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2021.12.20
Marketing
出版によるエリアマーケティングのススメーー地域で勝つための営業戦略
マーケティング戦略としての出版……企業出版というビジネスモデルは一定の経営者に知れ渡ってきている手法の一つです。
一方で、出版業界は書籍の売れ行きが下がり、売れない本は返品されるなど返品率の上昇に喘いでいる状況。ビジネス目的の出版とはいえ、売れなければ返品されてしまうため、見込み客に購入してもらえる確率は下がってしまうでしょう。
今回の記事では、出版業界の返品率上昇に着目しながら、エリアマーケティングの一環として信頼性や認知度を上げるための出版施策について解説します。
書店は減少する一方……それでも新刊が多く発行される出版業界
一般的に、出版業界は市場規模が縮小し続けているというイメージを、多くの方が持たれているのではないでしょうか。 市場規模では1996年の2兆6563億円をピークに減少の一途をたどり、2018年には紙と電子書籍を合わせた市場規模が1兆5,400億円と、およそ20年で1兆円以上の減少となりました。 書籍が売れなくなっているのは明らかです。 主な要因としては雑誌が売れなくなったことがありますが、出版業界の根深い問題点はそれだけではありません。 市場規模がシュリンクしていっているにもかかわらず、新刊の刊行点数はさほど減っていないのです。 毎年7万5000タイトルほどの新刊が発売されながら、平均40%にもおよぶ高い返品率が目につきます。新刊の半分近くが売れずに返品されているという、恐ろしい構図があるのです。相次ぐ書店の閉店と止まらない新刊の配本
2001年には、日本全国の書店は全部で2万1000店舗あったといわれています。これが2020年の時点では1万1024店舗になっており、約1万店舗が閉店に追い込まれています。 しかし、出版社の刊行点数は毎日約200タイトルが書店に配本されている計算である一方、店舗数に比例して新刊発行点数も半減しているというわけではありません。 出版業界は完全に需要と供給のバランスが崩れてしまっていると言っても過言ではないでしょう。大部数を全国流通させる大手出版社の企業出版モデル
ただし、書籍じたいの価値が下がったというわけではありません。 毎日新聞社の読書世論調査でも読書率が大幅に低下しているというデータは出ておらず、本を読む人は減少傾向にあるとしても、20年前から半減したということはないのです。 そこで、一定のニーズに沿った書籍出版をすることで、読者にとっても経営者にとっても有益な情報発信手段として、企業出版というビジネスモデルが誕生しました。 企業出版は一般の商業出版とは異なり、あくまでブランディングやPRを目的とした出版のため、初版10000部といった大部数を印刷して、全国書店へ大々的に流通するという手段が広まっていきました。 特に高単価の商材を扱っていたり、書籍のような情報量の多い媒体で発信を行なう有用性があったりする企業であれば、書籍の読者からの反響を得やすいなど、非常に費用対効果の高いマーケティング手段となっているのです。歯止めがきかない返品率で壊れ始めた大部数出版
前述した通り、出版業界の平均の返品率は約40%です。とはいえ、「売れる本」と「売れない本」の二極化は進んでおり、7万タイトル以上もの新刊のうちでもベストセラーやロングセラーになっている書籍はごくわずかです。 実態としては、返品率が50%以上の書籍が大多数を占めているのです。 これを大部数出版が基本の企業出版に当てはめると、返品率が70%を超えている銘柄もザラにあります。 なぜならば、一定のニーズを満たすターゲットを厳選した企画が中心のため、何万部もの売り伸ばしを実現する書籍はほとんど出てこないからです。 こうなると厳しい目を向けてくるのは、書店への全国流通を担っている取次です。日販やトーハンが出版業界の流通のほとんどを担っている二大取次ですが、返品率が高まっている出版業界にあって返品抑制に躍起になっています。 書店によっては販売能力以上の書籍注文をしたり、返品率が上昇し続けたりするところもあり、そのような書店には仕入れ抑制を仕掛けて新刊が配本されないように操作することもあります。 このように返品率を下げるために施策を打つ取次ですから、返品率の高くなる企業出版モデルの出版社からの新刊配本を抑制するのは、自然な流れといえるでしょう。企業の自費出版のトレンドはエリアマーケティング
高すぎる返品率と取次の配本抑制を鑑みると、全国へ大々的に配本する出版マーケティングは徐々に暗雲が立ち込めています。 そこで、いまトレンドの一つとなっているのは、出版によるエリアマーケティングです。 市場規模が縮小しても、書籍が信頼性ある媒体であり、税理士や弁護士などの士業、経営コンサルティング、開業医にとって有益な情報発信手段である事実は変わりません。 そこで、総制作部数をある程度絞って、一定のエリアに限定的に配本することで商圏内の見込み客への認知度を高め、反響を狙う方法が効果的です。 今後ますます取次を介しての出版マーケティングが難しくなってくると考えられる中で、日本の消費者の実に40%が利用しているAmazonのようなネット書店で出版している事実を作りながら、自分たちのエリア内の書店にだけ配本するという方法が取れれば、単純な出版における制作費用を抑えながら費用対効果の高いマーケティング施策が打てるといえます。 ▶書籍出版については、関連記事【企業の自費出版を考えるーー効果的な戦略の組み立て方と出版社の選び方】もあわせてご参考にしてください。出版はあくまで広告手段の一つーー目的とターゲットをきちんと設定しよう
以上のように、出版業界は厳しい状況に置かれています。 書籍出版の価値は変わらず高いものではありますが、経営者がマーケティング戦略の一環で出版を検討する際には「何のために出版するのか」「誰に向けて発信したいのか」というマーケティングの基本に立ち返って考えてみましょう。 そのうえで、最適なマーケティング手段を選択していくことです。 参考:フォーウェイのブランディングサービスについてはこちらから
執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイゼネラルマネージャー)
福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経営法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を歴任し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。
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