の1つと言えるでしょう。

◉社史の基本構成

社史は基本的に、口絵・本編・関連する資料・年表の4つの構成から成り立っています。

口絵企業にとって象徴的な写真(社屋、創業者など)や社是・社訓などを掲載します。歴代社長の写真を掲載することもあります。
本編本編の構成は大きく5タイプに分けることができますので、発行目的や用途に応じて選ぶことになります。
・正史型:代表的な社史で、記録としての目的が優先されるため事実を正確に掲載します。発生した出来事を時系列で紹介していきます。・テーマ型:いわゆる目玉企画を社史の冒頭に掲載するもので、自社をよりアピールできるような企画デザインを行います。歴史年表などは後半に掲載されます。・多角型:多くのステークホルダーを意識して出版する社史で、各ターゲットが求める情報を提供することが目標となりますので、より幅広い企画内容になります。・自由型:従来の社史の形式にこだわらずに、漫画、語録、映像、Webなどの媒体で企業メッセージを伝えるものです。
資料本編に関連する各種の社内資料などを掲載します。たとえば、会社概要、定款、歴代役員の一覧、社内組織の変遷、資本金の推移、売上高・経常利益の推移、受賞歴の一覧、取得特許の一覧などの資料を掲載します。
年表時系列の年表形式で、社内の出来事、業界の出来事、社会の出来事などを対比させて記載します。大企業の場合は、社内の出来事を拠点別や部署別に分けて記載することもあります。

◉読まれ、活用される社史を作るコツ

いくら崇高な目的を持って制作された社史であっても、会社の歴史をただ年表としてまとめただけでは、読まれず、活用されず、周年記念を過ぎたら会社の棚の奥底でホコリを被ってしまうことでしょう。

特に、現代は活字がなかなか読まれない時代。

前述したような社史編纂の崇高な目的を達成するためにも、「どうすれば1人でも多くの社員に社史を読んでもらえるか」「どうすれば社史を1人でも多くの人に活用してもらって、会社に良い影響をもたらしてもらえるのか」という視点で社史のデザイン、構成、内容などを抜本的に考える必要があります。

読まれ、活用される社史を作るコツは、主に次の5つです。

・危機を乗り越えた苦労話を入れる
・社員参加型のコンテンツを入れる
・営業マンやマーケティング部署などにヒアリングを行う
・読むよりは見て理解できるようなデザインにする
・思わず人に紹介したくなる装丁にする

それぞれ、どういうコツなのかについてくわしく見ていきましょう。

◉-1、危機を乗り越えた苦労話を入れる

企業の長い歴史の中には色々なエピソードがあるはずです。

これらをうまくコンテンツとして入れていくことが重要です。

たとえば、何らかの危機に陥ってそれを乗り越えた苦労話やこぼれ話などは、時代が違っても読み手に「自分も頑張ろう」という前向きな気持ちにさせる力があります。

「プロフェッショナルの流儀」や「情熱大陸」のようなドキュメンタリータッチのコンテンツに仕上げることによって、読み物として面白いだけではなく、社員のモチベーションを後押ししてくれるようなものに昇華することができます。

◉-2、社員参加型のコンテンツを入れる

誰しも自分が参加したコンテンツには興味が湧くものです。

社史の中に次のような社員参加型の企画を入れることも読んで、活用してもらうコツです。

◉-2-1、当時の振り返りインタビューコンテンツ

企業における歴史的事実をつらつらと書き並べるよりも、人が語る方が面白いコンテンツになります。

当時を知る社員や現役引退したOBなどへのインタビューを行い、その歴史をさまざまな人の視点で語ってもらうことで、より多角的に会社の歴史を理解することができます。

こういったさまざまな人へのインタビューコンテンツを入れていくのも、読まれるコンテンツを作るコツの1つです。

◉-2-2、全社員のアンケート結果

全社員に対するアンケートを行うと、全員がその結果に興味を持って社史を読んでくれるようになります。

アンケートのコツとしては、オーソドックスなものから、少し変わったクスッと笑えるようなものまで、幅広いアンケート内容にすることです。

◉-2-3、会社関係者の座談会・対談コンテンツ

座談会や対談は読まれやすい鉄板コンテンツと言えます。

経営陣や主要取引先、パートナーなどの会社関係者を巻き込んだ座談会や対談を開くことで、思わぬこぼれ話なども出てきやすくなり、面白いコンテンツになる可能性が高くなります。

◉-3、営業マンやマーケティング部署などにヒアリングを行う

社史を営業やマーケティングに活用することも考えられます。

そのため、事前に営業マンやマーケティング部署などにヒアリングを行うこともコツの1つです。

たとえば、「営業マンが自社についてどのような紹介をしているのか」「マーケティング部署では自社のどのような強みを訴求しているのか」などをヒアリングして、その根拠となるような歴史的事実を盛り込むなどです。

