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2024.09.27
Branding, Marketing
企業の自費出版を考えるーー効果的な戦略の組み立て方と出版社の選び方
認知度拡大や採用強化のためのブランディング実現を目的に、自費出版を選択する企業が増えています。ただ、実は企業向けの出版施策として、自費出版のほかに企業出版という手段があります。
企業が出版を検討する際に、効果的な戦略となるのはどちらの出版方法でしょうか。具体的な出版社の選び方まで解説していきます。
目次【本記事の内容】
- 1.自費出版と企業出版の違いとは
- 2.自費出版と企業出版のコストの違い
- 2-1.自費出版のコストは安価だが料金体系は幅広い
- 2-2.企業出版はかなりの高額だが書店に流通する
- 3.自社に適した出版社の選び方
- 3-1.対外PRよりも説明ツールが必要であれば安価な自費出版を
- 3-2.企業出版の見極めの仕方
- 4.【まとめ】ブランド力かコストパフォーマンスのどちらを優先するかが重要
執筆者:江崎雄二(株式会社フォーウェイ取締役マーケティング統括) 福岡県出身。東福岡高校、山口大学経済学部経済法学科卒業。大学卒業後、月刊誌の編集者兼ライターに携わる。その後時事通信社での勤務を経て、幻冬舎グループに入社。書店営業部門の立ち上げメンバーとして活躍後、書籍の販売促進提案のプロモーション部を経て、法人営業部へ。東京と大阪にて書籍出版の提案営業を担当し、2020年11月、株式会社フォーウェイに参画。2023年9月取締役就任。グループの出版社、株式会社パノラボの流通管理も担う。 |
◉自費出版と企業出版の違いとは
自費出版と企業出版はどちらも費用負担の必要がある点では同じものといえます。
ただし、それぞれ出版の目的や出版後の展開に大きく違いがあるため、異なる名称で差別化しているのです。
自費出版は、著者が自身で費用を負担して、出版社の編集者に書籍化してもらう出版形式です。出版後は書店に必ず並ぶわけではなく、自己満足に終わる可能性も十分にあります。
企業出版は、企業が広告宣伝費などの名目で費用負担をし、企業の課題解決のためのマーケティング手段として書籍出版を活用することです。出版社の編集者やプロのライターの取材により原稿を執筆してもらうことができ、会社としての理念や考え方の棚卸しもできる方法です。
企業の課題とは、会社によって異なります。たとえば、出版をきっかけに企業としてのブランド価値を高め、競合他社よりも顧客に選んでもらえるようにする認知度拡大、ブランディングが出版目的の一つです。
企業出版は、出版社によって呼び方が異なることがあり、カスタム出版やブランディング出版と呼ぶこともあります。
▶企業出版については、関連記事【「出版の広告効果とは? 企業出版と自費出版の違い」】もあわせてご参考にしてください。
◉自費出版と企業出版のコストの違い
自費出版と企業出版では、目的のほか、かかるコストの違いが大きいです。
◉-1、自費出版のコストは安価だが料金体系は幅広い
自費出版は、基本的には自分の執筆した原稿を、プロの編集者に編集や校正してもらう流れをとります。
自費出版は地方の小さな出版社から大手出版社まで幅広く展開されています。
そのため、出版社によってコストに差が生じます。部数によっても変わりますが、100万円以下で対応する印刷会社の延長のような業務請負もあれば、300万〜400万円で請け負う自費出版もあります。
会社の広告宣伝や書店流通を希望する場合は、自費出版を選択するのは得策とはいえません。「書店に並びます」というセールストークで売り込む自費出版会社もありますが、そういった出版社は大型書店の一角に、誰が立ち寄るかわからない自費出版専用の棚を購入しており、そこへの展開となるのが大半です。
書店に配本はしても、棚に陳列されることなく返品されるのもよくある話です。
◉-2、企業出版はかなりの高額だが書店に流通する
企業出版は、出版後のプロモーションまで担うため、書店には流通していくのがポイントです。
コストは有名な大手企業出版会社の場合、1000万円ほどかかるのが当たり前の世界です。1000万円という高額な費用を負担しても、出版後の宣伝効果で費用回収ができる企業であれば活用してもよい手段でしょう。
業界最大手の企業出版会社では、不動産投資会社は1〜2件の契約が決まれば出版費用が簡単に回収できることもあり、不動産関連の書籍が多数出版されていました。
ただ注意が必要なのが、出版された書籍は大型書店には基本的に陳列されますが、どれほどの期間展開されるのかは未知数な点です。というのも、出版業界は書籍の販売が落ち込んでいることもあり、売れなければ即返品される厳しい世界だからです。
たとえ大手出版社の名を冠した書籍であっても、売れなければすぐに返品されると考えてください。
くわえて、確実に書店に展開させるためのプロモーションを実施する手もありますが、前述の1000万円近いコストから、さらに数百万円の広告費を投じる必要があることは覚えておきましょう。
◉自社に適した出版社の選び方
では企業が自費出版もしくは企業出版を検討した際に、出版社はどのような点に着目して選ぶのがよいでしょうか。
◉-1、対外PRよりも説明ツールが必要であれば安価な自費出版を
まず、自社で配布するための営業ツールや採用の際に応募者に配布する採用ツールなど、書店展開の必要性以上にツール自体が必要ということであれば、自費出版でもよいでしょう。
ライターを用意してくれる出版社であれば、自社で執筆する必要もなく、自由度高く自分たちの思い通りに制作することができます。
なによりも自費出版は安価です。広告費を抑えながら、営業活動や採用活動のプラスアルファが欲しいときに選択肢となりえます。
ただし、少しでも対外的なPRやブランディングの目的があるならば、自費出版は選択すべきではないでしょう。
自費出版で満足に書店流通してくれる出版社はないと言っても過言ではありません。自費出版はあくまで自社で完結する場合の選択肢として考えましょう。
◉-2、企業出版の見極めの仕方
対外的なPRやブランディング目的で出版を検討した際、企業出版を選択するのがよいでしょう。前述のように1000万円近くのコストがかかる出版社がありますが、なかにはもっと安価に企業出版を提供している出版社もあります。
大手出版社であればコストは高くなりがちですが、会社のブランド力があります。会社としても箔がつき、競合他社が出版施策をすでに実施している場合にはコンペなどで対抗する手立てとなるでしょう。
一方、一般的に知名度は高くなくとも、大手出版社に引けをとらない制作力と流通力を誇る出版社も存在します。会社のブランド力よりもコスト面を抑えたいのであれば、このような企業出版会社を選択するのも一つの手段です。
最後に、企業出版ならびにカスタム出版のサービスを提供している出版社を簡単に紹介しましょう。
・幻冬舎メディアコンサルティング
企業出版最大手の出版社。ベストセラー書籍を多数輩出する幻冬舎の子会社であり、企業出版では業界随一の1800社以上の実績を誇ります。企業の成功事例も多数。
・ダイヤモンド社
ビジネス書では随一の実績とブランド力を誇る出版社です。企業出版のほか、広報誌や会社の歩き方などの企画も取り扱っています。自社雑誌およびWEB媒体とのコラボも可。
・日経BP社
ビジネス書の実績が豊富な経済系出版社。「日経ビジネス」といったビジネス系雑誌媒体を発行しているのも強みの一つ。社史・周年史も豊富な実績を誇ります。
・東洋経済新報社
雑誌・東洋経済やWEB・東洋経済オンラインを発行、運営するビジネス系出版社。カスタム出版の実績も多く、紙やデジタル、リアルイベントといったプロモーション提案も可。
・クロスメディア・マーケティング
企業出版に力を注ぐ成長著しい出版社。年々刊行点数も伸ばしており、費用も安価なメニューから幅広く揃えています。大手出版社に遜色ない流通力を保持しているのもポイント。
・フォーウェイ(出版社パノラボ)
大手の企業出版会社よりも安価な適正価格でブランド力ある出版社から出版ができます。また、自社グループに企業出版専門の出版社パノラボがあり、マーケティング視点を持った成果にこだわるブックマーケティングを提供できるのも特徴。出版後のプロモーションまで企業の出版目的に合わせて設計できる点も強みの一つです。
上記の特徴を踏まえて、自社の課題や広告予算との兼ね合いで選択するのがよいでしょう。逆に上記以外の企業出版は制作面もしくは流通面のクオリティや対応の悪さが大きな不満点につながり、自費出版したのと結果が変わらない可能性が高まるためおすすめはしません。
▶企業のブックマーケティングについては、関連記事【ブックマーケティングとは?メリットや効果的な戦略の作り方】もあわせて参考にしてください。
◉【まとめ】ブランド力かコストパフォーマンスのどちらを優先するかが重要
以上のように、企業が出版を選択する場合、目的をいかに達成させるかが重要になります。
企業出版を実施するとしても、出版社のブランド力を信じて高額な広告予算で施策を打つか、コストパフォーマンスを重要視するかを決めなければなりません。
ただ、市場に自社の書籍を流通させることは直接的な売上アップ以外のリターンもたくさんもたらしてくれます。出版をきっかけにメディアから取り上げられるようになり、副次的な出版効果で売上が向上したという事例も珍しくありません。
企業としてステップアップを図るならば、企業出版という手段はさらなる成長のための起爆剤になりえるでしょう。
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