そうすることにより、営業マンが自社を紹介する際に根拠の1つとして社史を使うなど、出版後も活用されやすくなります。

◉-4、読むよりは見て理解できるようなデザインにする

近年は、文章よりはビジュアルなデザインやコンテンツが好まれる傾向があります。

社史はどうしても文章が中心の出版物になってしまいがちですが、「文章を読む」だけではなく「パッと見て理解しやすいデザイン」にすることもコツです。

たとえば、写真やイラスト、図表などをたくさん組み込んで、読者にビジュアル的に訴求できるようなデザインに仕上げることも、読まれやすくなるコツと言えるでしょう。

◉-5、思わず人に紹介したくなる装丁にする

社史の装丁(外観)をちょっと変わったものにすると、それだけで話題になり、人に紹介したくなるものです。

だからといって奇をてらいすぎたものにするのは考えものですが、その装丁が企業を象徴するようなものであればぜひ検討すべきでしょう。

◉-6、見ず知らずの第三者が見て面白い内容にする

社史は、出版物ですから、書店で流通させることも可能です。

社史はどうしても内向きの出版物として作られることが多いため、第三者が読むことをあまり想定して作られません。

だからこそ、棚の奥底に眠ってしまっている読み物になってしまう訳なのです。

しかし、せっかく会社で総力を上げて、お金をかけてつくるのですから、見ず知らずの第三者が見て、この会社面白いな、と興味を持ってもらえるような読み物にした方が絶対に良いはずです。

「見ず知らずの第三者が読んで面白いか」をしっかりと考え、コンテンツを作りあげていくことで、出版後も営業やマーケティング、採用、研修などさまざまな場面で活用できる社史を作り上げることができます。

「どうせ読まれない」ということではなく、書店で「面白そう」と手にとってもらえるような読み物に仕上げていきましょう。

◉社史の有効活用方法

社史はただ作るだけではなく、さまざまな部署で活用できるようにすることが何より大切です。

主な社史の有効活用方法としては次のようなものが考えられます。

・営業マンやマーケティング部署の販促ツール
・採用ツール
・社員研修ツール
・顧客や取引先への送付

それぞれの活用方法についてくわしく見ていきましょう。

◉-1、営業マンやマーケティング部署の販促ツール

社史には、営業マンやマーケティング部署の「販促ツール」としての活用方法があります。

通常は「販促ツール」として、商品・サービスのパンフレットやカタログなどを使いますが、社史も有効な「販促ツール」になります。

なぜなら、社史には創業から現在までに開発した商品やサービスが客観的に紹介されているからです。

その商品・サービスの開発経緯や時代背景、どのように世の中の役に立ったのかなどが記載されているため、優れた「販促ツール」となるのです。

たとえば、紙や電子、さまざまな情報媒体を扱うTOPPANエッジ株式会社(旧トッパン・フォームズ株式会社)では設立50周年にあたり「5メートルの長さの巻物社史」を作っています。

同社は、事務処理用の帳票(宅配便の伝票)や磁気テープ付きチケット(航空券)などを製造して伸びてきた会社で、長い紙に継ぎ目なく印刷できる独自技術を持っていました。

この巻紙社史は、この独自技術を用いて作ったもので、その技術力の高さをその場で体感できる「販促ツール」として活用されています。

このように、営業マンが説得力を持って自社や自社技術の紹介ができるような根拠やコンテンツを入れ込むことによって、より活用されやすくなります。

◉-2、採用ツール

社史を人材の採用ツールとして活用することもできます。

企業では採用活動時に採用パンフレットなどを配るのが一般的ですが、内定者のフォロー用に社史を渡すのも効果的です。

なぜなら、社史には自社の歴史や創業理念、将来展望などがびっしりと書かれているからです。

もちろん読まれない可能性も大いにありますが、それを読むことによって、自社への帰属意識の醸成やモチベーションの向上が期待できます。

また、採用説明会などにおいても、社史からの情報を抜粋して採用トークに活用することもできます。

◉-3、社員研修ツール

社史を社員研修用のツールとして活用することもできます。

自社の成り立ちやその後の軌跡、商品・サービス・独自技術の開発経緯、先人たちの苦労話などが読み物として分かりやすくまとめられているため、自社のDNAを知り企業理解を深めるための絶好の資料となります。

ある企業では、社員を対象に社史を読んで「これからの当社と私の役割」というテーマで論文募集をしたところ、全社員の約30%から応募があったということです。

社長は全ての応募論文に目を通して、社員がどのようなことを考えているのかを理解するのに役立ったのだとか。

◉-4、顧客や取引先への送付

社史を顧客や取引先に送付して、関係性の強化につなげる活用方法もあります。

前述のような、商品開発の背景や苦労話、全社員アンケート結果などが記載されていると、顧客や取引先により親近感を持ってもらい、自社の理解を深めてもらいやすくなります。

また、面白い目を惹くような社史であれば、見込み顧客開拓にも使える可能性も十分にあるでしょう。

◉【まとめ】読まれて、活用され、会社に良い影響をもたらす1冊を作ろう!

本記事では、社史を作る目的、読まれ活用される社史を作るコツ、社史の有効活用方法などについてくわしく解説しました。

近年では、社史は作って終わりではなく、いかに多くの人に読んでもらえるか、いかにさまざまな場面で活用できるか、という視点で制作されることが多くなってきています。

社史を制作する際には、会社の歴史としてまとめるという視点だけではなく、ツールとして様々な場面で活用することを見据えた営業・マーケティング視点を取り入れることが何より重要です。

フォーウェイは、書籍やパンフレット、記事などの面白いコンテンツを作るだけではなく、それをいかに活用していくかを探究してきたコンテンツマーケティング専門の会社です。

読まれて、活用され、さらには会社に良い影響をもたらすツールの1つとして社史を作っていきたいという方はぜひフォーウェイまでご相談ください。